第170話 幻界編 10
幻界の森 魔物
?ランク
A インビジブル(透明のカメレオン)
B、コカトリス(巨大鶏)ヘラク(全身目玉だらけの黒い馬、翼は骨)
デスペル(ジェスタードの手のアレ)
アラクネリア(蜘蛛人間)、ギャングマ(やせ細った熊)
剣蜘蛛、オーガアント(大群の蟻)
C アンノウン(蝙蝠)、オオクチビル(巨大ヒル)、ホロウ(人型の顔をした梟)
イルズィオ(虹色のチョウチョ)、ヘルディル(肉食浮遊魚)
………
幻界の森参加メンバー
『デーエルハイド』(Bランク)
クリスハート 片手剣士、
シエラ 魔法使い
アネット 片手剣士
ルーミア 双剣士
『クリジェスタ』(Bランク)
リゲル 元聖騎士一番隊
クワイエット 元聖騎士一番隊副隊長
『イディオット』(Bランク)
アカツキ 刀
ティア 魔法使い
リリディ 魔法使い
ティアマト 片手斧
リュウグウ 槍
ギルハルド 魔物ヒドゥンハルト
ゲイル アカツキの父
クローディア 初代英雄五傑
聖騎士メンバー
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
カイ・ラーズ 1番隊の隊長
ジキット・ローレンス 1番隊副隊長
バッハ・フォルテア
シューベル・ジュイン
トーマス・スタン 死亡
ドミニク・ヴェイン 元二番隊
アメリー・カルッセル 元二番隊
バルエル・コールソン 元二番隊
……………………
幻界の森の中にある廃れた神殿内、俺はドアの壊れた一室にてティアマトとリリディと共に床に座って一息ついていた
各部屋に聖騎士や仲間が一定数で休み、朝まで耐える
幾分か疲れてない父さんが廊下の壁に腰をつけて休む姿が見える
懐中時計は20時、食べ物は残念ながら干し肉だけだ
しかし、何も無いよりマシさ
『ギャァァァァァァ!』
俺達三人は外から聞こえる断末魔にビクンと驚く
あれがドグマの鳴き声だ、空腹だとかなり鳴くらしい
静かになったと思えば、すぐ鳴くから困ったもんだ
《やかましいな》
『あれくらい我慢しないと絶対寝れないでしょうね』
『本当にここ安全かよ』
『だと思いますよ?』
安全だと信じて寝るしかない
外で寝るより百倍マシだろうと口にすると、二人は強く頷く
ニャハーンとか鳴き声が天井から聞こえても俺は無視
だってギルハルドだもんな
『疲れたな、アカツキ』
『珍しいなティアマト』
『あんだけ振り回されたんだぜ?お前らはどうよ?』
『僕は死ぬほど疲れてます』
『俺もだ』
《まぁしかしだ、良く生き抜いたなと誉めたいけどよぉ》
まだまだ序の口だ、テラ・トーヴァは俺達にそう告げた
怖がらせたいというわけではないのはわかっているが、あまり聞きたくはない言葉だ
リリディは平気な振りをしつつも壁の隅で横になって天井を見上げる
俺も少しは休もうと深呼吸をすると、外からアレの鳴き声が耳に入る
『イァァァァァァ!』
ティアマト
『なんで泣いてんだ』
《獲物を見つけて追いかけまわしてるんだろうよ、普段は夜に姿を現して棒立ちしたまま獲物を探す》
アカツキ
『探す?』
《聴覚に頼ってるんだ、目はそんな良くは無い…。ジッとしながら獲物が近くを通るのを待つって感じさ、叫ぶと近くの仲間も呼ぶ》
相当厄介な生物のようだ
すると先ほどのドグマの鳴き声を聞いてとある者が部屋に顔を出してきた
お化けのようにヌッと顔だけ出す様子に俺達はギョッとしたが…
クワイエット
『平気?』
リリディ
『クワイエットさん?リゲルさんがいるでしょう?』
クワイエット
『だって…怖いねって言っても…』
肩を落としたまま彼が入ってくると、何故か俺達の近くで横になる
まさかと思いつつも話してみると、リゲルはもう寝てしまったらしい
寝れないからここに来たとクワイエットさんは弱く語る姿はちょっと新鮮だな
アカツキ
『みんな聞こえてるだろうな、あの叫び声』
クワイエット
『断末魔過ぎでしょ、流石に怖いよ』
ヒソヒソと話していると、廊下の壁で腰を下ろして休んでいた父さんが『夜更かしすると明日に響くぞ』と声が聞こえてきた
俺は『落ち着いたら寝る』と答えてから寝ようと試みるが、落ち着かない
ジェスタードさんの残した魔石の記録ではここは安全だと言っていても安心という言葉を十分に感じれないのだ
《外から聞こえても外の気配が何もわかんねぇしよぉ》
ティアマト
『モヤモヤするのか?』
《まぁな、てかツェンバーなんて前はもっと奥地にいた神聖な魔物なんだがなぁ》
アカツキ
『ここはまだ森の中ではどのあたりなんだ、浅いのか?』
《浅いだろうな》
リリディ
『アヴァロンが言っていた例の魔物から離れているって線はありますかね』
クワイエット
『リリディ君、少し頭良くなった?』
リリディ
『賢者は最初から頭が良いんです』
アカツキ
『まだでしょ…』
『ミャハハ』
パートナーであるギルハルドが天井でゴロゴロしながら笑ってるぞ?
