第34話 騎士の焦燥
気を失った一ノ瀬を抱き抱え、セリスはアテナ達の元へ降りてきた。未だに目の前で起きた事に理解が及ばない三人にセリスが語り出した。
「わらわはセリスと言う。百年程外の世界から断絶された場所よりこの地にまいった。そしてこのものは一ノ瀬と言う。異世界よりこの地に召還された者だ。わらわ達はソナタ達の敵ではない。安心せよ。」
セリスは三人に危害は与えない事をつげた。それを聞いた未だエリアスに抱きついていたリムが、緊張の糸が切れた事により急に泣き出してしまった。その頭を優しく撫でながらエリアスは口を開いた。
「助けて頂き、ありがとうございます。私はエリアスといいます。この先にあるバレット王国の次期女王です。こちらはリムと言い、私の使用人です。」
エリアスの紹介に続く様にアテナも自己紹介をはじめた。
「先刻は助かった。私はアテナと言い、バレット王国の騎士団長を務めている。して、先ほど百年もの間生きているときいたが?貴公は何の種族なのだ?」
王国の騎士団長と名のったアテナは、セリスに質問を投げ掛けた。
「わらわは天使族であったが、一度命を落とし、再度この世界に甦ったため、アンデットとのハーフとなり、不滅の命をもっている。ときに、ソナタらは何故こんな夜更けに追われていたのか?先の者たちは魔族と獣人属の軍勢に見えたが?」
セリスの言葉に三人が言いよどんでいると、関所の方から賑やかな声が聞こえてきた。アテナ達は後方に視線を向けると、クラインに抱えられたベルトレとロゼッタがこちらに向かって来ていた。
「あなたの魔法は水、私の火魔法とは相性があわないんですから、同時に発射すれば私の魔法の威力が落ちるのは目に見えて分かる事ではないですかねぇ!?」
「貴様が我の魔法に被せてきたのであろうが!?もとより、我の魔法だけで良かったものを、余計な事をしたせいで予定よりも威力が削げてしまったわ!貴様なんぞに加担されずとも我だけでよかったのだ、このアホぉめが!」
クラインとベルトレは焦り出すロゼッタを左右から挟み睨み合っていた。
「まっまあ無事終わったんだからいいんじゃない?」
ロゼッタは二人を落ち着かせようとするが、当の二人は次第にヒートアップしていった。
「ならば今ここであなたの実力を見せてみたらどうですか?そんな可愛らしい姿でやれるものならば?」
「貴様なんぞこの姿のままで十分だ!むしろ、闇雲に火を出して自身の放つ魔法で火傷でもした日には後世に貴様の間抜けさが轟いてしまうがよいのか?」
挑発し合う二人の元から危険を感じたロゼッタは陸上選手並みの走りでアテナ達の元へ逃げてきた。その瞬間ロゼッタの背後でいままでで最高の魔法を二人は放ちかけていたが、その前にセリスが魔法を放ち二人は〈ゴンッ!〉という音と共に再び黄金の鐘の中に姿を消した。その直後、二つの鐘から魔法による爆発音と、二人の絶叫が響いた。
「「ぎいやー!!!!」」
先程までの戦闘による騒音から一転し、二人の絶叫が消えた後、周囲は沈黙に包まれた。未だ存在する黄金の鐘を一同は呆然と見ていたが、鐘が消え去った後、二人が地に伏した状態で現れた。その光景から、アテナはセリスに質問をした。
「、、セリスどの、あの者等は貴公の仲間?なのだな?」
疑問符を出しながら質問をしたアテナにセリスは回答した。
「ああ。一ノ瀬とそこに居るロゼッタ同様、わらわを百年程過ごした世界から解放してくれた者達だ。名をクラインとベルトレと言う。あのような感じであるが、悪い者ではない。仲良くしてくれ。」
(((行動と言葉が伴っていない!?)))
三人はセリスの魔法により未だ倒れた二人を怪訝な表情で見詰めていた。
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