第233話 12 帝龍ブリューナク戦
クリスハート
(今なんて…第一問?)
彼女は戸惑う
そんな技名のブレスがあるのかと逆に身構えてしまう
するとそんな2人の動揺を帝龍ブリューナクは更に混乱させる
『第一問だ。ゴブリンは体が貧弱であるからして集団でいる事が多い、そんなゴブリンが持つスキルはなんだ!?』
リゲル
『…気配感知』
『正解だ!』
翼を大きく羽ばたかせ、ブリューナクの体から火の粉が散る
2人はそれを武器を振って弾き飛ばした
何を企んでいるのか全く分からず、どうしていいのかもわからない
だが考えている間に時間は過ぎていく
『第2問!トロール種を全て答えよ!』
リゲルは何故か困惑した顔をしたままクリスハートに顔を向けると、彼女は自分なのかと思って体を強張らせたまま答えた
『コロール、トロール、キングトロール…あと1体の魔物もですか?』
『答えれたら追加点を与えよう!』
『…ジェネラルトロール』
『正解!』
またしても翼を羽ばたかせて火の粉が散る
何が起きているのかわからない2人はそこでようやく冷静になり始めた
遊ぶという意味、もしやこれはクイズなのでは?と
だが次の問題ではジャンルが変わり、一瞬2人を戸惑わせた
『第3問!パンはパンでもショックを受けるパンは!』
リゲル
(こいつ人間かよ…)
クリスハート
『食パンですか?』
『正解だ!』
2人は確信した、間違えなければ死なないのでは?と
リゲルはクリスハートと顔を合わせると、首を傾げた
だがしかし安心はできないのだ
間違えたりでもしたらどうなるのだろうかと思うと、それは本当に死かもしれないからだ
『3問正解、残り7問まで果たして辿り着けるか?』
帝龍ブリューナクは不気味な笑みを浮かべて話すと、口から何かを飛ばしたのだ
攻撃かと2人は一瞬思ったがそれは違った
ゴロンと彼らの足元に落ちたそれは発光した魔石、スキルが付与された魔石である
これには驚くしかない
『それはメスに丁度良いスキル、閃光という一瞬だけ足が速くなる技スキルだ』
クリスハート
『何故口の中から…』
『我は龍、倒した魔物の魔石を飲みこめばそやつの持っていた特徴的なスキルを生み出す事も出来、保存も可能だ』
リゲル
『なんだそのスキル製造機君みたいな設定』
『人間には理解できぬだろう…久しい人間だ、遊べ。間違えたら金を全て置いて即刻出ていってもらう』
リゲル、クリスハート
(それだけなんだ…)
ブルーリヴァイアとはまったく違う様子
帝龍ブリューナクは不気味な笑みを浮かべ、先ほど自身が休んでいた横穴に顔を向けた
そこには光り輝く光る高価な品が散乱しており、持ち替えれば一生遊んで暮らせるだろうと思えるほどの財があった
クリスハート
(王族でもあんな数の財宝は持ってない…)
リゲル
(すげぇ量だ…国を作れそうだな)
『7問目、10問目にはオスが知りたい称号がわかるぞ』
リゲル
『お前…なんで知ってんだ…』
『我は龍、龍の中でも帝という名誉ある名を持つ気高き生物。お前らはただ王の矜持に付き合ってればいいのだ』
クリスハート
『わ…わかりました』
リゲル
『戦うかと思ったが』
『お主は馬鹿か?私が勝つに決まっている勝負をして何が楽しい?』
リゲル
(くそが、悔しいが助かった)
正直リゲルは安心しきった
問題を全て答えれば何事もなく帰れる
そして彼が求める称号アハト・アハトの答えもわかるのだ
ならば死ぬ気で答えるしかない
聖騎士での筆記ではマグナ国中等部、高等部レベルの全教科のテストをルドラがさせ、満点を取るくらいの優秀な知能を持つリゲル、ちなみにクワイエットは赤点だ
そしてクリスハートは家で英才教育、そして専用の家庭教師によりずば抜けた知識を得ていた
この2人はグリンピアでも非常に頭が良いのだ
だからこそ、この戦いでは2人は活かされる
『では第4問!人間の円周率とは面白いな!50桁いってみよ!』
リゲル、クリスハート
『3.14159265358979323846264338327950288419716939937510!』
『正解だ!』
もう一度言う、2人は非常に頭が良い
だからこそ2人の目には希望が見え始めた
無意識に彼らは互いの手を握り、いつもの顔に戻り始めた
