第195話 幻界編 35
幻界の森
???
A アドラメルク(オオサンショウウオを刺々しくした姿、全長30m)
トロイ(熊)、トヨウケ、レガシィ(巨大な白犬)
赤鬼、インビジブル(透明のカメレオン)
B+ ワイバーン特殊個体、ベオウルフ(デスペル特殊個体)、トロイ(巨熊)
B、 ベルセバウス(不気味な蛾)、ラブカ(巨大ムカデ)黒鬼
コカトリス(巨大鶏)ヘラク(全身目玉だらけの黒い馬、翼は骨)
デスペル(ジェスタードの手のアレ)ギャングマ(痩熊)、ジャック(両手が刃の魔物)
剣蜘蛛(足全てが刃になった全長3メートルの蜘蛛)
C アンノウン(蝙蝠)、オオクチビル(巨大ヒル)、
ホロウ(断末魔を下げるような人型の顔をした梟)
イルズィオ(虹色のチョウチョ)、ヘルディル(肉食浮遊魚)
シークゴブリン、アレ(ゴキブリ)バザック、青鬼
オーガアント(鬼の顔に似た蟻、大群で押し寄せる)
マタタビーン(人型の木、しかし頭部は鰐の形状をしており、2足歩行で上を向いて歩く)
パープルアサシン(紫色の蟷螂、全長2メートル)
・・・・・・・
夜まで魔物は現れる事はレガシィ後は1度しかなかった
Bランクであるベルバウスという上半身が蛾で下腹部は蛸の触手を無数生やした魔物だ
それが5体も飛んできたときは焦ったよ
でも動ける者が必死に戦い、倒して見せた
その時にシューベルンやクリスハートさんは怪我をしてしまい、今は体を休めている
時刻は18時、夜というにはまだ早いかもしれないが真っ暗だ
シエラさんの照明魔法によって光の球体で視界を確保している状態である
クリスハート
『まさか歩けないとは…』
彼女は右膝を触手で叩かれた際に転倒し、食われそうになったんだ
ベルゼバウスの口は顔を大きく開いて恐ろしい口を出現させる姿は俺でもゾッとした
蛾の持つ口じゃない、得体の知ればい化け物みたいな一撃で噛み殺すような構造だ
それを助けたのがリゲルなんだけどな
彼は鼻で笑い、彼女に近くに座る
ティアが少し気にしながら俺の看病をしているけども
俺もちょっと気になるな…
『あれがベルゼバウスだ。面倒だろ』
『あの口を見たら恐怖で体が…すいません助かりました』
『別に良い、帰ったら特訓だぞ』
彼はそう告げると、立ち上がって俺に近づいてくる
『出るまで諦めな』と真剣な顔を浮かべて口を開いたのだが
やはり俺はこの森を出るまでは戦力外ということらしい
ティアマト
『駄目かやっぱ』
リゲル
『諦めろ、女のケアが使えないなら無理だ。リンゴの効果だってそこまで凄いわけじゃねぇ』
リュウグウ
『魔法強化が上がっても無理なのか』
ティアはベルゼバウスの魔法強化スキルを手に入れている
だから今は彼女の魔法強化レベルは3、ケアのレベルは4
中々に良いステータスだとクローディアさんも太鼓判を押したのだ
欠損箇所が無ければほとんどの治癒が出来るレベルなんだってさ
腕が千切れたとかだと無理らしいけど…あと1ぐらい上がれば千切れた腕をくっつけたまま魔法を使えば繋がるとか頭の可笑しいスキルであるとクローディアさんは告げる
クローディア
『ケアのレベル5まで行った人は100年間いないわ、欠損した箇所を再生するレベルに至っては500年も現れてないとか』
リリディ
『まぁティアさんなら森を出る時にはなってそうですね』
クローディア
『可能性は高いわ、だから回復魔法協会はティアちゃんを何としても正式な会員として入団してもらいたいんでしょうね』
ティア
『気持ちはわかりますけど…コスタリカに行く気はありません』
クローディア
『テスラ会長なら支部をグリンピアに置いてでもティアちゃんを入れたがるわ、それくらい凄いのよ…』
グリンピアに支部だと?
