第185話 幻界編 25
やぁアカツキだ
俺は休める場所を見つけてから近くをティアと共に散歩していたのだが、目の前に現れた者達に驚いているよ
『おま…』
『リゲル!?』
彼の他にクワイエットさん、エーデルハイドに他の聖騎士もいる
彼らは俺達を見たまま固まっているけども、まぁ気持ちはわかる
『ニャハーン』
『ニャハーン?』
『ニャハン?』
カイ
『これは流石に勝てん』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『野生のヒドゥンハルトの村だと…』
アカツキ
『僕らは試されてから色々あってここに流れ着いた感じです。食料もあります』
ドミニク
『他の聖騎士はどうなった』
アカツキ
『ちゃんと全員いるさ』
こうして彼らを村の中心に招く事となる
ヒドゥンハルトの村、名前はわからないが40匹前後が藁で作り上げた小さな家に住んでいる
ここには魔物は入ってこない
何故ならヒドゥンハルトの縄張りだからだ
すれ違う幻の猫を眺めながら凄い顔をするアネットさんだが、驚き過ぎかもな
ルーミア
『凄い、これ一斉に教われたら無理』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『俺も嫌だぞ』
ティア
『でしょうね。そろそろです』
藁がしかれた広場、そこには他の聖騎士やリュウグウが体を休めており、ロイヤルフラッシュ聖騎士長は部下が生きている事にホッと胸を撫で下ろした
バッハ
『ロイヤルフラッシュ聖騎士長殿、ご無事で何よりです』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『お前も無事で良かった。ここは一体』
ジキット
『鬼と敵対しているヒドゥンハルトのテリトリーです』
ここは幻界の森の中間地点、そこにはヒドゥンハルトと鬼の縄張りがあるのだ
魔物の中では比較的に温厚な猫と出会えたのは運が良かったかもしれない
鬼なら食われているからだ
ここの村長猫の話じゃ人間は鬼の好物らしい
リゲル達は不思議そうな面持ちで藁の敷かれた地面に座ると、『少し寝る』と告げてクワイエットと共に寝始めた
それを合図に先ほど辿り着いた人らも一先ずは体を休めたい、と言って仮眠を取ることにした
かなり酷な道を通ってきたのだろう
ロイヤルフラッシュ聖騎士長ですら『起きたら事情を聞かせてくれ』と言って直ぐに寝ちゃった
『あら、生きてたのね』
みんな寝始めてからクローディアさんや父さん、それにティアマトやリリディが帰ってきた
先ほどここに辿り着いた事を話し、疲れているから起きたら事情を説明しますと話すと、クローディアさんは口を大きく開けて寝ているロイヤルフラッシュ聖騎士長を見て鼻で笑う
クローディア
『一人で無理したのねぇ。そこがダメなのに』
バッハ
『やっぱわかりますか』
クローディア
『どうせ強い敵に遭遇したら一人で対応したんでしょ?苦労を分けるってバカは知らないから』
バッハ
『言わんでください、こう見えて部下想いなんです』
クローディア
『あなた達も頼られたいでしょ?』
バッハ
『あはは、流石』
その会話に混ざるのは止めよう
ここに来て半日だが、辿り着いた時に食べた焼き魚が美味かったなぁ
夜は何がでるんだっけ……
リリディ
『みんな無事でしたか』
ティアマト
『良かったな。これでヒドゥンハルト村の頼みも叶えれそうだ』
ティア
『てかさ、よくここまでヒドゥンハルトに遭遇しないで辿り着いたよね』
???
『仲間だろうとわかったからニャ』
四足歩行で歩いてくるヒドゥンハルトが口を開く
右目に傷を負い、失明しているがこれがヒドゥンハルト村の村長猫
名前はシャオ・ラー
俺はシャオさんと呼んでいるけどみんなも同じさ
アメリー
『試さなかったんですか?』
シャオ
『おミャーらを試せばあとはどうでも良い。彼らも手を貸すだろう?』
リリディ
『そうせざるを得ないかと』
シャオ
『ニャハハハッ、だろうニャ』
俺達は短期的な衣食住を提供してもらう代わりに、彼らの願いを叶える
何を頼まれたかって?
