第224話 3 ダンカートの街

登場主要キャラ  


グリンピア冒険者チーム『クリジェスタ』(Aランク)

リゲル・ホルン       元聖騎士の中でも上位の強さを持つ男

クワイエット・モンタナ   元聖騎士1番隊の副隊長


グリンピア冒険者チーム『デーエルハイド』(Aランク)

クリスハート・ルーティン  片手剣士、本当の名はルシエラ・ル・ダンカード

シエラ・エリ・フルブレーム 魔法使い、

アネット ・ルールー 片手剣士、

ルーミア・マイン      双剣士


ルシエラ・ル・ダンカード   クリスハート

エミ・ル・ダンカード     母

リクゼン・ル・ダンカード男爵 父

クリス・ル・ダンカード    次女

キャリヴァン・ル・ダンカード 長男


・・・・



応接室にキャリヴァンが姿を現すと、リゲルは区を叩き起こす

これにはキャリヴァンも笑みを浮かべるが、彼のあとに部屋に入ってきた冒険者に見覚えがあった


マジックナイトという女性だけの冒険者チーム

ナナ・ルワンダ  剣士

ミコ・サルーシャ 槍

ルーシー・マルタ 魔法使い

マリー・タッタランド 魔法使い


既に調べあげていたリゲルは右腕のギブスを労りながら彼女達に視線を向けた

やはりマリーとルーシーはギルドで遭遇した二人を見ると驚きを僅かに浮かべる


キャリヴァン

『マジックナイトよ、座ってくれたまえ』


彼女達は静かにキャリヴァンと対面するように椅子に座り、辺りを見回す

以前としてマジックナイトの魔法使い二人はリゲルとクワイエットから視線を外せない


それをクワイエットはリゲルと共に察したが、興味が無かった

欠伸をし、緊張感のない様子のクワイエットを傍らにキャリヴァンは口を開く


キャリヴァン

『クワイエットさんとリゲルお兄さんです。二人は元聖騎士1番隊の隊長と隊長代理、今はグリンピアにて冒険者をしていらっしゃる戦士です』


聖騎士の1番隊という称号は強い

それだけで人を驚かせる事が出来る


二人は軽く頭を下げると、そこでようやくマリーは思い出した


(カブリエールが誕生した街…)


彼女は魔法使い、ティアを知らぬ筈がない

魔法使いが勝てない魔法使いとも言われ、その話はマグナ国内の魔法使いで知らぬ者などいないに等しい


マリーはグリンピアを調べた時に他の冒険者も調べあげた

そこでリゲルとクワイエットの名を知ったのだ

超破壊魔法を使う男がいる、と


キャリヴァンはマジックナイトに炭鉱現場で振り当ててしまった自然の洞窟内に関しての詳細や魔物の出現、そして依頼内容を持ちかける


ランクCの冒険者チームとなると、どの程度の稼ぎが妥当なのかは事前にリゲルから聞いてきたキャリヴァンはその額より高い報酬を提示し、他の道を塞ぐまでの期間内でどうだろうかと話す