回復魔法協会は案外ティアに優しい待遇をしてくれているから良い印象を俺達は持っている
だからこそティアは誘われても少し悩んでから断っているんだけど、本気を出せば支部を作る気でいるらしいな
それぐらいの価値がティアにはあるか
なんだか嬉しいな、自分の事じゃないけど
リゲル
『おい…見ろよ』
彼の声で崖に顔を向けた
虹色に輝く橋が現れ、向こうに道を作ったのだ
どんな原理だと驚くばかり、数秒間は誰も動けなかった
『私が進めるか試します』
リリディだが彼で正解だ
落下してもグェンガーで帰ってくれるしな
でもやっぱり怖いらしく、虹色の橋の前で何度も深呼吸している
痺れを切らしたリュウグウは『行け』といって彼の尻を蹴る
橋にビタン!と前のめりに倒れるリリディは一瞬焦るが、どうやら橋は壊れない
そのままトコトコあっちまで行くと、ガッツポーズを見せていた
『ここで休むよりあっちの方が良いかもしれん、行くぞ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長の一言で俺達は橋を渡った
勿論俺はティアマトに担がれるんだけどね
ようやく進めたことに皆はホッと胸を撫でおろしてからその場に座り込む
夜に進むのは明らかに自殺行為である為、全員が無暗に進まないほうが良いという案を口にする
リゲル
『近くに休める場所あるか探してくるがあと3人誰かいねぇか?』
クローディア
『行くわ』
バッハ
『バルエル、行くぞ』
バルエル
『了解です』
カイ
『任せたぞ』
リゲル
『決まったな。何かあれば頭上になんか打ち上げる』
森の中を囲む森
面白い光景だが空は枝木によって見えない
高さは200メートルはある巨大な木々が高く伸び、枝木が空を隠しているんだ
普通の木々はジャングルのように沢山ある為、俺は森の中に森という表現を今したんだ
『頼むぞバッハ』
『お任せください、ロイヤルフラッシュさんは怪我人頼みます』
『ふむ』
リゲル、クワイエットさん、クローディアさん
バッハ、バルエルが森の奥に静かに進んでいく
非常に静かであり、魔物がいる様子はない
リリディ
『魔物の気配は無いですね』
ティア
『ここって最深部なのかな』
ドミニク
『一応最深部エリアって肩書であってると思われますがまだ序盤かよ』
ティアマト
『最深部の先っぽ見てぇなもんか』
ドミニク
『そんな感じかと思います』
カイ
『だがこっからだぞ、きっと出てくる魔物はAしかおらん』
アカツキ
『それ辛いですね』
カイ
『辛いで済むなら泣いて喜ぶわい…』
そうだよな…
まぁしかし希望はある
アネットさんはうつ伏せで休んでいるが、肩甲骨がヒビもしくは骨折だからうつ伏せじゃないと楽な姿勢が取れないという不遇に彼女は溜息を漏らす
アネット
『チクチクして痛かったのが消えただけでも嬉しい、けど…』
シエラ
『動かないがよい、私も少し体中がまだ痛い』
ルーミア
『無事なの私だけかぁ…』
クリスハート
『こっちは不味いですね』
エーデルハイドさんらは少し不安そうだ
だけどもティアマトはこの状況でとんでもない事を彼女らに口走る
『リゲルとクワイエットいれば大丈夫じゃないっすか?帰ったらデートぐらい約束すりゃやる気出してくれるとか…』
アネット
『シエラ、クリスハートちゃん頼んだわ』
シエラ
『デート…』
クリスハート
『わ…私はそんな軽い女では』
カイ
『軽いも糞もあるか。嫌かどうかだろうに、ったく…若いもんは』
クリスハート
『それは…』
ティア
『リゲル君とデート、嫌なんです?』
リュウグウ
『どうなんです?』
クリスハート
『ですから2人で特訓を・・・』
リリディ
『それはデートではなく稽古では?』
ゲイル
『俺もそう思うぞ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『異性と密接な関係を築いたことないんだな…』
