空間移動能力のサニー





「え!何事かしら!!!!」


「え〜なにがなんだか〜」


目の前からサニーと名乗る迷子の男の子が消えてしまい、メディとホットライターが焦る。


「おそらく超能力だと思います」


さて、どう言い訳しようかな。

というか、本当にサニーが孤児院に戻れたのか分かんないじゃん。


「え〜あんなに幼いのに〜?」


「はい。移動系統で、空間移動の能力だと推測されます」


「はぁ?そんな能力聞いたこと無いわ?またテキトーな事言ってるんじゃないわよね?」


「いや〜確かに聞いた事はあるかな〜『狂気の人魚』に、物体を瞬時に移動させる超能力者がいたような気がするよ〜まああそこのギルドの事はよく分からないけどね〜」


そうか、『クレイジーマーメイド』のドジョウネアも似たような能力者だった。まあ、物体の瞬間移動だけで人は飛ばせないので、サニーの下位互換になってしまうのかな。


「チッ!『狂気の人魚』なんて怪しいギルドの事なんかどうでもいいわ!それより、サニーは無事なの?」


「それは俺もわかりません、ただ、空間移動は成功したんだと…思います」


「思います、じゃないわよ!ちょっと!なにかあったらどう責任取るつもり?」


責任か。うぅ…そう言われると弱い。

それにしても、困っている人に対するこの正義感は流石ヒーローだと感じるな。


「まあ一旦ギルドに戻ろうよ〜」


こういう時、のんびり屋のホットライターがいて良かったと思う。



ギルドに戻るとすぐに、3人は事務員から呼ばれた。

どうやら電報が入ったらしい。


クウカンイドウ ノ サニー ヲ ホゴシタ

イマハ モトノ コジイン ニ イル


『電撃の巨人』ギルドから届いていた。


「ああ無事でよかったわぁ」


メディがほっとした表情を見せた。


「それにしても〜本当に空間移動だったなんてね〜タケシは凄いね〜」


「いや、なんとなく…ですかね」


「フン!マグレだろっ!全て上手くいくと思わないで欲しいものだわ」


相変わらず、感情の起伏はどうなってるんだ。

メディの天使と悪魔の二重人格に付き合うのは本当に疲れる。


それにしても、俺の来た世界は俺の知っている漫画の世界よりも少し前なのかな。どうもズレているような気がする。



「でもなんでウチに〜電報が入ったんだろう〜」


「私のマグカップかもしれませんね。ファイアマンの似顔絵がついてましたから」


またしても満足そうな顔をしているシェフドンパッチが、そう言った。

ちょっとまて、いつの間にここにいたんだ。


「まあ、確かに。空間移動の時、ホットミルクのカップ持ってましたもんね」


他の街でも名の知られているメディとホットライターがいたこと、マグカップにファイアマンの顔があったことで、あの子のたどたどしい説明でも通じたのだろう。

そもそもサニーは最初、ヒーローさん助けてと言ってきたんだし、認識はしていたのかもな。



ガタン!


ギルドの扉を見ると、ファイアマンの姿が見えた。


「もう帰ってきてたのか。うむ、そうだな。どこから話せばよいか」


「もしかして〜ダメだった〜?」


先程まであくびをしていたホットライターが眠そうに訪ねた。


「ああ。タケシの正式な加入の許可は出なかった。それでだな、」


ガタン!


またしても扉が開くと、明らかに普通とは違うオーラを放つ体格のよい女性が部屋に入ってきた。

人間と同じような身体つきではあるものの、背中には真っ赤な翼、皮膚にはところどころに鱗がついていた。額には赤く輝く宝石が埋められている。


「……」


マッチボクスが震えている。


「タケシさん、初めまして。私はここのオーナーのリンドヴルマと申します」


「初めまして。タケシと申します。昨日からお世話になっております」


明らかにオーラが違う。緊張するな。


「楽にしてください。あなたのことは、ファイアマンからうかがっています。記憶を失った野良ヒーローだそうですね」


そういうことになるのかな。


「はい」


「本音を言うと、すぐにでも『燃え盛る炎』として歓迎してあげたいのですが、素性と能力がハッキリしないことには、判断がつかないのですよ」


まあ普通そうだよな。どこのどいつかわからないやつを、すんなり受け入れて貰える訳がないか。

落胆の表情を見せると、リンドヴルマは続けた。


「そこで来月開催される、ギルド連盟主催の『天下一英雄大会』に出場していただき、その様子を見て、決めようと思いましてね」


ファイアマンを除き、その場にいる全員が驚いた。


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