第218話 ぶらっくめがね 4 悪魔戦
※アカツキ視点
《弱点は頭部!そこが心臓の核だ!》
アカツキ
『それがわかれば!』
まさか悪魔と遭遇するとは思わなかったよ
アンデットに見えるのも無理はないほど恐怖を覚える姿だ
だがゾンビのほうが可愛いかもな
『ティア!気をつけろ!』
『はい!』
俺は飛びかかるデビル・パサランの噛みつきを避けながら頭部を両断する
跳ね飛ばすともしかしたら生きているかもしれないので、俺は頭半分切ったのだ
狙いは当たり、奴は着地せずにそのまま倒れたんだ
いける
リリディ
『突風!』
久しぶりに彼がそれを使うのを見た
でもチョイスは抜群だ
リリディが体の正面に緑色の魔方陣を展開すると、そこから吹き出す強い風が多くのデビル・パサランのバランスを崩して転倒させたのだ
リリディ
『今です!』
ティアマト
『不死身じゃねぇなら問題ねぇ!』
クワイエット
『こっちは勝手に動くからねっ!動きは遅いし』
ティア
『デルタ・バルカン!』
リゲルとクワイエットは敵の引っ掻きや噛みつきを避けながらも頭部を狙って斬る
俺はティアの後ろに隠れると、3つの白い魔法陣が光速回転しながらもの凄い連射で白弾が放たれる
カブリエールになってからというもの、彼女のデルタバルカンの威力や連射力は段違いだ
ドドドドと表現しずらい音を響かせ、彼女が放つ方向にいる全てのデビル・パサランが頭部だけじゃなく体も粉々に四散させた
あの攻撃に人間が当たればひとたまりもないな
俺はランタンを手に上に掲げて灯りを確保することに専念しようと考えた瞬間
懐から光粉を取り出して周りに吹き巻いた
それは地面に付着すると淡い光を放ってより鮮明に視界を照らしている
なら俺も戦えるじゃないか…いつも灯り担当だったからそうなると落胆しそうになっていたが
『刀界!』
刀を鞘に強く押し込み、正面から飛び込んでくるデビル・パサラン複数に衝撃波を飛ばす
それには無数の斬撃が交じっており、衝撃波に飲まれたデビル・パサランは体中を斬り刻まれて地面に転がる
『シャハン!』
ギルハルドも学習したようだ、俺達の周りを縦横無尽に駆け回りながらも懐から取り出した小刀を使って頭部を斬り裂いている
ティアマトは大胆だ
側面から来たデビル・パサランの噛みつきを避けると頭部を左手で掴んで地面に叩きつけて潰す
そうして素早く背後から迫る別のデビル・パサランに向けて回し蹴りで吹き飛ばすと、そのデビル・パサランはリリディがスタッフのフルスイングで頭部を粉砕さ
『ウゥゥゥゥ!』
それにしてもだ!
呻き声を聞いてるだけで体が怠い
本調子とはいえない感覚を覚えるよ
確か恐怖状態の初期段階は悪寒と倦怠感だとクローディアさんの補習で習ったな
気を張っていれば大丈夫らしいが、耐えれないと混乱して暴れてしまうとか幻覚症状より質が悪い
『そいや!』
ティアは先程までビクついてたがスイッチ入ったようで1番平気そうだった
ドロップキックでデビル・パラサンの顔面を蹴ると地面に手をついてから着地し、素早くラビットファイアーの熱光線5発を敵にお見舞いしてる
リリディ
『敵が増えてますね!』
アカツキ
『退路確保しながら!ティアマト!リュウグウ頼む!』
ティアマト
『おうよ!』
リュウグウ
『任せろ!』
二人は来た道を塞ぐ敵の殲滅に集中する
倒しても倒してもひっきりなしに現れるとはな
というか…こいつら死ぬと白い何かが体から抜け出して空に昇っていく…
魔物なのか?なんなんだこいつら!