聖騎士長、ボソッと呟く
するとクリスハートさんはこの場を乗り切ろうとし、自ら自爆するようなことを口にしてしまう
クリスハート
『男女が共にいればデートだと母上が…』
だがそれはつまりはこういう事だ
リゲルは彼女にとってデートしても良い対象だったという事の証明だ
これにはうつ伏せのアネットさんが『クックック』と静かに不気味に笑う
シエラ
『クリスハートちゃん、リゲル君で問題ないって事だね』
クリスハート
『そそんな意味ではっ』
リュウグウ
『貴族育ちとは大変ということなんだな…』
アメリー
『リゲルさん…多分ただの訓練だと思っていそうですね』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『いや、わからんぞ…ルシエラお嬢の持つ小道具はリゲルの持っていた武器だろう?』
カランビットナイフの事だ
彼女は『確かに貰いましたが…』と少し動揺しながらそれを手にする
俺達は彼女の立ち回り的にあの武器も扱えるからリゲルはあげたんだと思っていたが、別な理由がある事もこの場で知る事となる
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『ルドラは愛する妻に最初にプレゼントしたのは護身用のナイフだ。そういった経緯をルドラは身分を隠しながらリゲルに教えたとなると、それなりに気にしている異性だという事でもあるのだろう』
クリスハート
『…』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『親子そろって面白いな。不器用さは遺伝子レベルで受け継がれたか…くふふ』
ティア
『でもリゲルさんって意識して渡すってより本能的に渡したって感じに近いかもしれませんよね』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『あいつが素直じゃないのは自身の本心に気づけぬ不器用さだからな、自分で気づいておらんのだろうがもしルシエラお嬢が窮地に立てばあいつは必死に動くかもな…』
彼はそう告げると、ジキットに水を飲ませ始めた
終始、クリスハートさんはポカーンとした珍しい抜けた顔をしている
シエラさんがそれを見て不気味に笑っているのが怖い
数十分後には調査として森に入った5人が戻ってくる
顔は深刻そうであり、対した成果を聞けなさそうだ
クワイエット
『最深部に進む道はあったけど…』
カイ
『はっきり言え、今更何を口にしても驚かんわ』
バッハ
『…』
バッハが手に持っていた何かを俺達の前に投げた
それは意外と大きかったが、革というか布というかよくわからない
だけどもロイヤルフラッシュ聖騎士長だけは理解したらしく
舌打ちをする
クローディア
『わかるわよねぇロイヤルフラッシュ、あんたも出会いたくない魔物がこの奥にいるって事よ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『まさか…正当な龍種がいるというのか…』
ランクA以上、そのランクのトップに君臨し
最悪の場合Sランクに近い力を持つ個体すら数多く存在している生物界最強と名高い生き物だ
ティアマトは『だよな』と軽くいうが、覚悟はとっくの昔に決まっていたようだ
アメリー
『龍…』
ゲイル
『追い打ちかけるようで悪いが龍種を討伐した記録は50年ない。倒せても大討伐であり単騎では絶対不可能と言われている種だ』
リゲル
『ワイバーンなんて赤子みてぇなもんだな』
バッハ
『ロイヤルフラッシュ殿、もし帰還出来たら長期の休みをご所望します』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『報酬金と共に休みをやる、生きて帰れたらだが死ぬ気は無いぞ』
シューベルン
