第265話 3 イーグルアイを鎮静化させよう

リゲルの荒げた声がロビー内に強く響き渡る

それだけで一気にその場が静かになったんだ…無理もない

だって言葉に殺意が凄い籠ってるんだ、誰だって気づくよ


トルーパー

『あ…お前は…あ…』


『ト…トルーパーお前…』


リゲル

『てめぇ小物トルーパーじゃねぇか。俺のケツ蹴り上げてリベンジでもしようってのか?あぁ!?ここで死ぬかコラァ!?』


凄い、凄い怖いぞリゲル!

彼の迫力で怖気づいてしまうトルーパーに誰もが驚いているが…


トルーパー

『いや…これは』


リゲル

『手を出すのは秒だなぁ!?なら秒で吹き飛びてぇか!』


トルーパーは悲鳴を上げた瞬間、リゲルに秒で殴られた

殴られた時の顔が俺達の方を向いていたので、涙目の彼の顔が一瞬目が合う

そして秒で吹き飛んでいったのだ


周りの冒険者は驚愕を浮かべて立ち上がる者がチラホラ、受付嬢も非常に驚いている

リゲルは頬をおさえて尻もちをついたまま近づいてくるリゲルから離れようと必死になっているけどもクワイエットさんは腕を組んで見ているだけだ

どうなるんだろうか


リゲル

『おい、お前ここでふんぞり返ってんのか?あん?』


トルーパー

『いや…俺は』


リゲル

『俺はギルド職員として権限も得ているのは知らねぇだろ?冒険者資格はく奪されてぇか?』


トルーパー

『そんな…今日はイライラしててその!リゲル…さん!』


名前を口にすると、周りの冒険者はリゲルがリゲルだと気づく

隣の街が知らない筈がない

グリンピアが国として生まれてから記録上、2人組でAランクに到達した冒険者チームのクリジェスタ

彼らは付近の街だけじゃなく国内で知らぬ冒険者などいないんじゃないかというくらい有名らしい


しかも元聖騎士、1番隊の中でも精鋭と言われていることも情報は筒抜け

戦いのエリートと言われているのが羨ましいよ


『リゲル…だと』


『クリジェスタかよ…トルーパーも焼きが回ったか』


『やべぇ…とんでもねぇのが来てるぞ。キレ過ぎだろ…』


『リゲルはヤンキーだって有名だぞ』


そこ有名なの?そこなの?


リゲル

『次はどこかわかるか?言ったよな?次は股間に剣を刺すって』


トルーパー

『それは…』


リゲルはトルーパーの前でしゃがみ込むと、胸ぐらを掴んだ

ここまで変わったか…トルーパーよ


リゲル

『一発土産にもらっといてやる。ここで威張り散らしたら速攻で冒険者資格はく奪してやるからな?覚悟しとけ雑魚が、そん時は腕を失くすぞ』


超光速で何度も頷くトルーパーの速度はB以上のランクがありそうだ


ティア

『私のお兄ちゃんみたいだね』


リゲル

『あれと一緒かよ…』


クワイエット

『あははは!』


リゲル

『馬鹿は嫌いだ』


こうして俺達はギルドを出ると、既にティアマト達が待っていた

ギルド内が騒がしかったけど、待ってれば来ると思ってたとリュウグウは笑いながら話す

何が起きていたかはだいたい察しがついていたようだ


リリディ

『宿は全員シングルで確保しましたよ?それで夜食はどうします?』


クワイエット

『ありがとうね。夜食はこっちが出すよ?あと前金で渡しとく』


1人金貨3枚、ってことは6枚もらえるのか

いい依頼だなこりゃ!