それはまるで魂のようにも思えるが、体は白い何かと魔石が出てくるとブクブクと泡を吹きながら溶けていく気持ち悪さだ
リゲル
『動きが荒い魔物だな』
クワイエット
『そうだけど犬も来たぁ!』
犬?迫る個体の頭部を切り裂いてから視線を奥に向けたんだ
すると手足が黒光りする鱗、やはり胴体は灰色、そして頭部はメデューサのような蛇の髪をした犬型のデビル・パラサンが呻き声を上げて走ってきたぞ
胴体が口かと思ったが違う
頭部が二つに裂け、そこが口だった
アカツキ
『あいつ心臓どこ!?』
《知らねぇ全部潰せ!》
リゲル
『おらぁ!』
彼は飛びかかる悪魔犬を真っ二つに両断
流石にそれでは動けないようであり、リゲルは倒すことに成功した
リュウグウ
『後ろ確保!』
アカツキ
『退け!後方に集めたら俺が一網打尽にする』
クワイエット
『後退開始だね』
仲間が退路を作ったおかげで俺達は包囲網から脱出
追いかけてくる2種の悪魔に向かって刀界を放ち、結構な数を巻き込むことができた
人型は足が速くはないから問題ない
しかし犬型のデビル・パラサンはグランドパンサー並みに速い
『ウゥゥゥゥガァ!』
ティアマト
『待て!』
頭部が二つに裂けて現れた口
犬型デビル・パラサンの顎に彼はアッパーカットで宙に舞い上がらせる
リリディのシュツルムである程度の犬型を巻き込めたから距離は稼げたよ
リリディ
『なんですかあの恐怖丸出しの姿!』
《だから悪魔は詳しくねぇ!さっきデビル・パラサンを見て思い出しただけだ!》
リュウグウ
『もっと思い出せ!』
《無茶言うな!また来るぞ!》
『ウゥゥゥゥ!』
『ウゥゥゥゥガゥゥ』
早歩きだったが、流石に追い付かれるか…
だがこうでもしないと疲れを僅かでも回復できん
既にリリディが満身創痍だ、体力無さすぎだ
ティアマト
『かなり倒したけどワラワラいるぜ…』
アカツキ
『確かに多い、だがランクはDちょいくらいで助かってるな』
リュウグウ
『弱くてもあの数だ、逃げて正解だが…』
足を止め、息を整える
疲れていたら相手が弱くても意味がない
だが呻き声は直ぐに後ろから聞こえ始める
また戦うしかないか、と刀界を放つ準備をしていると呻き声とは違う何かが聞こえてきた
『ニクィ…』
『ユルサヌ』
感情のこもった人の声だ
これにはアカツキも驚く
現れたのはデビル・パラサンだが、両腕が人間のような形をしている
真っ黒な頭部からは垂れ目、先程の人型とは僅かに姿が違う
リュウグウ
『こいつ…』
『ウゥゥゥゥ、コロズ』
『シンデモ、ニクィ』
『ウラギリモノォ』
口を開くデビル・パラサンがうようよと姿を現し、それは足を止めて休んでいた彼らに襲いかかった
特別強いわけでもなく、強いて言うなら狂暴性が増していることぐらいだ
犬型も現れたが、口を開くのは人型のみだ
リリディ
『なんで人間の言葉を!』
ティアマト
『不気味だぜ!しかも殺気が高ぇ』
アカツキ
『テラ!これは何なんだ!』
《これも知ってる!死んだ人間だ!》
アカツキ
『なんだと!?』
《悪魔の儀式で未練を残して空に上がらない人間の魂を集めて呪いで体を作り上げられた姿だ!強い念を持つ奴ほど成仏しねぇだろ?》
リュウグウ
『人間の魂で魔物を作るなど…』
《人間に限らず可能だ!悪魔は恨みある魂を集めて魔物を作り出す!悪魔化だ!》
アカツキ
『だが人間じゃない!』
その通りだ
成仏できない魂、既に死んでしまっては人ではない
多少の倒し難さを感じつつも、彼らはデビル・パラサンを倒していくと、思わぬ敵と遭遇した
『スキル!クワセェロォォォォ!』
アカツキ
『!?』
他のデビル・パラサンとは違う姿、そして他のデビル・パラサンを掻き分けて俺に襲いかかった
胴体はデビル・パラサンだが頭部は違う
イソギンチャクの様な形をしており、それは二つに割れて大きな牙が剥き出す口とか怖すぎる
奴が持つ両手には槍が握られていたのだが
待て、こいつ…いやありえん!
ティア
『この声!?』
リュウグウ
『こいつ!』
アカツキ
『ムゲン!』
俺のスキルを狙っていた刺客のムゲンに酷似していたのだ
喉から手が出るほど欲しいスキルに未練を感じ、あの世に行けてなかったのだろうか
俺は大振りな噛みつきを避けると距離を取る
イソギンチャク頭のデビル・パラサンは大きな口からボタボタとヨダレを流しながら触手を不気味に動かすのを見ると寒気が止まらない
リゲル
『酷い憎まれ方だが借りパクでもしたのかよ』
アカツキ
『ヴィンメイの前に現れた刺客だ!』
リゲル
『ほんっとスキル狙いってどうしようもね『オレガサイキョウダァァァァァァ!』』
森の奥、枯れたような声での雄叫びが俺達の耳に届く
あたりは地響きが起き、突風が奥から流れてくる
ここにいる全員が再び驚くが
今の声はまさかだよな…
あいつもここに?バカな…
『クワセェロォォォォ!』
『くっ!』
考えている暇はない!
