第29話 関所の陥落
新たにセリスを仲間に加えた一行は、丘から下にある関所に向かって整備された土の道を下っていた。道中あまりに一ノ瀬にくっ付きまわるセリスを横目に、ロゼッタは一ノ瀬とセリスの間に入っていた。
「まったく、ソナタの嫉妬深さは相当なものだな?わらわが主殿の傍らに居る事の何が問題なのだ?」
「ちょっ!?そんなんじゃ無いわよ!あなたたち二人が縺れ合って転んじゃったりしたら危ないから離しただけよ!」
ロゼッタは、セリスの言葉に頬を赤くしながら返答した。その後、暫く横並びに三人が歩いていると、背後からベルトレが一ノ瀬に声をかけてきた。
「、、一ノ瀬、前にも同じような事を聞いた事があるが?貴様は魔法も魔力も自身では我の召還と転送以外では使えなかったのでは無いのか?マルクスの時とは少し違うが、何故魔力を吸収出来たのか?」
「そうなんだけど、マルクスと戦ってから何故か自分の中の魔力の流れが少し分かるようになったんだ。それからまだ完全ではないけど、自分から魔力を発したり、逆に触れた相手の魔力の流れまで感じれるようになって、ゴーレムとの戦いの中では触れること無くそれを感じていたんだ。自分でもよく分からないんだけど、セリスからはこの世界の力とは少し違うと言われたけど?」
一ノ瀬の話しを聞いたベルトレは、セリスに視線を送った。その視線の意味する事を悟ったセリスは、聞き耳を立てていた一同に向け喋り出した。
「わが主殿は、元より違う理の元に居たときく。おそらく常識や習慣なども違える世界なのだろうが、一つだけ言える事は主殿にはこの世界の常識からは外れ、本来獣でさえ必ずもつ魔法の属性を持たないように感じた。」
「え!?じゃあ俺魔法使えないの!?」
セリスの言葉に驚く一同とは対照に明らかに落ち込む一ノ瀬にロゼッタが訂正した。
「いや、それとは逆なのよ一ノ瀬!本来魔法には属性魔法と通常魔法があるのだけど、属性魔法は他の属性魔法を使えなくするための縛りみたいなものなの。それはこの世に生を受けた瞬間に種族などに関係無く付与され、たまに二種類の属性を持って生まれる事もあるけど、基本的には、一種類の属性魔法と、召還や飛行ができる通常魔法しかあつかえないのだけど、、」
「わが主殿はその縛り、いや、契約が無く様々な魔法が扱えるとお見受けする。いずれ魔法が扱えるようにわらわが付き添って教えよう!」
そう口にするセリスは、ロゼッタを交わし再び一ノ瀬の腕に自身の胸を押し当てるようにしがみついた。それを見聞きしたロゼッタは対抗するように一ノ瀬のもう一方の腕に抱きつきセリスに反論した。
「ちょっ!一ノ瀬には私が魔法を教えるから問題無いわよ!」
両腕を女性にひっぱられ左右に揺れながら一ノ瀬は魔力とは違う幸福が体の隅々に渡る事を感じていた。
(火属性を扱うのは私だけ。一ノ瀬さん、その時は手取り足取り教えて差し上げましょう!!)
先頭を歩くクラインは胸中で二人以上にやる気に火をともしていた。
暫くすると、一同の前には城壁のようなものに大きな扉を取り付けた関所が現れたが、扉には爆発の跡があり大きく開かれており、周囲にはこの場所を守っていたであろう獣人族の兵たちの亡骸が至る所で点在していた。
「なっ!?これは一体なんなんだ!?」
声を上げる一ノ瀬にクラインが返答した。
「戦闘の跡のようですが、すでに数日経過した後のようですね。戦後の火も消え去り残煙すら無いですから。」
一ノ瀬は城門から続く道の先を見据えていた。それは、この先に待ち構えている更なる惨状を予測しているかのようにみえた。
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