ケンジサイド1


(それにしてもタケシのやつ、ヒーローの話になると止まらないな。こっちまで飲み過ぎてしまった。)


久しぶりに友人であるタケシと飲んだ帰り道、ケンジはバス停でスマホを取り出した。


「すみません、このバスは夕陽三丁目まで行きますか?」


すらりとしたスタイルの若いお姉さんが突然訪ねてきた。


「ええ。ちょうど僕もそこへ行くところです」


「ありがとうございます」


少し期待してしまったが、やりとりはここで終わった。


ケンジとお姉さんと、後から来た年配のサラリーマンがバスを待つ。



ブロロロロロ…プシューーーーーー



バスがやってきて扉が開いた。



ピピッ



ICカードで支払いを済ませると、運転手が声を上げた。


「ん、勝手に鳴ったぞ??故障か?」


(いや、今のは俺がカードかざしてたでしょ。何言ってるんだ)


振り返ると、先程のお姉さんの姿はなく、その後ろにいたサラリーマンが驚いている。


「勝手に鳴りましたね。幽霊とかだったら怖いなあ。あははは」


「失礼な!乗ってますよ!」


そう言いながらも、お姉さんの姿を探そうとした瞬間、サラリーマンが構わずバスへ乗ってきた。


「え?待って、待ってくださいちょっと、、」


全く止まらない。そして、ぶつかりそうになる瞬間、


フッ…


ケンジは目の前が真っ暗になった。


右手に握り締めたスマホは、強く光っていた。




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