第269話 フルフレア公爵の正体
俺はフルフレア公爵がグリンピアの街に来るであろう今週になると、先ずはティアの家に行く
近くでジョギングしている鳥人族であり鶏種のババトさんに挨拶してから彼女の家に向かうと、シグレさんが赤騎馬ブルドンに乗って家の周りを散歩していたのだ
どうやらこの人も今日は休みのようだ
アカツキ
『シグレさん、おはようございます』
シグレ
『やぁアカツキ君、妹とはちゃんと付き合ってるかい?』
アカツキ
『特に問題なく』
シグレ
『夜の方もかい?』
《下ネタだな》
明らかな下ネタだ
俺は苦笑いで誤魔化すことで精一杯
苦しそうな俺を見てシグレさんは『ごめんね、ブルドンと今日の夜食に使う食材買いに行くよ』と俺に告げて街の中心街に向かっていく
そこで俺は玄関から顔を出したルーファスさんに挨拶をすると、ティアの部屋に向かったのだ
彼女はまだ寝ていたのが驚きだ
いつもは俺より起きるのは早いイメージなんだけどな
『寝てる』
俺はそう呟きながら勝手に彼女の胸を掴んで揉んだ
良い声が聞こえると同時に、目にも止まらぬ早さで俺の手を叩いたのだ
しかもまだ寝ているし、しかも…しかも
『いった…』
凄い痛い、俺よりも腕力がある事だけは確かだ
《変態過ぎだろ兄弟》
『…』
こうして彼女を起こし、俺は仲良くギルドに向かうのだがちょっとした橋の前で他の3人が待っていた
まぁここを通ってギルドにいつも行くもんだから待ってたのだろうな
リュウグウ
『遅いぞ変態』
ティアマト
『じゃあ行こうぜ』
ギルドにはいつも通り依頼書の争奪戦の波、依頼板の前には溢れんばかりの冒険者が集まっている
まぁでもハーピィやゾル・レヴェンテとかは近くの丸テーブル席で冒険者の波がおさまるまで待っているようだ
んでリゲルとクワイエットさんは2階の吹き抜けから冒険者の波を眺めていた
エーデルハイドさん達も上だ
するとそこへクローディアさんが歩み寄ってくると、無言で2階に視線を向けた
その方向は応接室であり、明らかに来いという感じに思える
応接室に向かって椅子に座っていると、クローディアさんがく直ぐに姿を現す
少し真剣な彼女が珍しいが、きっとフルフレア公爵が今日、街に到着するからだろう
《フルフレアに関してお前らはどこまで知ってるのか聞きたいな》
先に話しをしたのはテラだった
これにはクローディアさんが驚いている
アカツキ
『テラ?』
クローディア
『マグナ国が生まれる理想国家コスタリカの時から公爵家として今を生きるエンデバー家を支えてきた貴族。ありとあらゆる国内の商業に手をつけ、時には戦争貴族として遥か昔は活動していたってのも知っている』
《コスタリカ家はそれは生業じゃねぇよ。とりあえずヒントだ、マグナ国は今まで何人の王族が不名誉な死を遂げた?この約400年という間に死んだ王族は誰だ》
クローディア
『イグニスの暗殺を抜かせば2人、オリヴィア王妃とハイドラム国王は40にも満たない若さで病死で亡くなったと聞いていたけども噂では陰謀に巻き込まれたとか聞いたことあるわね』
《まぁ今のお前らなら教えてやってもいいが、この念術はクリジェスタやエーデルハイドにも聞こえているから俺の話に動揺せずに聞いてほしい…知らないでいると狙われた時に動揺するだろうしなぁ》
『ニャハーン?』
リリディ
『ギルハルド、やはり聞こえているのですか』
『ニャッハン』
リュウグウ
『凄い猫だな』
《じゃあ簡単に行ってやる。マグナ国内で誰もが知る闇組織フェルシオンという暗殺ギルドの最高責任者であり。この国でも最強に近い力を持つ男だ。》
驚かないという選択肢がなかった
国内の誰もが闇素騎士フェルシオンを総力を挙げて検挙しようと動き、撲滅を狙ったが拠点の1つも見つける事が出来なかったのだ。存在が世間に知られてから一度もだ
