第4話

 二人はララの家にいた。

「ねぇごしゅじんさまー、ルルもう眠いよー……」

 ララから借りた白いネグリジェを着たルルの目はトロンとしていて、歩みもなんだかフラフラ、いかにも眠たそうだった。この子がロックジャイアントを倒したと言っても誰も信じてくれなさそうな状態だった。

 二人で帰ってきてからは、ご飯を食べたり、お風呂に入ったりした。体がポカポカとしてきて、疲れと合わさって眠たくなったのだろう。実際私も眠い。

 え?ファンタジー世界には普通、各家に一つ一つお風呂なんて無い?うるさいな、この世界にはあるんだよ。

 ルルはおぼつかない足取りでフラフラと歩くと、何の抵抗も無くベッドに入った。

 いや、それ私のベッドなんだけどな。

 まあいいや、私はソファーで寝るとしますか。

「ねぇー、一人じゃ眠れないよー……」

 ベッドから声が聞こえる。なんてわがままなお嬢様なのだろう。人のベッドを躊躇い無く使った上に寝かしつけまでご所望なのか。

「しょうがないなぁ」

 可愛いルルのためならそれくらいしてあげたくなる

 ルルを寝かしつける為にベッドのふちにゆっくり座ると、彼女の胸をトントンとした。ルルは気持ちよさそうに胸を上下させている。

 この姿をみると、ララと同じくらいの歳の人間の少女にしか見えない。魔物だなんて、人間の敵だなんて誰も思わないだろう。あの昼間に感じた頼りになる、お姉ちゃんのような感覚は少しも感じられなかった。むしろ妹のように感じる。

「ねぇご主人様、ご主人様はなんで召喚術士になったの?」

 こうやっていろんな事を質問してくるのもなんだか子どもらしい。なんだか可愛いルルの質問は何でも答えてあげたくなる。

「別に深い理由はないよ。家に何故か魔導書があったから。ただそれだけ。」

 ララは思い出すようにゆっくりと喋った。

「今はこの街に一人で暮らしてるけど、私がもっと小さい頃はもちろん家族と一緒に住んでたんだ。家の外には小さな物置きがあってね、たまに面白いものはないかなーって勝手にこっそり入ってたの。親にバレたら怒られるからね。そんな好奇心の塊だった小さい頃のある日、私は倉庫の奥の隅の方から大きくて分厚い本を見つけたの。それがこれ」

 ララはそういうとテーブルに手を伸ばして、置いてあった魔導書を取った。

 ルルは魔導書の方を見ているが、その目は細く、すぐに寝てしまいそうだ。

 そのまま寝てくれるならと、ララは話を続けた。

「ここには召喚術に関することがいっぱい書いてあるの。魔物との契約方法や召喚の方法、召喚術を扱うことに対しての注意点、その他いろいろ……。私はこの本をこっそり自分の部屋に持って帰って、毎日この本を読んでた。当時の私はこれを読むのに夢中になってたよ。かっこいいな、私もこんな魔法を使ってみたいなって。これが私が召喚術士になる最初の出来事だったね……ってあれ?」

 ルルの方を見ると、いつのまにかすやすやと寝息をたてていた。ほんとに寝るとは思わなくて少しびっくりしてしまった。

 それにしても話を聞いているあいだに寝てしまうなんて、本当に子どもらしいな。せっかくだから最後まで聞いていて欲しかった気もするけど、寝てくれないよりかはマシか。

「じゃあ私はソファーで寝ようかな」

 立ち上がろうとした時、何かに引っ張られる感覚を覚えた。ルルの方を見ると、私の服をギュッと握りしめていた。

 どうやらこの子はどうしても一人で寝たくないらしい。

「しょうがないな……」

 少し狭いけど、一つのベッドを二人で寝よう。

 ベッドに入ると、ルルと体が触れ合う近さだった。ルルの体温が心地良い。すぐに眠れそうだ

 明日はどうしようかな。せっかくだから二人で街中を歩こう。いろいろな場所を巡って、美味しい物でも食べよう。

 ルルが喜んでくれると良いな。

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