第260話 1 本当の別れ 近未来戦闘戦
クリジェスタのリゲルとクワイエットは足早に北の森へと目指す
入口の前である防壁には警備兵が15人も顔に焦りを見せながらも何かを話し合う様子を見せていたが
2人は話しかけようと近づくと防壁の上にいたアカツキの父であるゲイルが先に2人に声をかけた
ゲイル
『やはり早いな』
リゲル
『距離はどんなもんっすか』
ゲイル
『まだ2キロ先、いやもう既に2キロか』
警備兵
『ゲンコツ長、どのようにしましょう』
ゲイル
『クリジェスタは遊撃隊だ。好きにさせよ』
警備兵
『了解です』
ゲイル
『他の警備兵が30名向かっている。シグレがくるから奴を筆頭に扉を死守、扉を堅く閉ざして迎え撃て。クリジェスタは森に行くから扉を開けてくれ』
重たい扉が大きな音をたてて静かに開いていく
森の中は夜で暗く、視界は確保できない状況
だがクワイエットは最近覚えたライトという魔法を発動させると。光の球体が彼の周りを飛び始めた
リゲル
『便利だな、行くぜ』
クワイエット
『行こう』
彼らは堂々と森に恐れを感じぬまま足を踏み入れる
物静か過ぎる自然の中をいつも通り歩いて進む姿は他の者よりも手慣れており
気配感知よりも感覚を頼りに森の奥から微かに聞こえる不気味な鳴き声に向かう
真剣な表情を浮かべる2人は数分口を開かない
話し合わなくても何をすべきか彼らは長年の経験で理解しているからだ
悪魔種の子を動かす本体を倒す事を
『ウゥウゥ』
地の底から湧き上がるような声が徐々に近くなり、2人は同時に溜息を漏らすと
そこでようやく会話が生まれた
クワイエット
『本体はきっと弱い、やることは単調過ぎるからね』
リゲル
『なら突っ切るか?』
クワイエット
『僕は視界を確保しつつ切り開くよ、リゲルは少し温存ね』
リゲル
『まぁそうすっか』
『ウゥゥゥ』
唸る声が前方から数多く聞こえ始めると、それは姿を現す
半ば足を引きずるように近づくデビル・パサランは頭部から生える小さな蛇を沢山うならせ、2人に近づく
8体のデビル・パサランの胴体が縦に開くと、そこから現れたのは邪悪な姿をした口であった
これには見慣れない2人も流石に苦笑いをしてしまうが、その隙にデビル・パサランが次々と駆け出す
クワイエット
『はいはい邪魔』
彼はデビル・パサランに迫ると、ツヴァイハンターを大きく振って2体同時に胴体を両断して宙に飛ばす
一撃での両断に満足する暇もなく、斬った対象の後ろに控えていた別のデビル・パサランがクワイエットに飛び込んでくる
しかしそれを素早く縦に両断し、襲い掛かるデビル・パサランの頭部を刎ね飛ばしたりと8体を直ぐに片づけてしまう
倒し終えると2人は直ぐに前を歩き出す
走らずに歩く事、疲れないように目標の対象に近づくにはこれが最適だと判断したからだ
クワイエット
『数多いならショットガン頼むよ?』
リゲル
『状況見て放つ』
クワイエット
『そうだね、あと後ろ気づいてるよね』
会話の直ぐ後にリゲルの背後から襲い掛かるデビル・パサラン
既に胴体の大きな口をめいいっぱい開いており、リゲルを狙っていた
しかし相手が悪過ぎた
リゲル
『背中で見てるよ』
振り向きざまに斜めに斬り裂き、そして間髪入れずに斜めに両断するとデビル・パサランは黒い血を吹き出して地面に倒れていく
まだピクピク動いているのをリゲルは『ピクピク野郎めが』と小さく囁いて頭部を剣で突き刺してトドメを刺すと。2人は再び歩き出す
全ての敵を倒す気ではない
前を塞ぐ対象だけを狩る予定であるから彼らは近くから聞こえる呻き声や足音を無視して前に進む
自分達以外にもきっと来るとわかっているからだ
無視したデビル・パサランは街に向かう
ならば『あいつら』が何とかできる
できなきゃ後でボコだとリゲルは思いながらもクワイエットと共に足を止めた
リゲル
『どうするよ副隊長さんよ』
クワイエット
『囲まれたけどここは突っ切るでしょ。全部相手にしていたら本体に気取られて逃げちゃうかもしれないしさ。以前も逃げられたでしょ?あれって本体が弱いからって可能性が高いから時間かけていたら同じ事になっちゃう』
リゲル
『ならそうすっか』
