第227話 6 パゴラ村
エーデルハイドの4人は村の入口まで戻る
するとそこには剣を持った5人の村人がおり、彼女達を見て少し驚いていた
村人
『山はどうなった?』
クリスハート
『もう大丈夫です、魔物は来ません』
村人を安心させ、彼女達は村の中に入っていくと丁度村人の非難を終わらせて戻ってくるリゲルとクワイエットと出くわす
クリスハートがにこやかに微笑むと、彼らはそれだけで村は救われたのだと察した
リゲル
『助かった』
クリスハート
『もう大丈夫ですが一度村の警備隊の方で山を調べてから避難解除をしても良いかもしれません』
村人A
『そうとなると一度調査に向かう人間を作らなければ…』
リゲル
『大丈夫だ、もう村人を戻してもいい』
彼は静かにそう告げると、エーデルハイドに近づいてクリスハートの肩を叩く
『助かった』、その言葉で彼女達は微笑んだ
村の騒ぎが落ち着き始めてくると、リゲル達はエーデルハイドと共にレバノ村長の家に向かう
すると驚くべきことに、村長らは逃げていなかった
奥さんや息子夫婦そして孫である男の子と女の子がリビングで外とは違って普通に暮らしていたのだ
クリスハート
『避難しなかったんですか』
レバノ村長
『ランクA冒険者チームのエーデルハイド、君たちが無理ならば村は終わりじゃったからの。』
大丈夫だろう、そういう考えがあったからこそ村長は避難しなかった
こうして夜食が彼らに振舞われ、村長の家の食卓はいつもとは違う賑わいを見せる
クリスハート
『村人の武器を見ると古いですね』
レバノ村長
『まぁ資金がないからなぁ』
リゲル
『ミスリルソード10本、槍3本にシールド3つ』
彼はサンドイッチを口に頬張りながら口を開く
村長、そして家の者はその言葉に首を傾げる
レバノ村長
『それは…』
リゲル
『村に送る、俺が近くの街で買ったらあんたんとこに送るからそれで補え…あとは軽い革装備を送るから俺達が明日出るまでに知らせてくれ』
レバノ村長
『スリーエル6人、エル11人、エム6人』
リゲル
『なら各サイズそれにプラス3着ずつ用意する』
レバノ村長
『稼ぐ男は違うな…リゲル』
リゲル
『俺の金じゃねぇ…。親父の金で買う』
村長は少し驚くが、直ぐに微笑む
羊の肉の入ったスープにアネットは美味しいと連呼しながらクワイエットに負けじとガツガツ食べる
その様子をクリスハートは苦笑いを浮かべながら見ていると、リゲルが口を開く
リゲル
『怪我はないか』
クリスハート
『全員問題はありません』
リゲル
『お前は?』
クリスハート
『大丈夫ですよ』
彼女は微笑みながら無駄に心配性なリゲルに笑って見せた
そこでエーデルハイド達は山にいた魔物に関して話したのだ
リゲルとクワイエットは悪魔が現れたことに多少驚くが、直ぐに顔は真剣になる
話を横で聞いていたレバノ村長は頬杖をつくと、何かを思い出そうと唸り声を上げた
悪魔の事でも知っているのだろうかとリゲルは期待したが。村長は思い出せなかった
だが覚えている限りの事を村長は思いつめた表情を浮かべて話す
レバノ村長
『血塗られた8つの席に座る貴族は堕ちた存在にして神を憎む者、祖なる者を解き放つ為に神の血を捧げる』
ルーミア
『それをどこで』
レバノ村長
『堕ちた円卓というマイナーな本じゃ。サブタイトルが八人の悪魔と書いている面白い本じゃったが山羊が食べてしまっての』
リゲル
『他に何が書いてた』
レバノ村長
『50年以上も前に読んだ本じゃて、うろ覚えだが…』
クリスハート
『うろ覚えでも大丈夫です』
レバノ村長
『祖は地の底で眠りにつくと、新しき世代の貴族は血が渇いた席に座る。そして宴を開きながら渇きを癒し、また渇くと宴を開きくみたいな事ぐらいしか思い出せんわな』
クワイエット
『なんか思い出せたら聞きたいね』
リゲル
『俺はグリンピアの冒険者ギルドにいる、そこに手紙を寄越してくれればいい』
それと彼はレバノ村長にクリスハートはとある物を渡した
悪魔の体から出てきた黒光りする黒い魔石だ
これにはレバノ村長ら家族は驚く
レバノ村長
『こんな魔石…見たことないぞ』
『父さん、これはいったい…』
レバノ村長
『絶対に口外するな…この正体を知っている者の耳に入れば私らとて危険だ』
クリスハート
『村からでもこれを送れますか?場所はグリンピアのギルドにいるクローディアさん宛てです』
レバノ村長
『可能だ。明日には手続きをしに村役場に行こう…わしもこれを村にずっと置かれてはかなわん』
こうして彼らは話を止め、談話しながら食事を済ませた
リゲルの家に戻ると女性陣は彼の家の裏にある小屋の中の窯風呂を見つけ、お風呂に入れるとウキウキとなる
2人までしか入れない小さな風呂だが、逆に彼女達は珍しい風呂に興味を持つ始める