『泣きべそなんて誰がかくか…聖騎士だぞ』
クリスハート
『これは本当に凄い状況ですね…予想以上をそれ以上に上回ってくるとは』
リゲル
『そりゃ帰還出来たら1人残らずめっちゃ強くなるわ…面白ぇ森だ』
アカツキ
『みんな…正念場だ。俺がこの状態で言うのもあれだが』
リュウグウ
『断罪だけで頑張れ』
リリディ
『同意ですねぇ。私とリュウグウさんでの先陣でティアさんとティアマトさんのトドメポジでなんとかできそうですし』
ティア
『ティアマト君はアカツキ君を任せたいかな、運べるのティアマト君だけだし』
ティア
『戦いたいときはゲイルさんに任せるか…』
ゲイル
『ふむ、交代が良いだろう…最初は私が背負う』
ティアマト
『すんません』
ゲイル
『強くなれ、その為の環境はここに絶望的過ぎるほど大量にある…それに見合う苦労をすれば結果は現れる』
という事で皆はここで野宿する羽目となる
魔物の夜襲が心配過ぎるんだけど、それは多分ないかもとティアは告げた
彼女の予想に聖騎士ですら興味を示しているが、言い分は納得できる理由だった
ティア
『マグナ夢物語シリーズの18の絵本は龍がいます、主人公が森の奥に進む際には夜は龍は休んでいて襲いに来ることは無く、日中にしか動かないと文面にあったんですが他の魔物種がいれば不安ですね』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『絵本で出てきた龍は覚えているか』
ティア
『バハムー豚』
これにはロイヤルフラッシュ聖騎士長は珍しい行動を取る
深い溜息を漏らし、その場に大の字に寝転がったんだ
聖騎士達はこれには驚く
バッハ
『ロイヤルフラッシュ聖騎士殿』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『焦土龍バハムー豚とは殺されに行くようなもんだぞ…全員が万全でも勝てるか怪しい…』
ゲイル
『炎スキルを自在に操る奇龍と聞いてますな』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『数百年前にガンテア共和国の街6つを火の海にした化け物だぞ…』
凶悪過ぎる…出会いたくは無いが
そんな都合よくいかないだろうな
ならば夜に突っ切るかとリリディが案を出す
しかしクローディアさんが疲労を回復する方が優先と彼の案を一蹴だ
深夜、見張りのリゲルとクワイエットそしてクローディアさん以外は固まって地面に横になって寝ているが俺は急に起きてしまう
辺りを見回すと、みんなスヤスヤ寝ている
今どこで寝ているのかという不安よりも疲労が勝っているのだ
『小僧、無理しても寝とけ』
聖騎士一番隊の隊長カイだ
彼は俺に背を向けたままだが、起きているようだ
『寝ますが、寝付けないのですか?』
『まぁな…。龍種となるとどうなるかわからん』
『みんな同じです』
『……私も馬鹿でありたかったとここに来てつくづく思う。頭の良さだけが自慢の家系で生まれた事が皮肉にも無駄な不安を生む』
『そうですか。俺はここでは気力の問題かと思ってます』
『だろうな、寝ろ小僧』
秀才育ちか
となるとリゲルとクワイエットさんを好かない気持ちがなんとなくわかる気がする
寝ようと目を閉じようとした瞬間、ティアマトの寝返りの腕が俺の顔面を直撃した
(くそ、痛い)
朝食はリンゴ
各チームが食料としてそれを持ち、前に進む
足取りは重くはないが、遅い
みんな怖いんだよ、龍が
生き物の鳴き声すらない耳なりと足音だけが耳に入る
食虫植物も映えていない普通の森、だがここはマグナ国で1番最悪な森だ
ティア
『リリディ君』
リリディ
『いません』
クワイエット
『ほんと君凄いよ、僕らより魔物を感じるの上手いし細かい』
リゲル
『ケッ、良かったなメガネ』
リリディは嬉しそうだが、すぐに顔色は詳しくなる
