第8話未定

 そして十日が経った。

「よし。まあ準備はこれくらいで良いか。アーバーンそろそろ俺らも本格的に討伐しに行こうか」

「まだ同系統能力持ちの対策が万全だとは言えない気がするけど……」

「此処が仮に宇宙の化身による流刑地なら、特定の目的でなら協力出来る奴か、敵側かの二分化出来る奴しかいないからな。……まあ言語辺りが不安だが」

「状況的には流刑地主、被流刑者、原住民、化物、が入り乱れて居るのに二分化出来ると言うのはどうかしら?」

「……いや、まあ、そりゃあそうだけどさ……ぶっちゃければ、能力を強くしたいなら同系統能力持ちとの戦いは避けられない。リソース独占範囲を広げたいならさ……」

「……いや、扱う能力の属性では無く貴方と純粋に同系統の能力持ちってあまり居ないと思うけど」

「……まあ、ぶっちゃければ前提部分でしか無いからな。俺の能力って……だから、基礎を極めるとそれから派生する全ての強化に繋がる的な理屈的には悪くないよ。この能力も」

「……正直な話、与えた当時は此処まで使いこなすとは思って無かったわよ」

「四六時中長期間使い続ければそれなりにも成るさ」

「……此処まで使いこなされると下手に強力な能力与えるとどうなるか気に成るけど……いや、練習時間の極振りが強みの理由ならそれは強みが減るだけよね」

「この状況は楽をして勝っていた系統の相手に楽をして勝てなそうだから鍛錬を頼んだのだけどな」

「それもそうでしょうね。じゃあ行きましょうか」

 そしてエネルギーを大量に所持している化物の討伐を行って行く。……そして暫くした頃、遂に杞憂していた検案が訪れた。俺の身体の制御に割り込みが発生し始めたのだ。まあ水を自由に扱える能力、なんてその物自体はベタもベタだし、来るのはむしろ遅いくらいでは有る。だが、根本的な意味として、此方は全身でそれの対処に当たるのに、相手は制御力一つで此方を操ろうとして来る。根本的な話として此方がそれに勝てずにまともな勝負に成るなら、此方が雑魚過ぎる事に成るので、まあ何とかした。……いや、したのだが俺の中に何かが流れ込んできた。……あかん。これは不味い。フラワシとかの特定物質に宿る系統の奴だ。それからはまともな制御力のぶつかり合いに成った……所で、アーバーンがそいつをねじ伏せた。其処でそいつに話を聞くことにする……どうやら水霊のアプラサスだった様だ。一応インド神話の主神の一人のビィシュヌの嫁のラクシュミーなんかも属する奴な様で……個人的には相手が少しとは言えまともに此方に対抗出来る感じで良かった。そうでないと美女を無理矢理組み伏せる感じの絵図に成っていただろうからな、これ。

『どうするの?これ。万が一敵対のまま逃げられたらアプラサス繋がりでラクシュミーにでも助けを求められたらビィシュヌ辺りと戦うパターンも有り得るわよ?』

『とは言えこいつをこのまま帰させると言うのも有り得ん。……はぁ。勝ちはしてもその上が同時に提示される奴ばかりとか勘弁してくれ。……本来なら此処はエロ展開でも良い所だろ?……なのにやれ無いじゃ無いか。いや、最初からやる気無いけど』

『……いや、今、そもそも水霧は逆に少しそれされた様な物だけど……』

『……なら抵抗しなければそうなっていたと?うわ。退けたのにそれをやったら格好付かないにも程が……』

「あの、私を殺さないのですか?」

「……いや、まるで殺してほしいみたいに言うね?君?……いや、確かに殺しても問題無い事をされた気もするけどさ……仮に君の目的が自分のリソースの占有率を上げたいからと言う事なら、此方も強く言える話じゃ無いからね」

「私なんてどうなっても良いのに」

「……露骨過ぎて逆に怪し過ぎる発言をありがとう。話を聞こうか?」

「……此処の場所の問題は解るよね?でも大神様には此処に介入する大義名分が無いから私がそれに成ろうって、思って」

「つまりアレか?此処で仮に君を殺したら此処に君の言う大神様が介入する口実に成るので、君は俺にどうにかされに来たと言うのか?」

「大枠としてはそうだよ」

「本当に?」

「そうじゃないと言わないよ」

「……それは無理が有るのじゃ無いか?いや、有ってくれと言う方が正しいが」

 やり過ぎたら大神とか呼ばれる奴が介入する口実に成るって事だしな。

「なんでそう思うの?」

「大義名分が無いと大神様とやらが来られないなら要は直接の被害なんて無いだろ?依頼されたと言うならそれが大義名分に成るはずだし。要するに君は大神様が被害を受ける形にして、それで大神様が介入する口実にして、大神様に倒して欲しい奴が居る……と、言う事……だとか無いか?対価と話次第では此方が倒しても良いぞ」

『何言っているのよ。この話の倒すべき相手は、大神様、恐らくビィシュヌが出張って欲しいと思われる様な相手よ?それこそ神話的な理屈ならビィシュヌが倒した事に成っている奴と戦う可能性だって有るじゃない』

『……だからって此処でそれを持ち出さないでそのまま帰したり、殺したりしたらそれはそれでビィシュヌが介入して来て詰むだろうが。戦う相手は此処で引き受けた方が難易度は低いはず』

「対価、ですか。ラクシュミー様とのコネを作る機会を渡すと言うのはどうでしょうか」

「乗った。上手く行けば大神様とやらともコネ作り出来そうだしな」

「……ではお話しします」

 そしてアプラサスは追加で話し始めた。それを要約すれば、ヒラニヤカプシと言う奴が有るエリアを占領したのだが、そいつは此方がウィキで調べると能力は“神にもアスラにも人にも獣にも昼にも夜にも家の中でも外でも、地上でも空中でも、しかもどんな武器でも殺されない体を持つ”と言う物で、無敵同然の能力を持つ奴らしい。……だが、その能力の範囲の中には水の中が無い。つまり例えば溺死をさせる事は可能な訳だ。だから地上判定されない規模の大きい大量な水を用意する力が欲しくて此方の水の関連の占領リソースが欲しかったと言う事らしい。……ふむ。確かにそれなら此方にも十分勝ち目は有るか。……思っていたよりも簡単そうで何より。……いや、まあ、此方のリソースを奪ってそれを元手に倒したい奴が居ると言うならそれも自然では有るのだが。ガンメタ刺さる相手だ、これ。



 ……水霧……鈍感にも程が無い?条件付きとはいえ、私は貴方にどうされようが構わないとか言われているのに。先の奴で仮に条件を釣り上げさせたら対価でこの身を捧げますとか言われてもおかしくない場面をそれより簡単な対価でスルーしているし……いや、浮気し無いのは良い事だけど、此処迄来るとアプラサスの彼女が不憫で成らないわね……。まあ建前上そうしたら面倒な事には成りそうだし、その選択が悪い訳じゃ無いけど。……海中や、水中は適用外の事実上の殺害不能化能力……。大抵の奴には殺せない奴だけど、特定の力を特定規模以上で使えるなら倒せる。……地上扱いされないレベルの大量の水を一度に扱う奴が他に居なかったと言う事?いや、ビィシュヌは神話上倒しているから例外として、だけど……インド神話の水系を比較対象に出すなら今回の奴を倒せればインド神話としても現状でもかなり上位層だと言えそうな相手と言う事ね。但し、これは只の能力の相性ゲー的な意味での物でしか無いから、その他の系統の奴にも確実に勝てるかと言われると、また話は別だけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る