『ウゥゥゥゥ』
四方から現れるもの凄い数のデビル・パサラン
これには流石のクワイエットも苦労を感じ、リゲルに顔を向ける
そこでリゲルはようやく本腰を入れたのだ
左腕を前にかざし。白い魔法陣を展開すると口元に笑みを浮かべて正面のデビル・パサラン複数体に向けて技を撃ち放つ
『ショットガン』
大きな炸裂音と共に撃ち出されたそれは散弾のように細かい魔力の弾
リュウグウの世界で言うショットガンと非常に酷似したものである
しかしそれよりも威力と範囲は広く、前方にいるデビル・パサランは吹き飛ばされながらも体を四散させる
『ぬっ』
あまりの反動にリゲルも一歩足を引いてバランスを保つ
すると四散したデビル・パサランの体から僅かな魔力がリゲルに吸収される
アハト・アハトの称号の技で敵が死ぬと僅かな魔力を吸収して自身の魔力に変換することが出来るのだ。
リゲル
(いい効果だなこれ)
道が出来た瞬間、2人は駆け出しながら近くのデビル・パサランの頭部を跳ね飛ばして包囲網を突き抜けた
追ってくることは無い、姿が見えなくなると奴らは方向を変えて街に向かうのだ
クワイエット
『街か』
リゲル
『アカツキ狙いか…』
《よぉお二人さん》
クワイエット
『きっといると思ったよ』
《クワイエットの読み通り本体はランクCくらいで考えてもいい。ヴィドッグは魂を呼び込んで兵隊を作る能力があるだけだ。ほっとくと1万の数を作るぞ?》
・・・・・・・
悪食の椅子
等活席 オイハギ 死亡
黒縄席 メデューラ 死亡
衆合席 ヴィドッグ
叫喚席 ???
大叫喚席 ???
焦熱席 ジャバウォック
大焦熱席 ゾディアック
阿鼻地獄席 イグニス
・・・・・・
リゲル
『調査隊は100余りと言っていたがそれは飽くまで確認した数、つまりはもっといやがる』
クワイエット
『テラはわかってるでしょ?』
《わかってるさ…4千あまりのデビル・パサランが押し寄せている》
リゲル
『それマジやべぇぞ!?』
《大丈夫だ…ヴィドッグは来る森を間違えた》
途端に森の奥深くからけたたましい叫び声が響き渡る
これには2人も体に緊張を覚え、額から汗を流すほどだ
聞かなくても知っている。ここの主が怒っている
金欲のアヴァロンという北の森の主でもあり、テラが作った魔物だ
森の均衡を保つために作った魔物でもあるが、違う理由で闘獣は動くことがある
悪魔種を倒す為に彼らは動く
《本体の後ろを囲んだから逃げれねぇ筈だ。お前らは突っ切れ!数はやべぇがいけるだろ!》
リゲル
『面白れぇ』
クワイエット
『連携はスピード勝負だね、行こう!』
2人は駆け出し、正面から飛び込んでくるデビル・パサランを次々と倒して進んでいく
川辺に辿り着くと近くで共食いをしていた個体を背後からめった刺しにし、川の水を飲んで足を止める
遥か奥の森では獣の咆哮
それは敵ではない
『グルヂイ』
『ユルサヌ、ユルサヌ』
2人は立ち上がり、姿を現すデビル・パサランの群れに顔を向けた
未練を残して天界に向かえなかった何者かの魂がデビル・パサランとして蘇った姿だ
その多くは人間であり、理由は人間の魂はデビル・パサランにしやすいからだ
『イダイ、イダイ』
クワイエット
『強制成仏させよっか』
リゲル
『んだな』
2人はデビル・パサラン6体に飛び込んだ
胴体を開いて口を開けて待つデビル・パサランだが、クワイエットは両断一文字で大きな斬撃を発生させて剣を振ると4体が真っ二つに裂かれて吹き飛んでいく
残る2体をリゲルは素早く懐に潜り込み、1体の首を刎ね飛ばすと側面から爪を振り下ろすデビル・パサランの攻撃を剣で弾き返し、目に止まらぬ速さで何度も胴体を斬り裂いた
『オオ、イダイ』
リゲル
『なら成仏しとけ』
最後に首を刎ね飛ばし、デビル・パサランの肉体から白い魂が空に昇っていく
黒い魔石があたりに散らばっているが、回収する気は彼らにはない
既に次のデビル・パサラン達が押し寄せてきているからだ
尋常じゃない数に2人は悪戦苦闘しつつ戦うが、痺れを切らしたリゲルはクワイエットと共に一度退いた
そうすると追いかける為に正面に集まるデビル・パサランを見てリゲルは笑みを浮かべたのだ