熱を放つ魔石でお湯を作る為、今はアネットとシエラが窯風呂の温度の調整をしており、小さなリビングにはリゲル、クワイエット、クリスハート、ルーミアがのんびりして寛ぐ
女性2人はとある物に気づく、リビングの隅にある机には写真が飾られてあり、クリスハートとルーミアはそれを見つけて椅子から立ち上がると写真に近づく
それは幼い頃のリゲル、そして母親であるアウラが映る写真であった
アネット
『今と全然違うね…すっごい可愛い』
クリスハート
『幸せそうですね』
今のリゲルとはまったく違う無垢な笑顔を見せる幼き頃の彼
クリスハートは彼が何に飢えていたのか、聖騎士時代の彼の懐に隠していた紙切れに書いていた言葉を思い出し、それを悟る
クリスハート
(家族が欲しい…か)
そう考えていると、後ろからリゲルが来て写真を伏せて隠す
リゲル
『見すぎだ馬鹿』
ルーミア
『ええいいじゃーん』
クワイエット
『昔のリゲル可愛いでしょ』
リゲル
『お前も混ざんなっ』
クリスハート
『そういえば久しぶりの故郷ですけど、気分はどうですか』
リゲル
『悪くはねぇ…だが俺のやりたいことはここにはない』
クリスハート
『何をしたいんですか』
彼女はリゲルに近づいて答えを聞こうとする
距離は近く、ルーミアでも驚くほどに近い
リゲルは顔を近づけられると直ぐに顔を逸らし、ゴモゴモと何かを呟き始める
リゲル
『まぁ…色々弱い奴らに剣を教えたりとか、色々だ』
クリスハート
『ふぅん』
ルーミア
『というか案外リゲル君って英才教育受けてたんだよね』
リゲルは少しクリスハートから離れると、ソファーでのんびり寛ぐルーミアに顔を向ける
これにはクリスハートも興味を持つが、ルーミアが話す言葉にリゲルは驚くこととなる
クワイエット
『まぁルドラさんってリゲルにだけ少し厳しい時あったし』
ルーミア
『字が無駄に上手いし、頭も見た目と違って良いし、『おいっ』…戦闘術に関してはクワイエット君同様に幅広いし、簿記検定何故か2級持ちとか本当に聖騎士?』
リゲル
『だって…あの人が資格はとっておけっつぅから』
クリスハート
『帝王学、心理学に流体力学なと本当に聖騎士じゃなくとも面白い学問ばかり詳しいですよね』
リゲル
『悪いかよ、親父は戦えなくても生きていけるようにしなければ家族を作っても養えないとかいうからだよ』
ルーミア
『でも女性の扱いは教えてなかったね、クリスハートちゃんなんて押し倒せばきっと抵抗しないのに』
その言葉に面白がるクワイエットは目をギラギラさせ始める
話の内容の中心にいる2人はたまったもんじゃない
狼狽える様子を、ルーミアは楽しそうに見つめる
リゲル
『馬鹿なにいってんだっ!』
クリスハート
『破廉恥ですリゲルさん』
リゲル
『俺は何もしてねぇだろ妄想女』
ルーミア
『クリスハートちゃんも薄々感じてるくせに』
クリスハート
『何をですか!』
ルーミア
『この前の貴族に迫られるのとリゲル君に迫られるとじゃ全然芽生える感情違うでしょ?嫌なの?』
そこで僅かに彼女は考えてしまう
リゲルは何をそんなに考える事のあるのかと躊躇いながらもクリスハートの様子を見るが
ここでアネットとシエラが風呂が沸いたという最悪なタイミングにクリスハートは救われてその場を飛び出すとうにしていなくなる
シエラ
『顔、赤かった』
アネット
『ねぇクワイエット君、あたしらいない間に面白い事しないで?』
クワイエット
『僕じゃなくてルーミアちゃん』
ルーミア
『ごり押しキューピットだったか』
アネット
(何したんだ…)
全員が風呂に入り、時刻にして21時には殆どが眠りに入る
女性らはリゲルの母親が使っていた部屋で、リゲルとクワイエットはリゲルの部屋だ
眠れぬリゲルだけが小さなリビングの椅子に座り、机の上の蝋燭の灯りだけで母親と映る幼い頃の自分の写真を手に思い出に浸っていた
(…たまには帰ってくるか)
写真を机に置き、椅子にもたれ掛かって天井を見上げながらため息を漏らす
レバノ村長から貰ったリンゴジュースが入った瓶をグラスに注ぐと、それを一気に飲み干す
懐かしい思い出と懐かしい道具が揃う彼の家
寝たら勿体ない気持ちがあるからこそ彼は寝れない
またくればいい、しかしそれがいつになるかはわからない
(2か月周期で帰るか…レバノ村長にいくらか渡して手入れし続けて貰わねぇとな)
彼は思った。今は毎日が暇しない、退屈しない日々が訪れると
聖騎士の時とは違う出会いが今ある
色々な人間とつるむのも悪くないと胸を張って彼は感じれている
クワイエット
『楽しいよね』
リゲル
『起きてたのか…お前にしては珍しいな』
クワイエットは僅かに笑うと、グラスを1つ用意してからリンゴジュースを注ぎ、リゲルの隣に椅子を置いて座ってから飲み始めた
クワイエット