キャリヴァン

『予期せぬ敵との遭遇の際は撤退も視野にいれている。先ずはある程度のミスリルが採掘したいのです』


ナナ

『なるほどですね、確かに良い話』


それもその筈だ、魔物が現れなくとも報酬は毎日保証されるのは冒険者として願ってもない話

冒険者が断る理由などそこには無かった


ルーシー

『あの、キャリヴァンさん』


キャリヴァン

『どういたしましたか?』


ルーシー

『彼らとはお知り合いで?』


彼女はクワイエットとリゲルに視線を向けて話した

そこで微笑むキャリヴァンはとんでもない事を口にしてしまい、場が僅かに乱れる


キャリヴァン

『リゲルお兄さんは私の姉であるルシエラが想いを抱く男性です』


リゲル

『絶対違うぞ!?なんでそうなった!?』


彼の言葉はマジックナイトには届かない

あのルシエラの意中の者という概念が無駄に生まれてしまったからだ


ナナ

『何者なんですか…』


マリー

『グリンピアの冒険者、ランクAチームのクリジェスタだよ』


ルーシー

『A!?』


マリー

『たった二人組チームでのAはマグナ国にはいない。相当な手練れ』 


ミコ

『グリンピアって今忙しい街だよね確か。聖賢者ティアと黒賢者リリディがいる街…』


マリー

『マスターウィザード以上の魔法使いの称号を持つ者がいるって聞いてる、その街に超破壊魔法を持つ男がクリジェスタにいると話が流れてきたけど』


クワイエット

『それはリゲルだね。』


リゲル

『勘弁してくれ、のんびり冒険者したいんだぜこっちはよぉ』


頭を抱えるリゲル

ここでマジックナイトはとある条件を出してしまう


二人のステータスを見たいと、それならキャリヴァンの条件を飲む


冒険者は容易く自身のステータスは見せない

しかし聖騎士上がりの二人はキャリヴァンの為に見せるしかなかった


開示した二人のステータスに四人の女性はあり得ないステータスと数値に表情が固まる


ナナ

『エナジーフレア…なにこれ』


マリー

『炎系フレア種三代魔法の1つ、戦士がこれを…あり得ない』


ルーシー

『両断一文字は百歩譲ってだけど、ノヴァツァエラって確か文明を破壊する魔法って聞いたことが…、しかも龍斬…』


リゲル

『おら見せたろ?炭鉱討伐ありがとうございます』


彼はニヤニヤしながらステータスを閉じる

マジックナイトはキャリヴァンと共に応接室を出ると、リゲルらも夜食まで時間を潰すことに。


クワイエットが『ご飯まで寝る』と言って走っていくとリゲルは一人になるが、とりあえずは庭でのんびりしようかと外に出た


夕暮れ、僅かに風がなびくと庭に植えられている綺麗な花はユラユラと揺れ、彼はそれを見ながら小さな訓練スペース近くのベンチ


(あとは右腕だけなんだがなぁ)


戦えない事に多少の苛立ちが募る

だがそれで彼の感情が爆発するとこはない


『我慢してますね』


クリスハートが後ろから現れた

するとそれまで悩ましそうな顔をしていた彼は一変し、誰かとじゃれあうときに見せるいつもの彼に戻る


『そんくらいできる。お前は家族団らんしないのか?』


二日間の滞在、その間に家族で募る話もまだまだあるかもしれないだろうとリゲルは感じていたが、彼女はそこまで話すことはないと告げて彼が座るベンチの隣に座る


普段着のクリスハートを見慣れないリゲルは多少焦りを見せるが、彼女はそれが少し面白いと思いながらも別の話を口にする


『お父様に気に入られてますよ、リゲルさん』


『何も俺はしてねぇよ…。てかよ、お前は家が恋しくないのか?』


『え?帰りたいときに顔を出せばいいだけなので別に…』


あれ?とクリスハートは疑問を浮かべた

答えた後すぐにリゲルがにこやかそうにしているので、これには彼女も顔を隠して微笑んでしまう


『一応骨はそれなりに繋がってるんですよね?』


『わかんねぇが…馬鹿高け薬を毎日飲んでるから普通の完治期間が推測できないのだが』


『1日3食分で金貨2枚ですから…』


かなり高い薬である

しかも冒険者ギルド運営委員会の保険に加入して半額免除でも金貨2枚

これには彼女も驚きだ


『そういやよ、家の人と何話してたんだ?』


『なんも話してませんっ!』


『おい今の反応なんだ?俺なにもしてねぇぞ?』


少し彼女が狼狽えている理由をリゲルがわからず首を傾げた


こうして夜食になると皆はリクゼン家と共に馳走を口に運ぶ

そこで何故かリゲルの隣にはいつもいるクワイエットがおらず、クリスハートの妹であるクリス・ル・ダンカードがいる

彼女はリゲルに興味津々であり、かなり椅子を近づけて彼に色々と話しかけている


『ねぇリゲルさん、好きな食べ物何なの?』


『肉類だ』


『なら食べさせてあげる』


クリスは自身の目の前にあるステーキを切り分けると、なんとリゲルに食べさせようと口元に運ぶ

これにはアネット、ルーミア、シエラも驚くが一番驚いているのはクリスハートだろう


リゲルは一瞬困惑したが、つっぱねるわけにもいかないのでクリスが口元に運ぶ切り分けはステーキを食べる


『美味しい?リゲルさん』


『そりゃな…』


喜ぶクリスはリゲルに肩をくっつけて更に食べてもらおうと切り分けていたステーキを彼の口元に運ぶ

誰がどう見てもそれは睦まじき男女はするような仕草であり、クリスハートは居ても立っても居られないのか、席を立つとクリスを無理やり母親の隣に座らせる


クリス

『なんで駄目なのお姉様ぁ、リゲルさん格好良いし良い男なのに』


クリスハート

『駄目ですっ』


クリス

『でもお姉様の男じゃないじゃん…いいもん夜一緒に寝るから』


リクゼン、飲んでいたワインでむせ始める


クワイエットやシエラは引き攣った笑みを浮かべながらサラダを食べるが、変な争いの中心にいるリゲルはたまったもんじゃない


リゲル

(とんでもねぇ妹だな…)


クリスハート

『ちょと…一緒に寝る!?何を考えてるのクリス』


クリス

『えぇ駄目なの』


クリスハート

『それは夫婦仲ですることです!』


クリス

『でもリゲルさんきっと好きにさせてくれそう』


妹が放つ言葉にクリスハートは少し戸惑う

そこで助け舟である彼女らの母親であるエミが止めた

止めてから、何故かクリスハートはリゲルの隣で黙々と料理を食べる

遠くでクリスが目を細めて不満そうにしているにを無視してだ


クワイエット

『2日間助かりましたリクゼンさん』


リクゼン

『気にする必要はない。娘がまた顔を出す時にでもぜひ来てほしい』


シエラ

『そういえば、漁業権が得られた街って南にあるオーミの街です?』


リクゼン

『そうであるが、何かありましたかなシエラ殿』


シエラ

『私と同じエルフのハーフ、いる。どこに魚がいるかとか海にかなり詳しい…名前はエドワードっていう』


リクゼン

『エドワード…』


シエラ

『取りたい魚の名前を言うとそれを確実に釣る男、海でもきっと使える人だけどガタイは良くないから海の男になれなくて今は不貞腐れてるかも、前の貴族の時に不採用にされてから飲んだくれてるらしいから一度声をかけてみてほしい』


