第17話未定

 水霧とシュライクが色々な対処に追われている頃、私は、来客対応をして居た。

「ケールハイトさん。貴女は様々な神の力を行使しておりますが、……どれだけの神格を統合したのですか?」

「……ヘカテー様、私はそのような事はしておりません。沢山の神格を扱える力を得たと言うだけです」

「……まあ、それは凄いですね。ですが、モイライの力を振るうのを見たので期待して居たのですが……私が思って居たのとは違う様ですね」

「モイライの神格がそれほど重要ですか?」

「ええ、司るのは時間で、オリュンポス十二神を除き、その戦いに参戦した名だたる神格の中では私とモイライだけは神の力では殺せないはずのギガスに対して真正面から殴り勝った経歴が有りますから……期待して居たのですよ。そんなモイライを下した奴が居るのでは?……と、なったので」

「ご期待に沿えず申し訳ございません」

「それは良いから、貴女、私の物に成りなさい」

「どういうことですか?」

「貴女と私で神格統合をしましょうと言う事よ。宜しくて?」

「……良いはず無いですよ。私の元の神格自体は天使の物です。統合したら神格を間違いなく食われるだけで終わります」

「謙遜が過ぎますわね。では、勝負をしましょう。もしも私の一撃に耐えられたら、私の力を一部上げましょう。そうでなければ貴女は私が貰う。どう?素敵でしょう?」

「それでもし勝ててもその貰った力に食い殺されては台無しです。お断りさせて頂きます」

「あら、良いのかしら?水霧浄土とシュライク・バースディに置いて行かれるわよ?」

「……どういう事でしょうか?」

「彼方は彼方で他の神から打診受けているのよ。なのに、貴女だけ強化イベントを断るのかしら」

「……なら確約してください。私が勝てば貴女の力を一部貰う。それ以上でも以下でも無いと。貴女の力を無策で体内に入れるのには抵抗が有りますので」

「……ええ、良いわ」

「では効果の有る契約書を書きましょう」

「貴女胆力が有るわね。そんなの良いから貴女を寄越せ……とかしても良いのよ?私は」

「そう言う事をする気が有るなら神格統合する事に拘る必要は無いので、神格統合し無いといけない都合が有る様に見受けられますから」

「……まあ、そうね」

「では準備しますので少々お待ちを」

 そして私は能力で契約書を用意する。……まあ、私の契約書が効かないなら普通にやっても多分負ける。契約書が効くかを見て、契約が効くようなら勝負しましょう。効かない様なら何とかして勝負を降り無いと……。其処にヘカテーさんが来ると、

「ケールハイトさん。気が変わったわ。今の契約書を用意する理屈が私には足りない物だから、ね……私は処女神なのに母神でも有るのよ。処女のまま母神としても成立出来る力なら力を渡しても良いわ。それでその力を使いなさい。そしたら私はそれで強化されるから。いいわね?」

「……処女神なのに母神、ですか?……大変ですね……処女のままで子を産む様な能力が無いと自己破綻が起きそうですから」

「そうなのよね。だから、貴方の能力は私に都合が良い。……まあ、欲しい所だけど、万が一でもその恩恵を受けられなく成りたくないから、私が力を渡した上で貴女はその力を振るいなさい。それだけで私は大満足よ」

「……解りました。それでは契約書を……どうぞ」

 私の能力は文脈から予想が付きそうだけど、敢えて伏せさせて貰うわね。……しかしアレね。神格統合をする事で他人を取り込み、自分じゃ成立させられない事を成立させ、それを自分がやったとする……それが可能で有りならば、有り得ないほど長く生きた故に神格を得た系の神格個体なんて比較的簡単に量産化が可能な気がする。

 それはさておき、

「では場所を移動しましょう。此処でやるのは周りの物が壊れますので」

「良いわ。精々貴女に有利な場所に案内なさい」

「……」

 そして設備が揃う広場に移動し、一撃を受ける事にする。

「では行くわ、そして私の物に成りなさい」

「……力をくれるのは嬉しいですが、それとこれとは話が別です」

 私はヘカテー様の攻撃が発動するのを見て、対応に使う物を決めた。……此方が対処に色々な神格を使える事が前提で、明らかに過剰火力を持ち出してきている。辺りは陥没し、歪み潰れて、でも私はそう言う物をガン無視してその場に在り続けた。