クワイエットはあれをするのかと感じ、耳を塞ぐ
彼の予想は正解だった
リゲルは左腕を前にかざすと、左腕に魔力が流れていく
すると驚くべき光景が映し出されたのだ
彼の左腕にはリュウグウの世界で言うガドリング種の銃へと姿を変えたのだ
腕がそう変化したわけじゃなく、彼の腕に装着された大きな銃と言えよう
それはファランクス20mmガトリング砲に良く似た兵器であり、リゲルの切り札の1つ
正面から襲い掛かるデビル・パサランの数は200を超えており、一番有効な技スキルはこれが一番だとリゲルは感じたのだ
称号専用の特殊魔法『自動総銃ヤマト』
クワイエットが耳を塞ぎながらリゲルに背中を支えると、リゲルは口を開く
『文明攻撃監視』
その瞬間にけたたましい炸裂音が何度も響き渡り、リゲルの腕に装着された魔力で出来たガトリング砲は火を吹きながら魔力弾を連射し始める
命中したデビル・パサランは弾け飛び、そして貫通していくと後方にいる別の個体を吹き飛ばしていく
あまりの効果力に初めて実戦で使ったリゲルも少し驚くが、直ぐにその表情は笑みへと変わった
だが反動が強く、自分だけではまだ支えれ切れないからクワイエットは彼の背中を支えている
この轟音は森の中に響き渡り、それは防壁を警備する警備兵達の耳にも聞こえていた
・・・
警備兵A
『なんだ!?咆哮の次はなんの轟音だ!』
警備兵B
『何が起きている…。ぬっ!来たぞ!デビル・パサランの群れだ!』
シグレ
『じゃあ扉を閉めて防壁の上で戦おうか、きっとよじ登ってくるし非常に危険な魔物だ』
ゲイル
『こっちにはランクAの冒険者がいる、狼狽えるな!』
防壁には既に冒険者も集まっており、その中にはイディオットが防壁の上にいた
森からぞくぞくと姿を現すデビル・パサラン、それを見て険しい顔を浮かべている
アカツキ
『リュウグウ、リリディ、ティアは魔法撃破!俺とティアマトはハブれて登ってくる奴を落とす』
ティアマト
『よしきた!』
《森はエーデルハイドとクリジェスタが何とかする!お前らでここを守れ!》
バーグ
『敵は首を刎ねないと死なない!油断するな!』
冒険者達
『おう!』
・・・
リゲルは正面で四散したデビル・パサランを眺めながらガトリングを消していく
ある意味での地獄絵図、クワイエットも苦笑いを浮かべながらも肉塊と化したデビル・パサランの道をリゲルと共に歩いて進む
そしてまたデビル・パサランの群れが奥から彼らの視界に映る
舌打ちをするリゲルはまた使わないといかないのかと考えながら群れてくる正面の敵に左腕をかざすが、そこで彼はとあるものを見てしまう
『…』
直ぐ近くにデビル・パサランが2体いたのだ
棒立ちで2人を見つめたまま、何かをする気でもない様子に彼らは警戒する
その中の1体だけは他の個体とは違い、赤い色をした線が体中を沿うように模様を描いていた
筋肉量もあり、他の個体よりも確実に強いと誰もがその姿を見て悟る
リゲル
『なんだぁ?傍観者なら金取るぞコラァ!』
そこへようやく辿り着いたエーデルハイドの4人
クリスハートは心配そうにリゲルに近づくと、怪我がないと知って安堵する
クリスハート
『音でわかりました、大丈夫ですか』
リゲル
『大丈夫だって。心配し過ぎだ』
彼はいつも見せない笑みでクリスハートの頭を撫でる
だがそうしている間にもデビル・パサランは待つことを知らずに正面から押し寄せる
戦うしかない、誰もがそう思った矢先に側面の茂みから棒立ちしていたデビル・パサラン2体が予想外な事をしてきたのだ
2体のうちの特殊個体である1体が正面ではなく、茂みの向こうを指さした
これにはクリジェスタやエーデルハイドも驚きを隠せない
他の個体とはまるで違うからだ
『リゲウ…グワイエト…』
リゲル
『なんだ…お前…』
アネット
『喋った…』
クワイエット
『なんだろうねこれ、まったくわかんない個体だよ』
『リゲウ、グワイエト』
だがここでリゲルは懐かしい気分を覚える
何故かは彼自身もわからない、しかし彼は『行くぞ、あっちだ!』と叫んで皆を先導し始める
ルーミア
『いいの!?化け物よ!?』
シエラ
『大丈夫?危険多い』
リゲル
『多分大丈夫だ、多分』
