第23話未定

ヴィシュヌ様から話を聞いたのでそれを実験してみる事にする。正直な話、創造主にシステム周りを全部聞けるとか、そのシステムを使うならばチートも良い所では有るが、……まあ、ヴィシュヌ様からしてみれば後進育成が目的なのだから、不親切仕様にしすぎてもアレだし、極度なネタバレでも無ければ答えてくれるのは、聞かれたらある程度までは他にも答えて居るのだろう。だからそれは良い。だが、だ。無視出来ない情報が多すぎる。あーもう色々と検証し無いとだが、先ずは神格を他の奴にも取得させよう。そうしないと神格持ちが敵に来たら他の奴の参戦は厳しい……ん?なんかおかしいな?その情報が正しいなら何でスコールを撃退した後にある程度の奴等掃討したのに神格持ちが居なかった?その使い方が知られてない?それとも神格持ちで無くとも神格を少数持つ程度の相手になら補正を破れてしまうのか?……いや、よく考えたら神格による補正を使い、防御するとか攻撃するとか言って居た。つまり、任意発動型で有って、常時発動型のそれじゃ無い。溺死=空気が無いから。攻撃を防げてもしょうがないな。体内から感電死。手法的な意味で予測出来ているとは思えないな。要するに、対応にそれが使えるパターンの倒され方じゃない。……思うより万能では無いな。倒し方が限定されるだけでしかないや。でも話は通して置こう。……行動の保証、つまり、補正自体は無敵化では無いが、無敵化の能力の行動保証をすれば無敵の保証が付く……とか出来るのか?出来るならやれる奴とやれない奴の差が酷いのだが。……いや、それは神話で無敵化の有る神格で無いと無理で有ってくれ。まあ神話で不死身って弱点が有るか、不死身を成立させる力以上の力で無理矢理ゴリ押すのが攻略法なパターンも存在する。その力でのゴリ押し側は相手の神格の補正を上回る補正を手に入れて使えば良いとして、……いや、インスタントに簡単に神格が手に入るのでも無ければ神格所持数で負けて居たら基本的にはそれは無理だろうし、その状態でも問題無い様に出来る様にしないとだ。其処で勝って居る前提で全部済めば苦労はしないのだから。要は相手に攻撃される事すら解らない手法で、不意討ちで殺す。対策をされようが通る方法で殺す。初見殺しだけで全部片付くなら苦労はしないが、……但し、例えば割り込み無しのターン制バトルなら簡単に対処されるだろう。攻撃が来るタイミングが解り切って居るのだから、その時(相手のターン時)にその力を行使し続けて居るだけで良いのだし。まあ、とにかく暫くは検証と無敵化や不死身性を持つ神格の獲得を目指すとするか。



 そして暫くの期間色々な検証と実験を行い、次に得る予定の神格の選定が済んだ。……いや、巨人系の奴で、今すぐに出来そうな奴で、尚且つ強い逸話持ち。即ち百目巨人アルゴス。何パターンか神話が存在するらしいのだがその中にはエキドナを討伐した物も存在する。エキドナと言えば名立たる怪物達の母で、テュポーンの妻。一言で言えばアルゴスはかなりの大物殺しの神格だ。百も目が有る必要が有るが別に身体的な模倣なら問題無い。……いや、正確に言えば百目巨人とかヘカトンケイルの神格を得た今なら原典的なヘカトンケイルの姿に成るだけで百目の巨人と言う点はやれてしまう。故にヘカトンケイルの神格を多用して居れば努力して居なくとも自分にその神格が自分に転がり込んでくるのはそう遠くないのが予想出来た。経験を積むだけで神格を追加で得られそうなのは喜ぶべきか、条件が緩いのが自分だけで無いならもっと数を稼がないと不味いのではないかとも思う。だが、これは良い事であろう。まあ、だが、神話再現をやれている部分を増やすのは悪く有るまい。先ずはヘカトンケイルの姿を水で再現し、五十頭百椀の巨人に成る。そして一部の頭だけに睡眠を取らせる。これで眠る頭を切り替えて行き、四六時中何処かの頭は起きて置こう。それで数日其処ら何処かの頭は起きたままで過ごすのだ。そして数日の間、そうしたまま過ごした。……だが、まだアルゴスの神格は俺には宿らない。……はぁ。やっぱ神格に相応する証明としてこの状態で他の奴をそれなりに討伐しなければダメか。行くとしよう。まあ、そうでなければヘカトンケイルの神格を得た際に一緒に取れているはずだしね。