俺でも一発で理解できたくらい単純さ
彼らの好物である魔ミカンの木、この村から数キロ先にあるのだが、そのエリアにマタタビーンという植物種の魔物が邪魔で採取出来ないから討伐しろという依頼
マタタビーンは体からフェロモンを常に放出しているらしいが猫以外には無害
猫種が嗅ぐと酔っ払ってしまうんだとか
そのまま食べられる危険があるから迂闊に近付けないとさ
マタタビーンのランクはC
しかし数が多いらしいから十分に体を休めてから挑めと言われた
『今日は夕方だし明日の朝だね』
『そうだな』
ティアの言う通りだ
大きな木々によって空が見えないけど赤い夕日が僅かながらに差し込んでいるのがわかる
今行っても無理だ、それよりかはリゲル達の様子を見た方が良い
そして夜
ヒドゥンハルト一味は篭に入った色鮮やかな果物類を美味しそうにパクパク食べている
それに混ざるギルハルドはかなり幸せそうだ、きっと口に合うのだろう
俺達は森に入ってようやくマシな料理が出たと感じて泣きそうになる
たかがニジマスを塩につけて焼いただけだが今の俺達にとって最高級だ
魔リンゴを切り分けた一口サイズ、これはリゲルが絶賛しているから美味いのだろう。
サンダーボアという猪のサイコロステーキ、これも感動
水は果実水、文句などいえないほどに完璧だ
仲間達と藁の敷かれた床に座り、松明で漂う明かりに照らされた食べ物に向かってガッツキ出す
お姫様チームだと勘違いしていたエーデルハイドの皆さん
凄い勢いで食べてらっしゃる
まぁ俺もだけど、全員がろくに口に含んでなかったんだ
シャオ
『元気ニャー、明日は働いて貰うニャよ』
クローディア
『村長猫さん、赤鬼の心配はないのかしら』
シャオ
『ニャイニャイ、今は停戦中』
リュウグウ
『やはり仲が悪いか』
シャオ
『縄張りを広げたいからとこっちにちょっかい出す筋肉馬鹿ニャ。だけど停戦もあと一月で効力が消えるニャ』
ティア
『消えたらどうなるんですか?』
シャオ
『どちらかが滅びるまで戦い事になるニャ』
とんでもない事を簡単に言うとはな
数的にはあちらが倍、赤鬼と青鬼が存在しており、Aランクレベルの赤鬼は現在5頭だとシャオさんは話した
するとロイヤルフラッシュ聖騎士長は果実水を飲み干し、気持ち良さそうに一息つくとシャオさんに話したのだ
『1頭は出会い頭に倒してしまったが?』
『おぬし強いのだな、Aニャぞ?』
『こちらもそれなりに怪我を負った。残りは4頭か』
『そこは考えニャくても良い、貴様らは生きたくばニャーらの依頼を受けるニャ』
それしか手段はない
何故外の世界に出ないのかと俺は聞いてみた
しかし良い言葉で答えは飛んでこなかった
『人間は生物界で1番の嫌われ者ダニャ、面倒になるくらいニャらこの森の方が安全ニャ』
人間は嫌われ者、その言葉は俺達にも送っているのだろうか
利用しないわけにもいかないから近づいてきたのかもな
最初は村長猫の言葉にティアマトはかなり警戒していたがティアが『害を与える気は無いみたいだし大丈夫だよ』と説得したおかげで俺達はこうして九死に一生を得ている
俺達は幸福とも言える満腹感を感じつつ、体を休める為にヒドゥンハルトの村の中央広場で横に寝そべって寝た
しかし便意で俺は起きると立ち上がり、村の外側まで歩いてトイレを済ませようと歩き出す
かなり静かな村だ、どうやら他のヒドゥンハルトも寝ているらしい
(ん)
無意識に振り返る
するとそこにはリゲルが静かに忍び寄ってきており、俺と目が合うと深い溜息を漏らしてから姿勢を正す
『んだよ…ちょっとはマシになってるじゃねぇか』