『ギルドで剣術指南、グリンピア中央学園での講師…しかも何故か冒険者ギルド運営委員会にいつの間にか所属扱いで職員にされたし』
リゲル
『だが俺達は冒険者だ。好きな事をする』
クワイエット
『そうだね。帰ったら学校の事で大忙しだよ?僕は書き物嫌いだしそっちはリゲルやってよ』
リゲル
『なら課外授業はちゃんとやれよ』
クワイエット
『任せてよ。それにしても楽しみだなぁ…学校の先生みたいでさ』
リゲル
『まさかなるとは思わなかったぜ。剣舞科だけど』
クワイエット
『まぁその前にエルベルト山だね…今は聖騎士が総合騎士会の士気をしつつマグナ国領土側で警備堅くしてるって話さ』
リゲル
『国の騎士が聖騎士に仕切られるとは面白いな』
クワイエット
『それほどまでに国の権力は衰えてるんじゃないかな、フルフレア公爵の血筋が聖騎士作ったんだし今は公爵の方がフットワーク軽いと思える。王は死んでゼファー王子が今や国王として王権を握ったとはロイヤルフラッシュさんから聞いたけど、今はフルフレア公爵の元でゼファーも色々動いているからこそ大事な任は公爵が担っているかもね』
リゲル
『ケッ、王族と公爵の権力が同等とは面白いが…まぁ良いシステムだな。昔の人間が作った中でマシだ』
クワイエット
『マグナ国二代目国王シュナイダーのが作った制度。しかも他国も導入している…。王だけに権力を持たす時代が戦争を起こしたとも言われてる。』
リゲル
『色々繋がってきそうだな。ゾンネは下手な役者気取って暴君って筋がでけぇ』
クワイエット
『もともとは心の優しい国王だったらしいしね。僕らも人相手に剣を握る事は多々あるから多少理解できるよ…』
リゲル
『犠牲失くして平和は訪れねぇ時もある。ゾンネはその当時を生きる者全てを犠牲にしてまでも次なる時代に生まれる子らに平和を届けたかったのかもな』
クワイエット
『その線がどんどん濃厚になってくね』
リゲル
『…やりたくもない役者やるってどんな気持ちだろうな。ゾンネも親父も』
クワイエット
『まぁこれ以上考えるのは無粋だね。僕は眠いから今度こそ寝るよ…その前に村長から貰った干し肉どこ』
リゲルは懐から干し肉1枚を取り出すとクワイエットに渡した
クワイエットはかじりながら部屋に戻ると、リゲルは1人となる
左手で父から授かった剣を抜き、上に掲げた
不思議と笑みがこぼれ、彼の脳裏には上官だった彼の姿が蘇る
父としての姿は死ぬ寸前のみ
しかし彼は満足していた
愛されていたことを
『さっさと帰って母さんに頭下げれば良かったのによ、馬鹿な親父だ』
親の愛は知らずに受け取っていた、それが知れただけで彼は良かった
すると誰かがリビングに来る気配を感じて視線を向ける
クリスハートだ
彼女はリゲルの隣にある椅子に座ると、勝手に彼のグラスの中のリンゴジュースを飲む
しかしリゲルは何も言わない
『美味しい飲み物ですね』
『勝手に飲んどいてその感想かよ』
『そのツンツンさがあれば大丈夫です』
『ケッ、慣れてくると面倒な女だな』
『悪いですか?』
彼女はニヘラと笑い、グラスをテーブルに置く
エルベルト山、そこにいる帝龍といわれる存在に何を求めに行くのか
それを彼女が口にすると、リゲルは答えた
『テラに聞いた…俺のノヴァツァエラがあればとある称号になれると。』
『やはり称号関係ですか。』
『お前は竜騎士だろう?今お前はソードランナー。龍斬と両断一文字がある。あとは』
『龍追、それも帝龍が知るとテラさんが言いました。そういえばリゲルさんは何に?』
『…』
リゲルはクリスハートが飲もうとした自分のジュースを奪い、一気に飲み干した
少し不満そうな彼女だが、彼は気にもせずに一息ついた先ほどの答えを口にする
『アハト・アハト』
破壊に特化した称号
その称号の記録など人間界にある筈がない
ノヴァツァエラというスキルが神種レベルが持つ強力なスキルだからだ
持った存在が人間の前に現れる事はない
(色々忙しいな…てか)
リゲル
『本当についてきて大丈夫だったか?ブルーリヴァイアと同等の化け物だぞ?あの時と人数がダンチだ、戦いになれば勝てる見込みはねぇ』
クリスハート
『どうでしょうね。確かに戦いになれば絶望的ですが…。でもリゲルさんとクワイエットさんといれば私達は安心できるんです』
リゲル
『過剰評価だぞ。別に有能じゃねぇ』
クリスハート
『でも幻界の森では誰よりも諦めなかった。だから信頼できるんです。』
彼女は微笑みながら立ち上がると、リゲルの頭を軽く叩いてから『怪我治してくださいね』と告げて立ち上がる
そこで面白い事が起きる
クリスハート
『あっ』
ほつれた絨毯に足を取られるクリスハート
それに無意識に反応を見せたリゲルは素早く立ち上がると体を支えようとするが、彼は右腕が使えない
(忘れてたっ!やっべ!)