「……驚いたわね。碌に効いていないとは」

「ありがとうございます。では約束通りに」

 使用神格はグレムリン。能力は己に干渉してくるダメージ計算式の棄却。……まあ、何とか成ったわね。

「で、どこに渡せば良いかしら?」

「左腕にお願いします」

「それで良いのかしら?……対策が腕を切ればそれで良い事に成るわよ」

「別にヘカテー様を無条件で信頼して居る訳では無いので、最悪それを私がやるためです」

「そう言う事……つまり、私が何か変な事をしたら私の力なんて切り捨てると言う宣言ね」

「そうなりますね。ではお願いします」

「……まあ、解ったわ。そうしましょうか」

そして私の左手に円で囲われた、燃えるナイフをモチーフにした紋章が刻まれた。

「……力を渡す際に紋章を刻むなら先に言ってくださいよ」

「そのマークは私が一時期代表を務めていたワイルドハントのマークよ。……まあ、正確には私の象徴をいくつか混ぜただけの紋章だけど」

「……つまり、ワイルドハントと言う団体における招待状、又は顔パス代わりの物という事で良いのですか?」

「ええ、そうなるわね。それには私の力が含まれているから似たマークを見せたら顔パスとは成らないけど」

「……それで悪影響が出たら本当に切り捨てますからね?」

「それで構わないわ」

「……ありがとうございます。それでどんな力がこれで使えるのですか?」

「貴女に今何かの力を渡しても只の余剰要素よね?違う?」

「……まあ、色々な神格個体の力を行使出来る……と言う触れ込みですからね。では、どんな物をくれたのですか?」

「一言で言えば、貴女の能力使用に対する補助ね。貴女の力は貴女への負担が大きそうだし」

「……それはありがたいですが……重力系では無く?それなのですか?」

「要は万能系能力持ちにはそれが余程良い物でも無い限り、新しく別枠の能力を渡すよりも、万能系能力の運用上の自由度を上げる奴の方が有り難いのでは無いかしら?違う?」

「……それはそうですが……」

「不満と言うならまだ渡しても良いけど、代わりに私の力を宿す場所を増やすわよ?」

「……ならしなくて良いです」

「そう、残念ね」

「なら能力を行使しなさい。それで私は力が強化される」

「……それについてなのですが、その強化はヘカテー様側だけなのでしょうか?私側にも及ぶのではないでしょうか?」

「……まあ、そうね。だから、それなりに強い力を貴女に先にぶつけた。貴女が契約書で此方を試したのと同じ様にね。この理屈をやるならば相互が相互の外部強化要因に成る。だから、神格統合をするなら普通は取り込むべきなのだけど、それは断られちゃったもの」

「ありがとうございます。私に力を渡して無い様に吐いた言葉で無いなら全面感謝も出来るのですが」

「……貴女には能力を渡しても貴女の基本的な立ち回り的には意味が無い上、根本的なリソース量は個々側の物は変わらないもの。それこそ統合相手のリソースに手を出さないなら、だけれどね」

「……つまり、ヘカテー様にとって私は緊急外部MPタンク扱い、ですか?」

「こんな好条件をそんな事だけで出す訳が無いでしょう?目的は神格破綻の回避だと言ったわよね?」

「……私の力をヘカテー様が使える訳じゃ無いですよね?」

「それは貴女に許可を取らない限りは無理よ。貴女側のリソースを使う上、貴女を此方が操る様な事をしたらこの話は無かった事に成るのだし」

「これは簡易的な神格統合をやったと言う事で良いのですよね?余り実感が無いですが」

「それは今何か力を使ってみたら解るわよ」

「少し試してきますね。少々お待ちを」

「心配しないでも貴女を殺す事や契約を解除させられるような事はしないわよ……まあ、そうでないと勿体無いからだけど」

「……」

 そして場所を移動し試す。功績を得た奴と神格統合を行う事で、功績を共有する……その理屈が正しいなら、神格統合をした上で、今自分が得たい功績を持つ奴を殺そう物なら、只の見栄を張って居るのと変わらなくなるのでしょうか?……まあ、強い奴が弱い奴に力を貸す理屈としてはありがたいけど、……そう言えばこんなのアーバーンさん相手にも有りましたね。力を私に渡す事が他の理由で好都合故の行動と言う奴。……まあ、今は問題なさそうだし、今は良い事にしましょう。

 其処に水霧がと何人かが来た。……気まずいですね。ハーレム要員でも増やしたのでしょうか?……まあ、そしたら私はアレな事に成るし話を聞くことにしましょう。

「水霧、そしてアーバーンさん。他の方はどういう人達でしょうか?」

「一言で言えば、協力関係の人達、だな」

「……私の方にもそう言う人が来ましたが……私達が協力関係を結ばないといけない様な相手でも居るのでしょうか?」

「……宇宙の化身はこの世界の奴には関係無いはずだし、この世界の創造主とも伝手は出来たから、世界の創造主が敵な展開は無いとは思うが、何かヤバイ奴が居るのかな」

「その何か、とは?」

「……ブラフマー。より正確に言えば、ブラフマン。特徴を持たない普遍的な原則の化身。異世界の法則をぶつける事が戦う上で大前提の奴だ」

「……基本的な前提となる原則の化身、ですか。……それで俺達にこんなに簡単に強化イベントが舞い込む訳ですか。それで異世界の法則を己の物にしてブラフマンに対抗する為に」

「まあそう言う事だ。だから、君らには強くなって貰わないと困る……まあ、俺個人としては余り関係無いが」

「そりゃあヴィシュヌ様の分体なら不都合が出たらヴィシュヌ様に世界その物を作り替えて貰えば済むのでしょうけどね……他の大多数にはそうは行かないでしょう。前提となる原則が化身を得ている。つまり、そいつが構成されている前提の物にこの世界の奴は従って居る訳ですから、それこそ自分の原則側を何らかの理由で変えられでもしない限り、幾ら強くてもブラフマンに従って居る事に成る。故の実効支配の最中と言う事なはずでしょう?」

「話が早くて助かるが、要は君らと協力するなり、神格統合をするなりすれば、原則を己に我々は追加出来る。自分の原則を変えられる。それが我々からすればブラフマンの実効支配からの脱却に成る訳だ」

「対価が軽いのって未開示な報酬が大きかったから、と言う事ですか……まあ、やっぱり予想通りでしたね……流石に対価が軽すぎましたし。ヘカテー様……どうせ聞いているのですよね?」

「ネタバレは良くないでしょう?ヴィシュヌの分体如きが……」

「だが必要な情報ですよ。ヘカテー様。異世界から来た彼等彼女等はこの世界の奴とは協力関係は結びやすいのですから……まあ、それをしたら漏れなくブラフマンに喧嘩を売ることに成るのですが」

「ちょ、おい待てよ、やばい奴に此方が喧嘩を既に売っている事に成っているのかよ⁉」

「ええ、相違ありません。もっとも今回の場合は貴方方が此処に来た理由の真偽が解らぬ内は貴方方に手を出すのは宇宙の化身と事を構える前提で考える必要が有りますから、ブラフマンは手を出して来ないだけです」

「……現状はつまり、敵の傘に守られているだけかよ……」


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