第259話 2 クワイエット君 頑張る
学生に対して行われる冒険者講習会
それは毎週日曜日の13時から14時までの1時間に行われるが毎週やるわけではない
今月は毎週行うという予定になったが、日に日に参加人数は増していく
今日は80人余りであり、クワイエットが教える剣術志望は40人もいた
リュウグウは槍志望の女の子を槍の持ち方から教え、突き方や槍に関して戦い方を教える
シエラは基本的な援護の仕方や立ち回り方、そして狙われた時の行動を教えていた
そしてクワイエットは学生の素振りを終わらせると、5人1組を作らせたのだ
クワイエット
『1組ずつ挑んでいいよ?何も教えないでこれさせるのは意味がある。まずは自分たちで考えて向かってくればいいよ?一撃与えれたら金貨1枚あげる。ルールはお互い一撃受けたらアウトね』
学生たちが本気になる
金貨1枚は彼らにとって大金に近い
模擬戦となると彼らはまったくの無知、体力作りと心構え等しかまだしていないのだ
金が発生するからやる気が出たのとは違う、剣術をしていると思える訓練が今日開始されたことによる期待があるからだ
講習を受けていたカイルは当然ランダーと共に組み、他の3人を入れて話し合う
そんな姿をクワイエットは見ながら他の学生を見て微笑んでいると。とある学生を見つけた
リュオウという学生で問題児と言われている男の子だ
雰囲気がティアの兄であるシグレと酷似しており、クワイエットは一応は警戒することとなる
クワイエット
『最初のチームは誰かな?僕も木剣で挑むけどぶつける気は無いから安心して』
カイルのいるチームは先にやろうと少し前に歩み出すが、ふと彼は足を止めて仲間と共に後ろに下がる
クワイエットはそれを見て(賢いね)と心の中で褒めた
学生
『じゃあ俺達からで』
5人の学生が木剣を手に前に出る、訓練場の中心に学生5人は緊張した面持ちを見せるが
クワイエットは直ぐに彼らに突っ込んだ
これには5人も驚愕を浮かべ、狼狽えてしまった
一番近くにいた学生を手で突き飛ばし、横にいた者が剣を振る寸前でその腕を掴んで一本背負い
その間わずか1秒、慌てた顔をしながらも残る3人は一斉にクワイエットに飛び掛かる
しかしクワイエットは後方に飛び退いて学生たちの攻撃は当たらない
既に2人が脱落、残りは3人
習った剣の構え方はリゲル同様、体全体を見せない側面姿勢だ
利き腕を前にし、回避が安易にできるようにリゲルは自身のやり方を学生に教えているのだ
クワイエット
『開始の合図無しで始まっちゃったね?なんでかわかるかい?』
学生
『う…それは…』
リュオウ
『魔物はいきなり襲ってくるからです』
遠くで観察していた問題児リュオウが口を開いた
クワイエット
『正解…、今は魔物と対峙しているという仮想だよ。』
学生
『って事は…』
クワイエット
『1番目の君らは次の組からの犠牲になったわけだ』
学生
『そんなぁ…』
クワイエット
『さぁ取り囲むしかないよ?』
だが残る3人は取り囲むことは出来たが、一撃を与える事は出来なかった
次の学生らは前に出ると直ぐに全員で取り囲んだが、背後から飛び込んできた学生をクワイエットは安易に木剣でガードすると足を蹴って転倒させ、左右から同時に襲い掛かる学生の剣を弾き飛ばす
だがそれはおとりだとクワイエットは悟る
死角にいた1人が懐に飛び込み、攻撃速度の速い突きをしてきたのだ
クワイエットは回転しながらも体を反らせ、突きを避けると彼の腕を掴んで投げ飛ばした
そしてすぐに残る2人を倒すと『最後の1人が本命なのはちゃんと僕らの講習の話聞いている証拠だね。』
そういって学生らを労い、1組づつ模擬戦をするが誰もクワイエットに一撃を与えれない
強すぎるからである
最終称号に到達していなくとも聖騎士で培ってきた経験は本物
ある程度カイルとランダーがいるチームが善戦したが、誰も一撃を与えれない
ミラゲのチームですらいい所までいったと思いきや、最終的にミラゲはクワイエットに投げられて終わる
そして最終チーム、それはリュオウがいる5人組
鉄鞭を持参してきた彼だが、クワイエットはそれを良しとした
クワイエットの動きをちゃんと見てからの最終チーム
だからこそ5人は慎重に取り囲んで機会を伺う事が出来たが
飛び込むことが出来ないでいた
学生A
『く…』
学生B
『見られてる…』
取り囲んでいても背中で見られていると感じた彼らは身動きできない
動けば動きそうな危険を感じたからだ
クワイエットは(まぁ慎重さは大事だね)と思いながら正面で真剣な眼差しで見つめてくるリュオウに意識を向けた
クワイエット
『君はどういう戦い方をするのかな?』
リュオウ
『面白い戦い方ではありませんよ』
そう会話した瞬間に彼はクワイエットに飛び掛かった
両手に握る大きく鉄鞭を振りかぶり、全力でフルスイングしようと目論む攻撃
クワイエットは避けたほうが良いだろうと察しだが、あえて彼は前に出る事を選んだ
時間差で他の学生が飛び込んできたからだ
ならばリュオウが攻撃する前に懐に潜り込むのが一番だとクワイエットは悟る
しかしそれはリュオウの予想通りであり、突如として鉄鞭を突きに変えた
(判断速い!流石!)
