第268話 6 イーグルアイを鎮静化させよう
アカツキ
『あれ』
起きたら目の前にティアがいた
どうやら起こしに来たらしいが、もう朝食の時間だよと言いながら俺の体を叩いている
眠いけど、起きるしかない
朝食ではリゲルとリリディに深夜に起きたことを話されたが、怖い
不安ながらも起きてはいたが眠気に負けて寝ちゃったのだ
隣接している軽食屋でクロワッサンを食べながら黙々と話しを聞くクワイエットさん
その目は閉じており、体は起きているけど脳はここにあらず、といった感じ
リゲルがチラチラと彼を見ているが、無視しているようだ
リュウグウ
『さて、どうする?』
リゲル
『夕方にジョブスの館、そこですべてが終わるが貴族騎士が上手く動いてくれていたらな』
《俺も兄弟と一緒のタイミングで寝ちまったから深夜の事は話を聞いて理解したが…トロイがたぶらかした感じの貴族騎士をどう動かしたんだ?》
リゲル
『真実を伝えただけだ。たぶらかす言葉よりもこの先に起こる可能性が高い話をしただけさ…あいつらがジョブス男爵の事をある意味で信じているならば裏切るだろうよ』
アカツキ
『裏切る?』
ティア
『まぁでもなんとなくわかるけどね』
ティアマト
『わかんねぇ』
リゲル
『行けばわかるさ』
ティアマト
『千聞は一見に如かず、だな』
リュウグウ
『惜しいな…』
こうして俺達はリゲルの提案でタタラの冒険者ギルドに足を運ぶことになったのだ
トロイとトルーパーがいたらどうするんだと不安だが、リゲルは『そこまで根性ある男じゃねぇよ』と言って堂々とギルドの扉を強く開けて入っていく
冒険者が一番集まる時間帯の為、ロビーには溢れんばかりの人間がいた
ティアはいつの間にか能面を被っているけど、なんか俺が慣れてきた
『あっ…』
『リゲルとクワイエットだ』
そんな声が辺りから聞こえる
だが先頭を歩くクリジェスタの2人は声に見向きもせずに受付まで歩いて進む
ここで何を企んでいるかはわからないが、何かを確認しに来たと予想では思う
リゲル
『トロイだぜ』
受付嬢
『今日は体調不良で急遽休みになりました』
《夜逃げか?》
リゲル
『ならトルーパはどこだ』
彼は振り向きながら言い放ったのだ
視線の先には丸テーブル席で体を強張らせるイーグルアイという冒険者チームの3人
どうやらトルーパがいないが…
『今日は集まる予定だったんだが来てねぇんだよ…ほんとだ』
『そのうち来るかも知れねぇが…俺達は何もしてないぞ…』
リゲル
『黙ってろ』
か…可哀そう…
《来てないって状況把握できたな》
クワイエット
『予想通りだし今行くしかないかも、リゲルわかってるよね』
リゲル
『来て正解だ。馬鹿に時間を与えちゃならねぇ』
こうして俺達がギルドを出た後に向かった先はジョブス男爵の屋敷だ
男爵にしては大きい家だね、とクワイエットは言いながら領内に入る為の通らなければならない鉄格子の扉の前に行くが、そこには貴族騎士が2名見張りをしている
彼らは一度俺達を引き止めるが、リゲルが自身の名を告げると2人の騎士は驚いたのだ
その後に行動に俺達が逆に驚かされる、道を開けたのだ
リュウグウ
『な…!?』
ティア
『えぇ?』
リゲル
『うし…んじゃお前ら騎士はそのまま警備兵詰所と聖騎士詰所に走れ。証拠は持ってるな?』
貴族騎士
『持っておりますが…本当に我らは…』
クワイエット
『じゃないと君らジョブスに捨てられて終わりになるだけだよ?トロイとトルーパは?』
貴族騎士
『屋敷の中に』
ティアマト
『なら行こうぜぇ』
《なぁるほどなぁ》
貴族騎士2人が走って去っていくと、俺達は堂々と庭園の中を歩いて建物の前に辿り着く
3階建ての屋敷であり、かなりの大きさだ
子爵級でも住んでいても可笑しくはない、だがここに住んでいるのは男爵である
クワイエットさんは笑顔のまま、扉を開けると近くを掃除していた若いメイドが口をあんぐり開けているのが見えた
驚いているのか…
リゲル
『勝手に予約していたリゲルだ。ジョブス男爵はどこだ?』
メイド
『へ…あぁそうだったんですね。ジョブス様は応接室で客人と会議をしていると騎士から聞いております』