 そして大きな被害を出している多頭蛇を倒すことにする。三十其処らの頭の数を持ち、首を切ろうものなら再生して頭が増える。そして受けた者に激痛を与える毒持ち……いや、多分ヒュドラだ、これ。色々な創作で使われるし、まともな戦闘ではヘラクレスに倒されてこそ居るが、持つ毒側が超の付くレベルで有能で、他者に盛られたそのヒュドラの毒でヘラクレスすら最終的には殺したヤバイ奴。対策無しにその毒を受ける事だけは確実に止めた方が良い。効果は極度な激痛を伴うそれで、その激痛はケイローンだとその永遠と続く激痛で不死を返上して死んだレベルだ。……自分の受けている毒の除去方法有って良かったな、これは……いや、流石に盛って居ると思いたいレベルの話だけど、とにかくヒュドラの毒はヘラクレスすら死ぬレベルの毒なんだから流石にまともに受けたくはない。まあ、やるべきは全部の頭を水で造り大量に有る腕で拘束しながら、切断し、傷口を雷で焼き切るだけ。……いや、手段自体は有るから簡単には言うが、対処をミスれば頭部が増えるので、拘束難易度が更に上がる為ミスは出来無い。毒の対策が無ければノーミスが前提の攻略が必要になる。まあ、幾つかの首を切る程度の事は他の奴にも出来ているから頭部が増えている訳だろうが……。出し惜しみして失敗したらむしろ難易度が上がる奴なのだ。出し惜しみはしないに限る。ならやるべきは……。そして確認を済まして現地に向かう。恐らくヒュドラの個体は有る街を壊滅させてからの移動中だった。それは良いのだが、問題は手札が通じるかどうかだ。俺は原典のヘカトンケイルに似せた大量の腕でヒュドラの首を掴む。毒を跳ばされるが、それもあくまでも液体なのだから制御して身体から逸らす。そしたら尻尾で近場の岩と砂利を弾いて来るが水を大量に間に挟み。受け流す。そちらに意識が向いている隙に拘束からヒュドラが逃げようとしたので腕を追加して何とかする。……さて、先ずヒュドラの装甲を抜けるか?だが、水はダイアモンドの加工にも使われるのだ。故に装甲は流石にダイアモンド程じゃ無いので、それは問題無い。次は焼き切れるかだが、それも問題無い。先の巨人に対して電力不足に成ったのはそれに対して出力する水が少なかったからだ。なら、要はそれが多ければ良い。なら、ウォータージェットカッターに電気を足して、ウォータージェットスパークカッターをヒュドラの首を斬るのに使おうか。端的に言えば雷で焼きながら水で斬るのだ。多少苦戦する事は苦戦したし毒も大量に受けたが解毒して何とか出た。……いや、まあ、アレだ。手法以外特筆すべき事が無いのだからしょうがないね。

 さて此処での問題は死骸から採れる毒をどうするか、だ。ヘラクレスはヒュドラ以降の倒す相手にヒュドラの毒を使うことは良く有り戦果も相応に上げている物では有る、が、解毒方法無しで受けるとヘラクレスですら死ぬ奴だ。毒を如何にか出来る能力持ち以外の奴が味方にそれなりに居る状態で大量に保管していて、奪われて使われました。……とか成ったら酷い事に成る。いや、毒を除去出来る手段は有るけども、……正直に言おう。此処でヒュドラの毒を大量に確保出来たら恐らく正確な対処方法を能力で持たない中堅以下の神格持ちを倒す根拠が全部これで良いレベルのそれでは有る。だがそれ故に逆に敵に使われたらシャレに成らなさ過ぎる。毒の構成を調査するだけして後は廃棄し、他の奴でも解毒出来る様にしておこう。廃棄するなら調べても意味無いだろって?……最悪ヒュドラの親戚全般とかと戦う時にヒュドラの毒を持って来るのは有り得るのだし、神話再現をどうこうやっている時にヒュドラを倒した事がヘラクレスの逸話をなぞる形に成るならば、対策しておかないとヒュドラの毒を残して置くのはシャレに成らないし。まあ、いわゆる致死性の呪い装備に成り得る物だ。縁起では無さすぎる。創作なんかでは呪いが良い効果に成る能力なんて奴も居るが、そもそも対策無しの味方が受ける奴が出たらヤバイと言う話なのだから個人が対策出来ますと言うだけなら此方も出来ているよ、既に。この世界がご都合主義なら起きなくて良い事件が多すぎるのだし、警戒しておくことに越したことはないのだし。