倒れそうな彼女を左腕で抱き寄せるが、既に重心が片腕では支えきれない大勢であったために自身が下にするために体を回転させるしかなかった
大きな音を立てて倒れた時、2人は固まる
リゲルは背中が痛い筈だが、そんな事など考えている暇などない
ぴったりと自分の体にくっつくクリスハートが目と鼻の先にいたからだ
確かに左手で抱き寄せたから当たり前な大勢なのかもしれない
だがいつもと違っていちもよりも近かった
リゲルに言われ、サラシを巻くことを辞めた彼女の胸の弾力が彼の胸に伝わる
クリスハートの息が彼の顔にかかる
慣れない状況にリゲルは固まる
だがそれ以上にクリスハートは固まり、顔を真っ赤にする
しかし、動く気配が無い
(…柔らかいんだな…いや胸じゃなくて)
リゲルは直ぐに冷静になり、彼女をどかそうとするが
顔が真っ赤なクリスハートは顔を逸らすと小声で口を開く
『やっぱり破廉恥だったんですね』
『勘弁してくれ。こちとら好き好んでこの状況にしたわけじゃねぇ』
(ったく、早くどけよ…)
どかそうと考えていた彼は、何故か彼女が先に動くことを望んだ
だがしかし、動かない
顔を逸らして恥じらうだけでうんともすんともしないのだ
(なんでだこいつ?なんでどかない)
リゲルは冷静に考える
彼はアカツキとは違い、どんな時でもそれなりに冷静さを欠くことはない
無駄に聖騎士時代での模索能力を活かし始める
アカツキはチキンであるが、彼は違った
確かに心臓の鼓動は激しいが、それでも元聖騎士の1番隊であった彼は無駄に彼女に尋問を開始する
『ルシエラ、そういやお前ってなんで男と距離取るんだ』
『は…破廉恥だからです』
『前に聞いたが、心を許した相手だけってのはあれか。夫になるうんぬんの貴族特有のあれか』
『容易く体を許す女じゃありません』
『まぁその方が良いかもな。経験無しか』
『そう聞くのも破廉恥』
『ふむ』
『ど…どかないんですか』
『俺が下だぞ?』
すると彼女は無言になる
以前としてお互い倒れたまま動こうとしな
aドの4人は村の入口まで戻る
するとそこには剣を持った5人の村人がおり、彼女達を見て少し驚いていた
村人
『山はどうなった?』
クリスハート
『もう大丈夫です、魔物は来ません』
村人を安心させ、彼女達は村の中に入っていくと丁度村人の非難を終わらせて戻ってくるリゲルとクワイエットと出くわす
クリスハートがにこやかに微笑むと、彼らはそれだけで村は救われたのだと察した
リゲル
『助かった』
クリスハート
『もう大丈夫ですが一度村の警備隊の方で山を調べてから避難解除をしても良いかもしれません』
村人A
『そうとなると一度調査に向かう人間を作らなければ…』
リゲル
『大丈夫だ、もう村人を戻してもいい』
彼は静かにそう告げると、エーデルハイドに近づいてクリスハートの肩を叩く
『助かった』、その言葉で彼女達は微笑んだ
村の騒ぎが落ち着き始めてくると、リゲル達はエーデルハイドと共にレバノ村長の家に向かう
すると驚くべきことに、村長らは逃げていなかった
奥さんや息子夫婦そして孫である男の子と女の子がリビングで外とは違って普通に暮らしていたのだ
クリスハート
『避難しなかったんですか』
レバノ村長
『ランクA冒険者チームのエーデルハイド、君たちが無理ならば村は終わりじゃったからの。』
大丈夫だろう、そういう考えがあったからこそ村長は避難しなかった
こうして夜食が彼らに振舞われ、村長の家の食卓はいつもとは違う賑わいを見せる
クリスハート
『村人の武器を見ると古いですね』
レバノ村長
『まぁ資金がないからなぁ』
リゲル
『ミスリルソード10本、槍3本にシールド3つ』
彼はサンドイッチを口に頬張りながら口を開く
村長、そして家の者はその言葉に首を傾げる
レバノ村長
『それは…』
リゲル
『村に送る、俺が近くの街で買ったらあんたんとこに送るからそれで補え…あとは軽い革装備を送るから俺達が明日出るまでに知らせてくれ』
レバノ村長
『スリーエル6人、エル11人、エム6人』
リゲル
『なら各サイズそれにプラス3着ずつ用意する』
レバノ村長
『稼ぐ男は違うな…リゲル』
リゲル
『俺の金じゃねぇ…。親父の金で買う』
村長は少し驚くが、直ぐに微笑む
羊の肉の入ったスープにアネットは美味しいと連呼しながらクワイエットに負けじとガツガツ食べる
その様子をクリスハートは苦笑いを浮かべながら見ていると、リゲルが口を開く
リゲル
『怪我はないか』
クリスハート