リゲル
『その会議に遅れたんだ。悪いが急ぐから案内してもらうぜ』
メイド
『はい、わかりました』
若いメイドに連れられて廊下を歩いている際、貴族騎士とすれ違うが、みんな驚いた顔をしていたんだ
しかもリゲルを見ただけで入口に走っていくのがこれまた不思議だ
男爵となると騎士を囲い込むのにも費用が掛かる為、10名いれば普通だ
合計7名とすれ違ったが、全員入口に言ったんだよ
何を吹き込んだのだろうか…
こうして応接室の前まで行くと、騎士が1人見張りをしているが、頬が張れている
若いメイドを解放し、俺達はリゲルとクワイエットの後に続くとドアの前にいる貴族騎士に話しかけたのだ
リゲル
『お前は最初に殴った騎士』
貴族騎士
『来ましたか』
リゲル
『来ねぇとお前らどうなるかわかんねぇんだぞ?中はどうなってる?』
貴族騎士
『それが…あっ!』
何故だ…何故クワイエットさんは待てずにドアをけ破ったのだ
これには流石のリゲルも面倒臭そうな顔を浮かべているが、してしまったことは仕方がない
クワイエットさんは笑顔のまま部屋の中に入ると俺達も雪崩れ込んだよ
そこにはテーブルを挟んでトルーパ、トロイがふくよかな貴族風の男と一緒にいたんだ
トルーパ
『こいつがリゲルだ…男爵』
あれがジョブス男爵だ、きっとそうだが彼の背後には2人の貴族騎士
あまり驚く様子は見せていないの
肝心の3人共驚いた顔を浮かべたまま椅子から動けないでいるが…
トロイ
『あ…』
リゲル
『よぉ来たぜ?元男爵』
完全にトロイを無視し、彼は近くの椅子に座ると直ぐに足を組む
貴族相手に堂々とした振舞に俺は不安だ。
不法侵入と貴族の切り札である侮辱罪とか色々とこっちは牢屋に入る為の実績を今ここで増やしているんだからな
ジョブス男爵
『貴様。リゲルだな』
リゲル
『やっぱ馬鹿だ。知らない振りしときゃ良いのによぉ…。普通はお前は俺の事知らない。横領詐欺をしていたグループじゃない限りは』
ジョブス男爵
『知るか!』
彼は怒鳴りながらも懐から連絡魔石を取り出すと、貴族騎士を呼び出そうと連絡し始めたのだ
その様子をリゲルとクワイエットさんが怠そうな表情で傍観していると、ジョブス男爵は彼らの態度に更に怒りを顔に浮かべる
ジョブス男爵
『お前らは不法侵入に侮辱罪、ましてや貴族相手だと罪は重いぞ!わかっておるのか』
リゲルは黙りそうにない男爵を少しでも黙らせるために、とある事をする
ティアに視線を向けると能面を外すように指示をしたのだ
彼女が外してもピンとこない男爵
しかしトロイやトルーパが叫びながら椅子から転げ落ちるのを見てしまった男爵は少し驚く
きっとタダ者じゃないと悟ったからだ
その通り、彼女に貴族の権力は効かないし法も動かないからだ
トルーパとトロイは顔を知っていたから驚いたんだ
リゲル
『ガブリエールの称号を持つ聖賢者ティアだ。名前を知らないとは言わせねぇ』
男爵や貴族も驚く
特になんて額から汗が凄い流れてる
ジョブズ男爵
『ば…馬鹿な!ハッタリだ!』
リゲル
『試せよ、一応ここにいるだけだからお前らに危害を与えるわけじゃねぇがよ、そっちが動いたら回復魔法師会の責任者であるヴァーニアルド伯爵さんが鬼の形相するだろうし、王族はお前の親族諸とも首を斬るだろうな』
ジョブズ男爵
『な…ななな!?』
リゲル
『別にティアちゃん使う予定無かったがお前の怒りよう見てると馬鹿な事しそうで保険でこうしてもらってる。本題になるがお前が慈善団体イーグルアイを肥やしに違法なやり方をしていたのはトロイとトルーパの会話を仲間が聞いちまったんだよ。』
ジョブズ男爵
『わ、私は知らんぞ!』
リゲル
『トルーパがさっき俺の名を言ったのが不味かったぞ?何でコイツがリゲルっつったのか興味ある』
ジョブズ男爵は舌打ちをすると、トルーパを睨む
トルーパはやってしまったと言わんばかりの表情になると、それは直ぐに真っ青へと変化していく
クワイエット
『貴族会の規則にあるよね?決められたやり方以外での稼ぎは申請を通さないと違法となり、貴族会から追放…それってつまり準男爵まで落ちる事になるんだよ?』
ジョブズ男爵
