第24話 四体目のゴーレム
一ノ瀬達は、セリスと共に部屋を後にし、再び無限回廊を歩いていた。道中クラインが口を開き、先程の部屋と、無限回廊の豪華な装飾品について質問を投げかけていた。
「セリスさん、一つお聞きしたいんですが、先程の部屋や、回廊内の装飾品は一体どうしたのですか?」
「一部はわらわを蘇生させた、レインと言う竜人族の娘が施した物で、大多数はわらわが暇潰しに魔法で作製したものだ。」
不意に語られたセリスの蘇生主に対し、一ノ瀬以外の三人は共に驚いた。
「竜人族って、世界の理を遵守して、魔導禁書や禁術や最高位魔法を排除しようとしている種族よね?その竜人族が禁術の一つである蘇生魔法を、使用するなんて、考えられない。」
「我が魔族の軍を引き連れていた時にも、幾度か争いになった事があるが、あの者達のこだわりは、もはや信仰の域であった。」
ロゼッタとベルトレが各々竜人族を語るなか、一ノ瀬は思い詰めながら何かを思い返す様な表情をうかべるセリスに声をかけた。
「セリス?大丈夫か?、、俺達も色々あった身ではあるからさ、無理しなくていいんだぞ?」
「、、、」(やはり、似ている)
一ノ瀬の言葉に視線を向けるセリスは、元気付けようと笑顔を見せる一ノ瀬に、自身と同じ髪色の少年を重ねた。口元を緩ませ、少し微笑みをこぼしたセリスは、気を使ってくれた一ノ瀬に感謝を伝えた。
「ありがとう。」
無限回廊の中央に位置する場所を通り過ぎた頃、ロゼッタはある疑問をセリスに聞いてみた。
「ねえセリス?私達何事も無く進んでいるけど、この無限回廊に来た時幻術によってなかなかすすめなかったんだけど、何で今は何とも無いの?」
「この無限回廊は、奥の部屋から遠ざけるもので、この道を奥に向かわないかぎり、幻術が発動することはない。だから安心してくれていい。」
セリスはロゼッタに答えて、再び前を向いた。そこには先頭を歩く一ノ瀬の姿があり、セリスはその姿を焼き付けるように見ていたが、次第に近付く一ノ瀬達がゴーレムと戦った広間に目を向け、胸中にある不安を表情に出していた。
一行は、広間にたどり着き、未だ沈黙し続けている三体のゴーレムに目をやった。先行する一ノ瀬がゴーレムの横を通りかけたとき、セリスが一ノ瀬を呼び止めた。
「一ノ瀬、一つ質問をしてもよいか?何故、わらわを助けようとしてくれるのだ?」
セリスの言葉に、一ノ瀬は振り向き、その目を見ながら言葉を返した。
「それは、セリスが寂しい顔をしてたから。他に理由は無いよ。」
一ノ瀬の言葉に呆気にとられていたセリスに、ロゼッタが半ば呆れたように伝えた。
「例え、自分の命すら失いかけても、一ノ瀬は目の前の困った人を助けようとするわ。それはここにいる私達が一番知ってるから、今さら何を言っても一緒よ。」
その言葉を聞いたセリスは、少し肩の荷がおりたような気がした。そして、ゆっくりと瞳を閉じて、一同に話しかけた。
「この数十年、一度として倒せなかった四体目のゴーレムは、わらわが広間の中央にたどり着いたと同時に姿を現す。皆、どうか切に願う。絶対に死なないでくれ。」
喋り終えたセリスはゆっくりと瞼を開き、目の前の一ノ瀬に一瞥し、広間の中央へ歩みを進めた。じきにセリスが中央に到着したその刹那、今しがた通ってきた扉がひとりでに閉まり、地面には広間全体にまで広がる巨大な魔方陣が出現し、無限回廊の入り口で沈黙する三体のゴーレムを吸収した魔法陣が急速に中央に吸い込まれるように縮んでいき、眩い光を放った。
「「「「!?」」」」
光りに目がくらんだ一同は暫く出現したゴーレムを確認できずにいたが。次第に目が慣れてきた頃、セリスの目の前にある人影を捉えた。そこには、まるで全ての色素を抜かれたような、全身真っ白なセリスと瓜二つの外見をした者が立っていた。
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