第4話 誓い
「神様、大変見苦しいところを、お見せしてしまい申し訳ありませんでした」
「はい。大丈夫ですよ。あと、鏡で自分の顔を確認してください。顔の確認が終わったらいくつかの注意事項を話します。その後はいよいよ転生です」
神様がそう言うと、どこからか鏡が取り出され、ライディに渡される。
そしてライディがその鏡をのぞき込むと黒髪ストレートで、これまた漆黒の意思が強そうでありながら、あどけなさが残った様な瞳と目が合う。自分の顔の感想としてはどうかと思うが、美しさ7割、可愛さ3割の美少女だと思う。この顔に、このスタイル……女性としては確実に勝ち組だ。
ライディが鏡を見たのを確認し、神様が話始める。
「ライディ、貴女は転生した後、おそらく、いいえ確実に苦労します。何事も上手くいかず、理不尽に見舞われたり、絶望のような暗い感情に心が覆われたりするでしょう。私はそれでも折れずに、その一生を蔑ろにして欲しくないのです。強制力は働きませんが、『貴女が受けた生は蔑ろにしない』誓えますか?」
「誓います!」
ライディはこの問に対して速攻で答えた。
ライディはこの神様の言葉の意味を正しく認識していた。そしてこれを誓えなければ私はいつか必ず腐る。
私は【
『人生は一度きり!』といった概念があるから皆真剣に生きようとするし、何かしらの信念をもって行動しているのだと私は思う。しかし私の場合、『人生は一度きり!』という概念が希薄なものになってしまうのだ。
何かしらミスを犯してすぐ「次の生があるから、もう死んでもいいや」とか言って自殺するようになる。つまり、自分の命の価値が低く感じられる様になってしまい、人生をゲーム感覚で遊ぶ様になってしまうのだ。しかし、その行為は真面目に生きている生命への冒涜であると私は思う
私が堕ちないように神様に誓ったのもあるが、この『誓い』は自分自身への誓いでもある。
まぁ、この誓いは『生を蔑ろにしない』ということなので、具体的な生き方、あり方を細かく指定している訳ではない。ただ、これから長く生き続ける覚悟があるかどうかを、聞いたに過ぎないのだと思う。
「ライディはこれから永きにわたり、生きていきますね。それで貴女は生きることの目標や目的のようなものはありますか? 転生を繰り返すうちに、そういったものは見つかるかもしれませんが、【魂の質】をSSSに、つまり【神】になることも貴女の目標の1つにしませんか? これは特に誓う必要はありません。」
そういえば、私はとにかく(精神的な意味で)死にたくなかっただけで、はっきりとした目標や目的があるわけではなかった。
(うーん、生きていく上で具体的な目標や目的があると豊かな人生を送れるとか、何とか聞いたことがあるような……ないような? 【神】になる、か……なりたくて、なれるものなのかな? まぁ、簡単に達成できるものを目標にしても味気無いか。【魂の質】Gから成長させるのは、かなり長い道のりになりそうだけど、【神】目指そうか!)
「神様! 私、ライディは『【神】になれるよう、努力していく』ことを誓います!」
私は右手を開いたまま心臓の位置の胸に置き、神様に【神】を目指すことを誓った。誓う必要はなかったが、誓った。成長し続け、歩みを止めないことを誓った。メリット、デメリットや打算的なことを一切考えず、私は誓った。ただカッコつけたかっただけなのかもしれない。でも、不思議と後悔や後ろめたい等の感情は湧かず、高揚感だけが私を包んでいる。
(あぁ、これは保育園児や小学生が、大それた夢を語るときの感情なのかもしれない。)
大きくなるにつれて、周りから嘲笑を受けたり否定されたりして「現実」を知り、己の限界を悟ってしまうことがあるかもしれない。
しかし、この瞬間は――小さい頃の圧倒的な向上心を、好奇心を、自信を持ち続けると――【神】にだって――何にだって――なれる!
そう、全く根拠の無い自信が今、私に溢れていた。
神様は私の誓いに少し驚いたような表情をしたが、私が結構本気だと分かったのか、すぐ笑顔に戻り話し出した。
「はい。頑張ってくださいね。貴女が【神】になった暁には私からプレゼントを送りましょう。」
「え!? 本当ですか!? 俄然やる気が出てきました!」
思わずガッツポーズをとってしまうライディ。神様からのプレゼント、つまりご褒美である。ご褒美の内容に思いをはせると真っ先に思いつくのが神様とのハグや膝枕なあたり、ライディが欲深いのか欲深くないのか、今一よく分からないところである。
「そせでは、ライディ最後になりましたが、転生先の世界を、人生を楽しんで下さい。貴女と再び会える時を楽しみにしていますね。」
神様がそう言うと、私の
(あぁ、これから知らない世界に行くのか……どんな世界でも、必ず生き抜いてやる!)
ライディは決意を新たにし、目を閉じて光の奔流に身を預けるように力を抜く。重力のベクトルが、あべこべになったかの様に精神体(からだ)が宙に浮き、その浮遊感を感じると、自然にライディの意識は落ちていくのだった。
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