リゲル
『次はなんだ?』
『焦るでない…人間ならば円周率で弱音を吐くのだが…貴様らは人間の中でもそれなりに知性があるらしいな』
クリスハート
『ブリューナクさん、貴方はここで何を…』
『楽しんでいるだけだ。我がここにいるだけで国境沿いの2国は迂闊に戦争せぬ…。十数年前か…当時は我の存在など知らずにドンパチしていたから少しアピールしたら大人しくなってな。面白いので邪魔をするためにここにおる、まぁ立地条件も良い場所だ』
人間への嫌がらせだった
自身が強いから人間は迂闊に戦争を仕掛けれない、そんな状況が彼は楽しいのだと言う
リゲル
『俺の知りたい称号って最後か?』
『最後ならば称号の最初に文字がつく筈だ…、という文字がついていれば最終称号、お前の欲しい称号はそうかもしれぬし違うかもしれぬ。なんせ人間では歴史上初だ』
リゲル
『どんな称号だ…』
『10問目をクリアすればわかる、では第5問!』
龍の道楽が始まると、2人は静かに深呼吸する
5問目は『何故生物の血は赤いのか、そしてアンデット種は何故血が黒いのか』だ
これにはリゲルよりも先にクリスハートが答えを告げた
クリスハート
『ヘモグロビンは鉄でできていて、赤い色をしているからですがアンデットは血ではありません。あれは血が魔力と結合してと瘴気液という別の液体です』
『ぐははは!ひっかからなかったか!』
リゲル
『くそ…』
彼女は勝ち誇った顔で彼を見る
これは龍との戦いではなくなった彼は負けず嫌いを発動させる
『6問目!人間という動物は生まれながらにして互いに争う生物界の中では奇妙な生き物、神は彼らにとある道楽を与え、戦争の抑止に成功したがそれが長年に渡り戦争の火種となった与えたと言われる道楽を2つを答えよ』
クリスハート
『それは…きゃ』
リゲルは彼女の肩を掴むと、抱き寄せた
唐突な行動に顔を赤くするが、それをいい事にリゲルは恥ずかしそうにしながら我先にと答えたのだ
リゲル
『政治と宗教だ。今や人間の歴史は権力からくる政治戦争あとは宗教での反逆戦争だ』
『正解だ』
クリスハート
『ず…ずるいです』
リゲル
『ふん』
彼は彼女を離し、腕を組んで勝ち誇る
だが顔は赤いからこそ彼にもそれなりのダメージはある
帝龍ブリューナクは(何やら勝手に意地の張り合いが始まったか)と気づくが、気にせずに自身の遊びを遂行する
『まぁ次が7問目…オスが答えよ』
尻尾で地面を強く叩き、目を細める
リゲルは深呼吸すると『うしっ』と言いながら頬を叩き、喝をいれた
このまま正解し続ければ帰れる、間違っても帰れる
荷物が重いか軽いかの違いに彼らは十分に頭をフル回転させることが出来た
だが間違えたくないのがリゲルの本音だ
間違えてリベンジが効かない場合、2度と求める答えが聞こえなくなる可能性があるからである
『7問目。今から言う5つの数字を5秒以内で足して答えよ!151、656、99、333、578』
完全なる暗算
それを5秒以内だ
いくら頭が良くても速さを求めるとなるとわけが違う
だからこそブリューナクはこの問題を人間がギリギリわかる程度に口にしたのだ
しかし、こう見えてもリゲルはルドラに勉強を叩きこまれた男であり、無駄に優秀だった
リゲル
『1,817』
『何ッ!?』
一瞬だった
1秒もたたぬうちに彼は軽く答えたのだ
これには隣にいるクリスハートでさえも驚き、彼を見た
リゲル
『どうだ?頭いいだろ』
クリスハート
『似合わないです』
リゲル
『うっせ』
『ツガイの慣れあいなど帰って寝床で共にすればよかろうが…先ずは報酬だ受け取れ』
ブリューナクは口から発光する魔石を吐き出した
ベトベトな魔石をリゲルは嫌そうな顔をして手にするが、その顔は一瞬にして驚愕へと変わる
(ショットガン…)
無属性魔法スキル、ショットガン
そこでリゲルはもしやととある考えを頭に浮かばせた
ノヴァツァエラも無属性、となると10問目での報酬で再び魔石を吐き出せば可能性としては無属性の魔法スキルが出てくる確率は高い
(…まさか)
だが過度な期待をすることを彼はやめた
帝龍ブリューナクはリゲルがスキルを吸収している間、翼を折り畳み、口元を嘗め回すと首を回して骨を鳴らした