『全員問題はありません』
リゲル
『お前は?』
クリスハート
『大丈夫ですよ』
彼女は微笑みながら無駄に心配性なリゲルに笑って見せた
そこでエーデルハイド達は山にいた魔物に関して話したのだ
リゲルとクワイエットは悪魔が現れたことに多少驚くが、直ぐに顔は真剣になる
話を横で聞いていたレバノ村長は頬杖をつくと、何かを思い出そうと唸り声を上げた
悪魔の事でも知っているのだろうかとリゲルは期待したが。村長は思い出せなかった
だが覚えている限りの事を村長は思いつめた表情を浮かべて話す
レバノ村長
『血塗られた8つの席に座る貴族は堕ちた存在にして神を憎む者、祖なる者を解き放つ為に神の血を捧げる』
ルーミア
『それをどこで』
レバノ村長
『堕ちた円卓というマイナーな本じゃ。サブタイトルが八人の悪魔と書いている面白い本じゃったが山羊が食べてしまっての』
リゲル
『他に何が書いてた』
レバノ村長
『50年以上も前に読んだ本じゃて、うろ覚えだが…』
クリスハート
『うろ覚えでも大丈夫です』
レバノ村長
『祖は地の底で眠りにつくと、新しき世代の貴族は血が渇いた席に座る。そして宴を開きながら渇きを癒し、また渇くと宴を開きくみたいな事ぐらいしか思い出せんわな』
クワイエット
『なんか思い出せたら聞きたいね』
リゲル
『俺はグリンピアの冒険者ギルドにいる、そこに手紙を寄越してくれればいい』
それと彼はレバノ村長にクリスハートはとある物を渡した
悪魔の体から出てきた黒光りする黒い魔石だ
これにはレバノ村長ら家族は驚く
レバノ村長
『こんな魔石…見たことないぞ』
『父さん、これはいったい…』
レバノ村長
『絶対に口外するな…この正体を知っている者の耳に入れば私らとて危険だ』
クリスハート
『村からでもこれを送れますか?場所はグリンピアのギルドにいるクローディアさん宛てです』
レバノ村長
『可能だ。明日には手続きをしに村役場に行こう…わしもこれを村にずっと置かれてはかなわん』
こうして彼らは話を止め、談話しながら食事を済ませた
リゲルの家に戻ると女性陣は彼の家の裏にある小屋の中の窯風呂を見つけ、お風呂に入れるとウキウキとなる
2人までしか入れない小さな風呂だが、逆に彼女達は珍しい風呂に興味を持つ始める
熱を放つ魔石でお湯を作る為、今はアネットとシエラが窯風呂の温度の調整をしており、小さなリビングにはリゲル、クワイエット、クリスハート、ルーミアがのんびりして寛ぐ
女性2人はとある物に気づく、リビングの隅にある机には写真が飾られてあり、クリスハートとルーミアはそれを見つけて椅子から立ち上がると写真に近づく
それは幼い頃のリゲル、そして母親であるアウラが映る写真であった
アネット
『今と全然違うね…すっごい可愛い』
クリスハート
『幸せそうですね』
今のリゲルとはまったく違う無垢な笑顔を見せる幼き頃の彼
クリスハートは彼が何に飢えていたのか、聖騎士時代の彼の懐に隠していた紙切れに書いていた言葉を思い出し、それを悟る
クリスハート
(家族が欲しい…か)
そう考えていると、後ろからリゲルが来て写真を伏せて隠す
リゲル
『見すぎだ馬鹿』
ルーミア
『ええいいじゃーん』
クワイエット
『昔のリゲル可愛いでしょ』
リゲル
『お前も混ざんなっ』
クリスハート
『そういえば久しぶりの故郷ですけど、気分はどうですか』
リゲル
『悪くはねぇ…だが俺のやりたいことはここにはない』
クリスハート
『何をしたいんですか』
彼女はリゲルに近づいて答えを聞こうとする
距離は近く、ルーミアでも驚くほどに近い
リゲルは顔を近づけられると直ぐに顔を逸らし、ゴモゴモと何かを呟き始める
リゲル
『まぁ…色々弱い奴らに剣を教えたりとか、色々だ』
クリスハート
『ふぅん』
ルーミア
『というか案外リゲル君って英才教育受けてたんだよね』
リゲルは少しクリスハートから離れると、ソファーでのんびり寛ぐルーミアに顔を向ける
これにはクリスハートも興味を持つが、ルーミアが話す言葉にリゲルは驚くこととなる
クワイエット
『まぁルドラさんってリゲルにだけ少し厳しい時あったし』
ルーミア
『字が無駄に上手いし、頭も見た目と違って良いし、『おいっ』…戦闘術に関してはクワイエット君同様に幅広いし、簿記検定何故か2級持ちとか本当に聖騎士?』
リゲル
『だって…あの人が資格はとっておけっつぅから』
クリスハート
『帝王学、心理学に流体力学なと本当に聖騎士じゃなくとも面白い学問ばかり詳しいですよね』