『知らんもんは知らん』
リゲル
『悪いが証拠持ってるんだ、今それを面白い奴等が持ってくる』
ジョブズ男爵
『面白い奴等だと?』
そこでタイミング良く、面白い奴等が現れたのだ
警備兵が10人、それに聖騎士が8人だ
これにはジョブズ男爵は驚くというよりも不気味な笑みを浮かべたが、彼は勘違いしている
ジョブズ男爵
『貴族騎士が呼んだのだろう、ガブリエール以外を捕らえよ』
警備兵
『捕らえられるのはジョブズ男爵、あなたになるやも知れませんよ?』
ジョブズ男爵
『はぁ?』
警備兵は懐から書類を取り出すと、ジョブズ男爵に見せつけたのだ
対するジョブズ男爵は驚愕を浮かべ、そして汗を大量に流す
警備兵
『慈善団体イーグルアイで悪質な摂取を記録した書類に何故あなたの判子があるのです?しかも細かく月々の収入が書いてますが、この金額だとイーグルアイのタタラ支部が報告した利益と全然見合わないので改竄されていると気づきました。それにそうとなると貴方は脱税している可能性が非常に高いのです』
どうやら嘘の報告書をマチの役所に提示していたらしい
脱税は貴族でも平等に罪として裁かれるのだ
その場しのぎの良いわけがポンポンとジョブズ男爵の口から飛ぶが、警備兵はその言葉に色々と矛盾点があることをカウンター気味に何度も言い返す
警備兵
『貴族会に報告してない稼ぎですよね?。慈善団体イーグルアイに所属する冒険者の稼ぎの5割は差し引くというのを申告している事はこちらも早急に調べて来たので理解してますが。もし毎月提出している報告書が改竄されて出されている場合、あなたの申請した書類は嘘をついているとなるのですよ?これは爵位が下がるという問題ではなく、初代国王が作った貴族会の制度を破った事になります。没落貴族にオプションとして脱税というこの国では殺人と同じく思い罪。一般人以下になるとお分かりかジョブズ男爵』
私は知らない、部下が勝手にやった事だと貫くジョブス男爵だが
書類に押している印章という判子のようなシルシはジョブス男爵しか持てない種類の物であるために言い逃れは苦しかった
聖騎士ハリウッド
『悪いですが警備兵の人とご同行お願いいたします。ジョブス男爵』
ジョブス男爵
『なななな!?』
警備兵
『トルーパとトロイさんもです。罪を犯した可能性が高い者に対して権力という効力は一時的に使えませんのでご了承を。状況証拠ならまだしも、こちらには物的証拠がございますので抵抗すればどうなるか…おわかりですね?』
ジョブス男爵、トルーパ、トロイの顔面が蒼白していた
こうして警備兵達に囲まれて連行されていく様子を俺達は応接室を出てから屋敷の入口まで見送る
一部の警備兵はジョブス男爵の私室の調査をするために令状を用意していたため、数人が残って調査だ
屋敷を鉄格子の入口から眺めていると、その場にいた警備兵がふと口を開く
警備兵
『最悪の場合、慈善団体イーグルアイは解体されるでしょう』
リゲル
『ならねぇだろ?』
警備兵
『まぁ被害者ですからタタラ法廷会ならば組織の中の業務改正を行うだけにする可能性が高いですね。今回このような事が起きた原因としましては冒険者の稼ぎが5割差し引かれるという規則が足枷になってましたから。そこは変わるかと』
クワイエット
『しかも魔石報酬のみ。依頼はイーグルアイに流れてこないからってのが大きいよ』
警備兵
『そこは冒険者ギルド運営委員会からある程度の依頼書を流してもらうように話し合いを設けなければならないかと。どうなるかは不明ですが』
リゲル
『勿論あれだよな?タタラ支部の横の事務所の今はおさえてくれたんだろ?』
警備兵
『現在は別の者が調査しているので全容が明らかになるのは1週間後かと』
リュウグウ
『貴族というのはわからんな』
警備兵
『そうですね』
そこへ貴族騎士12人が警備兵と共に俺達と共に現れた
彼らが警備兵と聖騎士をタイミング良く呼んでくれたのだ
何故彼らが協力したかというと、無駄に動いてしまったがために自分達も切られる可能性が高いからとリゲルが逆に密告して被害を抑えるべきだという事を吹き込んだのだ