『止まれ』と告げると同時にロイヤルフラッシュさんが全員を近くの茂みでやり過ごすように指示を出す
その時、みんなは素早く茂みに隠れたよ
いつも以上に行動が早い
『グワッ!』
『グワァ!』
全長3メートルの緑色の翼龍が遠くを横切るようにして飛んでいく
やはり龍種がここにはいる
『あれはコドラだ』とロイヤルフラッシュさんが告げる
まだランクBと龍種にしては低いが、厄介なことに変わりはない
アネット
『少し背中が楽』
シエラ
『わかる、私も体が幾分かは動く』
リュウグウ
『リンゴの効果か』
ティア
『凄いよね』
クリスハート
『さて、どうしますか』
リゲル
『メガネ、どうだ?』
リリディ
『行きました、ゆっくり進みますか』
森は比較的に歩きやすく、獣道は存在しない
大きな何かが地面を這った跡あどもあるけども、かなり大きいと思われる
何日で最深部に行けるのかが未知数
2日分のリンゴはあるが、水は今日を乗り切る程度しかない
それが少し不安だ
前を進むこと一時間、山火事にでもあったかのような場所に辿り着く
かなり広く、木々は殆ど原型をとどめていない
明らかに龍の仕業だった
アカツキ
『ブレス系か、生張り争いでもあったのか』
ティアマト
『やっべぇなこれ』
アメリー
『視界全部が……』
広大過ぎる焼け落ちた森に足がすくむ
だが進むしかない
皆がキョロキョロと辺りを見渡しながらも焼け落ちた森の中を歩き、一時間で別の光景が前方に見えてきた
超巨大な神殿
迂回できないくらいにそれは横に広がっている
手前で足を止めた俺達はジッと神殿を眺めた
(デカ……)
そう思っていると、あれが聞こえてきたのだ
《コイ、ワガ領域まで、あと少し、マダダ》
驚きを顔に浮かべる者はいなかった
予想外な事しか起きない事にいちいち驚くのも疲れる
そんな感じだ
『中に入るしかないか』
父さんが口を開いた
確かに中に入るしかなさそう
迷路じゃなければいいのだが、森の奥に行ける道があることを願うか
大きな扉があったであろう解放された入口から中に入ると、真っ暗だ
仕方なくシエラさんが光の球を出現させると、以外と狭いことに気付く
広大な空間と思いきや、城の内部のように無駄に空間を広く感じさせない
しかし、見た感じは迷路に近い
道が多数存在しているからだ
『これ…って』
『ティア、何かあるか』
『ここも絵本にあるところだよ。城の中で主人公が迷子になったときに馬が彼を導いたって話』
リリディ
『馬?』
カイ
『馬だと?』
バッハ
『見ろ、壁の至るところに動物の絵だが…馬は見当たらないぞ』
ティアマト
『こっちの道の壁には馬あるな』
クローディア
『ならティアマト君の方ね』
マグナ夢物語の話を覚えているかが生きる鍵
今回も無事に生き残れる事を俺は強く祈る
床を見ても色々な動物の絵、その中には馬の絵もあるのだが
迷路のような道の床には馬は特定の場所にしか描かれていない
それにいち早く気づけたのはみんながマグナ夢物語をある程度覚えていたからだ
シューベルン
『馬を追うしかないな』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『前は一先ず冒険者チームで頼む、後方は聖騎士がやる』
ゲイル
『イディオットで頼む、俺はアカツキを背負って中心にいる』
アカツキ
『怪我人は中央ってことでいいんだね』
ゲイル
『その通りだ』
ジキットやアメリーの怪我はそれなりに回復に進んでいる
だがまだ本調子ではないと彼らは口にした
骨折していたというのに、この森のリンゴは凄いな…
アネット
『シエラの照明ないときっついねぇ』
シエラ
『頑張る』
リュウグウ
『てか本当に迷路だな…外は神殿なのに中は明らかに迷わせて出れなくする構造としか思えない』
アカツキ
『ひたすら馬を見つけていくしかない』
俺達は馬を目印に迷路のような道を進む
すると1本道となり、初めて両側面に部屋のある通路に辿り着く
