第5話 思っていたよりもやばいかも……
ふと、意識が覚醒する。不思議と
ライディの感覚としてはあの時に目をつむり、目を開けるともう転生に成功している感じで、拍子抜けしている。
ライディは転生することで今まで感じたことのない、痛みや気持ち悪さがあるのではないかと、内心身構えていたのである。感覚としては、予防注射を受ける前は散々ビビっておいて、いざ受けると「あれ? もう終わったの?」と言ってキョトンとしてしまうのと似ている。
(まぁ、杞憂で終わって良かった。とりあえず現状確認かな?)
転生したのでおそらく、何らかの生き物の赤ちゃんだろう。目を開けたり、声を挙げたり、身体のどこかを動かそうと試みるが、まるで自分の身体では無いかの様に身体が言うことを聞かない。どうして? と思ったが、誕生したばかりの赤ちゃんの身体を無理に動かせる物ではないだろうと、納得する。
(うーん、身体動かないし、暇だな~。周りの音とかも聞こえないし……どうしよう?)
転生早々にやれることを思いつかない。これはもう、寝るしかないかな(思考放棄)と思い始めたとき、急に大きい何かに持ち上げられたような感覚に見舞われた。
余りに急な変化にかなり動揺したが、どうやら身体はここでも無反応だったようだ。
しばらくするとその感覚もなくなった為、元の状態に戻ったのだろう。そして、さっきの感覚の気持悪さにライディは多くの違和感を覚えた。
(おかしい。 さっきの感覚は明らかに他者が私を持ち上げていた。でも他者が接近してきたときの物音や匂い、気配とか全然感じられなかった。仮に私が人間の赤ちゃんだったなら、持ち上げる人物は両親や兄弟姉妹とかそのあたりのはず。でも、抱き上げられた時に感じそうな相手の体温、温もりが感じ取れなかった。これは、相手がおかしいのではなくて、私自身がおかしいの?……)
そして、しばらく考えた末に当たり前のことに気付く。
(そもそも、私の精神年齢と肉体年齢が全然あってない! だから元の私の感覚でなんでもできる筈がない。現実に「見た目は子供(あかちゃん)、頭脳は……」状態になるとは……ここまで赤ちゃんって何も感じ取れないものなの? ……ん? 感覚がない、体が動かない、無駄に時間の掛かる思考…………。あっ、あぁああ!?)
(ス、ステータス!)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【名 前】ライディ
【種 族】人族 【年 齢】0 【魂の質】G
【異 能】―
【筋 力】G(0/10)
【体 力】G(0/10)
【感 覚】G(0/10)
【敏 捷】G(0/10)
【耐久力】G(0/10)
【器用さ】G(0/10)
【知 力】G(0/10)
【精神力】G(0/10)
【EXP】2
【
【
心の中で叫ぶとそれに答えるかのように、スッと頭の中に浮かぶ様々な情報……。自分の元々の頭脳が残念だったのか、それとも自分で選んだ代償のせいか、思考力が残念過ぎる。【種 族】は人族らしい。これはたぶんだけど、人間のことかな?
そして能力オールGで【魂の質】がGなので、1日にもらえるポイントは1ポイント。
(もしかしたら私の思っていた以上に経験値を代償にするのはやばかったのかもしれない。これは早々に【EXP】を各項目に割り振って自分を成長させないと!)
と、言う訳で、ライディは誕生、転生してから2日間生きた証の2ポイントをどれに振るか考える。そこで、今起きている問題を挙げてみる。
・身体動かない。【筋 力】かな?
・目が見えない、耳が聞こえない、触覚が鈍い、おそらく鼻もダメ、味覚もこの分だと望み薄。五感全滅? 【感 覚】だよね。
・思考力の低下。低下してるはず。してないとおかしい。してると思う。信じてる。【知 力】か【精神力】かな。
とりあえず、今のところの問題はこの3つくらいだと思う。
(でも、おそらく、どの項目も平均的に挙げた方がよさそうな気がするな。まぁ、まずはこの3つをFランクにしたいな。最初は……【感 覚】かな)
よし、【感 覚】に2ポイント振るか…あ、出来た。どれどれ…
【名 前】ライディ
【種 族】人族 【年 齢】0 【魂の質】G
【異 能】―
【筋 力】G(0/10)
【体 力】G(0/10)
【感 覚】G(1/10)
【敏 捷】G(0/10)
【耐久力】G(0/10)
【器用さ】G(0/10)
【知 力】G(0/10)
【精神力】G(0/10)
【EXP】0
【
【
心の中でにんまりと笑みを浮かべていたライディはステータス画面を確認する。そして、心の中で、目を手でごしごしと擦る……数回同じことを繰り返したが、ステータス画面の表記は変わらない。
(はあ!? 私、【感 覚】に2ポイント振ったよ!? なんで1ポイントしか加算されてないわけ!? バグ? そんな……ただでさえ【魂の質】のランクがGなのに、さらにポイント半分とか……寝よ)
ライディは思考放棄し、ふて寝を決め込む。
因みに、このポイント半減現象の理由をライディが知るのは、まだ先のことである。
☆
ライディは転生する前の暗い空間に着ていた。この空間では、ライディの身体は精神体の方の姿だった。もちろん白の袖なしワンピースを着用している。どうやってこの空間に来たのか分からないが、目の前の存在は分かる。
「神様!」
ライディが呼び掛けると、神様が振り返り、ライディの姿を認めると微笑んでくれる。
(あぁ……。あの微笑。癒されるぅ~)
すると、神様がおもむろに、両腕を水平よりも下に軽く開く。
(! あれは、私を抱きしめてくれるの? え? 飛び込んでいいの?)
そうライディが考えていると、顔に出ていたのか、神様が頷いてくれた。
「~~~~~! 神様!!」
ライディは神様に向かって地を蹴り、走り出す。
そして、十分に勢いが乗った状態で神様の豊満な胸に飛び込む。
神様の胸に飛び込んで、両足が宙に浮いているとき、世界がゆっくりと感じられ、ライディの思考が加速した様に働く。
(あぁ、私は今どんな顔をしているのだろうか? にやけるのを我慢して余計に気持ち悪くなってそう)
空中でそんな呑気な思考をしていたライディはついに神様に到達し……なかった。
(え? なんでぇ?)
急に神様が蜃気楼のように最初からいなかったかの様に消えてしまったためである。
そして、空中で万歳の姿勢のまま、飛び出していたライディは普通に落下していく。
「んぎゃ!」
ライディは顔から地に落ち、少し滑り止まった。
「痛ったぁい」
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