クワイエットは突きを間一髪で避け、リュオウの鉄鞭を掴んだ
『でしょうね』
リュオウは冷静な声を口にし、直ぐに鉄鞭を離したのだ
これにはクワイエットは心の中で驚いた
(投げたかったのに…)
目論みを遂行出来なかった
想像した倒し方で学生たちを倒してきたが、今初めて彼は予想外な展開にされたと感じて笑顔になる
その後、走ってくる5人のうちリュオウを残して一撃を与えて最後の1人と対峙する形になると、クワイエットはリュオウと体を合わせて見合う
『魔物は鉄鞭を奪わないね、返すよ』
クワイエットが投げ渡したが、リュオウは鋭い目つきで突っ込む
駆け出しながら鉄鞭を手に掴み、学生とは思えない鉄鞭での突きをクワイエットに見せつける
見ていた学生らもこの戦いには驚き、空いた口が塞がらない
リュオウ
(本当に強い…勝てるイメージが)
全ての攻撃を避け続けるクワイエットのそんな想像をしていたリュオウだが
まるで心を見透かされていたかのように彼から告げられた
『予想と違ったら下がるべきだよ』
途端にクワイエットはリュオウの攻撃を弾き帰り、懐に潜り込む
リュオウは来ることはわかっていたから飛び退いたのだがクワイエットの方が速い
額をデコピンされてしまい、これが一撃かと溜息を漏らすリュオウ
しかしクワイエットは満足げに彼の肩を叩くと口を開く
『君は基礎を覚えたらDの魔物も倒せるだろうね。戦い方に文句はないけど連携の仕方を覚えれば爆発的に君は強くなる。シグレ君みたいに孤独を目指しても意味は無いよ・あの人は例外だけど君ももしかしたらそうかもしれない。でも基礎は大事だ…型破りは型を覚えてこそだってのを覚えておいて』
『わかりました』
クワイエットは皆を集めて安易に彼らに説明した
魔物は待っちゃくれない、体力も人間以上
走り回るのは得策ではないからこそ獣と対峙した場合は相手が動き出すのを待つべきだと
クワイエット
『エアウルフが良い例だ。ランクFで狩りは群れをなす…あいつらは囲んでくるよ。でも焦らずに1頭目の動きを見極めながら冷静に対処すれば君らが冒険者になるころには安心して倒せる。次からは各魔物に対してどう動くかの立ち回りを教えていく。遠回りに見えて近道さ…魔物の特徴はちゃんと本で勉強しておけばあとあと楽になるからね』
『『はいっ』』
クワイエット
『グリンピア中央学園の剣舞科専攻の子は来週から各魔物に関する攻撃パターンを教えるってリゲルが言ってるからちゃんと覚えないと課外授業でケガするからね?』
『『はい』』
クワイエット
『剣舞科以外の子達は時間節約したいからなんか剣みたいな重さの道具を手にして走ったりしといてね?次は再来週だけどもこちらも魔物の本を見てゴブリンと格闘猿の攻撃パターンや習性を知っておいて、次の模擬戦はゴブリンを想定した戦いだよ』
『わかりました!』
こうして学生らの講習を終え、次の冒険者の実技稽古も終えた後
クワイエットはリュウグウに報酬を与えてからギルド内に設置されている窯風呂に入って汗を流す
パンツ一丁でロビーに現れると冒険者達は驚き、女性は目を逸らす
受付嬢アンナ
『クワイエットさん、服着てください』
クワイエット
『直ぐ2階いって着てくるよ…』
シエラ
『着る。堂々とし過ぎ』
クワイエット
『了解』
服を着替えて防具をつけてロビーに戻った彼はエーデルハイドがいる丸テーブル席に戻る
すでにリゲルはいないが、彼はクワイエットの次に窯風呂に入る予定だったためにいない
クリスハート
『破廉恥なのはリゲルさんだけじゃないんですね』
アネット
『凄い筋肉質だよね!びっくりしちゃうよ』
クワイエット
『あはは、ルドラさんが筋肉付ければ嘘はつかないって僕にいったからさぁ』
ルーミア