物凄い早さの槍の突きが何度も俺を襲う
だけど見える、避けれない事はない
(リゲル…)
奴は真剣な顔を浮かべたまま近くのデビル・パラサンを薙ぎ倒し、奥に進んでいった
今はまとまっていた方が良いと思うが…、クワイエットさんも彼を追って森の奥に…か
だが俺は一先ずこいつか!
『アカツキィ!アカツキィ!』
強い念を表に出し、叫びながら槍で攻撃してくるムゲン
テラは《倒せば今度こそ空に昇る、還してやれ》と呟いた
『悪いなムゲン!』
槍を弾き、攻撃しようとすると奴は飛び退く
俺は光速斬で追いかけて直ぐ奴の目の前に迫ると刀を振り下ろす
僅か浅いか、あまり血か吹き出さない
『グェ!』と苦痛を上げるムゲンは尻餅をつく
立ち上がる時間など与えない
『クワセェロォォォォ!』
今までで1番速い槍の突きを立ち膝状態で奴は繰り出す
狙いは顔面だとわかってるよムゲン
『ぬぅ!』
顔を横に動かし間一髪だ
右頬はかすったけど問題ない、唾つきゃ治る!
『じゃあな!ムゲン』
『スギルゥゥゥゥ!』
横に刀を振り、奴の首を撥ね飛ばした
宙を舞うムゲンの首はまだ俺を凝視している
ゾッとするが真っ二つにするしかないかもしれん
『マダァ!』
落下してくる首は大きな口を開いて俺に降ってくる
するとティアマトが側面から飛び出し、左拳に魔力を込めた
『一瞬で空に連れてってやる!マグナム!』
炸裂音と共に彼の左アッパーカットは目にも止まらぬ早さでムゲンの顎を直撃、首は破裂したかのように四散だ
だけどまだしぶとい
胴体は動いてる、立った!武器を強く握りしめると第2の口ですと言わんばかりに胴体が縦に裂け、無数の牙が剥き出しとなる
『キシャァァァァ!』
アカツキ
『こいつ!』
ティア
『そい!』
ムゲンの背後にいた彼女のナイスなドロップキックが背中を蹴る
それによって奴はバランスを崩し、リュウグウの槍が放つ『三連突』で風穴を開けた
頭部を失っても動くとは、これは奴の執念か?
恐ろしすぎるぞ
『ちぇりゃぁぁぁ!』
ティアマトがムゲンの脇腹を殴り、地面を転がるように吹き飛ばすと間髪入れずにリリディがシュツルムを放ち、そこでムゲンの体は本当に爆発四散したんだ
《オッケー》
ティアマト
『ケッ、しぶとい刺客だぜ』
『ニャハン』
アカツキ
『力をつけてから挑めば良かったのに…』
ティア
『奥からまだまだ声聞こえるね、アカツキ君どうする?』
アカツキ
『少し呼吸を整えよう…、十分そうなら進む』
《気をつけろよ兄弟、統率してる奴はいる筈だ》
リュウグウ
『悪魔か、にしても姿が不気味だ』
彼女は溜め息を漏らすと、槍を肩に担いだ
光粉の光が弱くなったため、残りを振り撒くと新たな敵だ
しかも1体
ユラユラ体を揺らしながら静かに歩み寄るデビル・パラサン
これは通常の人型のようだが、こいつは何かを囁いている
『…ラ…、アァ』
アカツキ
『…何?』
『サラ、何故ワタ…シヲコロ…シ…タァ』
《おいおいマジかよやめてくれ!》
アカツキ
『テラ!』
『頼む兄弟!あいつをあの世に送ってくれ…悪い奴じゃない』
テラの声に気迫がない
知り合いというわけか
理由はわからないが、成仏させるしかない
リリディは問答無用でシュツルムを撃ち放つ
あれで終わりだろうと思いきや、なんとデビル・パラサンは俊敏になるとシュツルムを避けたのだ
命中する寸前であのスピードとはな!