リゲル

『貴族がつっぱねたらティアに頼むとは思う、その報酬と交通費だと思ってくれや』


クワイエット

『ガブリエールに対してとんでもなく格安ブラックだけどね』


ティア

『10日間杏仁豆腐奢ってくれるし良いよ!』


彼女の単純だが、デザートには目が無いのが弱点だ


んで夜食は凄い所だったよ

海鮮丼屋さんであり、サーモンとウニの組み合わせで銀貨8枚をみんな大盛りで注文したんだ

凄い美味かった、というか最近はクリジェスタも冒険者活動収入にギルド職員収入そしてグリンピア学戦からの実技講師による学園からの収入がある事をクワイエットさんは食べながら話す


ティア

『凄い職歴だから収入も凄そう…』


クワイエット

『お金が減らないよね』


リゲル

『まぁな』


アカツキ

『…』


《羨ましいか兄弟?》


アカツキ

『お…俺は冒険者だから…』


『ハニャーン』


足元でギルハルドがサーモンを食べ終え、俺の足をスリスリしている

お前…慰めようとしてるのか!?だとしたらやめてくれ、心に刺さる


リュウグウ

『だが大変じゃないか?休みはあるのか?』


クワイエット

『剣舞科講師は週に3回呼ばれるからね、毎日午後に授業はあるけど飽くまで僕らは実技講師だから週に3回、んで週2階冒険者活動で日曜日は冒険者講習なんだけど…』


リゲル

『土日休みてぇってのあるし、講習受ける奴らも日曜は休みたいだろうから剣舞科講師の日の午前中にしてから学園に向かえばいいやってなった』


ティア

『確かにそうだね。学園で専攻してる授業って午後だし』


リュウグウ

『まぁ週に2回は休みたいのは同意ね』


リゲル

『だが冒険者活動の収入はだだ下がりだぜ?北の森の奥まで行くから魔石報酬でなんどかしてるけどよ』


本当に冒険者かわからなくなる

んで夜食後、俺達は宿に向かったのだが

そこは結構立派な宿であり、1泊銀貨6枚とお高い

支払いは既にリュウグウに託していたからそのまま部屋に行けるが、グリンピアに帰れば経費が降りるから実質無料だ!


部屋は無駄に広い、家族客で一部屋使ってもいいくらいだよ

しかも良い匂い…安らぐ…


そういえば今日はタマゴを食べていない

最近オズボーンさんから卵が届くけど、本当に美味しいからハマっちゃったんだ

ティアが彼の養鶏所、このタタラ支店の鶏さんの体調を治したから報酬としてもらえてるんだけど

1回抜くと不安になるな…帰ってからの楽しみだ


オムライスが上手いんだよホント


『テラ、本当にあれはこないのか』


《イグニスもお前の様子を見ている。良いタイミングで現れると思うが今は大丈夫だ》


『なんでわかるんだ』


《神様だからな、下手な変装くらいお見通しさ》


『変装だと?』


ちょっと様子が可笑しい

俺は1つ疑問が浮かぶ、グリンピアにいるゼペットの手下だ

その事を聞くと、テラは《そういう所は鋭いな》と話す


『そろそろ教えてくれ、グリンピアにいるのは誰だ』


《悪いな…ゼペットの手下といったが嘘じゃねぇ》


『お前、まさか』


《イグニスがいるんだよ、だからあいつはお前らを近くで見ている》


なんてことだ

だがテラは《普通に街では過ごせ、お前らにそれが誰なのか教えたら今までと僅かに対応を帰るからバレる、そうなりゃ死ぬぞ?》というのだ

ならば聞かないほうが良いだろう


するとノック無しでティアマトが部屋に入ってくる

俺はいつものことだと思いながらベッドで横のまま動かない

ノックしろと言っても聞かないんだよなぁ


ティアマト

『ノックは心の中でした』


アカツキ

『俺の心に響かなかったぞ』


ティアマト

『面白い返しじゃねぇか』


ウケたらしい

腹を抱えて笑ってくれたが、嬉しくないぞ?