しかもここの壁には発光石が沢山顔を出しており、シエラさんの照明無しでも明るい
シエラさんは魔法を止め、辺りを見回した
シエラ
『部屋が左右に8つずつ…』
カイ
『出来れば休みたいな』
クローディア
『でも先客さんがいるみたいよ』
その言葉を言い終わると、一番奥のドアが静かに開く
これにはティアがビクンと驚き、リュウグウの背中に隠れた
何が現れるのかと思いながらも全員が身構えていると、全身がボロボロの包帯まみれの不気味な魔物がユサユサと体を揺らしながら姿を現す
古い包帯の隙間からは赤い目がギョロギョロと動き、一斉にこちらに視線を向ける
身長は2メートルと大きく、その魔物は右腕をこちらに向ける
『っ!?』
その右腕が伸び、それは2つに裂けると無数の牙を生やした口となる
流石に驚く仲間たちだが、ルーミアさんとクリスハートさんがいち早く動く
ルーミア
『知ってる!マムゥ!ランクB』
クリスハート
『私も存じてます!』
2人が駆け出している際、シエラさんは赤い魔法陣をマムゥの足元に出現させた
『ファイアバースト!』
火柱がマムゥを包み込む
それによってマムゥは呻き声を上げる
『断ち切り鋏!』
ルーミアさんは伸びてきた左腕の口を双剣で挟み込むようにして跳ね飛ばし、そのままクリスハートさんと共に本体に迫る
それに追従するかのようにリュウグウとリリディも向かう
『ゴワァァァァ!』
熱くてたまらないのか、マムゥは火柱から顔を出した
先頭である女性2人は攻撃を仕掛けると思いきや、途中で足を止めた
何故止めてしまったのか、見ている者は疑問を顔に浮かべる
あと3メートル近づけば目の前だというのにだ
だがしかし、その意味はその後に直ぐにわかったんだ
『ゴワッ!』
アカツキ
『なっ!?』
マムゥは無数の目から赤くて鋭い棘を伸ばしたのだ
全長2メートルは超えるであろうリーチの長い攻撃
あのまま近づいていたら彼女達は串刺しになっていただろうな
知っていたからこそ近づかなかった、そういう事だ
ルーミア
『絵本通りだね…』
クリスハート
『近づくと穴だらけですね』
『ファイアバースト!』
棘を伸ばしている間、マムゥは足を止める傾向がある
その隙にシエラさんが追い打ちで更にもう1発魔法を放つ
マムゥは真横に跳んで避けると切断された左腕を超高速で再生し、今度は両手を大きな口と化して伸ばしてくる
その口を必死に避ける彼女らにティアマトは加勢に入ると、腕を掴んで一気に引っ張る
単純だけど、それだけでマムゥはガクンと前にバランスを崩す
奴が顔を持ち上げると同時にティアが放っていたラビットファイアーが顔面を直撃し、奴の頭部が燃える
続けて撃ち放たれたバッハさんのファイアーボールで全身が炎に包まれるマムゥは甲高い悲鳴を上げ始めた
『っ!?』
急にマムゥが身を屈める
嫌な予感を感じたが、ルーミアさんが『棘飛ばしてくる!』と叫んだ
ティアは直ぐにシールド魔法で仲間たちを守ると、聖騎士アメリーもシールドを展開する
クリスハートさんもシールド魔法を持っていたらしく、盾を発生させると他の者を後ろに隠す
『ゴァッ!』
炸裂音と共に超高速で放たれた無数の棘は至る所に深々と突き刺さり、それは赤から白に色を変化させると爆発を引き起こす
棘でシールドが壊れた事によって2段構えである爆発を耐えるのは堪える
吹き飛びはしないが、殆どがバランスを崩して膝をつく
ジキット
『超危険じゃないすか!』
アメリー
『これ嫌!』
マムゥの最大の攻撃はこれだろうな
知らずにいると確実に避けれない
棘の飛んでくる速度が尋常じゃないくらい早いからな…
そしてこの魔物は棘関連の攻撃をしてしまうと数秒間だけは動きが止まる
大きな攻撃の反動なのだろうか…
まぁしかしかなりエゲつない攻撃で驚いたよ
『三連突!』
『爆打!』
その間、リュウグウがマムゥの胸部に素早く3回槍で突き刺し
