『燃え盛る炎』見習いヒーロー



「な!こいつはまだ1lv.ですわ!様子を見る間もなく負けてしまうに決まってます。それに一緒に組むペアだって…」


俺は、『燃え盛る炎』のオーナーであるリンドヴルマから天下一英雄大会への出場を告げられていた。



「メディ、落ち着きなさい。ものは試しと言うでしょう。それに、タケシとペアを組むのはあなたよ。ファイアマンには別の仕事を与えたわ」


「なっ!なんでこんなやつと私が!!!今年こそあのアホと優勝するつもりだったのに!!」


「いいですか、タケシさん、天下一英雄大会というのは、年に一回ギルド連盟が開催する興行です。2人ペアで出場し、1番強いヒーローペアを決める大会と言ったら話が早いでしょうか」


「はあ。それに、俺が出場するんですね」


「はい。大会での活躍ぶりを見て、ギルドへの加入を判断しようと思っているのです」


なんだか、大変なことになった。俺はまだ自分の能力がはっきり分かっていない。

それに、あのメディと組めるのは嬉しいが、上手くやっていけるビジョンが見えないな。


「あの、大変ありがたい提案ですが、俺はまだ能力がうまく使えなくて…」


リンドヴルマは微笑みながらファイアマンへと目を向けた。


「ここからは私が。タケシ、天下一英雄大会まで、『燃え盛る炎』の、見習いヒーローにならないか。うちで鍛えれば、必ず強くなれると保障する。生活も保障できる。これだけの環境が整っているから困ることは無いだろう」


「見習い…ですか」


ファイアマンの丁寧な説明を聞くと、どうやらギルドへの正式な加入をする前に一旦見習いとして仮加入できるシステムがあるらしい。他のギルドとの掛け持ちもできるそうだ。


「それでは、見習いとして、仮加入ということで良いのだな?」


「はい、お願いします」


まあ、ここで断っても路頭に迷うだけだ。

生活の保障もあるなんて至れり尽くせりじゃん。


「それではヒーロー証の更新をしますので、タケシさん、よろしいですか?」


言われるがままにヒーロー証を預けると、リンドヴルマはカードの上に手を当て、目を閉じた。


「それではいきます」


彼女の額の赤い宝石が強く輝いた。かざしていた手が離れると、ヒーロー証の所属欄に新しい記述が追加されていた。



所属 燃え盛る炎(見習い)



まじまじと文字を見つめていると、ファイアマンがまた解説をしてくれた。


「ヒーロー証を更新出来るのは、各ギルドのオーナーである竜人族かヒーロー教会の司祭の血族だけだ」


なるほど。って、まてまて、竜人て、やはりリンドヴルマは普通の人間ではなかったのか!というより、他のギルドのオーナーも竜人なのか?


そういえば、漫画の『バーニング』には、リンドヴルマという登場人物はいなかったな。


「では、楽しみにしてますよ、タケシさん」


そう言い残して、リンドヴルマはギルドの外へと向かった。

ん、なんだか物凄い視線を感じるな。と思ったらメディが怒りの表情で睨んでいた。


「あなた、足を引っ張ったら身体中の血液を全部抜いてやるわ。覚悟なさい」


そう言い残して自分の部屋へ帰っていった。


「一旦仮だが、これでタケシも『燃え盛る炎』のメンバーだ。部屋を用意させる。そうだな、今夜は歓迎会をやろう。シェフ、用意を頼む」


「ウィ、ムッシュ」


ちゃっかりで大広間でのやり取りを全て聞いていたシェフドンパッチが、素早くキッチンの方向へ向かっていった。


「ねえ〜せっかくだし『電撃の巨人』も呼ぶ〜?」


ホットライター曰く、

どうやら『電撃の巨人』ギルドは、友好関係にあるらしい。


「いや、今回は私たちだけで行おう。少し事情があってな」


そういえばリンドヴルマが言っていたファイアマンへ与えた仕事ってなんだろう。

そんな疑問や自分の能力について考えていたが、部屋の用意や生活用品の調達で忙しくなり、あっという間に夜になってしまった。


「それでは、タケシの仮加入と天下一英雄大会での活躍を祈念して、ご唱和願う、ファイヤー」


「ファイヤー」


乾杯じゃなくてファイヤーかよ。ちょっと面白いな。

炎の料理人、シェフドンパッチが腕を奮って作った豪華な料理は、全てところどころに焦げがあるが、味は逸品だ。


その宴会は、夜遅くまで続いた。



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