人間が鳴らす骨の音よりも大きく、そしてリゲルとクリスハートの体にも響くほどだ
戦わなくて良かった
二人はそう思いながらも楽しそうにしているブリューナクを眺める
(戦えば自分が勝つからって山の頂上付近でクイズ大会かよ)
リゲルはそう思っていると、龍が口を開く
『ちなみにわからぬ問題があった場合はパスの権利が3回ある』
リゲル
『早く言えや』
ブリューナクは声高らかに笑う
物凄い気迫ではあるが、敵意は一切感じられない
次の問題をクリスハートは直ぐに答え、9問目にはリゲルが答えた
流石に予想外だと言わんばかりに帝龍ブリューナクは困惑した顔を浮かべ、唸り声を上げ始める
クリスハート
『リゲルさん』
リゲル
『次がラストだ、これさえ成功すりゃ帰れる』
クリスハート
『そうですね』
『さて、ラストの問題が完成した』
クリスハート
(今、考えてたんですか)
『第10問、人間の冒険者に起こりうる魔力欠損病。正しい治療力を答えよ』
二人は驚愕を浮かべた
そもそも魔力欠損病とは冒険者に起こる不治の病
魔力切れを何度も起こすと発症する病気だ
症状は偏頭痛、脱力感、そして魔力の自動回復が出来なくなり、スキルの使用が不可となる
クリスハート
(そんな…)
二人でも知らなかった
人類はそれを治す術を知らないからだ
焦りを見せる二人の様子に龍はほくそ笑み、口元を舌で嘗める
(知らぬだろう、原理がわからないからだ)
治療法がある事を初めて知った二人は顔を見合わせ、だいたいのおおよそを話し合う
だが答えに近い見解は生まれはしない
リゲル
『くそ…なんだよそれ』
クリスハート
『治せるなんで聞いたことが…』
知らないとわかってブリューナクは出した
魔力がスキルに変換される工程を人は知らない
『答えよ、ラストの問題にパスは無しだ』
リゲル
(こいつ!)
クリスハート
(正解させる気がない…)
焦りの汗、暑さの汗が彼らの額から流れた
当てる事はできない、予想するしかない
リゲル
(まてよ?母さんが確か)
彼はパゴラ村にいた幼き頃の思い出が甦る
覚えてもない魔法スキルを唱えながら家の中で走り回っていた時のおぼろ気な記憶、そこに活路があったのだ
アウラ
『あなたに魔法はまだ早いわリゲル』
リゲル
『でも魔力は人の体にあるんでしょ?覚えればできるよ』
アウラ
『子供の時は無理に使うと危ない病気にかかっちゃうの。お父さんも1度なったことがあるけど首にクリアラの実を磨り潰した塗り薬を数ヶ月塗って治したらしいけど』
リゲル
『父さんなんか知らないよ!』
リゲル
(クリアラの実は毒素を含んでる…、人が服用すりゃ吐き気や目眩程度だが…)
だが他にも彼はその実が何なのかを知っていた
花の中で唯一魔力を実に宿す白い花であり、毒素は消毒液に使う地域もある
だが毒素を含むだけあって人はクリアラの実を使おうとしない
(原理がわかりゃ…)
リゲルは一息つくと、一か八かの勝負に賭けた
『クリアラの実での治療だ。磨り潰した実を首に塗る』
魔力欠損病の事かは定かではない
しかし、記憶ではそれに近い原理での会話を彼はしたことがある
リゲルは自信に満ちた顔を浮かべ、不安を見せないように欺く
クリスハート
(治せるはずが…)
『人間、あてずっぽか』
リゲル
『いや、正解だ』
『…』
帝龍ブリューナクは目を細め、リゲルを眺める
知っているから答えた、そうだと龍は欺かれた
先ほどとは打って変わり、ブリューナクは一息つくとその場に座り込む
すると口から発光する魔石を2個も吐き出し、それはリゲルの前に転がっていく
『それを吸収すれば貴様はわかる』
リゲル
『これはなんだ?』
『シューティングとバンカーバスター、お主はそれを手にし…何を思う』
リゲル
『何を?だと』
『急げ、1分でスキルは空に還るぞ』
全問正解し、クリスハートとリゲルはホッと胸を撫でおろした
負けても金が全て奪われるだけ、しかし勝たなければ来た意味がない
リゲルはクリスハートとハイタッチすると、魔石の前にしゃがみ込んだ
(…やっぱりさっきの考えは現実になるか)
彼は確信した
シューティングは伸ばした手の平から数センチしかない白い魔法陣を展開し、魔力を固めた9mm弾を撃つ出す無属性魔法スキル