オーミの海は魚介類が売りではない、他の海に面した街の中では下の方なのだ

リクゼンはそれをなんとしてでも結果を残し、男爵以上の爵位を自身の代で目指している


(人との繋がりは力…か)


リクゼンはルドラの言葉を思い出す

ならば従おう、彼はそう誓う


リクゼン

『早速探し出す、能力ある者は私が雇用する』


シエラ

『お願いします、本当に海に詳しいハーフエルフ。網作りも上手い』


リクゼン

『助かる』


エミ

『当分家を留守に?』


リクゼン

『1週間はオーミの街でエドワードを探しつつ造船所の視察をしたい。大型船が無いのが痛いがまずは中型船の数が少ないのも問題だ』


小型漁船が多く、中型漁船は2隻しかない

明らかにそこを担っていた貴族が投資していなかったからだが、しなかった理由は漁業会オーミ支部に与えるべき投資を懐にしまい込んでいたからだ


(中型船1隻が金貨2千…しかし今年からキャリヴァンに託した炭鉱にミスリルが肥えた山脈を掘り起こしから未来投資としてありか…)


キャリヴァン

『お父様、どうせ金のやりくりをお考えで?』


リクゼン

『お前の所でミスリルが500キロでも掘れればなと思ってなぁ』


キャリヴァン

『現場の予想では今は約350キロ…それは一角でしかないから造船所に今のうちに投資しても可笑しくはない、というか完全にオーミの漁業界に投資すべきだよ』


エミ

『それなら迷う必要は…』


リクゼン

『ふむ、どの程度の資金が必要か視察で決める・・・、戻り次第話し合おう』


家族での仕事上の話

アネットは気にせずホタテの刺身を幸せそうに食べる


ルーミア

(マジで刺身美味い…帰ったら食べてみよっと)


リクゼンは料理を美味しそうに食べる皆を眺め、囁くように口を開く


リクゼン

『今回は良い出会いが多く、ホッとしている』




こうして夜食が終わり、風呂にも入ったリゲルとクワイエットは部屋に戻る

クワイエットはベットに飛び込めるほどの回復はしているが、運動は出来ない

治ったとしても体を戻すのに少し時間がかかる為、彼もリゲル同様に完全完治は1か月以上もかけている


しかも骨を治すのを促進させる薬を1週間分飲んでいてもだ

それほどまでに2人がヴィンメイに与えられたダメージは深い

ドアをノックされ、クワイエットがベットで返事をすると現れたのはシエラ


これにはクワイエット、『添い寝!いいよ!』と興奮して言うが

シエラは顔を真っ赤にし『違う、変態!』と言って近くの椅子に座った


『明日、出発』


『次はパゴラ村だね』


そこはリゲルとクワイエットの出身地である小さな村

当時の人口は3千人と少なく、現在では僅かに減ったという情報を彼らは得ている


行く理由は1つ

リゲルの父であるルドラの骨壺、それを母であるアウラの墓に埋めるためだ

丁度ここから2つ先の山の麓にある村であり、移動は馬車で村まで行ける


『そういえばシエラちゃん、家は大丈夫?』


『最近稼ぎ良い、大丈夫』


『殆ど家に納めてるもんね、もう少しすれば妹さんや弟も高等部卒業して自立するだろうし今のところ問題ないよね』


『うん、お母さんも最近足の調子がどんどん良くなってる』


神への願い、シエラは母親の足の怪我を治すことを願う

それは徐々に回復に向かうという形で現れ、医者も奇跡としか言いようがなかった

機嫌が良いシエラ、これに関しクワイエットはニコニコしながら声をかけた


『帰ったらデートだね』


『まぁ…今回は良い』


クワイエットは喜んだ

そして次の日、朝食後には手厚い別れをされて馬車で旅立つエーデルハイドとクリジェスタ

久しぶりに家に帰れたクリスハートには心の憂いはなく、自身のしたい事をするべく冒険者出来る事を決めた


アネット

『そういえばさ!途中で休む街で美味しい焼き菓子店があるんだよ!』


リゲル

『そういうの調査能力を活かせよっ』


アネット

『乙女なんだからそういうのは詳しいのよっ』


クワイエット

『あはは!甘いのは女性好きだし仕方ないよね。みんなでよろっか』


ルーミア

『流石クワイエット君、器がデカいわぁ』


リゲル

『お…俺を見ながら言うな…悪かったよ』


シエラ

『ブフッ』


リゲル

『笑ったなロリ女』


シエラ

『私25!年上』


そのやりとりにクリスハートはいつも通りだと感じ、笑う




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る