ジョブス男爵は部下の貴族騎士を裏切る前に逆に裏切られ、大事な書類を密かに奪われたのさ
リゲル
『こいつらはどうなる?』
警備兵
『重要参考人として位置付けをしております。飽くまで貴族騎士は使いであるために指示通り動いていたとなれば罪は軽い。長くても1か月は服役したとしても罪を擦り付けられていた時の事を考えれば安い筈。』
《まぁどうなあるかは時間が教えてくれるだろうよ》
そういう事だろうな
クワイエットさんは何かを閃いたのか、警備兵に何か話し始める
警備兵は驚いた顔を浮かべていたが『方法としてはありかもしれない』と口にする
ティア
『何か企んでる』
アカツキ
『何を企んでいるんだろうか』
クワイエット
『それも時間が教えてくれるよ。さぁ帰ろっか』
リリディ
『そうしましょう』
警備兵
『ご協力感謝します』
アカツキ
『あとを頼みます』
こうして俺達はその場を離れたが、クワイエットさんは何を話していたのか気になったんだ
アカツキ
『クワイエットさん、何を話していたんです?』
クワイエット
『どちみちイーグルアイの責任者は変わるんだしさ、良い流れだったからクローディアさんに話しを持って行こうと思ってね』
ティアマト
『あの人、イーグルアイ嫌いだぞ?』
クワイエット
『あの人がやらなくてもいいかな』
まさか…クワイエットさん?
まぁどうやら慈善団体イーグルアイを冒険者ギルド運営委員会の傘下に置くような流れの方が普通の流れではないだろうかという案を警備兵に言ったらしいのだ
そんなこと警備兵に言ったとしてもそこまでの権力は無いが、一応タタラで起きた事だし警備兵に話しておけば『実際は冒険者ギルド運営委員会の傘下に加えたほうが本来の意味合いとしては正確な流れになる筈だから今回の様な事は起きない、イーグルアイ職員を冒険者ギルド運営委員会の職員として転職させて活動させ、尚且つ責任者を入れなおせばいい』という事らしい
クワイエットさん、やる気満々でした
『まぁ夢物語だけど、クローディアさんに話してみるよ』
俺達はその日のうちにグリンピアに戻る
そのままギルド前での解散となったが、俺は気になったので仲間と共にギルドの中に入ると、受付奥で事務仕事をしていたクローディアさんをクワイエットさんは呼び、応接室に向かったのだ
リゲルは眠いということで部屋に戻る
応接室には何故か俺とクワイエットさん、他の仲間はロビーで俺達を待つようだ
部屋の中心には長テーブル、奥にドアがあるがそこからクローディアさんが姿を現すと直ぐに椅子に座る
そこでクワイエットさんは報告をしたのだが、クローディアさんは『今回の件の結果が出たら考えましょう、一先ずはお疲れだと思うから休みなさい』と言ってからその場を離れた
クワイエット
『眠いし帰ろっか』
アカツキ
『まだ18時ですよ?』
クワイエット
『昨夜は夜更かししちゃったんだよ』
起きていたらしい
応接室を出てからはクワイエットさんはニコニコしながら部屋に戻る
夏にはシエラさんの家に住み込みになるとは聞いていたが、少しずつ軽い荷物は移動させているのだろうか
ロビーには冒険者はほとんどいない
だって土曜日だからな
俺は仲間のもとに戻ると、2日休む事を決めてからギルド内で夜食にしたんだよ
新メニュー『オムそば』を食べるためにな
卵を使用しているがオズボーン養鶏場の卵であり、グリンピア産さ。
銅貨8枚とやや高めだが、これまた美味しいらしい
5人全員にオムそばが運ばれると、誰もが美味しそうに食べ始める
リリディ
『美味いですね』
『ミャハーン』
ギルハルドは床でオムそば食べてるが、猫も食うのか…
リュウグウ
『美味だな』
ティア
『おいしー!』
《働いたあとの飯は格別だな》
アカツキ
『そうだな』
リリディ
『明日は休みですので静かに休みます』
《みんなそうしとけ、来週はあれだろ》
来週にはフルフレア公爵という国内でも王族に連なる権力を持った貴族がグリンピアに来る
目的はティアに会うためである
何も起きなければいいが、そう思えない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます