第243話 8 ホンノウジ地下大迷宮

? ジャバウォック

B ラブゥ(金属ゴーレム)、クワハルド

  鬼ヒヨケ、閻魔蠍

C 般若蠍、闇蟷螂、鬼蜘蛛

D ハンドリーパー、鎧ダンゴ、岩蜥蜴

E 闇蠍、鬼トンボ、ガウス(蛾)

  闇猪、グルーテン

F ゾンビナイト、ゾンビランス、ゴースト


・・・・・・・・


皆でティアマトに近寄るが、彼は『大丈夫だ』と告げて立ち上がる

結構な血が流れているけども、大丈夫というには心配だ


ティア

『ティアマト君、ケア使うね』


ティアマト

『大丈夫だぜティアちゃん、ケアは魔力結構使うだろ?とっときな』


ティア

『でも私は補助魔法とみんなの支援だから気にしなくていいよ。あとティアマト君の戦い方ってなんだっけ』


ティアマト

『骨を切らせて肉を絶つ!』


ティア

『はい駄目、ケア』


言葉にならない

勿論ティアマトもだ、彼は首を傾げながらもティアのケアで脇腹の傷を癒す

まぁ確かにティアは戦闘に関しては前衛的過ぎる

だがそれは彼女の求める戦う場所じゃない、飽くまで彼女は自身を仲間の補助いわく支援だと豪語する


戦う人間はいる、ティアマト君は獲物取られたいの?とティアが告げるとティアマトは嫌だ!と即答だ

これが答えだな


ティアマトの傷が完全に癒えた

流石はカブリエールのケア、数秒もかからずにティアマトの怪我を治したんだ


《ティアお嬢ちゃんは強い、だからといってみんなが前衛ってわけじゃねぇぞ?》


アカツキ

『基本的にティアは後方支援、だからな』


《そういうこった。各場所を忘れるな?》


ティア

『そういう事!私は後ろっ。みんなが戦いやすくする!と思ったけども最近私も忘れてるんだよねぇ…あはは』


リリディ

『いつも通り、が一番ですね』


ティアマト

『なら俺が前だな』


アカツキ

『いや俺だろ』


リリディ

『え?僕ではないのですか?』


リュウグウ

『お前ら殴るぞ?』


『ニャハハハ!』


そういえば、ギルハルドさん?

先ほど握りしめていた投擲銃は毛の中から取り出したのかな?

本当にこいつの毛の中は奥が深すぎる、収納スキルとはどえらい能力だな


リリディはギルハルドにグレーテンの肉を僅かに分け与えると、ギルハルドは美味しそうに食べ始めた


この時、発光魔石をすっかり忘れており、気づいていたリュウグウが俺達に持ってくる


リュウグウ

『すまん、消えかかったから吸収した』


アカツキ

『仲間が怪我していたから忘れていたよ、なんだった?』


リュウグウ

『百花乱舞』


アカツキ

『なんて?』


リュウグウ

『顔を貫かれたいか難聴』


そこまで睨むことないだろう…怖い

百花乱舞とは一瞬で何十発も槍で対象を貫く意味がわからない槍スキル

まさかクワハルドが持っているとは…


俺達はそこで休憩することにした

リリディは吹き飛ばされただけであり怪我は無いが、肩が痛いと言いながらティアをチラ見する

しかし彼女は微笑むのみ、駄目なようだ

我慢しろリリディ、軽い怪我でケアは気軽に使えない


アカツキ

『凄い疲れたな…』


ティア

『仕方ないよ、ごり押しだもん』


一気に体力削られたけど、あれしか男3人は戦い方を知らない

不細工で非効率かもしれないが、男らしく俺達らしい戦いだ


アカツキ

『ティアマト、すまんな無理させて』


ティアマト

『力勝負できて楽しかったぜ…だが虫の腕力すげぇな。』


リュウグウ

『虫は人の大きさになると獣以上だとか聞いたことがある、漫画で』


ティア

『またリュウグウちゃん世界用語』


リュウグウ

『なんと言われようとも私は一向に構わんぞ?』


何やら自身満々に言い放つが、その言葉も彼女の世界の言葉だろうな


リリディ

『交代…しましょ』


ティア

『そだね。私はリュウグウちゃんの直ぐ後ろ付くね』


リュウグウ

『ならば私が独り占めだな。油断はせぬようにするから安心しろ』


こうして休憩後、リュウグウが前で歩く

現れる魔物は闇蠍、般若蠍が多く

たまに現れるのは鎧ダンゴという体が頑丈なダンゴムシだ

全長1メートルと予想よりも大きい虫種だが、体を丸めて体当たりしか攻撃してこない


それはティアがラビットファイアーで倒すんだけど、虫種は基本的に火・炎が弱点だ


リュウグウは辺りを強く集中しながら俺達を先導していると、足を止めて口を開く


リュウグウ

『ティアがいると戦いやすいな、邪魔な敵をビリビリさせてくれるから気兼ねなく狙った魔物と戦える』


ティア

『でもリュウグウちゃん動き速いから大変かな…』


リュウグウ

『十分安心して戦えるぞ』


《ショックはC以下は一撃で数十秒麻痺だからな、Bでも僅かな隙が生まれるほどの威力になってるからお前ら全員戦いやすいだろうよ、そのスキルだけはとっとけばお前らは変に危機に襲われる心配はねぇ》


リリディ

『ショックは本当に何度も助かってますね』


アカツキ

『ビリビリフラワーからドロップだと聞いたが、ここまで鍛えると優秀過ぎる魔法スキルだな』


ティア

『十八番!魔力消費も凄い少ない』


頼もしいよ


この後、28階層でも先頭を歩くリュウグウは現れる魔物をどんどん倒していくと、我慢できなくなったティアマトが今度が前に出る


前はティアマトとリリディだ

それにしても静かすぎる、虫の鳴き声が聞こえない

たまに魔物がいない層があると聞いていたが、ここがそうだったんだ

29階層、魔物無し…これにはティアマトが苦虫を噛み潰したような顔を俺に見せてくる


アカツキ

『おいなんだよ、次も前で良いからさ』


ティアマト

『うむ』


ティアが後ろでクスクス笑っていた

30階層まで来た、ここから問題が近づいてくる

道に剣での目印はここまでだ

この階層はあるが、次からは無い


普通の冒険者では歴史上41階層、俺達はそれより先に行かないといけない


リリディ

『賢者バスター!』


戦闘で飛び込んできた闇蠍をスタッフでぶっ叩く彼は今度は噛まなかった

そういえば噛んだよな?的にリュウグウが彼に言うけど、首を傾げて見せている

とぼける気だ、きっとそうだ


31階層、ここで俺達は発光する湖の場を直ぐに見つけると、皆に今日はこのくらいで休むことを決めた


時間はいつの間にか16時と良い時間だ

ここまで来るのにグルーテンが3匹、そこそこいい感じだ


それにしても…

大きな金属のゴーレムが朽ち果てた状態で壁に背中を預けて座っている

でかい、全長10メートルはあるだろうな


複雑な構造をした人型の動く生命体

だがリュウグウはそれを見て機械だと告げた

その機械はどういう生物なのか俺達はわからないが、彼女は知っているらしい


しかしテラは《似ているだけだ。ガソリンで動かねぇ…核という心臓が原動力だ》と告げた


グルーテンの肉を焼いて食べ、俺は進むべき道に体を向けて様子を伺っていると、不気味な声が聞こえてきたんだ


『ギュルァァァァァァァァァァァァァァァ!』


甲高い鳴き声に俺は体が強く強張った

俺だけじゃない、体を休めていた仲間たちも驚いて固まってしまう

異常過ぎる、声だけでこんな威圧を放つ奴が?いるだと?


気を感じてないのに、声だけとは初めてかもしれない


ギルハルドは俺の隣に来ると、ジッと道の向こうを見ている

威嚇しているわけじゃない、非情に穏やかだ


アカツキ

『なんだ…今のだ』


《50階層のジャバウォック、お前らが来たことがバレたんだろうよ》


ティアマト

『へへへ、凄ぇぞ…震えが止まんねぇ』


リュウグウ

『薬でもキメてるのか熊』


ティアマト

『興味ねぇよ、てかあれがここの主か』


ティア

『凄い気迫こもった鳴き声…でも敵意も殺意もあまり感じない』


《誘ってんだよ…。悪魔種は鼻が熊レベルそして奴らの嫌いな野郎がここには1人いるんだ》


アカツキ

『嫌いな者?ティアか』


《違う、ギール・クルーガーの卵だ》


リリディ

『…ゾディアッグではなくジャバウォックがですか?』


《人が黒魔法を極めたのはハイムヴェルトが初、しかしその前は暗黒神ジュピストラウスだ》


彼は言った

暗黒神が悪魔を暇つぶし代わりに倒して回るという悪魔以上の悪魔の所業をしたことが別な星であったのだというのだ

その生き残りがテラの星、俺達が住むこの星に逃げてきた


だからこそ奴らは黒魔法という者を恨んでいる

そしてその匂いを知っている、だからメガネをボコしたいんだろうな


リリディ

『まだギール・クルーガーではないのにですか?』


《そこで馬鹿を発揮するなメガネ、お前ならどうする?脅威となる力を幼いうちに倒したいと思わないか?ゾンネが生まれたばかりならば?お前は完全体になるまで待つつもりか?》


ティアマト

『…今までの恨みがリリディにか、面白ぇ』


リリディ

『こちらは面白くないですが、まぁ悪魔にも恨みはありますので望むところです』









時刻は深夜2時

二時間だけの見張りで起きたけど、どうやらギルハルドも起きている


魔物が入って来る気配は無い

来た道から3つの気配がするが、直ぐに引き返している


『テラ、起きてるか?』


返事はない、寝ているようだ


『ニャハーン』


『お前じゃないよギルハルド』


俺の足元でゴロゴロ転がっている

忍者の様な布を被る猫に慣れてきたのか、俺は猫の普通がわからなくなる

最近猫をギルハルドしか見てないからだ


『ギルハルド、お前はその先に進化はあるのか?』


『ニャハン』


『なりたいのか?』


『ニャハハン』


多分、なりたいのかな

ここまでギルハルドは沢山のスキルを吸収してきた

いったいどれ程のスキルを吸収すればお前はなるのだろうか


それにしても透き通る綺麗な湖だな

ここに魚がいれば食料に困らないんだけどね


幾多の冒険者チームが挑み、そして諦めた

食料確保が困難だからだ

俺は茂みが生えている場所に顔を向け、近づく

先ほど見つけたばかりだが…ここでは持参した食材は腐食しても、人間はしないんだな


《ここで朽ち果てた冒険者の2人、餓死じゃなく出血性ショック死だな》


腹部をおさえて息絶えた男と体中傷だらけの男が横たわっていた

綺麗な状態だ、今にも動きそうなくらいにな


俺は仏の前でしゃがみ込むと、残していた生肉を添えた


『ここまでよく頑張ったな』


無念だったろう

回収するにもここじゃ無理がある

悪いが俺達に地上を見せる力は無い、許してくれ

だがしかし武器の滑り止めの指無しグローブを片手しかしていない

普通は両手なんだが、なんでだろうな


《普通はここらで帰るかどうかみんな悩む》


『…』


《お前らは強くなった、ここまでBが2体…普通なら帰るさ。そんな奴らと戦わないように慎重に進むからな…だがそれらとお前らは戦い、こうして問題なくここまで来た。強い》


お前がこの時間に起きているのも珍しいが


『でも足りないんだろう』


《そうだ、普通の暮らししたいならば今のお前らは十分金を稼いで暮らせる…だがお前らはゾンネという人間最強の悪魔と悪魔最強のイグニスに狙われている事を忘れるな。世界で一番強くなる覚悟がねぇとお前は毎日ティアお嬢ちゃんを抱けねぇぞ》


