第35話 剣の誓い
目を覚ました一ノ瀬は、ボロボロな状態で地に伏したままのクラインとベルトレに驚いていたが、内情を聞きそのまま二人をそっとし、アテナ達三人に事情を聞いていた。
「じゃあ、魔族軍と、周辺諸国が手を組んで、バレット王国を襲ったのか!?」
一ノ瀬の言葉に、複雑な顔をしたアテナが答えた。
「大雑把に言えばそうなる。ただ、同時にある組織も動き、今や国内では、かつての面影を無くした状態になっている。、、」
アテナの言葉にロゼッタはかつての自身のいた国の滅亡を思いだし、神妙な面持ちで口を開いた。
「私はエルフ族の王女なの。私のいた国は、魔族と他種族によって王を亡くし、国は滅亡したわ。」
「「「!?」」」
ロゼッタの言葉に、三人は驚きを隠せずにいたが、ロゼッタは尚も続けた。
「私は王を、父上を愛していた。でも戦乱の最中命を奪われ、母上も喪ってしまったの。母上のおかげでかろうじて逃げ出せた私は国を失い、ある目的の為に旅を続けているの。でも貴女達にはまだ帰れる場所がある!私達も力を貸すから、一緒に戦乱を止めましょう!!」
ロゼッタはエリアス達に自分を重ねていた。しかし三人は共にその表情に影を落とし、暫くしてアテナが語りだした。
「私達が戦っている最大の相手は、バレット王国の国王、アドルフ。私とエリアスの父親でもある。」
「「「!?」」」
ロゼッタ達三人は、予想外の言葉に疑問を懐いたが、何時の間にか目覚めていたクラインがアテナに問いかけた。
「それは、【沈黙の間】が関わっているのでしょうか?」
一ノ瀬達は、いつの間にか目覚めていたクラインに驚いていたが、その発言によりアテナ達三人は一様に目をみひらき、今しがた発せられた【沈黙の間】という単語に動揺した。
「何故エルフのあなたがその事を知っているのですか!?」
動揺しながら、エリアスはクラインに問いかけた。
「私は、エルネスの民です。今は、バレット王国の領地となっていると聞き及んでますが。」
クラインの言葉を聞いたロゼッタは、その事を知らなかったせいか、困惑しながらクラインに問いかけた。
「確か、この国の周辺にある国の出身て言っていたけど、この国で一体何が有ったの?何故あなたは、エルフ族の国の片隅で倒れていたの?今まで何で教えてくれなかったの!?」
ロゼッタはクラインに突き詰めるように迫った。同時に、エリアス達もその動向に目を向けていた。暫し押し黙っていたクラインに業を煮やしたセリスが魔法を展開しながらクラインに質問した。
「クラインよ、わらわは実のところあまり気の長い方ではなくてな?時間を無駄に浪費する事が大層嫌いなのだ。ソナタが話しを始めぬとわらわは何かしらの遊びに興じてしまいそうなのだが?その遊戯にソナタも加わってみるか?」
そう口にしながら、セリスはクラインの周りに黄金の剣を何十本も発現させていた。その状況を理解したクラインは、緊張からかまるで機械のように淡々と喋りだした。
「幼少期の私はエルネスの民として暮らしある日バレット王国の襲来により捕虜となりました。」
(普通に言うんかい!?)
スラスラとでる恐らくかなり重めの話しに、一ノ瀬は呆気に取られていたが、クラインは突如として本来の喋りに戻った。
「しかし、捕虜とは名ばかりで、実際はバレット王国が陰ながら行っていたある研究の被験体として、私達は奴隷以下の扱いを受けていました。その研究、実験が行われていた場所が、城の地下にある、【沈黙の間】と言う所でした。」
セリスは過去に捕らわれていたクラインを自身に重ねるような哀れみの表情を浮かべ、魔法を解いた。
「貴殿も、あの場所の被害者だったのか。長らく私達も王の政権により何もしてやる事ができなっかった。許しを乞うことは出来無いが、国の王族として、その事への責務は果たしてみせる。だから、この戦乱を王の命と共に止めるために、今一度力を貸してはくれぬか!」
アテナの言葉にエリアスとリムも一同に力強く視線を向けた。その視線を受けたクラインは一ノ瀬に是非を問うように視線をむけた。皆の視線を受けた一ノ瀬は数秒の後、言葉を発した。
「相手は魔族軍と別の国、さらには一国の王様だ。この人数で相手取り無事でいられると思わない。でも、このままじゃ何も変わらない!俺に何が出来るかわからないけど、目の前に助けを求める人がいたら俺は助けたい!皆?俺と一緒にバレット王国をぶっ壊しに行ってくれるか!?」
「「「「「「おーーーー!!!!」」」」」」
一ノ瀬の言葉を聞いた皆は、一斉に掛け声を発した。しかし、未だ地に伏したままのベルトレを気にかける者は誰一人いなかったという。
(、、、もう我、このまま寝てしまおうか。)
ベルトレは拗ねてそのまま寝てしまった。
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