第24話 クラン『金獅子』
屋敷の玄関先でのトラブル? のあと、私たちは、そのクランという場所に向かった。
そのクランは私たちが住む屋敷の隣にあった。
近くね? と思ってしまった。
ティナたちの盛り上がりようから、どこか小学生が遠足でいく様な、歩いて1時間かかるような距離にあり、私たち子供が簡単にいくことの出来ない特殊なところなのでは? と私は勝手に勘違いしていたのだ。
それが、屋敷の隣である。今回、転生してから初めての外なので、そこそこ楽しみにしていたのに、少し拍子抜けである。
(まぁ、外に出れて、ファンタジー種族を拝見出来ただけでも良かったと思っておこう。しかし、この大きな建物がクランか……私たちが住んでいる屋敷よりもかなり大きいな)
「おう、お前ら、ここが我らがクラン『金獅子』だ!」
「「おぉ~!」」
ジルさんの紹介に私以外の子供組が感嘆の声を上げる。
(え? なんか建物が大きいこと以外に驚くことあった? 『キンジシ』って何?)
周りとの温度差に若干戸惑ってしまう。ティナやダリルを見回しても、彼女らはキラキラと目を輝かしている。
「ライディは『クラン』について知らんのか?」
私が周りの反応についていけず、少しオロオロしているのを見て、ジルさんが話しかけてきた。
「うん、知らない。クランって何? あ、あと、『キンジシ』って何?」
「ん? 教えてなかったか? ……まぁ、いいか。ライディ、『クラン』ってのはな、そうだなぁ……『志を共にする冒険者の集まり』だ。冒険者は流石に分かるだろう?」
冒険者について確認されたので「うん、うん、」と頷いでおく。こっちで産まれる前、つまりはアレクさんといた時にアレクさんから冒険者についてはある程度教えてもらっていた。
(ふーん……『志を共にする冒険者の集まり』か、つまり『食いっぱぐれ』の集まりか)
アレクさん曰く、冒険者とは、農家や商家の三男、四男、孤児などの社会的に立場の弱い者の最終的に行きつく職場で、冒険者の人達のことを『食いっぱぐれ』と言っていた。
まぁ、具体的な仕事内容は、魔物の討伐だったり、薬草の採集だったり、店の手伝いだったり……私からしたら日雇いの『なんでも屋さん』な気もする。
「なぁんか、勘違いしてそうな感じがするな……まぁ、本人が分かっているならいいか。それでな、『金獅子』ってのはな、その『クラン』の名前で、今では、迷宮都市内の大手のクランだ。因みに、立てたの俺な。『クラン』はこの迷宮都市内に大小いくつかあるが――――」
ジルさんは話すのに、熱が入り始めたのか、説明が長くなってきた。ジルさんの説明の情報をまとめると……
・『クラン』は志を共にした冒険者の集まり
・『金獅子』はジルさんが立てた『クラン』の名前。因みに、迷宮都市では大手らしい。
・『クラン』は他にも規模の違いはあるが多くある。
・ある程度の規模の『クラン』の創設者又は、その家族はこの迷宮都市国家では他国で言う貴族みたいな存在となる。つまり、ある程度の特権があるみたい。その分、税金が何とやら……
と、まぁ、こんな感じのことを言っていた気がする。ジルさんの説明は税金の話あたりから、『子供には分からない』愚痴を話していたからね。
「じぃじ、クランに、はやくはいろ!」
「ん? おぉ、すまん、つい話が長くなってしまったな。ライディ分かったか?」
「うん」
話の後半くらいからは聞いてなかったけど、頷いておく。『クラン』についてはある程度分かったしね。
「では、入るとしよう」
ジルさんを先頭に、私達子ども組が後に続く。
クランの中に入ると、外の空気とは違が違った。
(人が多い場所のガヤガヤ感と言うか、外よりもなんか熱い空気だね)
クランには多くの人がいる。人と言っても見て分かるほど種族が雑多だ。それはクランの外と変わらない。
クラン内にいる人達の服装も統一感があまりないと感じてしまう。地球の職場だと作業着やスーツ、学生だと学生服などと言った、職業によって大体服装が固定されていたが、ここにいる冒険者をざっと見ると皆バラバラの服装、装備をしている。
そして、クランの建物の内装だが、床は黒色の石材、壁は白色の石材を用いているのか、かなり頑丈そうな見た目をしている。
入口の正面の奥に受付のようなスペースがあり、手前に椅子とテーブルが比較的規則正しく並んでいる。入口の右側には掲示板のような物があり、紙? がたくさん張り出されている。
そして左側には大きめのお食事処のカウンターのようなところがある。おそらく、奥で料理でもして、料理が出てくるのだろう。実際にカウンターに腰かけて何か食べている冒険者っぽい人がいる。
ライディ含め、子供たちがクランの内装や雰囲気を観察していると、ジルさんが話しながら、歩き出す。
「どうだ? クランには色々と面白そうなものがあるだろう? 今日は特別に訓練場に行くぞ」
「訓練場?」
ライディは首をかしげるがティナを含む他の子供たちは興奮しすぎて、ジルさんの言葉が耳に入ってないみたいだ。キラキラした目で、クラン内を観察している。
ライディは、歩いていくジルさんに置いていかれないように、ティナの手を引き、注意をジルさんに向ける。
たくさん並ぶテーブルの間を抜けていると、冒険者の視線が集中してくる。ジルさんに話しかける冒険者もいる。
そして、受付の元に行き、女性の受付の人がジルさんが話しかける。
「ジルさん、お久しぶりです。この子たちは?」
「おう、久しぶりだな! この子らか? この子らは、儂の孫たちだ。可愛いだろう?」
「お孫さんでしたか! はい! とっても可愛いですね! でもまだ小さいですよね? どうしてここに連れてきたのですか?」
「ん? ちょっと、な。訓練場を借りたいと思ってな。借りれるか?」
「えーっと……、はい、この時間帯は人が比較的少ないですし、予約も入ってませんね。貸し切りにしますか?」
「いや、貸し切りにする必要はない。少々、動けるくらいの場所があればいい」
「そうですか。お孫さんたちも連れていくのですよね? 怪我には気を付けてくださいね」
「わかっとる」
ジルさんはそう言って、受付の横にある階段まで行き、地下へと続く階段を降り始めた。
ライディ達もジルに続く。
(地下に訓練場があるのかな?)
地下に続く階段は天井に照明があり、暗くはない。
少し階段を下りていると、訓練場らしき、広い地下空間に出た。
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