リリディが顔面にスタッフをフルスイングすると小規模な爆発を発生させ、マムゥは大きく仰け反る
相手はランクB、小さな悲鳴を上げつつも僅かに伸ばした右腕でリリディを叩こうと振る
『残念』
狙う相手が悪過ぎた
リリディはグェンガーで間一髪、黒い煙と化してその場から離れていく
『ゴガッ!?』
『馬鹿め!』
リュウグウが飛び込み、槍でマムゥの顔面を貫く
かなりいい感じに戦えている事に俺は少し驚いた
ランクBなのに、それなりに戦えてるのだから
俺達は強くなれたと思ってもいいのだろうか
ルーミア
『退避!』
リュウグウ
『くっ!』
再びマムゥが体を軽く丸めてしゃがみ込んだ
それは棘を伸ばす時の予備動作であり、いち早く気づいたルーミアさんが俺の仲間にそれを伝えた
余裕をもって飛び退いたリュウグウは串刺しになることなく、真横を通過する小さな火球に視線を向けた
かなりの熱量を持った炎弾であり、それを放ったのだクワイエットさんだ
マムゥの棘が縮んでいくと同時に炎弾が体に触れると、シエラさんのファイアバーストなど相手ではないと言わんばかりの業火の火柱を発生させてマムゥを超高熱で包み込む
『ガゴァァァァァァァァァ!』
クワイエット
『エナジーフレア、デスペルの特殊個体から拝借したんだ』
シエラ
『いいなぁ…』
ゲイル
『クワイエット君、フレア系統だぞ?しかも普通のフレアよりも使い勝手が良いスキルだが初めて見たな…』
クワイエット
『正直手に入れれて嬉しいですね。そういえばフレア系統って何がありました?』
ゲイル
『フレア、プロトフレア、エナジーフレアしか俺は知らんな』
クローディア
『火魔法を超えた炎魔法スキルを2人が持ってるなんて…』
ティアのフレア、クワイエットさんのエナジーフレアだ
これにはシエラさんが羨ましそうな顔を浮かべている
彼女はファイアウィザードの称号を持っており、喉から手が出るほど欲しい筈さ
マムゥはフレアという業火を耐えれる肉体を持っておらず、発光する魔石だけを残して全てが灰と化した
静かになった場でルーミアさんは苦笑いを浮かべつつも、クワイエットさんの魔法に関して口を開く
『マムゥって絵本じゃ魔法は効かない人を食べる悪魔って書いてたんだけどさ』
クリスハート
『多分ですが魔法耐性が高いという意味かもしれませんね』
ティア
『フレアって魔法耐性無視なのかな』
クローディア
『火の上位互換である炎系、フレアはいかなる耐性スキルをも無視だった気がするわ』
リゲル
『すげ…』
ティアマトは熱された魔石に歩み寄り、手を伸ばす
まだ触れないらしいがなんのスキルかは識別できる
ニードル・アクション
これはトヨウケのスキルと似た名前だな
しかし効果は全く違う
マムゥが落としたスキルは発動者の周りに無数の赤い魔法陣を出現させてから熱された棘を飛ばし、何かに触れてから数秒で爆発を起こす魔法スキルだ
属性は火、となるとシエラさんで良いような気がしたが…そう考えていたのは俺だけじゃなかった
ゲイル
『シエラちゃんの能力を引き延ばすために使うが良いだろうが…』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『構わん、斬撃スキルが来たら寄越してくれ…シューベルンが欲しがっている』
皆はそれに賛同し、シエラさんは微笑みながらも魔石に手を伸ばす
しかし熱い…触れないであたふたする彼女だが、そこで聖騎士アメリーが『アクア』という水球を魔石に当てて熱を冷ます
そのおかげでシエラさんは魔石に触れることができ、スキルを吸収出来た
途端に彼女の体が僅かに発光するのには全員が驚く
ファイアウィザードの称号が変わったんだ
シエラさんはフレイム・ウィザードになった
当人は凄い幸せそうな顔を浮かべ、他の部屋の調査をする
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