4-2
翌日。
「え、今日って梅高の企画委員が来るの?」
一年八組の前を通る手前、たまたま佐久間の耳に届いた発言。チラリと教室を覗けば、生徒会副会長の燐が
まあその辺の処理はそちらの仕事だろう、佐久間は自分にそう言い聞かせて生徒会室へと向かおうとしたが、
「佐久間くん、ちょっと来なさい」
彼女の目に留まった以上、逃してはくれないようだ。
「ったく、他人事のようにスル―しようとしたでしょ。企画委員に昇格した以上、これからは当事者の立場で考えなさい。いい?」
「説教はどうでもいいけど、何か問題があったの? 梅高の企画委員が来るとか聞こえたけど」
「私の知らないところで梅高と約束していたらしいの、鳴海さんが。今日は普段どおりの会議のつもりだったけど、来客を無下にするわけにはいかないし……」
鳴海さんに確認、ということで佐久間がスマートフォンを取り出せば、
「あ、鳴海さんからメール届いてた」
『ゴメンm《 ̄ー ̄》m、今日は梅高のリーダーさんが来る日だった。対応よろしく~』という文面。ディスプレイを燐、代行に見せれば、
「あのクソビッ……女は……ッ」
代行も発言こそしないが、苦い笑みというリアクション。
「ともかく、そろそろ来る頃だわ。どうしましょう……」
「かといって会議のほうも放置しておくわけにはいかないし、ここは小泉くんに会議を任せて、秋月さんとボクで来客の対応をすればいいんじゃないかな?」
「それが妥当な線ね。他校の生徒に佐久間くんを見せることが不安材料だけど」
佐久間はハハッと声を出しつつも、案を了承してくれた燐、代行を確認して、
「それじゃあ秋月さん、迎えに行こうか」
そうしてその後、二人は校門前へと赴き、梅桜高校からの来客を待っていると、
「おっ、佐久間じゃーん! こんちはー」
女子二名、男子一名、計三人の高校生たちがこちらへと歩んで来る。そしてその内の一人には、佐久間と燐の知る八坂奏那の姿もあった。
「こんにちは、再会は早かったね」
「だね。……ってあれ、佐久間って実行委員じゃなかった?」
「事情があって企画委員のほうにも回ることになったんだ」
もう一人の女子、梅桜の
「ようこそ、洛葉高校へ。それじゃ、案内するわ」
八坂を除く梅桜高校の二人は始めこそ佐久間の外見に軽く面食らってはいたが、話をするうちにどうやら彼とは打ち解けたようだ。
燐は生徒会会議室の隣の個室へと来客を案内すると、梅桜のリーダーがふと、
「そういえば鳴海さんは? 今日はお休み?」
「え、その……、大変申し訳ないんだけど、鳴海さんは家庭の事情でしばらく……その……。それまでの代役は小泉くんに任せるけど。ごめんなさい、連絡が遅れて」
燐がそう伝えると、梅桜の三人は当然のように困惑の
上頬に小さなシワを刻んだ燐、こっそりと佐久間に、
「(まずいわね、不信感を与えかねないわ。鳴海さんが三人を招いたのなら尚更ね)」
「(これからの対応で挽回するしかないよ)」
燐はクリアファイルからスケジュール予定のプリントを取り出し、
「本番まで二週間、企画も固まってきた頃だし、そろそろ実行委員にも働きかけないとね」
梅桜のリーダーは同調したように頷き、彼女も一枚のプリントを燐に差し出して、
「それを踏まえての、これが私たち側のスケジュール。そちらのスケジュールと照らし合わせて、私たちで打ち合わせできる日時を決めようか」
燐は交換し合ったプリントを佐久間と眺め、
(嘘……でしょ。梅高はもう実行委員の人員配置まで済んでるの!? ウチはまだ企画の整理すら付いてない状況なのに……ッ)
一方の梅桜側は、
「お、おぉ……なかなかダイナミックなスケジュール……。まあでも、どちらかと言えば開催側のほうが仕事は多くなるし……。仕方ないよ、うん」
(無理して納得しなくていいわよ……、こっちが情けなくなるじゃない……、はぁ……)
それでも顔に心配を示さない燐、クリアファイルをトントンと鳴らして、
「これからスケジュールを見直すわ。けど私たちだけなら、そっちの都合を踏まえて週三回は打ち合わせができそうね」
「洛葉さんがそれでいいなら、私たちは構わないけど? で、打ち合わせ場所は梅桜と洛葉、交互でいい?」
「そうね、それで――……」
が、佐久間は軽く挙手をし、
「洛葉と梅高の間、歩くと二十分くらい掛かるでしょ。少人数の打ち合わせならウェブ会議でもっと楽にできると思うけど」
八坂はキラリとウインクをして、
「いいね! なんかビジネスマンみたいでカッコイイし!」
「ツールなんてフリーで出回ってるし、回線とパソコンさえあればすぐ繋がるよ」
「でも佐久間くん、これから多人数での打ち合わせが増えるけど、その場合は?」
「両校の間に公民館があるから、そこを借りよう。使用料も安いし、何より移動時間の短縮に繋がる」
この意見には梅桜側も納得の様子で、
「私たちは佐久間くんに賛成。たしかに歩いてみて思ったけど、移動大変だったもん」
「そうね、私も大変だと思ったわ。それじゃあ、佐久間くんの案を採用しましょう」
こうしてその後も話は弾み、スケジュールを含めた洛桜祭の様々な部分が話し合われたのだが、その過程で数々の課題を知ることになった洛葉高校の二人であった。
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