バンカーバスターは対象の遥か頭上に魔法陣を展開し、真下に撃ち出された魔力で構築されたミサイル状の弾がいかなる頑丈な物質さえ隕石の如く勢いで対象を貫通し、地面の奥底で爆発して辺りを吹き飛ばす無属性魔法スキル
彼はこれらが全てアハト・アハトになる為のスキルだと理解したのだ
両手に持つ魔石のスキルを吸収すると、彼の体の周りが神々しく光り輝きだす
普通の称号獲得とは違い、リゲルは狼狽えた
リゲル
『な…っ!?』
クリスハート
『リゲルさん!』
『落ち着け人間…ギール・クルーガー以外では唯一カブリエールの盾に対抗でき、そしていかなる要塞をも打ち砕く破壊に特化したアハト・アハト。まさか人間がこの称号を手に入れるとは』
リゲルは周りの光が静かに自身の体に入っていくのを眺めながら、湧き上がる力に驚く
どんどん別人と化していく感覚、だが彼は龍に目を向けると口を開く
リゲル
『何故渡した?』
『傷者のメスを置いて逃げぬ根性に免じてだ。貴様のステータスは我の目に映っている』
リゲル
『破廉恥め』
クリスハートは(真似した)と思いながら彼を眺める
龍は人間に関しては見ただけでステータスが見える能力を持っており、リゲルのスキルにノヴァツァエラがあることを知った
そしてリゲルとクリスハートからデミトリの神の魔力の残り香が僅かに漂っていることにも気づき、アハト・アハトのために来たのだと確信したのだ
その称号を知るのは龍種と神種のみ
彼らは生還者だと少ない情報で来た理由を導き出したのだ
『お前は力に振り回されない生き物であると思っての高貴なる我の計らいだ。それを使って何をする?』
リゲル
『俺が強ければ守りたいものを守れる』
『ほう…』
リゲル
『父さんも母さんも、俺が弱かったから死んだ。助けれなかった…だから強くなりてぇ』
もう悲しみたくはない、この時代では綺麗ごとだと言われても彼はそれを望んだ
誰を守る?龍はそう言い放つと、リゲルは隣にいる女性に顔を向けた
だが口は開かない
クリスハートは視線を向けられると恥ずかしくなり、顔を逸らす
『メスは受けか…押し倒せばよいものを』
『そうかい、覚えておくよ』
クリスハート
(おおおしおしそ押し倒す!?)
周りの熱気よりも彼女は体温が熱くなりそうになる
リゲルはそんな彼女を見て鼻で笑うと、龍に顔を向けた
その時、全ての光がリゲルの体内に流れ込んだ
不思議と澄んだ心地よさを感じたリゲルは一息つき、ステータスを開いた
・・・・・・・・
リゲル・ホルン
☆アビリティースキル
スピード強化【Le5】MAX
気配感知 【Le5】MAX
動体視力強化【Le5】MAX
斬撃強化 【Le4】
耐久力強化 【Le4】
筋力強化 【Le4】
体術強化 【Le5】MAX
☆技スキル
インベクト 【Le4】
光速斬 【Le5】MAX
真空斬 【Le4】
一刀 【Le3】
パワーブレイク【Le3】
両断一文字 【Le2】
龍斬 【Le2】
☆魔法スキル
風・シールド 【Le2】
風・アンチマジック 【Le2】
無・シューティング 【Le1】New
無・ショットガン 【Le1】New
無・バンカーバスター【Le1】New
無・ノヴァツァエラ 【Le2】
称号
極アハト・アハト
☆称号スキル
特殊魔法『ブレス』
特殊魔法『自動総銃ヤマト』
特殊魔法『アハト・アハト』
特殊技『衝撃波』
動体視力強化 【Le3】
スピード強化 【Le3】
耐久力強化 【Le4】
魔法強化 【Le4】
スキル発動速度 【Le5】New
・・・・・・・・・
リゲル
『なんでも勝てそうな気分だ』
『当たり前だ…龍の皮膚さえも貫くスキルが数多くある、十分にそれらを理解すればAランク程度ならばピンで倒せるようになる』
リゲル
『別に誰かを倒したいわけじゃない。仲間が死ななければそれでいい』
『ふん、まぁ良い…行け。人間の匂いは臭くてたまらん』
帝龍ブリューナクは険しい顔を浮かべると、翼を羽ばたかせて巣穴に入っていく
『他の人間の臭さがあっちの穴から漏れておる…貴様らの仲間だろう?』と彼らに帰るべき道を示す
戦う覚悟で来たリゲルは安堵を浮かべ、クリスハートに近づく