『どういうことだよ、てかクワイエットさんの剣変わったな』
『こっちも大変だったんだよ。デスペルの特殊個体相手に苦労したよ』
『会いたくないな』
『だろうな。だが良いスキル手に入れたんだぜクワイエット、エナジーフレア』
『初めて聞く魔法スキルだぞ…。こっちはプロト・フレアをティアが手に入れたよ』
『マジか…。お互い上級スキルを手に入れたようだがフレア系は虫種をほぼ一撃で倒す威力だ。まぁランクAには一撃とは言わねぇと思うが』
『それでも致命傷を与えれる』
話しながら俺達は似合わないコンビで立ちしょん開始だ
会話は無いが、何か話さないと駄目だという気にもならない
こっちはこっちで苦労したが、あっちも苦労したんだな
シレン…か。どうやら各自がそれをクリアして生き残った
その結果だけでも奇跡に近い
『帰れると思うか?』
『意地でも帰る、だろ』
『お前なら言うと思ったよ、馬鹿だがな』
『悪かったな馬鹿で』
『今は馬鹿で良い、無駄な事を考えなくてもいいからな』
『どういうことだよ』
お互いトイレを済ませると、リゲルは笑みを浮かべながら言ったのだ
『人は1人じゃ全てを担えない、お前が馬鹿なら誰かが補うだろ?頭のいい女とかよ』
『ティアか』
『お前は1人じゃ弱い、すっげぇ弱ぇがチームでいる強みを生かす事だな…それがわかれば俺を本気にさせれるかもな』
彼はそこまで言うと先に背を向けて村に戻る
悔しいがこいつは強い、まだ勝てる気がしない
クワイエットと2人で飛ばされたと言っていたけども、2人でシレンをクリアするなんて驚きだ
きっとあいつも強くなってる、だが俺の目標はこいつに勝つことじゃない
生きる事だ
『っ!?』
リゲルが突拍子もなくこちらに振り向いた
俺は無意識に刀を抜刀しながら森に体を向けた
何故抜いたのだろうか、いや考えなくてもわかることさ
あいつが反応したってことは敵がいるって事だ
俺の勘は当たっていた
『オガァ!』
いたのは黒い鬼、ヒドゥンハルトから聞いていたが黒鬼というランクBの魔物だ
パワーは赤鬼や青鬼に劣るが速度と魔力に関しては他の鬼種よりも高い
奴の両手には片手剣、その刃先は四角く角ばっている
魔力の流れが見える、技を使う気なのだろう
俺は飛び込んできた黒鬼が武器を十字に振ると当時にあえて突っ込んだ
振りぬかれた剣撃からは十字を描く炎の斬撃が飛んでくる
限りなく姿勢を低くして回避すると黒鬼の懐に潜り込んだ
『当たれ!』
刀を振り上げる
だが相手はB、刀を顔面に向かって押し込むと黒鬼は顔を横に逸らして避けた
反応速度も中々、次なる攻撃を仕掛けようと回転しながら刀を引き、薙ぎ払おうと刀を振る
しかし、黒鬼は片足で地面を踏みこむと範囲の狭い衝撃波を放って俺を吹き飛ばす
『くっ!』
『オガァァ!』
追従も早い、着地の姿勢を取った時には既に黒鬼は俺の目の前
普通なら焦る状況だが俺は焦らない、1人じゃないからな
両手に握る刀で俺を貫こうとした黒鬼は途中でその手を止める
ようやく動いたか
『よう日焼け野郎』
リゲルが不気味は笑みを浮かべ、脱力した状態から一気に力を入れて剣を振り落とす
たまらず黒鬼が両手剣でガードするが互いの武器が触れ合うと同時にガクンと姿勢が低くなる
その隙に俺は光速斬で黒鬼の脇を通り抜けながら脇腹を斬り裂く
(かったぃ…)
そういえば村長村が言っていたな
耐久力は高い、と
斬った感覚は無いというか手ごたえが無い
勢いを止めながら振り返ると、黒鬼の脇腹はかすり傷程度だったよ
渾身の一撃だぞ?高速斬のレベルが低いとしてもありえないだろ…
斬撃強化 【Le4】
