第33話 月夜に浮かぶ影
月夜の空と陸から数え切れない程の魔法がアテナ達を襲っていた。その中にはアテナ達から逸れ、関所にまで攻撃が届いていた。その魔法は地上の流星群のように見えたが、その中でアテナは、無数に降り注ぐ魔法を全て一本の剣で弾いていた。その刃は休まる事なく、目にも止まらぬ速度で魔法を弾く際、軌道を相手側に変え、まるでアテナが瞬きする暇無く魔法を放っている様だった。
「これが、剣神の剣技!?初めて見ました。」
リムは、息をする間もなく降り注ぐ魔法を全て弾き、着々と相手の数を減らしているアテナの剣技に圧倒されていた。そこにエリシアがリムに語った。
「彼女はどんな時でも絶対に引かない。それはどんなに劣勢でも、どんな敵が立ちはだかろうとも。味方を庇い、一人で中隊を殲滅させたこともあったわ、しかし、その力はあまり長時間は持たないの。それがアテナの使用する魔法のリスクだから。」
その間も無数に飛んで来る魔法にアテナは休まる事なく、剣を振りかざしていたが、アテナは剣を一振りする度に数回剣を振りかざしたかの様に体力を消耗していった。次第に弾いた魔法の軌道が定まらなくなり、放たれた魔法の一発がアテナの片足に当たってしまった。
「ぐっ!?」
「アテナ!」
「アテナ様!」
二人がアテナに声をかけたが、アテナはよろめいた脚で踏ん張り、未だ放たれ続ける魔法を弾き返していたが、次第にその体で魔法を受け始めるなか、背後の二人は治癒魔法をアテナにかけるが、圧倒的な敵から放たれる魔法の数に徐々にじり貧となるなかアテナが呟いた。
「わたしは、どうなってもいい。ただエリシアを、妹を、守ってくれ。神様。」
その時アテナの前に黄金の盾が突然現れた。それと同時に炎と水の魔法がアテナの背後から放たれ、敵の群衆の中で大爆発を起こした。
「これは一体?」
アテナが声を出した様に、背後の二人も未だ目の前の事に理解が追い付かなかったが、その瞬間アテナ達の頭上を猛烈な突風が吹き荒れた。三人が目を見張る先には、敵の中央に向かって飛んで行く一人の影が見えた。
「たった三人をこの人数で痛め付けるならぁ!覚悟は出来てるんだろうなぁ!!!」
ロゼッタの風魔法で飛ばしてもらい敵のど真ん中に向け一ノ瀬はかつて無い程にキレながら飛んでいた。その右手にはこれまでの戦いで得た経験から魔力を操り自身の膨大な魔力を空気が揺れ動くまでに溜めていた。さらに一ノ瀬に標準を定め放たれた魔法をもう一方の手で吸収し、更に敵の魔力まで右手に集めた。
「これで少しは、頭冷やしやがれぇ!!!!」
敵の懐に入った一ノ瀬は、魔力を溜め込んだ右腕で空中を殴るように拳を突き出した途端、圧縮された魔力が破裂するように、光を放ちながらその場の全ての敵と思われる魔族達を吹き飛ばした。
「なっなんなのだあやつは!?」
光を放ち一瞬で目の前の群衆を吹き飛ばした一ノ瀬を神々しく感じていた三人を他所に、まだ完全でない魔力の操作で全魔力を一撃で使い果たしてしまった一ノ瀬は、そのまま気を失い力なく落下していた。その瞬間アテナの背後から黄金のホウキに乗って飛び出したセリスは空中で一ノ瀬をキャッチし、抱き抱えられた一ノ瀬に小言を呟いた。
「全く、本当に我が身を返り見ないのだな、わが主殿は。まあだからこそと言うべきでもあるがな。」
気絶したままの一ノ瀬を抱えたセリスは月夜の下で空に浮かんでいた。
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