それは困ったな

真剣な話にちょっとした捻りを入れているテラに対し、俺は笑みを浮かべながら刀を鞘から引き抜いてから上に掲げ、答える


『最後まで生き抜いた時、仲間と俺の腕があればいい』


《腕?》


『揉めなくなる』


《やっぱ馬鹿だ、まぁ悪くはない…大きな事を果たすための意気込みなんざみんな実際は小せぇ》


刀を鞘に納め、一息つくと後ろからティアマトが歩いてくる

交代までまだ時間はあるんだがな…


『起きたのか、起こすのに』


『まぁ自然に起きた。俺も生きてぇ理由は確かに小さいかもなぁ』


『ティアマトは五傑になるのが目標だろ?』


『まぁなって見てぇ、だが…』


彼は俺の横に来ると、仏に頭を下げてから天井を見上げながら腕を組む

何かを考えているようだが、この時に俺はティアマトの事を思い出す

学生時代、何になりたいかっている話をした時の事をな


彼はそれを口にしたのだ


『定食屋を開く!五傑が作る定食って面白いだろ』


《興味ある、俺が体を取り戻したら顔見せてやるよ》


『俺もだ、行きつけにするよ』


『頼むぜ』


彼はニヘラと笑い、俺の背中を叩く…痛い

リリディは確かあれだな、変わらず魔法使いの頂点とか言ってたから聞いても答えはわかる

リュウグウは…なんか想像できない


ティアは最近聞いたばかりだからわかってるよ

回復魔法師会に入ったらお金が無くて治療出来ない人を救うとか言ってた、可愛い

きっとテスラ会長の座になれるだろう、いやなれないと可笑しい


『アカツキは生き抜けると思うかよ?』


『生き抜くために協力してくれ、店が出来たら必死で宣伝してやるよ』


『作業員いなかったらタダ働きな』


『エグッ!』


《悪魔以上にブラック!》


『冗談だよ、くははは!』


実際、こいつは料理が上手い

ティアでも太鼓判を押すほどだ


帰ったら金払うから作ってくれというと、ティアマトは親指を立てる

楽しみが増えた、ならば生きてここを出る士気が出るよ


《お前ら学生時代は面白かったんだな、記憶覗いたけど》


ティアマト

『それ凄いよな』


《神だからな》


アカツキ

『いまだに高等部時代の事を覚えてるぞ?3年生のシグレさんにティアマトが挑もうと近づいたけど腹痛になって引き返してきた』


ティアマト

『やめろ…悪い夢だ』


《かっはっはっは!勝てないって知るや仮病使ったか》


ティアマト

『でも1回はあの異常過ぎる雰囲気の人とぶつかってみてぇな』


アカツキ

『帰ったら頼み込めば?体術はシグレさん凄いってティアが言ってたぞ』


ティアマト

『マジで怖ぇが…損はないだろうな』


楽しみだ


俺は時間になると、来た道の近くにある木の下で寝ようかと歩いたんだ

そこで魔物の気配を感じ、無意識に入ってきた道に向かって駆け出す

数は1体、となるとこの気配はあれだ


岩蜥蜴、全長2メートルサイズのゴツゴツした蜥蜴だ

尾は短く、目は赤い

俺は飛び込んでくる蜥蜴の噛みつきを前方宙返りをしながら頭上を跳び越しながら刀を振る

岩だから無理だと思ったが、何とか岩を纏う蜥蜴の体まで刀が入ってくれたようだ


『ギャピィ!』


着地してから直ぐに振り向き、トドメを刺そうとしたが気は小さくなっていき、それは消えた

出てきた魔石は光っていない

俺は重たい魔物を必死で引きずって仲間のいる湖まで運ぶと、ティアマトが近くで待ってくれていた


どうやら見張りの最中に肉を取り出しておくとの事だ

少し疲れたが、早く休もう

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