『サラァァァァ!』
《兄弟!》
アカツキ
『くそぉ!』
首を撥ね飛ばされた不気味な鳴き声を放つデビル・パラサンは俺の前で倒れている
妙に静かだ、それに後味が悪い感覚があった
サラと連呼しながらこいつは俺達に襲いかかってきた
生前に何があったのか…
アカツキ
『…』
リュウグウ
『おいテラ、話せ』
彼女は槍を肩に担ぎ、森を警戒しながら話す
するとテラは衝撃的な過去を話したのだ
《奴はエスターク…。兄弟と同じで元兄弟さ》
力ない彼の言葉が耳に響く
俺と同じでテラのスキルを所持していた過去の冒険者
だが願い叶う前に亡くなったと彼は話す
悪い人間ではなかった
テラの力で欲を掻く素振りは一切見せずに弱き人を助けるために力を使い続けたもの
彼もまた、テラを解放する意思があったのだという
だが彼は思わぬ裏切りに遭遇する
圧倒的なスキルを自身のために使わなかった男は、あろうことかチームの仲間でもあり、妻でもあったサラに寝ている時に心臓を刺されて死んだのだ
スキルを奪うために
彼が正しく使っても他はそうじゃない
エスタークのスキルの事を他の誰よりも知っていたサラは奪ったんだ
愛を捨て、欲に負けて
ティア
『そんな…』
リリディ
『悪い言い方をしますが、クズですね』
ティアマト
『胸糞悪いが、これでこいつも静かに休めるだろうよ…』
《助かる…》
アカツキ
『何で殺したんだ…夫婦じゃないのか』
《破綻してたんだ、女の心の中で既にな》
『ゥゥゥゥ!』
途端に2体のデビル・パラサンが茂みから静かに現れた
俺はティアマトとリリディに視線を向けると、彼らは何も言わず敵に走っていく
アカツキ
『エスターク、無念だったろうな』
《あと少しだったんだ、死ぬ最後まで自分の生き方を全うした奴だ》
リュウグウ
『…神でも苦しいか』
《慣れ親しんだ者がこうなりゃな》
ティア
『ということは女性は道半ばで…』
《…当時はスキル所持者しか俺は話しかけなかった、だからサラのスキルになって上手く騙しながらもエスタークを慕う奴の仲間にサラを殺させた、森の中でな》
重い過去は神様でも持つ、か
するとティアマトとリリディは戻ってきた
敵に慣れたのか、倒すのが早いな
ティアマト
『あいつら追うか?』
アカツキ
『きっと大丈夫だ、いったところで邪魔になる』
ティア
『リゲル君やクワイエットさんなら大丈夫。でも彼らの顔色からしてやっぱりアレだと気づいたからだと思う』
リュウグウ
『そうならリゲルは殺気立ってる筈だ、助けにいって以前の二の舞で胸ぐら捕まれるぞアカツキ』
アカツキ
『…俺達の出る幕じゃないか。あいつにもあいつのやることなんだろうな』
……………
リゲルとクワイエットは森の奥、広い草原地帯にて一際大きな個体を目にする
人型の不気味な化け物はデビル・パラサンとは違う
灰色と紫色の毛並みの獅子の頭、目は瞳がない
首周りには薄気味悪く無数の触手が胸元まで垂れ下がる
二足歩行ではなく同様に四足歩行
手足は黒光りした鱗で覆われ、全ての爪は異常に大きい
胴体の体毛は獅子にしては長く、背中から長い尻尾にかけて紫色の毛が逆立っていた
(武器無しか)
リゲルはそう考えながらもクワイエットと共に草原の中心でデビル・パラサンを貪り食う全長5メートルの生物に近づく
『オノレ…オノレ…イマイマシイ』
相当な怒りを声に伸せる大きな獣
二人はある程度まで近づくと、足を止めた
リゲル
『ボーナスステージだ、糞野郎がよ』
『キサマァ…キサマァ』
掠れた声
しかし彼らにはこれが何者かわかった
だからここに来たのだ
得たいの知れない化け物は食べていたデビル・パラサンを咥えて遠くに投げると二人に唸り声を上げて威嚇する
口からヨダレをボタボタと地面に落とす
そのヨダレは触れた草木を腐らせた
毒性の強い体液だと知るリゲルは剣を肩に担ぎ、奴を直ぐに挑発する
リゲル
『さっさとお家帰れよ。誰かのペットになってドッグランでもしたくなったか?』
『イマイマシィ!キサマニモコノウラミ、』
クワイエット
『堕ちたね』
『ウゥゥゥゥ!ワレガツヨイ、サイキョウナノニ』
リゲル
『こいよ犬、今度こそあの世だ!』
二人は駆け出した
獣は咆哮を上げると、その頭部は大きく割れて恐ろしい姿の口が現れる
まるでリュウグウの世界の映画に出てくるかのような化け物のような口の中には大きなギョロ目、それは二人を睨むと大きく叫んだ
『ワレガ!サイキョウ!』
堕ちたヴィンメイここにあり
まだ本当の意味で死ぬわけには行けない彼は悪魔の力を借り
ここに姿を現した
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