リゲル
『悪いかよ、親父は戦えなくても生きていけるようにしなければ家族を作っても養えないとかいうからだよ』
ルーミア
『でも女性の扱いは教えてなかったね、クリスハートちゃんなんて押し倒せばきっと抵抗しないのに』
その言葉に面白がるクワイエットは目をギラギラさせ始める
話の内容の中心にいる2人はたまったもんじゃない
狼狽える様子を、ルーミアは楽しそうに見つめる
リゲル
『馬鹿なにいってんだっ!』
クリスハート
『破廉恥ですリゲルさん』
リゲル
『俺は何もしてねぇだろ妄想女』
ルーミア
『クリスハートちゃんも薄々感じてるくせに』
クリスハート
『何をですか!』
ルーミア
『この前の貴族に迫られるのとリゲル君に迫られるとじゃ全然芽生える感情違うでしょ?嫌なの?』
そこで僅かに彼女は考えてしまう
リゲルは何をそんなに考える事のあるのかと躊躇いながらもクリスハートの様子を見るが
ここでアネットとシエラが風呂が沸いたという最悪なタイミングにクリスハートは救われてその場を飛び出すとうにしていなくなる
シエラ
『顔、赤かった』
アネット
『ねぇクワイエット君、あたしらいない間に面白い事しないで?』
クワイエット
『僕じゃなくてルーミアちゃん』
ルーミア
『ごり押しキューピットだったか』
アネット
(何したんだ…)
全員が風呂に入り、時刻にして21時には殆どが眠りに入る
女性らはリゲルの母親が使っていた部屋で、リゲルとクワイエットはリゲルの部屋だ
眠れぬリゲルだけが小さなリビングの椅子に座り、机の上の蝋燭の灯りだけで母親と映る幼い頃の自分の写真を手に思い出に浸っていた
(…たまには帰ってくるか)
写真を机に置き、椅子にもたれ掛かって天井を見上げながらため息を漏らす
レバノ村長から貰ったリンゴジュースが入った瓶をグラスに注ぐと、それを一気に飲み干す
懐かしい思い出と懐かしい道具が揃う彼の家
寝たら勿体ない気持ちがあるからこそ彼は寝れない
またくればいい、しかしそれがいつになるかはわからない
(2か月周期で帰るか…レバノ村長にいくらか渡して手入れし続けて貰わねぇとな)
彼は思った。今は毎日が暇しない、退屈しない日々が訪れると
聖騎士の時とは違う出会いが今ある
色々な人間とつるむのも悪くないと胸を張って彼は感じれている
クワイエット
『楽しいよね』
リゲル
『起きてたのか…お前にしては珍しいな』
クワイエットは僅かに笑うと、グラスを1つ用意してからリンゴジュースを注ぎ、リゲルの隣に椅子を置いて座ってから飲み始めた
クワイエット
『ギルドで剣術指南、グリンピア中央学園での講師…しかも何故か冒険者ギルド運営委員会にいつの間にか所属扱いで職員にされたし』
リゲル
『だが俺達は冒険者だ。好きな事をする』
クワイエット
『そうだね。帰ったら学校の事で大忙しだよ?僕は書き物嫌いだしそっちはリゲルやってよ』
リゲル
『なら課外授業はちゃんとやれよ』
クワイエット
『任せてよ。それにしても楽しみだなぁ…学校の先生みたいでさ』
リゲル
『まさかなるとは思わなかったぜ。剣舞科だけど』
クワイエット
『まぁその前にエルベルト山だね…今は聖騎士が総合騎士会の士気をしつつマグナ国領土側で警備堅くしてるって話さ』
リゲル
『国の騎士が聖騎士に仕切られるとは面白いな』
クワイエット
『それほどまでに国の権力は衰えてるんじゃないかな、フルフレア公爵の血筋が聖騎士作ったんだし今は公爵の方がフットワーク軽いと思える。王は死んでゼファー王子が今や国王として王権を握ったとはロイヤルフラッシュさんから聞いたけど、今はフルフレア公爵の元でゼファーも色々動いているからこそ大事な任は公爵が担っているかもね』
リゲル
『ケッ、王族と公爵の権力が同等とは面白いが…まぁ良いシステムだな。昔の人間が作った中でマシだ』
クワイエット
『マグナ国二代目国王シュナイダーのが作った制度。しかも他国も導入している…。王だけに権力を持たす時代が戦争を起こしたとも言われてる。』
リゲル
『色々繋がってきそうだな。ゾンネは下手な役者気取って暴君って筋がでけぇ』
クワイエット
『もともとは心の優しい国王だったらしいしね。僕らも人相手に剣を握る事は多々あるから多少理解できるよ…』
リゲル
『犠牲失くして平和は訪れねぇ時もある。ゾンネはその当時を生きる者全てを犠牲にしてまでも次なる時代に生まれる子らに平和を届けたかったのかもな』
クワイエット