幻の組織とも言われる闇ギルドは特定の貴族を暗殺したり重要人物を殺したりとしているらしく。工作員を捉えたとしても即座に自害するため、足取りが掴めないのである
そのトップが理想国家コスタリカから今の今まで王族を支え続けていたコスタリカ家、その本業は暗殺だったのだ
《ゾンネはフルフレアの一族に死ぬ前に指示をした。スキルに目が眩む馬鹿な王が生まれたら殺せ、と…。完全に俺という名のスキルを闇に葬る為にありとあらゆる記録を抹消し。そして今までそんな事情を受け継ぎながらも王族を支え続けた。フルフレア公爵はゾンネと結託している。気をつけろ…あいつはゾンネが蘇るという事を知っていたらしいが俺にはわからねぇ》
リュウグウ
『いつ記憶を覗いた…』
《タタラの時に気づかなかっただろうがよぉ?夜襲の際に奴は向かいの建物の2階の窓からお前らを監視していた》
それに驚愕を浮かべていると、誰かが部屋に入ってくる
リゲルとクワイエットだが険しい顔つきだ。
リゲル
『あんときにいたってのかよ!』
《いた、神は見てたんだ…。フルフレア公爵が名目上はティアお嬢ちゃんのカブリエールの件ってのは聞いている筈だが。俺の話を聞いてからだとそれだけじゃねぇってわかるだろぉ?》
クワイエット
『ゾンネと結託しているってどういう…フルフレア公爵さんが…』
リゲル
『信じらんねぇぞおいコラ』
クリスハート
『リゲルさん、神様に威嚇したら駄目です!』
やはりエーデルハイドさんらも入ってきたか、応接室が狭く感じてきたが…
フルフレア公爵は暗殺ギルドの者だとしても、敵なのかがわからない
テラもそれはわからないらしい
クローディア
『面白くなってきたわねぇ』
《だがフルフレア公爵は敵でもあるし味方でもある。あいつの先祖はゾンネのおかげで公爵けでいられる業務を永遠と任されている。そんな恩を知って情を表に出すか…生前のゾンネがコスタリカ家に受け継ぐために指示した言葉通りに動くかはフルフレア公爵次第だ》
アネット
『何をしたのさあの公爵の先祖』
《ゾンネは蘇る事を知っていた。だから当時の公爵に言ったんだ…蘇っても助けるな、殺せと》
ゾンネは永年共に生涯を分かち合った公爵家に、自分を殺せと代々引き継いでいた
その使命は果たされるのか、それとも無効なのかでフルフレア公爵が見せる態度は変わる
《話し合いはティアお嬢ちゃんとアカツキそしてクローディアだけの指定できたが…お前ら死ぬ気で明日はギルドに来い、フルフレア公爵の貴族騎士はとんでもなく強ぇぞ?》
リュウグウ
『私らは待機か…まぁロビーで身構えておくか』
リゲル
『まぁフルフレアさんが只者じゃねぇのは知ってるけども。この数だぜ?』
《暴れる世界恐慌アクマを普通に鎮圧していたあいつがこの数にビビると思うか若造》
それは聞きたくなかった
という事は全盛期五傑の人間と同じ力を十数年前にフルフレア公爵は持っていた、ということだ
今ならば?きっともっと強いだろう
リゲル
『でもあの人は裏切らねぇ、俺はわかる』
《なんでだ?》
リゲル
『神様にゃわからねぇ思い出補正だ』
《人間のそれが未知数なんだよなぁ…だがリゲルとクワイエット、お前らは何があってもフルフレア公爵から切害を加えられることはなさそうだ。あいつはお前らを気に入っている》
クワイエット
『こっちもお世話になっているからこそ、敵になって欲しくないよ』
ティア
『それは明日にわかるよ』
確かにそうだが、その明日は直ぐに来たのだ
以前は黒龍調査で来た時に聖騎士が同行していたが、今回はまったく違ったのだ
冒険者ギルド内を封鎖し、グリンピア冒険者は強制休日とするほどの徹底ぶり
