第199話 幻界編 39 熊王ヘラク戦
アカツキ
『父さん…』
ゲイル
『化け物だ。他のAとは違う』
異常過ぎるパワーだなこいつ
火の海をものともせずに歩く姿はまさに魔王
大地を踏む足は地面を揺らし、仲間達は僅かに下がる
リリディ
『ヴィンメイみたいですね』
リュウグウ
『あれよりマシの筈だ、だが強く感じる』
リゲル
『あいつは馬鹿だったからな』
クワイエット
『バッハさん、カイさんら下がらせて』
バッハ
『頼む』
クリスハートさんも酷い火傷を負ったアネットさんに水筒を渡し、魔力水を飲ませてから仲間と共に一度下がる
その様子を不気味に笑って見ていたヘラクは頭をポリポリと掻くと静かに歩き出す
何が弱点なのか、それがわからない
急に駆け出してきたヘラクは先頭にいたクローディアさんを押し潰そうと腕を振るが、彼女は容易く避けた
それを合図にみんなが戦い始める
でも一人だけ違う事をしている女性がいた
『熊は天使に背を向けた』
ティアだ
彼女はわけのわからない言葉を発すると、水筒の魔力水を一気に飲み干す
かなり豪快であり、飲み過ぎだと思うから心配だ
でも目には強さを感じる
何かを見いだしたのかもしれない
『……』
それに気づいたリゲルはヘラクに踏み潰される寸前で飛び退き、叫ぶ
『隙作れ!女守れ!』
『エナジーフレア!』
最初に動いたのはクワイエットさんだ
彼はヘラクの爪を避けると同時に右手を伸ばして真っ赤な魔法陣を展開する
放たれたのは炎球
ヘラクはそれを弾き飛ばそうと腕を振るが、触れた瞬間に奴は燃え盛る炎柱に飲まれる
『ゴァ!?』
炎の中で驚く様子がわかる
だがダメージは受けている気配はない
フレア系統でも耐性があるとは…
魔法の効力が消えると、ヘラクは首を曲げながらボキボキと骨を鳴らす
余裕ですと言いたげだ、だがその余裕はいつかは消える
『ぬん!』
リュウグウが背後からヘラクの背中を槍で突き刺す
流石に痛がるヘラクはリュウグウに狙いを定めるが、彼女は上手く飛び退いて避けた
『ゴロロロ…』
クリスハート
『よくも…』
リゲル
『なら動け、合わせろ』
クワイエット
『行こう!』
クリジェスタの二人は駆け出した
合わせろ、の意味を理解したクリスハートさんはルーミアさんと共に駆け出した
『負けないよ!』
ルーミアさんは自身の体を電撃と化し、音速を越えたスピードでヘラクの股下を通過した
あまりの早さに熊の王でも反応できなかったようだ
炸裂音が響き、それはヘラクを感電させて僅かに動きを止めた
『ゴオ!?』
驚くている
ならば彼らの連携も無駄にはならない
リゲルはクリスハートさんと共に飛び込み、龍斬で発生させた巨大な斬擊でヘラクの体を切り裂く
浅くもなく、深くもないがヘラクは苦痛を浮かべている
『グラァァ!』
一瞬の麻痺から解放されたヘラクは二人を叩き落とそうと目論むが、リリディが頭部を叩き、クローディアさんが顔面を殴ることでそれは止まる
『サンキュ』
リゲルはニヘラと笑い、クリスハートさんの腕を掴んでその場から離れた
更に追い討ちでバッハの両断一文字のがヘラクの右足を切り裂き、アメリーのラビットファイアーがヘラクの顔に直撃
攻撃の数で徐々に怒りを見せたヘラクは大きく地面を踏んで衝撃波で皆を吹き飛ばす
でもそれが好都合になったとは奴は思うまい
『ありがと』
ティアは体に白い魔力を纏い、背中に天使の羽を生やして低空飛行でヘラクの前に迫った
その右手に握るは魔力で固めた白い長剣
ヘラクは彼女の姿を見て初めて驚いた顔を見せたのだ
『お前も獣だもんな』
リゲルは口を開いた
ティアの技はホーリーランペイジ
身体能力を爆発的に高め、聖なる属性を纏い攻撃する特殊なスキルさ
獣王ヴィンメイの弱点だった
となると熊王ヘラクも同じだと彼女はヒントを得たのだろう
『ガァァァァ!』
『駄目』
動く左腕でティアを叩き落とそうとしたが、奴の腕はティアの剣で斬り飛ばされる
血飛沫が飛び、狼狽えるヘラクはフレアを放とうと口を開くが遅かった
『終わり』
ヘラクは首を撥ね飛ばされ、力無くその場に倒れた。
流石だ、天使の力って凄いなと思いながらも俺は足を引きずりながら地面に着地する彼女に急いで近付いた
あの技の反動で彼女は体が数分動かない
複数の敵に対してならそうなることはない
斬った者の魔力をある程度奪うが、単体だけだと体がフラフラしちゃうんだ
『あ…』
いつものティアに戻ると、やはりフラつく
互いに目が合うが、俺は間に合わない
リュウグウ
『変態阻止だ』
ティアの体を支えたのはリュウグウだった
ならばいい、安心できる
ゲイル
『馬鹿息子め』
アカツキ
『あはは』
クローディア
『良い物見れたわ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『いやはや…先ずは怪我人の救護だ、運べ』
辺りは全焼するまで燃えた
しかし燃え広がることはなかったのが救いかもしれない
直ぐに宿らしき建物を見つけると、全員は中に入った
魔物はおらず、さほと荒れていない内部であったため休めそうだ
クリスハート
『アネット、大丈夫だからね』
アネット
『魔力水、最高』
どうやら飲んで少し楽になったようだ
聖騎士は空いている部屋でカイさんの看病をしていることだろう
クリスハートさんも仲間と共にアネットさんの火傷をなるべく対処するべく2階につれていくのを俺はイディオットと共にフロントから眺める
ここにいるのはイディオット、クリジェスタ、父さんだ
クローディアさんはエーデルハイドを気にして今階段をあがっていったよ
アカツキ
『みんなお疲れ様』
リュウグウ
『あんな強かったか』
リリディ
『僕達が相手した個体よりちょっと大きいかと』
ティア
『でもよかった、魔石も光ってた』
勿論それはフレアだった
誰が手に入れたかと言うと、クワイエットさんだ
それによって彼は称号が変わったよ
スピリット・オブ・フレアという覚え難い称号に
クワイエット
『疲れた、休まない?』
リゲル
『まぁ先ずこいつら先だ、頑張ったんだからよ』
ゲイル
『助かる、俺はバッハ君と共に建物裏の水路で魚を取る』
ティア
『すいませんが頼みます』
ゲイル
『なぁに気にするな、君らは休みなさい』
父さんとバッハが食料調達だ
俺はリゲルたちに見張りを任せてフロント奥の部屋に向かう
何故か五人一緒に入ってしまったが、疲れからなのかみんなは何も言わずにその場に横になると一瞬で寝てしまう
(疲れるよな)
俺も動きたいが、動けない
何度か断罪で援護はしたけども、あれが限界だ
『16時、か』
明日には目的地にきっとつく
もう少しだ
俺はせめて仲間を守るため、少し起きて様子を見守ることにした
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