『その線がどんどん濃厚になってくね』
リゲル
『…やりたくもない役者やるってどんな気持ちだろうな。ゾンネも親父も』
クワイエット
『まぁこれ以上考えるのは無粋だね。僕は眠いから今度こそ寝るよ…その前に村長から貰った干し肉どこ』
リゲルは懐から干し肉1枚を取り出すとクワイエットに渡した
クワイエットはかじりながら部屋に戻ると、リゲルは1人となる
左手で父から授かった剣を抜き、上に掲げた
不思議と笑みがこぼれ、彼の脳裏には上官だった彼の姿が蘇る
父としての姿は死ぬ寸前のみ
しかし彼は満足していた
愛されていたことを
『さっさと帰って母さんに頭下げれば良かったのによ、馬鹿な親父だ』
親の愛は知らずに受け取っていた、それが知れただけで彼は良かった
すると誰かがリビングに来る気配を感じて視線を向ける
クリスハートだ
彼女はリゲルの隣にある椅子に座ると、勝手に彼のグラスの中のリンゴジュースを飲む
しかしリゲルは何も言わない
『美味しい飲み物ですね』
『勝手に飲んどいてその感想かよ』
『そのツンツンさがあれば大丈夫です』
『ケッ、慣れてくると面倒な女だな』
『悪いですか?』
彼女はニヘラと笑い、グラスをテーブルに置く
エルベルト山、そこにいる帝龍といわれる存在に何を求めに行くのか
それを彼女が口にすると、リゲルは答えた
『テラに聞いた…俺のノヴァツァエラがあればとある称号になれると。』
『やはり称号関係ですか。』
『お前は竜騎士だろう?今お前はソードランナー。龍斬と両断一文字がある。あとは』
『龍追、それも帝龍が知るとテラさんが言いました。そういえばリゲルさんは何に?』
『…』
リゲルはクリスハートが飲もうとした自分のジュースを奪い、一気に飲み干した
少し不満そうな彼女だが、彼は気にもせずに一息ついた先ほどの答えを口にする
『アハト・アハト』
破壊に特化した称号
その称号の記録など人間界にある筈がない
ノヴァツァエラというスキルが神種レベルが持つ強力なスキルだからだ
持った存在が人間の前に現れる事はない
(色々忙しいな…てか)
リゲル
『本当についてきて大丈夫だったか?ブルーリヴァイアと同等の化け物だぞ?あの時と人数がダンチだ、戦いになれば勝てる見込みはねぇ』
クリスハート
『どうでしょうね。確かに戦いになれば絶望的ですが…。でもリゲルさんとクワイエットさんといれば私達は安心できるんです』
リゲル
『過剰評価だぞ。別に有能じゃねぇ』
クリスハート
『でも幻界の森では誰よりも諦めなかった。だから信頼できるんです。』
彼女は微笑みながら立ち上がると、リゲルの頭を軽く叩いてから『怪我治してくださいね』と告げて立ち上がる
そこで面白い事が起きる
クリスハート
『あっ』
ほつれた絨毯に足を取られるクリスハート
それに無意識に反応を見せたリゲルは素早く立ち上がると体を支えようとするが、彼は右腕が使えない
(忘れてたっ!やっべ!)
倒れそうな彼女を左腕で抱き寄せるが、既に重心が片腕では支えきれない大勢であったために自身が下にするために体を回転させるしかなかった
大きな音を立てて倒れた時、2人は固まる
リゲルは背中が痛い筈だが、そんな事など考えている暇などない
ぴったりと自分の体にくっつくクリスハートが目と鼻の先にいたからだ
確かに左手で抱き寄せたから当たり前な大勢なのかもしれない
だがいつもと違っていちもよりも近かった
リゲルに言われ、サラシを巻くことを辞めた彼女の胸の弾力が彼の胸に伝わる
クリスハートの息が彼の顔にかかる
慣れない状況にリゲルは固まる
だがそれ以上にクリスハートは固まり、顔を真っ赤にする
しかし、動く気配が無い
(…柔らかいんだな…いや胸じゃなくて)
リゲルは直ぐに冷静になり、彼女をどかそうとするが
顔が真っ赤なクリスハートは顔を逸らすと小声で口を開く
『やっぱり破廉恥だったんですね』
『勘弁してくれ。こちとら好き好んでこの状況にしたわけじゃねぇ』
(ったく、早くどけよ…)
どかそうと考えていた彼は、何故か彼女が先に動くことを望んだ
だがしかし、動かない
顔を逸らして恥じらうだけでうんともすんともしないのだ
(なんでだこいつ?なんでどかない)
リゲルは冷静に考える
彼はアカツキとは違い、どんな時でもそれなりに冷静さを欠くことはない
無駄に聖騎士時代での模索能力を活かし始める
アカツキはチキンであるが、彼は違った
確かに心臓の鼓動は激しいが、それでも元聖騎士の1番隊であった彼は無駄に彼女に尋問を開始する