椅子に座る彼は腕を組むと『散歩しようぜ?』と話す

運動したいのだろう、ならば付き合うか


夜のタタラは人が少ないから歩きやすい

警備兵が多いけどね


ティアマトは食べ足りなかったから屋台で食い歩きしたかったのか、カレーパン専門で売っていた屋台を見ると足早に向かう

俺は満腹だから買わなくても良い


てさティアマトは3つ買ってる

大食いだし仕方がないか


彼と街中を歩きながら他愛の無い会話をしていると、前から見覚えのある白い模様の鎧を纏う騎士が二人歩いてくる

あれは聖騎士だ


まだ俺達と同じくらいの歳

それで聖騎士に入れるとは凄いな

人員を増やすために安易にいれたわけじゃなく、昔ながらの厳しい試験に合格したものだけとはクワイエットさんには聞いていたげときっと前から歩いてくる二人は相当強い筈だ


彼らは互いに会話をしながらもちゃんと周りを見て歩いてる

警戒中なのかはわからないが、タタラ支部で何をしているのだろうか


聖騎士

『ん?』


ふとすれ違いそうになると彼らは俺達を見て足を止めたのだ

何かしただろうかと不安になったけど、そうじゃなかったよ


聖騎士A

『カレーパンをどこで購入されたか、冒険者よ』


ティアマト

『俺達が来た道を真っ直ぐ100メートル先、屋台がある1つ銅貨2枚だぜ?』


聖騎士A

『助かる』


聞いただけだった


俺は無駄に接触せずにそのまま立ち去ろうとした

しかし、ティアマトが無駄に彼らに話しかけちゃったよ


ティアマト

『聖騎士ってマジで13番隊まで作ったんすか』


聖騎士B

『その通りだ、まだ私らは13番隊でヒヨッ子だがな』


ティアマト

『でもクワイエットさんは入れるだけで凄いって言ってたな』


いっちゃ行けない名前、いったなお前

クワイエットさんの名をティアマトが口にすると、二人は驚いてしまったのだ


聖騎士A

『何故あの方達の名を…』


アカツキ

『すいません、グリンピアの冒険者なもので知り合いでして』


聖騎士A

『なるほど、今は何をしておられるのですか?』


アカツキ

『グリンピアのギルド職員をしながら冒険者ですね。あとは学園の講師です』


聖騎士B

『講師もとは…1度お目にかかりたいものです』


ティアマト

『あんたら入れ違いなのに知ってるんすかい?』


聖騎士A

『勿論だとも、誰が強いのかってのは男として興味がある。先月の集会では1番隊のミミリー殿に聞いてみたら殉職なされたルドラ1番隊隊長にクワイエット1番隊副隊長それにリゲル1番隊副隊長代理が飛び抜けていたと聞いてます。名前は前から知ってましたが』


聖騎士B

『ロイヤルフラッシュ聖騎士長様も最近は機嫌がとても良いと聞きます。何せ聖騎士出身がグリンピアでの記録上では初の二人だけの冒険者ランクAですから聖騎士の評価も上がって志望者が増えているのです。我らはその勢いで入ったようなもんです』


