第9話未定

 話を纏めて居る所で、体内からいきなり声がする。

『前にラーヴァナのレプリカを倒し、今度はヒラニヤカカシプのレプリカを倒すと画策する。……君は別の世界における私にでも成るつもりかな?』

『……いきなり誰だ?』

『私はヴィシュヌだ。そこのアプラサスの言う大神様と言う方が早いが』

『……いや、どちらも必要だからですよ』

『武勲で存在を定義するなら、神の武勲と似たような事をしまくれば疑似的な神格化をする事が出来る。まあ特定の神の如き者的な意味でだが、武勲だけで定義するなら疑似的なそれだと言っても大した相違は有るまい』

『……神話再現が疑似的な神格を得る手段に成る、と言う事でしょうか?』

『定義上は、では有るがね』

『……只のロールプレイで神格を得られるなら苦労しませんよ』

『あくまでも“如き者”なのだから本当に神格を持って居る必要は無いさ。まあ、闇雲に神に成りたい。成ったと言うよりかはまだまともな根拠が有る物に成るが』

『つまり特定の神と同じ事が私は出来た。故に私はその神である……と、言う事ですか』

『ああ、そうだ。その意味で君は良い所に行けそうなので、声を掛けさせて貰った』

『……身に余る光栄です。ですが貴方様はヒラニヤカシプを倒すつもりは無いのですね』

『もう倒したことある相手なのでな』

『……レプリカ、と言う事は本人では無いからですか……』

『まあ、君らが倒されたら倒しには行くさ』

『……まさか今回の奴はこの話をする為に意図的に用意した物では無いですよね?』

『何故前に倒した敵のレプリカを造り、好き勝手させなければならないのか』

『……後進の育成、とかでしょうか?』

『それにしたって君にお鉢が回る理由は無いよ。この世界の奴にならともかく、君らは外界の住人なのだし』

『……』

 本当はこのアプラサス側の為に用意した奴をアプラサスが此方に敗れたから此方に回したのじゃ無かろうな?

『じゃあ話は一先ず此処迄とする。機会が有ればまた来るとしよう』

『……それでは、また』

 ……。面倒な事に成って来たな。

「大神様からお話が有ったのですか?」

「……ああ、そうだ。だがガンメタが刺さるだろう相手にそこまで苦戦したのか?」

「何かのガンメタをするのは簡単です。それで他に勝てなくても良いのなら、ですが」

「……違いない。他への勝率度外視で理屈抜きが有りなら何なら該当能力に勝てると言う能力でも問題は無い訳だし、何にも負けない最強と言う定義自体が只の議論的には存在出来ない事に成る。自分に不都合な能力は度外視して最強とか言われても、要は自分が勝てない相手は議論上全排除した上で最強と言って居るだけだから、散々ハンデを貰った上での最強な訳だし」

「とは言え前提上有り得ない物が有るのも確かよね?」

「競技ならそりゃそうだろう。それが有るから競技として成り立つのだし」

「話を戻しても良い?」

「ああ、すまん。そうしよう。ええと。

一、ヒラニヤカシプは有るエリアを占領して居る。

二、ヒラニヤカシプは事実上の殺害不能化能力を持つが、此方にはメタ手段が有る。

三、水を大量に使い、それを海や湖等と認識させる為に都合の良い地形に件のヒラニヤカシプが公務上三日後に行くので、そこを狙いたい。

……なんかなあ、不自然だよな、これ。此方の動きを知って居るならわざわざ行くところでは無い気がする。だから罠臭いな」

「だとしても好都合なのは変わらないよ」

「念の為、ガンメタされていても勝てる様にしておこう。相手からすれば、海や湖等と換算されるレベル以上の大量な水の塊を成立させなければ良い。水の除去手段のメタを用意しておこう……確認だが、殺害不能化能力って言ってもダメージを与えるのは出来るよな?」

「本人が吹けば飛ぶような雑魚なら、大抵の攻撃は殺害に足ります。故に大抵の攻撃は無効化されます」

「能力が無効化されたら詰むような能力構成で良く神話の所業を真似しようと思ったな」

「それが死因たり得るなら無効化されますから」

「……使い手が雑魚の方が、都合が良い……と。死因に成らない程度の超雑魚威力攻撃を連打しまくって、動けなくさせるか?そいつ」

「それが出来るなら苦労はしません。そもそも大抵の物理は意味が有りませんし」

「感電させるとか炎で焼くとかは?」

「無効化対象の放つ物なら全部無効化に該当します。そうでも無ければもう此方で倒しています」

「……だから適用外の場所に無理矢理相手を入れてしまおうと言う訳か。周りに水を大量に用意しただけなら、それを用意した側は直接の死因には成らないから。殺したのは水その物側って言う……あ、すまん事情上それだと多分無理だ」

「水のリソースを得ている上で水を相手に宛がってもそれが貴方扱いされる、ということですか?恐らく問題ありません。能力適用外の場所での話ですから」

「……今回の話が問題に成るとしたらそこが争点か。まあ問題に成るとしたら最悪水槽の中身だけ制御を手放して、その中の範囲の場所に入れてやればいいか……」

 そして作戦決行日、件の場所に赴き、出来るだけ手薄になる瞬間を待つ。そしてヒラニヤカシプが其処から去るために少数の護衛以外の奴が周りに居ないタイミングが来たので強襲する。まあ直接の攻撃は無効化される関係上、空間上の水を大量に其処に集めて囲っただけなのだが、能力全依存ならそれでも厳しいはず……と思えばそいつらを囲った水が爆散する。……成程。要は此方が用意した策は相手からすれば、要は水槽の外枠の物にさえ触れられれば能力の補正で無効化出来る物でしか無いのだ。間接的に殺しに行っているのに、直接触れて死因扱いに無理やりして、無効化した。その結果が水の爆散だ。……ふむ。今度はさらに大きな水の檻を形成しながら考える。要は檻を造り閉じ込め、溺死させるには、溺死するまでに外枠の檻に触れられない程度の大きさで無いと意味は無い。だが、何ならそれを即座にやらなければ相手からすれば離脱すれば良い。死因を無効化する為に、死因を形成する物を破壊する(破壊出来る物に制限有り)。そう言う能力な訳だ。まあ、アレだ。此方は即座にまたヒラニヤカシプを檻に閉じ込めてやりつつ、その水の檻にヒラニヤカシプが触れられない様に檻をひたすら大きくし続け、溺死したのを確認し、首を刎ね心臓を壊し、四肢を切断し、更に海の中に重り付けて監視付きで沈めた。まあこんな物だろう。……はあ、一時はどうなるかと思ったが何とか成ったか。

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