『クワイエット君にとっても父親みたいな存在だねぇ』
クワイエット
『まぁね、明日はどうするのさ?』
アネット
『明日は普通に冒険者活動さね、そっちは?』
クワイエット
『僕らは海抜低い森でリゲルと魔物と戯れてくる』
クリスハート
『同じですね』
クワイエット
『なら狩場は重ならないようにしよっか』
それでお互い同意が成される
彼はシエラの隣に座っているが、彼女の様子に違和感を覚えたアネットは首を傾げる
少し乙女だからだ
アネット
『シエラちゃん、やった?』
シエラは飲んでいたバナナジュースで蒸せてしまう
何か言い返さないとと狼狽えるが、一番答えてはいけない者が答えてしまう
『昨日シエラちゃん食べたけど気持ち良かったなぁ』
アネットとルーミアは真顔でクワイエットの満面の笑みを見つめ、クリスハートは顔を赤くしながらシエラを見つめる
シエラ
『ちょちょちょちょわわしはたべられてなんかかかか!?』
クワイエット
『リゲルもすればいいのに』
とんでもない言葉を恥じらいも無く口にする男、クワイエット
だがしかし、矛先がクリスハートに向けられたことにシエラは僅かに助かった気分を感じる
クリスハート
『ななななななんっ!?』
クワイエット
『リゲルは大丈夫だよ?ねぇシエラちゃん』
シエラ
『思う!だだ大丈夫!』
アネット
(シエラちゃんやっと大人かぁ)
ルーミア
(まだ私は若いから大丈夫)
クワイエットは笑いながらその場から離れると、彼の後ろをシエラがついていく
時刻は17時、帰るには丁度良い時間だが、クワイエットはシエラを家に送るために共に道を歩く
夕日で空は赤く、すっかりと春
暖かい風が心地よく、歩いてるだけでクワイエットは眠くなりそうになる
しかしシエラが恥ずかしそうに彼の手を掴むとクワイエットの眠気は冷めた
押し寄せたのは食欲である
クワイエットはそのまま笑顔でシエラをつれて裏通りに入ると、物陰に入っていく
シエラ
『どうしたの?追手とか?』
クワイエット
『頂きます』
シエラ
『にゃ!?』
クワイエット
『我慢できない』
シエラ
『はっ!?』
クワイエット
『今度指輪買わないと』
シエラ
『外!?』
会話は合わない
だが何が起きるかは彼女は悟った
その何かが起きてから家まで送ってもらったシエラは一直線に部屋に戻ると、ベッドの上で悶えた
(外外外!痛くなかったけどなんで外ぉ!?)
だが彼女は(少し興奮した)と口には出せない思いを浮かべた
そして数分かけて落ち着いたあとはドアを開けて覗いていた弟のエイルを叱るために追いかけた
クワイエットはギルドに戻りながら道を歩き
空を見上げる
(アーサーかぁ)
彼にも目指す最終称号がある
今、彼はアーサーだが次がキングアーサー
なるにはあと1つ魔法スキルがあればなれる
自分もなれればと考えているが
彼は強さにこだわりが無かった
『指輪買わないと』
彼の頭はシエラでいっぱいだった
そして彼はギルドに向かうと、ギルド職員が騒がしい事に気づいた
時刻は20時、ギルド職員ロキと真剣に話をしているリゲルの姿
クワイエットは何事かと2人に近づくとリゲルは話したのだ
また悪魔の子が北も森に現れた、と
全身が黒い鱗の人型の悪魔種
頭部は真っ黒であり、メテューサのように黒い蛇が髪のように生えている
ロキ
『直ぐに他の冒険者に応援を呼びます。』
クワイエット
『なら先に僕らはいかないと』
ロキ
『そうじゃないと困ります。アレは街に向かってます』
調査隊の報告では数は100以上
2人は本体を倒せないときっと次も来ると悟り、ここで息の根を止める事を強く決めた
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