『ルシエラ、そういやお前ってなんで男と距離取るんだ』
『は…破廉恥だからです』
『前に聞いたが、心を許した相手だけってのはあれか。夫になるうんぬんの貴族特有のあれか』
『容易く体を許す女じゃありません』
『まぁその方が良いかもな。経験無しか』
『そう聞くのも破廉恥』
『ふむ』
『ど…どかないんですか』
『俺が下だぞ?』
すると彼女は無言になる
以前としてお互い倒れたまま動こうとししない
だがそこでリゲルは攻めた
『なんだかよぉ、親父がなんでお前に対してあんな対応したのかわかった気がする。確かに悪くねぇな。聖騎士時代の時はよ…ルドラさんは何度も俺と歳が近い女連れてきて飯で合コンだとか言って連れまわった時があった。言い方は悪いがあまり連れ添いたいと思う野郎はいなかった。俺とウマが合わないって意味だ。』
『なな何を急に話し出して…』
『お前は悪くねぇ、居心地がいい』
彼女の顔がわからないくらい赤くなる
頭から湯気が噴き出しても可笑しくはない、顔が爆発しても可笑しくはない
だがリゲルはそんな彼女の様子など無視する
そこで彼は変な事を思い出す
ルドラが教えた間違った女の落とし方だ
ルドラ
『気になる女がいた時は抱き寄せてみろ、腰ではなく自分の胸に頭を抱き寄せれば相手の感情がわかる、多分!』
それは誰にでもしていい事ではない、しかしそれくらいは彼でもわかる
リゲルは試してしまう、クリスハートの頭を抱き寄せて胸にうずめると面白い事が起きる
先ほどとは打って変わって彼女が大人しくなったのだ
(気絶したか?いや意識はある・・にしても髪サラッサラだなこいつ)
『ちょちょちょちょちょちょ・・・・』
(喋ったか)
何故かリゲルも顔が赤くなるが、慣れない策を続けても空回りするだけだと思い今度こそ彼女をどけようと彼女を移動させてから上体を起こす
『悪ぃ、変なノリだった…もうしねぇよ』
頭を掻いてそう告げるリゲル
多少遊び過ぎたとなると罪悪感を感じてしまい、彼は謝罪する
口を強く閉じ、顔を赤くして恥ずかしそうにする彼女はリゲルから視線を逸らしたまま
これを見てリゲルは(やっぱやり過ぎたか…)と感じた
そして彼女は思わぬ行動を取る
体を揺らしながらリゲルに近づくと、彼女は何故か再び彼の胸元に頭を埋めたのだ
思わぬカウンター攻撃にリゲルは思考が壊滅状態、その行動の意図が読み取れずに彼の脳内は知らない境地に見舞われていた
これはなんだ?どういう意味だ?
何を伝えている?何故こうなった?
彼にはわからない、しかし僅かに彼女はリゲルの胸元に頭をコンコンと何度も小突く
顔は赤く、頬を膨らます様子など初めて見た彼は困惑する
でも彼がこの時を境に彼女の見方がいつにも増して変わる事となった
ある程度は信頼してくれているのだろう、その表れかもしれないと行き過ぎた予想をせず
再び彼女の頭を抱き寄せると大人しくなる
2人だけの時間ならどれほど良かっただろうか
決してそんな時間はここにはない
リゲルの家には彼らだけじゃないのだ
彼の母であるアウラの部屋で休んでいたアネットとルーミア、そしてシエラは廊下からその様子を鼻息荒くして見ていたのだ
シエラ
『うほ…』
アネット
『クリクリちゃん…乙女過ぎるでしょその顔』
ルーミア
『こりゃ堕ちたわ。メスだわあれ…』
アネット
『なんでリゲル君押し倒さないのよ…いけるって』
ルーミア
『彼の中で確信がまだ持てないんでしょ?』
アネット
『なんのさルーミア』
ルーミア
『どうみてもあれだよ、リゲル君って人を好きになるって理解してない…なんとなくでしか理解してないからクリスハートちゃんと距離が縮まらないんだよ』
アネット
『ということはリゲル君次第ってことねぇ』
シエラ
『クワイエット君もあれくらい度胸あれば…、見習ってほしい』
シエラの言葉に2人は真顔で彼女を見つめた
そうか、そうだったのか、シエラはそういう願望なのかと悟る
そんな彼女の顔スレスレに何かが3本通り過ぎる
僅かに前髪が切られ、肩を強張らせた3人は何が飛んできたのか壁を見るとナイフだ
投げたのはリゲルだった
リゲル
『…そこに直れ、次は額に撃つ』
3人は一瞬で部屋に戻っていった
リゲルはクリスハートを解放すると、彼女は恥じらいながら部屋に戻る
そしてリゲルは自室に戻ると、寝る間際まで女性たちの話し合う声が僅かに聞こえたのだとか
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