そしてギルド内には屈強だろうと直ぐにわかる貴族騎士が30人ほどロビーにいたのだ
ここで問題が起きる
ギルド内に入れるのはイディオットだけだったのだ
仲間はロビーで待機となり、今俺はティアと応接室で緊張した面持ち椅子に座っている
《緊張し過ぎだ兄弟》
『でも…』
《普通にしてないと不味いかもだぜ?》
煽られている気がする
ティアはニコニコしながら俺の手を握ってくれたので気が楽になるが、奥のドアからクローディアさんと共にフルフレア公爵が現れると現実の戻される
しかも貴族騎士が5人もいるから更に体が強張る
フルフレア公爵は正面に座り、一息ついた
その軽い仕草で俺は自然と体が強張ってしまう
クローディアさんは俺達の近くに歩いてくると、立ったままだ
座らないのだろうか、しかも手には鉄鞭を持っているからなんか怖い
フルフレア公爵
『探り合いは嫌いだ。単刀直入に話さぬか?』
ティア
『カブリエールの件ってのは表上なんですよね?』
彼女は堂々とし過ぎている
だからこそカブリエールの件で来たんじゃないんでしょうと即座に言い放ったのだ
フルフレア公爵
『我のカブリエールなどどうでも良い。以前来た時から少し予想していたが…やはりそなたらの誰かが神のスキルを持っておる』
アカツキ
『神のスキルですか』
フルフレア公爵
『王族よりも我は詳しい、だが知らない振りをせんと権力に見合わぬ者は欲するであろう?前の王のように死ぬ羽目になるのだ』
いきなり目つきが鋭くなる
あれはもう俺達が彼の大してある程度の情報を得ているのだろうとわかっているからだ
じゃないと威圧的にこんな状況を作らない
ティア
『ゾンネさんは元気ですか?』
ティア、本当に君は凄いよ…俺は一生そのお尻を追いかけて生きようと思う
彼女の言葉に僅かに驚くフルフレア公爵はそこで威圧が和らぎ、僅かに笑ったのだ
フルフレア公爵
『食えに女、流石はエド国の強者を倒しただけの事はある』
ティア
『ゾンネと接触している筈ですよね』
フルフレア公爵
『しているぞ?』
正直すぎる、しかも彼の後ろの貴族騎士は驚く素振りすら見えない
全てを知っているかのような感じ、というか貴族騎士というのは表向きであり、実際は暗殺者として熟練された者だ
アカツキ
『何か、企んでいるんですか?』
フルフレア公爵
『ゾンネ殿は愛する妻の名を思い出すために我らコスタリカ家が幻界の森最深部の墓に向かった筈だが…失敗に終わったと聞いている』
ティア
『貴方の一族があそこに埋めたんですね』
フルフレア公爵
『そのようだ。そして我は1か月前に訪問してきたゾンネ殿に嘘をついた』
アカツキ
『嘘?』
フルフレア公爵
『神の声でお前らはゾンネの妻の名を知っている筈だ…とな。』
そうなると、確実にあいつはここに来ることになる
フルフレア公爵は『来るなら今月中にでも来るはずだ』と面白そうに話す
何故そんなことをしたのか?とティアは問うと、意外な答えが飛んできた
フルフレア公爵
『変わり果てたゾンネ殿を完全に抹消する為。先代の話を受け継いだがゾンネという男は自身の人生を代償にしてまでも時代を変えた傑物だと詳しく聞いている。しかし今の彼はどうだ?大きな野望すらないただの暴君…自身のやり残したことだけに固執した生き物でしかない』
ティア
『沢山の国を落としてまでも平和を望んだ人を貴方はどう思ってますか?』
フルフレア公爵
『昔の戦争時代は今思えば笑い話でしかない、権力を持った人間が引き起こした政治戦争だからな。となると根幹である根元を立つしかその時代を終わらせることは出来ない。だからゾンネ殿は自らを鬼と化して手当たり次第に標的を絞って国を攻め落としたのだ。残った国は意味があって残っている。お前らにはわからないだろうが、あれは今でも最善の策でもあり最悪の策でもある』