二人に憧れて入ったのか

ミミリーも元気だろうか、女性なのに1番隊とか凄いんだよな


アカツキ

『訓練きついです?』


聖騎士の二人は苦笑い

顔を見ただけで答えがわかるなぁ


アカツキ

『お勤めご苦労様です』


聖騎士A

『何かありましたら詰所に顔を出していただけると助かります。それでは』


巡回中だったんだな、彼らはにこやかに俺達の歩いてきた方向に去っていった

ティアマトは『戦ってみてぇな』と遠ざかる彼らの背中を眺めながら言うが、止めといたほうが良い

勝つ負ける以前にロイヤルフラッシュ聖騎士長に怒られるからな


《まぁ聖騎士とも他人じゃなくなったんだ。何かあれば助けにはなるだろうよ》


アカツキ

『そうかな』


《共に森を抜けた仲だ》


なるほど


俺達は騎虎の勢いで幻界の森で地獄を味わったが、無事に生還できた

言葉の意味は、虎に乗った者は途中で降りると虎に食われてしまうので降りられないように、やりかけた物事を、行きがかり上途中でやめることができなくなることのたとえ。だ


これティアに教わった

そんな状況で聖騎士と協力して森を抜けたから他人と言えない関係ではあることだけは確かである


今後は助けになる時があるのだろうかと思いながらも俺達は商店街に向かう

するとそこで共にタタラに来たグリンピア冒険者チームのゾル・レヴェンテの皆が買い物をしていたのだ

話を聞くと、買い出しのようだ


今日は外食せずに宿に持ち込みで夜食をするのだそうだ

紙袋には色々と美味しそうな屋台の商品が入っている、サンドイッチやおにぎり、そして醤油煮のじゃがいもとかだ


フィル

『明日は1日森で活動してから明後日に帰ります』


ティアマト

『1日でいいのかい?』


フィル

『大丈夫です。貧乏旅行みたいなもんなんで』


そういって彼らと共に街の中を歩いていく

方向は宿なのだが、ギルドに近い場所を見つけていたらしくて1泊銀貨4枚と普通だ

食事付きだと一気に値が張り上がるので買い出しをしていたんだとフィルは歩きながら説明してくれたよ


マリア

『ここはグリンピアより大きいのに街は狭く感じるわね』


アカツキ

『農業が盛んだからそっちに面積取られてるんだろうな』


マリア

『なるほど』


ティアマト

『ここは浅い場所でもエアウルフの群れは結構いる、数が多ければ発光弾投げて逃げれば良いし倒せそうならば飛び掛かるまで仲間同士で背中向けて構えとけ、飛び掛かってきたらあいつらは避けれねぇしお前らでも力負けしねぇ』


バラーヌ

『了解ですティアマトの旦那』


ティアマト

『旦那かよ…まだ独身だっつの』


バラーヌ

『あはは…』


アカツキ

『スピード強化、取れると良いな』


フィル

『ここはエアウルフが多いから来てみたかったんです。1つでもあれば…』


槍のマリアか魔法使いのリアンヌのどちらかに与える予定らしい

確かに槍にスピード強化は必須だし魔法使いもそうだ

魔法使いが欲する意味は自衛する能力を高めるためでもある


剣士のフィルやバラーヌも欲しいと思うが、先ずは仲間が安全に戦えるように下地を作るという計画であり、それはリゲルとクワイエットの助言で決めたのだとさ


フィル

『聞いてください、リアンヌの魔法が結構充実したんですよ?僕らFですがそれにしては、だと思います』


リアンヌ

『ショックにアイスショット、それにスリープ』


ティアマト

『おぉ上出来だぜ』


リアンヌは照れ笑いだ

それだけ魔法スキルがあれば彼女は大丈夫だろう


するとそこで思わぬ者たちとすれ違う

トルーパー率いるイーグルアイではなく、慈善団体イーグルアイの冒険者5人だ

人相は悪くはなく、いたって普通の格好だ


俺はグリンピア支部のイメージがあったので少し驚くが、どうやらここは違うらしい

彼らは通りで足を止めてから建物の隅で休みだすと、凄い会話をしていたんだ


『今日は稼いだな』


『でもピンハネ凄いから早くまともな冒険者になりたいわねぇ』


『なるには金貨300枚納めないといけないとか意味わからないよな』


あれれ?

あれれぇ?


話の内容を聞くために俺達はゾル・レヴェンテと共に足を止めて近くで休んだフリをする

どうやらここでは頑張りもそうだが、設立した貴族にある程度お布施をしないとなれないらしい

独立された機関だが国家非公認、だからこそ設立した貴族であるジョブス・アルト・ラ・タタラ男爵がルールなのだ


非公認だからこその強み、しかしそれはいいのだろうか

接種にしか聞こえないけどな


ティアマト

『気になるな』


アカツキ

『えぇ…』


ティアマト

『行って見てぇ』


フィル

『僕らは…先に帰りますね』


と、ういう事でティアマトの我儘で慈善団体イーグルアイのタタラ支部…いや本部か

そこの建物の前に来たのである












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る