「水霧君、少し良いかな?」

「……いや、いきなり誰ですか?」

「私はウェスタ。竃の神で家庭の守護神さ。私の神体は燃え続ける火だけどね」

 ……つまり、神格で上回られなければ消えない炎が体の神格、か。

「そのウェスタさんがどう言うご用件で?」

「私達は君がもし暴虐を尽くすような存在に成っても只の奴隷に成る気はないと言う事の意思表示、かな。力は人を変える物だから。望もうと望むまいとね」

「……俺は世界創造の力を得はしました。でも、それはあくまでも借り物です。暴虐を振るうような存在に成れば俺は力を失うだけですよ」

「本当にそうなのかい?」

「少なくとも現時点ではそうです」

「そうでなくなる気は有るよね?」

「……そりゃあ現状だと俺個人の好き勝手に世界創造なんて出来ませんからね。いずれは独力でやりたくは有りますけど」

「この世界をその影響下に置くなら全面戦争を覚悟したまえと言う事だよ。少なくとも君以外の誰かに今君を強くしている理屈を適用すれば、それなりの対抗馬を私達は用意出来るから」

「……肝に銘じて置きます」

「宜しい。では、用事は以上だ。私は此処で失礼するよ」

「……今後とも宜しくお願いします」

 そしてウェスタさんが去って、独り言ちる。

「要約すればそうすれば手前に勝てるぞ。とか言われたけども、これ条件次第では俺が原則弄るだけでその勝ち筋は終わる話なのでは?いや、今回の場合ならそれをもしやるならばヴィシュヌ様の創ったシステムを壊す事に成るし喧嘩売ることに成るからやらないけど……つまり、逆に言えば自分がシステムを創る側に成ればそれが自由に行使出来る、か。創造主と戦うってそれを真正面からねじ伏せろと言う事だろ?該当システムからの脱却は最低限必要条件過ぎるな。そうしないと只のバグ修正で終わる。まあ、だからこそ、その外部の原則を得る為に、今の俺の立場に成る前提の補助の話が俺に回って来たのだろうけど」

 そして撤収する事にして、其処でシュライク・バースディに会うと。

「なあ、水霧、今の立場はどうだろうか?」

「……力は強く成った。でも同時に不自由にも成ったな。それは責任と言う奴なのかもしれないけれど」

「いや、現状はそうだとしても、更に上への道が開かれて良いじゃ無いか」

「色々と自由にやりたければ今のこの立場は返上するしか無いがね」

「何でそう言う手段が有るのに俺達が来る迄原則の化身が倒されて無かったか?について気に成らないか?神格統合を使えば彼らはそれなりの強さの奴は用意出来たはずだ」

「中心核の奴が原則の化身の原則から外れた奴で有る必要が有ったから、じゃ無いのか?」

「それが正しいならヴィシュヌ様もヤバイ事に成っていたはずだ。強さが対処に考慮されないならさ」

「じゃあ何だよ?」

「世界創造をやれる奴である必要が有るのと、ある程度以上の世界創造を行えるに足る奴全員が基本的にこの世界の奴に協力的では無かったからだと思うぞ。後、多分神格統合にも個体差でのやれる限界が有るのだろう」

「……いや、おい待て。シュライク・バースディ。それを何故先に言わなかった⁉創造主の資格を持つ奴と敵対フラグが立っているって事か⁉」

「ある程度以上の世界創造を行える奴等全員がそうやらない事での得られる自分の利益からこの世界を助けないなら。恐らく正確には神格統合のシステム関連でだと思うが」

「……世界を原則の化身の好き勝手にさせている事で得られる利益?ゲスイ事なら思い付くが、それなら全員がそれに食いつくのは可笑しいだろ?……ある程度以上の世界創造を行える奴が必ずと言えるレベルで食いつく物が有るはずだ。……あ、要は育成所だ。神格の育成所だ。この世界は神格を得るための登龍門みたいな世界だったのか?」

「……水霧、いや、それが正しいなら、様々な神格の価値の根柢の世界か?此処は」

「此処のシステムから脱却してない奴にしてみればそうだろう。ヴィシュヌ様が言って居たが、此処のシステムで得られる神格を有り難がる内は対処出来る=神格剝奪出来るのでは?」