アカツキ
『でも戦争に関係のない人を殺してまでする事とは…』
フルフレア公爵
『だから甘いのだ小僧。戦争とは綺麗ごとではなく汚い矜持のもとで行われる政治の慣れの果て…戦争は戦争でしか終わらぬ、お前なら別の方法でその時代の戦争を止めれたか?お前が何前年という寿命を持って沢山の経験をしたとしても周りは変わらぬ。軽はずみな言葉は自身の弱さを見せるぞ?』
強く言われ、俺はぐうの音も出ない
その時代のあれこれはいうのはやめよう
しかしフルフレア公爵は俺達にゾンネを差し向けた事だけは確かだ
もう少しで彼は来るといったからだ
フルフレア公爵
『幻界の森では衰弱しきったところを襲われたらしいが、今のお主らならばクリジェスタも入れれば撃退ぐらいは出来よう…彼は怪我をするとなかなか治らぬ性質であるから時間を稼げる。今のようにいつ来るかわからない不安を持つよりも一度は痛手を負わせて時間を作り、完全に倒す手段を作ればいいと我は思うが?』
ティア
『急ですね。』
フルフレア公爵
『事態は急を要する。ゾンネ殿は新王であるゼファーに接触してしまったからな。王族の権力を使い、国内にある情報網を駆使してゾンネの妻の名を調べている。最悪の場合…我が自らゼファー王子を殺すことになるだろう…』
ティア
『後継者は貴方ですか?』
フルフレア公爵
『そのように一先ずはするしかあるまい。あの若造ゼファー国王にも既に2歳の息子を持ってしまっている。それが育つ間は我が頭に立つか、それとも奴の妻であるファラン王妃かであるな』
アカツキ
『貴方はどのように動かしたいと思っていますか』
フルフレア公爵
『お前にしては良い質問だ。できればゾンネ殿をその場で息の根を止めて悪の呪縛から解放してほしい。しかし今のお前らを見ていると少し困難だ。撃退し、そして力をつけて決着をつけよ。あの元英雄が生前の力を持ってしまえば誰も止められん…』
ティア
『でも悪魔がちょっと邪魔で』
フルフレア公爵
『イグニスか』
アカツキ
『知ってるんですか!?』
フルフレア公爵
『奴は哀れな王、それを怒りの王へと変えたのはテラ・トーヴァという神が間違って裁きをくだした結果だ』
彼はイグニスが人間ではないことを知っていた
経緯は教えてくれなかったが、悪魔種が今活発化している原因はスキルが人間の手に渡ったと知ったからだ
悪魔は国を持たず、この星で隠れ潜んでいた
無闇に人間に襲いかかる同胞を統率せんと立ち上がったのはイグニス
彼は見事に力で権力を支柱に納め、そして最果ての記憶の地と呼ばれる人間が寄り付かない場所に安息の地を作った
しかしテラはそんなこと知らず、好き勝手していた悪魔種が邪魔な存在だと判断して封印してしまったのだ
悪魔の中でも戦争はあった
好きに人間を食べようという派閥
これからは人間を避けるべきだという派閥
イグニスは人間との接触はいずれ悪魔にも被害が及ぶと知り、好きに人間を襲う同胞を鎮圧していただけに過ぎない
その結果が封印という理不尽を突きつけられ、イグニスはテラを恨んだのだと言う
ティア
『最悪なタイミングで封印されたんですね』
フルフレア公爵
『最果てには非戦闘員の悪魔が数多く封印されている。民を解放するためならお前を殺してスキルを奪うことすら容易く動く悪魔になったのだ。恨むなら神を恨むのだな。采配を早めたばかりに敵を増やした』
アカツキ
『なら希望はあるのでは?』
フルフレア公爵
『神を信じぬ悪魔に希望などない』
ティア
『でもテラちゃんが復活したら悪魔を解放することを約束すればイグニスも様子を見てくれるんじゃ…』
フルフレア公爵