彼女はアワアワと狼狽えるが、彼は気にせず彼女に肩を貸す
あとは帰るだけ、『ありがとう』とリゲルが告げるとクリスハートもお礼を告げた
しかし返事は帰ってこない、既に寝息を立てていたからだ
帰ろう
リゲルは小さく囁くと、彼女と共に仲間が現れるであろう奥の洞窟の中に歩き出す
2人の足取りは軽く、いつもよりも距離が近い
クリスハートは半ば彼に抱き着く形で肩を貸してもらっている、しかし彼女自身気づいていない
底知れぬ力を手に入れたリゲルは後ろを振り返らず、数分歩いたのちに岩場を見つけて彼女を座らせた
近くに湧水があり、彼は水筒に水を入れてから彼女に渡す
(…)
クリスハートはチラチラとリゲルを見つつも彼の水筒を飲む
一気に飲み干され、リゲルは苦笑いを浮かべた
『喉カラッカラだもんな』
『はい…あの、その』
『どうした?』
リゲルは様子の可笑しい彼女に首を傾げ、近寄る
するとクリスハートはリゲルの手を握り締めたのだ
このような状況で何故なのかと彼は困惑するが、直ぐに口元に笑みがこぼれた
『なんで、私にそんなになってまでも一生懸命になるんですか』
彼女は上手く伝えれなかった
初めての感情であり、真っすぐに伝える勇気が無かったのだ
何故自分の為に命を張れるのか?その答えを彼女は期待した言葉で聞きたかった
だが相手はリゲルは、彼女の想像していた言葉で返されることはない
しかし、意味は同じだ
『俺は好きという感情はわからねぇな、だが好きになるならお前が良い。今言えるのは今一番死んでほしくねぇのはお前だってだけでこれが好きなのかどうかはわかんねぇ、1つだけは確かなことがある』
彼は彼女に背を向け、湧き水を水筒に入れながら言い放ったのだ
『お前とは一緒にいてぇな。』
そしてリゲルは振り返る、その時にはクリスハートの頭から湯気が噴き出し、気絶していた
求める答えじゃなくても、不器用な彼らしい言葉
気絶する前に彼女は最後に考えたのは(それはもう好きと言ってるのでは…)だった
初めて彼女は求める恋の仕方を知り、慣れない状況に気絶してしまったが
取り残されたリゲルは真剣に焦った
だがその時間も直ぐに終わりを向ける
クワイエット
『ほら…無事だ』
シエラ
『リゲルく…クリスハートちゃん!?』
アネット
『クリスハートちゃん!?』
リゲル
(ようやく来たか)
地面に倒れるクリスハートにアネット、ルーミア、シエラが駆け込む
気絶していると知り、ホッと一息つくとシエラはリゲルに顔を向けて首を傾げた
シエラ
『襲った?』
リゲル
『まだだ』
アネット
(まだ!?)
ルーミア
(まだ?)
クワイエット
『まぁ気絶しているだけなら大丈夫かな、調子どう?』
リゲル
『片付いた…帰るぞ』
もう終わった、その事に対してクワイエットたちは驚いた
今から目的地に覚悟を決めて向かう筈が、もう終わっていたからだ
リゲルから何があったかを聞くと、彼女達はその場に座り込む
龍と戦わなくて良かった…と心の底から感じたのだ
アネット
『なんでクリスハートちゃんは湯気だして気絶してんのさ?』
リゲル
『知らねぇよ』
その時のリゲルの反応に女性陣は目を見開く
恥じらいながら顔を僅かに赤くしていたからだ
お前にその顔は似合わない、女性3人はそれは口が裂けても言えないが言いたかった
リゲルは皆にステータスを見せ、終わった証拠を見せる
やはりとてつもないステータスにクワイエットでさえ驚き、真剣な顔を浮かべると驚くべきことを口にしてしまう
『そのステータス、今の五傑に挑めるんじゃない?』
『悪ぃは興味ねぇよ。』
リゲルはそう吐き捨て、倒れているクリスハートに近づくと彼女を抱き起し、そして背中におぶった
躊躇いもなく背負った事にルーミアは(ははぁん…これは面白い)と思いながらニヤニヤさせる
もう帰る以外道はない
クワイエットはリゲルに『お疲れ』と告げると来た道に視線を向けた
そうだ、帰るのだ
彼らがすべき事はここには無い
グリンピアにある、その為に帰るのだ
そして帰りの道中、山を下りた先の見張り塔で聖騎士のバッハによって彼らは先導され、無事に街に帰る事となる
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