「何か?つまりは水霧がこの世界を壊そうものなら大量な創造主クラスの奴と戦う流れに成っていたのか?」

「仮に俺がヴィシュヌ様のシステム側を壊したらそうだったのじゃ無いか?少なくともヴィシュヌ様とは敵対検案だろ?」

「水霧……その理屈だと宇宙の化身はそれを知って居て、わざとこの世界に俺らを送り込んだ説が成立しそうでアレなのだが」

「……いや、宇宙の化身からしてみれば自分に有るセーフティーを外せれば良くて、それを外すの自体は誰でも良かっただろうからな」

「……要するに俺らは宇宙の化身に体よく利用された、と。……まあ、流石にそれを外したら即座に敵対とかして来ない辺り、それをしたらヴィシュヌ様とも敵対フラグ立ちかねないし、ヴィシュヌ様がガチでヤバイのだろうが」

「シュライク・バースディ……いや、なんだよ、これ。強い奴が背後に居ると言う状況なせいで展開が阻害され過ぎじゃ無いか?最初にこの世界に来た時の原則の化身に対してもそうだったし……」

「ヴィシュヌ様がヤバイの事は今の話が正しいなら当然では無いか?創造主クラス含めて、色々な奴の神格の根本を握っている訳だろ?」

「ハハハ……話を戻そう。全部の奴にとは言わないが、創造主クラスの幾つかの奴に俺は喧嘩売っちゃった状況な可能性が高い訳だろ?少なくともこの世界に居る間は大丈夫でも、自立して世界創造したら、その後其処の創造主が創った奴と全面抗争に成らないか?」

「水霧……初手から困難が来そうなフラグ建てるのじゃ無いよ」

「だからって原則の化身をそのままにして置く訳にも行かなかったし……」

「まあ、如何にか成るだろう。今来ないと言う事は少なくともヴィシュヌ様よりかは弱いのだし」

「まあ、それもそうか」

『……汝ら、邪推が過ぎるぞ』

「ヴィシュヌ様?そうですよね。流石に考え過ぎですよね」

『そもそも汝らは既に過去に他の世界の奴に喧嘩は売り済みで有ろう?』

「……いや、それは結構前の話ですけど、確かにそうですね。今回の事で、大物が来る保証までされた訳ですが」

『我々のシステムを壊していない以上そうは成らないで有ろう。それにそもそもウェスタを水霧に会わせたのは此方の仕込みである。故にその心配は無いで有ろうよ』

「……いや、つまりは色々な意味の有る検証テストをされた訳ですか。ならわざとか、ウェスタさんの言動は。良かったよ、対処をやらなくて」

『……正直、創造主クラスの奴は自分の都合の良い世界を勝手に創って、そしてその力を回収されてもその世界が残る様にして其処に籠る奴もそれなりに居るのだが、そうする気は無い様で良かろう』

「……正直な話その手が有ったか過ぎますが、そうした場合後からの世界のメンテもアプデも出来ませんよね?」

『少数の目的に特化しそれにだけ世界の機構を全振りすれば、そこそこな結果は得られるのでな』

「……いや、メンテもアプデも出来ないとか、多分一度壊されたら終わりなので、継続して使うには不安残るじゃ無いですか。此処迄来てそれで妥協したくありません」

『そうか、なら良い。その手法をした造物主を処理して欲しいのだが、良いかな?』

「神格統合を廃却して自分の利益優先にした奴を倒せ、と?それは警告ですか?俺が自立したらそう言う奴を差し向けるという意味での。ヴィシュヌ様がやれば良いじゃ無いですか」

『……そいつ、つまりヤルダバオート。言い換えればグノーシス主義に於ける偽の神を俺が倒すと神格を与えるシステムの存在価値がアレに成る。それこそ殺すための力の譲渡みたいな物に成りかねないからな』

「……飽くまでも倒すのは俺の独断と言う事にしたい訳ですか。運営側権限で使用者側を対処で殺すために使うとシステム運営に差し障りが出るから」

『まあ、そう言う事である。やってくれるか?』

「独断でやる事にするならその裁量を俺に任せてもらえませんか?」

『最低限こちらのシステムの産物を壊すなり回収なりさせれば構わない』

「良いのですね?」

『後進育成の名目でやって居るのだから、それで水霧が強く成ろうと問題無い』

「解りました。では対処に行きます」

「おい、水霧、そんな簡単に引き受けて良いのか?」

「シュライク・バースディ。上手く行けば利益は凄まじいから問題無いよ」

『大体予想は付くが、だが、それで水霧が強く成る為の物であれば許可する』

「ありがとうございます」

 偽の神、造物主そして今のタイミングでわざわざ俺に差し向ける検案。つまり、件の奴はシステムから脱却して尚ある程度の力を持つ可能性が有る。ならこの先の自己強化上での事前参考データとしてはかなり有用な物が得られるはず。何よりも殺害が絶対条件で無い。なら味方に引き入れられるかもしれない。これは美味しい検案としか言いようがない。


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