彼らが2体のデビル・パサランの横を通り過ぎても、何もしてこない
しかし正面から押し寄せる群れから逃げるには特殊な個体と思われるデビル・パサランの指さす先が一番通り抜けやすいのだ
『リゲウ…クワイエト』
リゲル
『…』
クワイエット
『リゲル!何立ち止まってんの!!』
クリスハート
『リゲルさん!』
リゲルは何故か目を離せなかった
しかし立ち止まっているとその特殊な個体と思われるデビル・パサランは強く足踏みをしてリゲルを威嚇する
まるで怒っているかのようにだ
リゲルはクリスハートに腕を掴まれ、先へと向かう
クリジェスタとエーデルハイド、2組のチームがいれば大抵の魔物は薙ぎ払える
シエラの竜炎、ドラゴンの姿をした炎が敵の間を掻い潜り業火で燃やし、アネットとルーミアが倒しそびれたデビル・パサランを斬り倒していく
クワイエットはリゲルとクリスハートと共に道を切り開き、先に進むとそれは現れた
崖の上、海抜の低い場所を見下ろせる場所にて下を覗きこんで見ると川辺付近でデビル・パサランの群れがたむろしていたのだ
クワイエットは月明かりだけで確認するために光の球体を消して仲間と共に崖下を覗きこんで見ると小さな個体が彼の視界に見えた
翼の生えた紫色の体の蜥蜴が忙しなく飛び回る
全長は30センチ、頭部から背中にかけて小さな角が生えており、尻尾の先端には赤い炎
それは街に向かう筈のデビル・パサランを森の奥にも向かわせていた
再び大きな咆哮と共に奥の森から爆発が起き、辺りが照らされた
リゲル
『行くぞ!相手もあれに狙われて焦ってる』
《街の守りは安心しろ、お前らが発見したのはこのデビル・パサランを生成している衆合席ヴィドッグだ!早く倒せ!》
クワイエット
『みんな行くよ!』
クワイエットは崖から飛び降りた
これにはアネット達は驚愕を浮かべたが、彼は異常な速度で足でバランスを保って滑り落ちてきたのだ
リゲルが続くと、エーデルハイド達は諦めを顔に浮かべる
アネット
『転んだら死ぬよこれ…』
シエラ
『ファイアテンポ』
クリスハート
『ずるい…』
シエラは炎と化してリゲルとクワイエットを追いかける
他の3人も勇気を振り絞り、崖を飛び降りた
崖の下は直ぐに川、しかし川の中に岩場が顔を出しているのでリゲルとクワイエットは川に落ちる前に跳躍し岩に着地してから陸地に向かう
こうして彼らが全員がデビル・パサランの前で足を止めた
かなりの数、それはゆうに千を超えており、彼らの視界を埋め尽くすほど
多勢に無勢だが、その全てが彼らに背を向けて奥の森を見ていたのだ
『んんだぁ!?人間かきたゾ!』
小さな個体、それはデビル・パサランではなくこの騒ぎの元凶である
可愛い見た目をしていても、能力はデビル・パサランを生成するという恐ろしい力を持っていた
しかし戦闘能力は乏しく、自身で戦う事は出来ない
リゲル
『可愛い大将がよぉ!ヴィドックちゃんて呼んだ方が良いか?』
『ムッキー!人間如きと思ったがお前ら前にミーの作った自慢の獣を倒した奴か!』
クワイエット
『ヴィンメイだね?というか操れてなかったねぇ』
『うるさいうるさい!お前らデビル・パサランの餌にし『ゴボォォォォォォォ!』』
その瞬間、森の奥から全長5メートルを超える人型の羊が現れた
体中に高価な装飾を纏い、頭部の角は禍々しく伸びる悪魔に似た姿の戦闘特化型の羊
それはこの森を縄張りとする戦獣、金欲のアヴァロンであった
アヴァロン
『悪魔、お前らに居場所はない!死ぬが良い!』
『ギョワァァァァァァ!ミーを守れ!イケェェ!』
デビル・パサランの他に獣のような個体も数多く存在しており、それはグランドパンサーに非常によく似ている
ヴィドッグはアヴァロンに驚き、部下を一斉に動かしてアヴァロンを倒そうと試みるが、アヴァロンは腕を振り回すだけでデビル・パサランはことごとく吹き飛ばされる
《ありゃ味方だ!お前らチビ蜥蜴逃がすな!》
リゲル
『行くぞ』
アネット
『凄い頼もしいねぇ!』
クリスハート
『行きます!』
彼らは走りだした
ここで仕留める為に
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