『聖賢者よ、口約束で動かぬのが悪魔だ。何かを差し出さねばイグニスとて頷きはせんぞ?』
アカツキ
『怒ってますからね』
フルフレア公爵
『民を奪われた悪魔の王にやり残した事を遂行するために本当に暴君になった王、お前らは最悪な者に狙われている事を忘れるな』
その言葉で俺はとある事を思い出した
テラは言っていた言葉が脳裏に甦る
ゼペットの手下がお前らの近くにいる
それはきっとイグニスだと時間がそう答えを出してくれた
だから俺は今、わかったんだよ
誰がイグニスなのかを
アカツキ
『悪魔って人間とも仲良くなれそうな気がしますね』
俺はそう思った
フルフレア公爵とティア、そしてクローディアさんは首を傾げていたが。俺は希望を持てたのだ
誰がイグニスか
何故テラはギルド内でも念術を使わない場所があったが
会話の内容を聞かれないようにしていたのかもしれない
フルフレア公爵は『ゼファーには内緒にしといてやる、あいつはスキルがあると知ればそれを使って国民に正当な王だと知らしめようとする可能性があるからだ』と告げる
もし彼がスキルを手に入れようとした時には、死ぬ
俺達の目の前にいる人が殺すのだろう
そうやってスキルの存在を人間に浸透させず、戦争の火種になる可能性を消す筈さ
ティア
『私はそんな立場なんですか?』
フルフレア公爵
『好きに動け聖賢者の女よ、確かに国内ではお前の称号は法でも無効になるという可笑しな法律があるが何故そんな法があるかはさておき、我には通じぬ事を理解しておくがいい、所詮は力が全てだ』
まるで俺は勝てる、そんな言い方をしているようにも思える
彼は立ち上がると『ゾンネ殿の件は任せる』と言ってその場を立ち去ろうとする
しかしそこでクローディアさんが背を向けるフルフレア公爵に質問をしたのだ
貴方が倒さないのは何故?という質問
それはフルフレア公爵にとって究極の言葉だな
手っ取り早いのは俺達よりも彼が倒せばいい、そのくらいの力がきっとある
フルフレア公爵は振り向くが、その顔は真剣そのものだ
『力で勝てても情には勝てぬ、任せたぞ・・・。信頼できる仲間には伝えてもいい内容を話したが。間違えた者に話せば貴様らの未来は我が壊す、慎重になるが良い』
この時、俺は彼の言葉の意味が理解できなかった
こうして俺達はロビーに向かい、仲間達の近くに歩み寄ると彼らも近づいてくる
気づけばクリジェスタの2人もいるが、どうやら入場を許可されていたらしい
俺は先ほどの内容をリゲルとクワイエットさんにも話と、少しは驚いていたが直ぐに顔色を戻す
もうその場に貴族騎士達も撤退の準備をしていたが、そこで再びあの人が現れたんだ
まぁフルフレア公爵だよね、なんかクリジェスタの2人に用事でもありそうな視線を向けている
リゲルとクワイエットさんはそれに気づき、フルフレア公爵に静かに近づいたのだ
途端に貴族騎士が一斉に彼の前に瞬時に集まり、守りを固める
フルフレア公爵
『友の息子らだ、気にするでない』
貴族騎士
『御意』
直ぐにその場を離れていく
ちょっと驚いたけど、かなり統率された貴族騎士のようだ
あんな練度見たことがいよ
リゲル
『なんで俺の父さんが恩人なのかわからねぇっすけど、とんでもねぇ人だったとは驚きですよフルフレア公爵さん』
フルフレア公爵
『ライガーは我の正体を知っていた』
リゲル
『でしょうね』
フルフレア公爵
『何かあれば我に連絡するがよい。ライガーは魔力欠損症と陥った我の命を救った、この正体を知っていて尚・・な』
リゲル
『あの人は仕事仲間としてあんたを見てなかったんじゃね?前からそういう付き合いとか嫌いだとか言ってたしよ』
フルフレア公爵
『友として…救ったか』
クワイエットさん