筋力強化 【Le2】
光速斬 【Le3】
この恩恵あってもかすり傷しか与えれないのか…
『オガッ!』
『つっ!』
リゲルは剣を弾かれ、俺に飛び込んできた黒鬼は両手剣で薙ぎ払う
刀でガードするが、俺は容易く吹き飛ばされた
重すぎるパワーは鬼種の中でも低いといっても、凄いパワーだ
『俺は興味ねぇってか?』
『オッ!』
リゲルは黒鬼の背後から全力で剣を振り下ろす
間一髪で奴は回転しながら横に体をずらして避けたが、当たっている
黒鬼の肩から赤い血が流れているのだ
やっぱ強い、こっちも強くなった気でいたがまだまだなんだな
『やってるさ』
俺は囁くようにして口を開くと、光速斬で加速して黒鬼に迫る
リゲルと共に何度も攻撃を仕掛けるが、俺の攻撃はひらりとかわされ、リゲルの攻撃は両手剣でガードされた
リゲルが黒鬼の斬撃を避けると、剣に魔力を流し込んで技を放つ
『龍斬!』
龍の爪を彷彿とさせる3つの斬撃が黒鬼を襲う
リゲルの切り札ともいえるルドラから受け継がれた技であり、この技は非常に強力だ
龍の強靭な鱗ですら破壊する技なのだからな
『ガッ!』
黒鬼は両手剣でガードしたが、片方の剣が耐え切れずに折れた
今しかない、と俺は思いながらも刀を突きだしたが浅はかだったようだ
『オガオガ!』
『なっ!?』
手で俺の刀を掴んで止めただと…ありえん
驚いている暇などないのに、俺は驚いている一瞬のうちに奴に腹部を蹴られて地面を転がる
刀は離していない、どうやらあっちから離してくれたようだ
『おらぁぁぁぁ!』
その間、リゲルは荒げた声を上げて剣を真横に振る
黒鬼はガードこそ間に合ったが、上手く踏ん張れずに地面を滑るようにして数メートル吹き飛ぶ
奴が勢いを止めた頃にはリゲルが迫り、剣に魔力を流しながら振り落とす
『両断一文字!』
僅かに発光した剣が縦に振り落とされると、銀色の斬撃が黒鬼の前に現れる
それは黒鬼の残った剣を容易くへし折り、斬撃は僅かに黒鬼の体に届いた
『ガッ…』
胸部から血しぶきが僅かに吹き出す
初めてみる技に俺は驚く
黒鬼は悔しそうな顔を浮かべ、飛び退いた
『立て馬鹿』
リゲルは呆れた顔を浮かべ、俺の元に来る
彼は手を差し伸べない、されるくらいなら自分で立つ
『わかってる…ケホッ!』
『オガガガァ…』
『これで裸の王様だな。武器無しだぜ?』
『だがまだ何かあるかもしれない』
『だろうよ…っほら!』
『オォォォガァァァ!』
鬼なのに口から火の玉を吐いてきた
龍の専売特許かと思っていたがそうではないか…
俺は大袈裟に避けたが、リゲルは避けなかった
何故避けなかったか
後方は村、良ければ誰かに当たるかもしれないからだ
中央広場までは距離があるがそれでも黒鬼が吐き出した火の玉はそこまで飛ぶのではないかという不安がある
だから彼は避けなかったのだ
『両断一文字!』
目にも止まらぬ速さで剣を振り、火球を両断して正面させる姿に俺は悔しさを感じる
『ふぅ…Bにしてはそこそこか』
『平気なのか?』
『腕が痺れてる』
だろうな
その間、黒鬼はこちらに視線をむけつつも睨みつけ、首を傾げる
鬼種の中でも低ランクとはいっても龍種に匹敵する力を持つ種族だからこそ強い
だが龍種と違うのは知性が劣っている事
だからと言って馬鹿というわけではないことを俺達は知った
『人間ガ、ココニいるか』
『喋るのか!?』
『おいおいガングロマン、お前やってることわかってんのか?停戦中だぜ?』
『シッテイル、我は使徒とシテここにキタ・・・。猫以外を見ると勝手にコロシタクナルのでな』
『使徒?』
何をしに?何を伝えに?
