第28話 新たなる進路
洞穴から修羅の様な顔つきで出てきたロゼッタは、セリスに押し問答をしていたが、クラインの呼び掛けで丘の上に出てきた事に気付き、驚きの声をあげていた。
「、、、ここ何処なのよ!?」
困惑するロゼッタにクラインが答えた。
「おそらくですが?私達のいた場所から遥か東の方にある(バレット王国)の近くかと?」
そう口にしたクラインにロゼッタは質問をなげかけた。
「バレット王国って、東の政権を握る国じゃない!でも何でこの場所がバレット王国って分かるの?」
ロゼッタの再度の問いかけに、クラインは少しの沈黙の後語った。
「あちらに見える関所に掲げられた旗はバレット王国の紋章です。そして、周辺諸国の民だった私は、あの関所を抜けて、姫様の元にたどり着いたのです。」
クラインの言い回しにこの国で何かがあった事を確信する一同の中、クラインの発言に突っかかるように口を開いた者がいた。
「何だ?故郷が近いせいでホームシック中か?貴様のつまらん話しをもう聞かなくて済むならば、我は喜んで貴様を故郷に送り出してやろう!そうでないのならばもう少し揺らさずに歩く練習でもするがよい!地下からこの場所まで何度嘔吐しかけた事か?それでよくエルフ族の小娘のおもりができたものだな?」
(逆に今のタイミングでよく言えたな。)
クラインに担がれたままケンカを売る様に不満を述べるベルトレに、一ノ瀬は、これから起こる事を予想して、胸中でツッコミをいれた。
「そうですか。確かに私は不器用なもので、担がれている貴方からすれば不満も出るでしょうね。ですが、誰しも歩く時は体が揺れ動き、その補助として首で無意識に頭の水平を取ると聞いた事があります。ですから、不器用な私を矯正するよりも、貴方に慣れて頂くほうが合理的だと思いますので、頑張って下さい。」
「ん?一体何を言っておるのだ?」
クラインの意味不明な発言に戸惑うベルトレを他所に、クラインは直立の状態で上下に揺れ始めた。未だクラインの行動の意味がわからないベルトレだったが、上下の揺れが激しくなるにつれ、その行動の意図を理解したベルトレは静止を伝えたが、残像が現れる程の上下運動に、ベルトレは収まっていた嘔吐の感覚を思い出した。
「ちょっちょっとまて!貴様、自分が何をしているのか分かっておるのか?我が限界を越えたら、担いでいる貴様も被弾するのだぞ!?」
その言葉が聞こえないかの如く揺れは上下左右に広がりクラインは足を揃えたまま、激しく上半身を動かしつづけ、ベルトレは限界を迎えた。
「ちょっ来る。マジで来る。スマン。マジで、マジでスマン。謝る!謝るから今すぐ止まって!うっオロロロッ!?」
ベルトレは永遠に続くのでは?と思いながら揺れ続けるクラインの肩から吐き続けていた。
暫くしたのち、一同の背後から洞穴が音も無く消えている事に気付いたセリスは、少し寂しそうであったが、まるでレインに微笑みかけるような表情になりロゼッタ達に問いかけた。
「ときに、ソナタ達は各々種族が違うとおもうのだが?そんな者たちが一同にかえし、一体何処に向かっておるのだ?」
「えっと、私達は魔導禁書を集めて旅をしているの!だから特にこれといった目的地はなくて、情報を求めながら移動しているのだけど、まだ二冊しか手に入れてないどころか、情報から検討を付けていた場所からかなり離れちゃったのよね、、」
ロゼッタは未だ見知らぬ地に降り立った事にいく宛を決めかねていると、ベルトレが不意に声をかけてきた。
「何を言っておるのだ小娘?二冊では無く三冊であろう?」
ベルトレの言葉に一ノ瀬、ロゼッタ、クラインの三人は言ってる事が分からずにいたが、直後セリスが声を発した。
「ん?その魔導禁書とやらは、これの事なのか?」
転送魔法によりセリスが取り出したのは、ロゼッタとベルトレが持つものと色以外全く一緒の紛れもない魔導禁書であった。それを目にした三人は、驚いていたが、ベルトレは再度話しを続けた。
「ゴーレムから魔力を吸収した一ノ瀬から我にも少量ではあったが魔力が流れこみ意識を取りもどしたが、フラッシュバックの後ゴーレムが消えたと同時に我と扉の間程に魔導禁書が現れたのでセリスに手渡していたのだ。」
(((先に言え!)))
三冊になった魔導禁書を各々携え、一同は丘の下にある関所に向かい、その先にあるバレット王国に進路を定めて歩きだした。
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