『まぁでも貴方の正体を知ったからと言って僕らに牙を向けないのであればこっちもいつも通りの付き合いですよ。今までそうして来れたならばそうするやり方はあるでしょ?』
フルフレア公爵
『楽観的な性格は直らぬかクワイエット、まぁそれがお前の良さでもあるが…どうやら慈善団体イーグルアイでバタバタしたそうではないか』
リゲル
『まぁ中身聞きます?』
フルフレア公爵
『もう熟知しておる。クワイエットよ、もしもの話だが』
クワイエット
『なんでしょうか』
フルフレア公爵
『我でもあの不透明組織を認証するのはいささか納得できぬが、冒険者ギルド運営委員会の傘下に慈善団体イーグルアイを置き、尚且つ本部をグリンピアに異動させてお前がギルドマスターとして責任を背負う気があるならば話を通してやっても良かろう。お前は馬鹿に対して怖がらせるのは得意だ。リゲルの学園講師などの手助けする時間が殆どなくなるとは思うが…魔法祭までに決めておけ』
クワイエット
『それが僕は狙い何ですよねぇ。企画書作成したら送ります?』
フルフレア公爵
『1か月以内に我の直接送れ。そうしたらバルカン侯爵に伝えておく』
バルカン侯爵とは冒険者ギルド運営委員会の最高責任者
クローディアさんより偉い人は2人しかいないが、その中の1人である
そしてフルフレア公爵は帰る間際、リゲルにとある事を言ったのだ
フルフレア公爵
『お前は父の名を告げ、貴族との結婚では貴族ではないお前はダンカード家の名を継ぐことになるだろうが…我はそれを望まぬ。ホルン家の家系は世に必要だ、女がそれを了承すればダンカート家に恩恵を与えてやろう』
リゲル
『なんでそこまで俺にこだわる?』
フルフレア公爵
『なんとなく、だ』
こうして公爵は直ぐにグリンピアから撤退していったのだ
緊迫した空間にずっといたから体中が重い、凄い緊張したんだ
静かすぎるギルド内、俺達は丸テーブル席に座って無言で色々と考えた
ゾンネは近いうちに来る、それを倒さなければならない
もし無理だった場合、次にゾンネが来るときは全盛期の力を持って姿を現す
それは俺達の負けを意味している、ということだ
ティア
『倒し切れなかったら色々と私達が見えない場所で大きく動いちゃう、だから倒さないと』
《その通りだ。最悪撃退とは言っていたがよ?逃がせばゼファー国王が棺桶に片足つっこむ状況になるんだ。ゾンネは既にゼファー国王を操っているらしいからな》
リュウグウ
『過度に動いてしまった場合、フルフレア公爵が国王を暗殺…か』
《そういうこった。お前ら次第だぜ》
そういう事か
少ししてから外にいたエーデルハイドの皆さんが来たのでどんな内容だったかを教えたのだが
あまり驚く様子はない
もう慣れたと言いながらアネットさんが苦笑いしたくらいさ
そこでリゲル、直球でクリスハートさんに言ってしまう
リゲル
『そういやルシエラ』
クリスハート
『なんです?』
リゲル
『リクゼンさんに連絡してほしいんだけどよ。お前と結婚したら普通に俺はお前の家系に取り込まれるじゃん?フルフレア公爵はルシエラがホルン家としてくるならばダンカート家に恩恵を与えるって言ってるんだけどどうする?』
突然の話にクリスハートさんが固まる
しかも顔は真っ赤だ
それをマジマジとみるアネットさんとルーミアさん、この2人は面白がっているだけだ
クリスハート
『その…あれ…』
リゲル
『まぁお前のこれは任せる。一応リクゼンさんには手紙を書いといてくれ』
小さく頷く彼女は可愛かった
さて、明日はリリディの魔法祭に向けての特訓がギルド内の地下闘技場で始まる
あと1か月半、稽古はリゲルとクワイエットさんだが…大丈夫だろうか
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