第3話



「へぇー駅のそばなんだ」

「あぁ、そうだ」


我と明音さんは電車の中でたわいもない世間話をしていた。趣味は何なのか、自宅から学校まではどのくらいなのか、など本当にたわいもない話だ。


「明音……さんは」

「明音でいいよ。もう友達なんだし」

「と、友達!!」

「違うの?」

「いや、友達だ、友達」


まさか、こんな形で友達が出来るだなんて思っても見なかった。


「それで、何?」

「え?」

「聞きたい事があったんでしょ?」

「あ、あぁ」


まずい事に「友達」という単語を聞いたおかげで聞きたい事を忘れてしまった。


「あ、あの」

「ん?何」

「お、お洒落な制服の着方だな」


我は適当に思いついた言葉を言う事にした。

すると、嬉しそうに顔をニヤつかせ「そうでしょ」の一言だけ口にした。良かった、はぐらかせた。さっきの質問は思い出したら言う事にしよう。


「さて、もうすぐで学校だよ」

「ん?もうそんなに来たのか」

 

電車の中にある電光掲示板には今から止まる駅の次が「光田駅」と書かれていた。


「話しているとあっという間だな」

「そうだね」


そして「光田駅」の手前の駅に着くと、多くの人達が降りていく、そして先程より多くの人達が電車に乗り込んで来る。


「ちょ、ちょっと明音」

「あ、忘れてた。光田駅の前の駅、結構都会だからどの車両に乗っても混むんだった」


どんどん電車の中に人が雪崩れ込む。

我達は空いているドアの反対側のドアまで押し込まれた。


「く、苦しい……」

「いいぞ、真央くん。次の駅までその調子で頑張れ」


我の今の状態は、ドアと我の間に明音がいるといういわば壁ドン状態になっているのだ。

後ろから結構な圧力をかけられているため少しでも気を抜くと明音にダイブしてしまう。


「く、やばい……」


さらに言うと、今の我はぶっちゃけ言って力がない。体が小さいからだ。身長130センチのこの体は今でもよく小学生と間違えられる。まぁつい最近まで小学生だったけど。


「ぐぅ……あと、もう少し」

「頑張れ、頑張れ真央くん」


そして、「もうすぐ光田駅です」と車内のアナウンスが流れ、ようやく……


「つ、ついた」

「お疲れ!!」


光田駅に着く頃には、腕がまるで動かなかった。筋トレを少しでもやっておけば良かったと心の中でため息をこぼしながら深く後悔した。


「さぁ行くよ」

「待ってくれ、ちょっと休憩しよう」

「休憩する時間なんてないよ、早く早く!!」


もう朝からくたくただ。こんなんで毎日学校に通えるのか不安になって来た。


「……仕方ない、ここまで頑張ってくれたからね」


すると、明音は我を持ち上げ肩に乗せた。俗に言う「肩車」の状態である。


「い、いきなり何するんだ、降ろせ!!」

「いや〜真央くん軽いね、ちゃんと食べてる?」


こんな、人が多い場所で女の子に肩車されるなどとても平常心でいられない。我は降ろすように何度も言うが明音は聞き耳を持たなかった。


「さぁ、出発!!」

「恥ずかしいから降ろせ!!」


そんなやり取りをしていると……


「誰か!!その人泥棒です、捕まえて下さい!!」


突然、近くから誰かの叫び声が聞こえた。


「……行くよ、真央くんちゃんとしがみついててね」

「え?まさか……」


こんな日に限って何故こうも事件が起こるのだろう。最初に言っておくが学校は完全に遅刻。

我、完全に巻き込まれた。


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