考えながらも俺とリゲルは武器を構える
いつ襲い掛かって来ても可笑しくないからな、まぁ黒鬼は突っ込んでくる構えをしているからこちらも慎重にならざるを得ない
でも最悪の状況にはならなかった
『客人に襲い掛かるとはニャッてないな鬼』
背後から気配を感じさせずに現れた村長猫シャオ・ラーさん
こっちは緊迫しているというのに、この猫はニコニコしている
両手を後ろで組み、トコトコと2足歩行で黒鬼の前まで堂々と歩く姿は流石としか言いようがない
黒鬼は構えを解き、膝をついてシャオさんと視線を合わせる
『オルガテスラは停戦なと時間稼ぎにもナラヌとイッテイル、そうそうと立ち去れと伝えに来た』
『他にも土地はあるニャ、ここを欲する理由を話さないとニャると疑るにも無理もないと思うのニャが?』
『いつもあの方は言っている、教えるギムは無いと』
首を突っ込んでいい話なのか分からない
だが聞くことは出来る
何やら俺達の知らない事情があるらしいが、複雑そうだ
黒鬼の言葉に唸りながらも困惑するシャオさん
彼は頭をポリポリして近くをグルグルと歩き出す
『ニャー達が守ってるニャントルに何かあるって事ニャーね?』
『知らぬ。それはオルガテスラに直接聞きに行くことだな』
『悪いがこの地を手放すわけにはいかないニャ、先代の猫神様が来たる時までここを守れといっていたんニャからな』
『その来たるトキは来ぬ』
『断言デキルということはおミャーも知っているということニャ』
『要件を飲まぬのならばどうなるかワカルカ?』
『飲まないニャらどうなるかわかるから時間稼ぎするかニャ』
黒鬼は『そんな時間は無い』と告げる
だがしかし、その言葉を言い放った瞬間にシャオさんの表情が一変した
ニコニコしていた目が一瞬にして細くなり、その場から消えたのだ
残るのは僅かな風、何も見えなかった俺は辺りを見回すが、黒鬼も同じ行動を取っている
『愚かなコト、収納スキルから取り出す武器で鬼を斬れると思『次元斬』』
シャオさんの低い声が耳元で鳴り響く
耳鳴りと同時に無音状態が起き、俺はアンノウンかと間違えそうになる
しかしそうではなかった
音が無い空間、俺の視界に映し出されたのは黒鬼の周りが空間ごと斬られたかのように線が現れ
奴は血しぶきを吹き出しながらバラバラになったのだ
とんでもない技にリゲルと俺は言葉を失う
聞いた事が無い技だからな
『猫神様だけじゃニャい、唯一信ずる1人の人間にもここを守れと言われたのニャ、与えぬぞ』
シャオさんの声が聞こえると同時に音が訪れる
彼は俺の横で首を回しながら筋を伸ばし始めるが、どうやって切ったのかわからない
というか何も見えなかった
『とんでもねぇ猫だな』
『人間の小僧っ子。外でこんな言葉を聞いたことはないか?』
『あぁん?』
『従う力を求める者らよ、愛を知り、信頼を得よ』
アカツキ
『…知りません』
リゲル
『知らねぇが、黒鬼どうすんだよ』
『話を逸らすな弱者』
リゲル
『弱者…だと』
『ニャーらは猫神様の再来を求む、しかしここ数百年現れてはいない…ニャー達が守るニャントルにそのヒントがあると思ったのニャがさっぱりなんだニャー』
リゲル
『お前は他のヒドゥンハルトより強いじゃねぇか、特殊個体だろ』
『ご名答ニャ、それでも猫神様になれぬ…何故なのか知りたいのにニャー』
アカツキ
『そうすれば鬼との問題も解消できそうなんですかね』
『…幻界の森、この地の最深部に住まう化け物に立ち向かえる…神種ニャ』
ヒドゥンハルトの先の進化
それはティアからも聞いてはいたが、諸説が多すぎて正式な名前が決まっていない
ネコードという者もいればニャトラルカという者もいる、様々過ぎるんだよ
だが神種というとんでもない生物になることだけは確かだ
誰も見た事が無いのに、何故俺達の国じゃ猫神はいるという話が昔からあるのかわからない
他の国の本では記載すらされていないからだ
『ニャハーン?』
またヒドゥンハルトが来たかと思えばギルハルドだ
村長猫がいるというのに大欠伸を堂々を見せつけ、シャオさんにスリスリしている
凄い根性だなと褒めたくなるけど、肝心のシャオさんは溜息を漏らしながらギルハルドを叩こうとする
でもギルハルドは叩かれ寸前で残像を残して避け、俺の目の前に現れる
これにはシャオさんもキョトンとした様子を見せた
『ニャンニャー!』
『ハズレー!ニャとさ』
リゲル
『飼い主が馬鹿だとこいつもそうなるのか…類は友をなんとやらって父さんが言っていたな』
アカツキ
『すいませんシャオさん。』
『いや…良いニャ。おミャーらはギルハルド小僧を連れて寝ると言い…。村の守りは多分大丈夫ニャ』
ちょっと不安な言葉だけども、朝は早いから俺は寝たい
あと3時間しか寝れないとなると俺はギルハルドを持ち上げてリゲルと共にその場を去る
シャーシャーとギルハルドが持ち上げられるのを嫌がるけど、暴れないでくれ頼む
『ミャーのスタンプを避けるか…』
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