第2話




家から学校までは40分ほどかかる為、我はこれから電車で学校に通う事になる。

最寄駅は家から五分足らずで着くためそんなに苦ではない。


「このカードをここにかざせば良いんだな」


すると、改札が開き電車が待つホームへの道が切り開かれる。


「一人で乗るのは初めてだ……緊張するなぁ」


ホームに行くと、会社へ行く人や学校へ行く人達で混雑していた。


「これを毎日とは…姉上はすごいな」


混雑の中、しばらく電車を待っていると電光掲示板にもうすぐ電車が来るという文字が流れた。

電車がホームに止まりドアが開くとそこはドアの縁まで人が詰め込まれていた。


「こ、これに乗るのか……くっ、行くぞ!!」


電車に乗り込もうとするが、人の壁に阻まれ電車の中には入れない。


「ぐっ、この!!」


何度も挑戦するが、いずれも壁に阻まれるか人に押し出されるかのどっちかで電車には乗れない。


「この、電車に、乗らないと」


現在の時刻は8時を回った所。学校の入学式は9時からなのでその前には着いていなければ、入学式に遅れる事になる。さらにこの電車に乗れなければ次の電車は8時20分、学校までは40分ほどかかる為、普通に9時を過ぎる事になる。


「我も入れてくれ!!」


人と人の隙間に強引に入り込もうとする。だが、体は入っているが、バックが電車の外にあった。

駅員が電車内に押し込もうとするが、バックの中には分厚い本などが入っている為当然潰れたりしない。


「すみません、この電車はもういっぱいみたいで、次の電車に乗車下さい」

「え?ちょ、ちょっと!!」


駅員に電車から引っ張り出されてしまった。まぁ仕方ないか、電車が我一人の為に遅れが出たら大変な事になるからな。


「我、遅刻確定……か」


だがその時、一人の救世主が現れた。


「あれ?君何やってんの」


ポニーテールの髪型に腰にカーディガンを巻いた少女が話しかけてきた。


「い、いや、電車に乗れなくて」


少女は電車の方に目をやると「あぁー」と一言だけ口にする。


「なるほど、じゃあこっちきて」


少女に手を引っ張られ扉が閉まるギリギリで1番後ろの電車に飛び乗る。そこには人は普通に居るがさっきよりは少なく見えた。


「君が乗ろうとしてたのは駅の出口が近い車両なんだ。この時間は通勤やら何やらで皆急いでいるからねー、あれに乗るのは大変だよ。その代わり、駅の出口から1番遠い最後尾の電車に乗ればそれほど混んでないんだよ」

「な、なるほど……とにかく助かった、ありがとう」

「いいよ、それに君も大事な入学式に遅れたら悲しいもんね」

「君も?」


その少女の制服を見ると、我と同じ光田中学校の制服を着ていた。全然気が付かなかった。


「私、山田明音。君とおんなじ今日から中学生になるんだ。君は?」

「わ、我は魔木田真央だ。我も今日から中学生になるのだ」

「もしかしたら同じクラスになれるかもね。その時はよろしく」

「あぁ、よろしく」


互いに握手を交わした所で山田明音はとある質問をしてきた。


「ねぇ、聞きたいんだけど何で自分の事「我」って言ってるの?」

「それは、魔王時代の名残りと言うか……その……」

「あぁ、なるほど。真央くん『厨二病』ってやつだね」


勘違いをされた。

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