まぁしかしだ…、あの巨大な蛇は普段は奥地にいるとなると本当にアヴァロンが言っていた事が心配だ
気になる、何がここの主なのか
少ししてからティアマトのいびきが聞こえてくる
隣にいたリリディが耳を抑えながらスヤスヤ寝ているのを見ると、手慣れているなとクスリと笑みが俺からこぼれた
ドグマの鳴き声はもう聞こえない、獲物を逃がしたか
それとも得たのか
俺は尿意を覚え、立ち上がると静かに廊下に出た
父さんが座ったまま寝ているけども、その態勢でよく寝れるな
しかも今更気づいたことがある、この神殿内はさほど寒くはない
幻界の森の夜は季節に関わらずに凍てつく寒さと聞いていたが、嘘なんじゃないかと思いたくなる
神殿の屋外でトイレを済ませたい俺は廊下を歩いていると、奥から聖騎士2人が歩いてやってくる
新人聖騎士のドミニク、そしてバッハだ
ドミニク
『お前か、気をつけろ…外マジ寒い』
アカツキ
『え?』
ドミニク
『吐息が白くなるぐらい寒いぞ?外で野宿なんて無理だ』
バルエル
『いやぁここはあったけぇ、しょんべん凍るかと思ったよ』
ドミニク
『というわけだ、トイレだと思うが静かにしといたほがいい、嫌な魔物が神殿の周りで棒立ちしてる』
その棒立ちの魔物、俺は見たくないなと思いながらも廊下を歩いている聖騎士2人の背中を眺めた
んで神殿の外に顔を出すと、一気に肝を冷やすような寒さに俺は驚いた
僅かに地面は凍り付いており、吐く息は白い
普通の冬とは違う、まるで極寒だ
自然と体が震えている事に気づいた俺はたまらず扉の近くの柱で済ませようとしてしまう
『寒い…』
用を足しながら囁くように口にすると、低い梅ぎ声が遠くから聞こえてくる
俺は振り返るのも怖く、肩に力が入った
大きな神殿を囲むはドグマという魔物の声だろうが
《気配はわからなくても俺からは見える、暗くて正解だったな》
なんだかんだ時刻は19時、暗くて当たり前だ
だがこの広大な草原地帯に僅かに生えている光を放つ花が僅かに辺りを照らしている
真っ暗というわけではない、運が悪ければ見てしまう危険性があるから見ない
用足しが終わり、俺はスッキリしたまま中に戻ろうとすると、とある者と視線が合う
ティアだが、目が点になっているのはきっと俺が今何をしていたかを見てしまったからだ
彼女は固まったまま、顔を赤くしているが…何を言えばいい?
『は…初めて見たわけじゃないだろう?』
《兄弟、焦ってるのはわかるが最悪な言葉選んだぞ?》
俺はかなり居た堪れなくなった
逆に恥ずかしくなり、静かに愚息をズボンに隠していくと徐々に体温が上がっていく
『不可抗力だもんね』
『そ…そうだよティア、俺はトイレがしたくて』
『うん、うん、』
《んで兄弟はティアお嬢ちゃんのトイレを見る気か?いつまで棒立ちしてんだ》
『あ…』
俺はここを立ち去らなくてはならない
しかしティアは1人で大丈夫なのかと心配する感情が沸く
でもそれは杞憂だった、神殿の中から更に顔を出したクローディアさんとリュウグウ
この2人もいるなら安心さ
クローディア
『あら?良いイベント中だったのね?』
リュウグウ
『この状況で露出魔になりさがったか変態め』
アカツキ
『…』
ティア
『仕方ないよリュウグウちゃん、アカツキ君だってトイレするんだもん』
リュウグウ
『森を出るまで我慢しろ』
アカツキ
『無茶な…』
そうした話を聞いているクローディアさんはクスクスと静かに笑っている
ふと感情に余裕が生まれ、俺は寒さに震えながらも草原地帯に視線を向けた
草原に点々と生えている花の近くでたたずむ何かが見えるが、それはきっとドグマだ
不気味にも左右に揺れている、しかし体は黒いからのか姿がハッキリ見えない
『沢山いるぞ』
リュウグウが低い声で囁く
俺は視線を別に外すと、至る所にそれらはいる事に気づく
テラ・トーヴァが言うには《数はざっと見て30はいるな》と小声で呟く
見える範囲ではそうだということだ
変に刺激するような行動をして叫ばれると見えない場所から仲間を呼ばれる
だから俺達はこの神殿では静かに夜を過ごさなくてはならない
幻界の森の夜は誰も知らない
だが感覚的に出歩いたら死ぬことはわかっている
ティア
『寒いね…』
アカツキ
『風邪ひくなよ』
俺はティアの肩を叩いてから神殿の中に入る
中に入った途端に先ほどまでに凍てつく寒さが嘘のように無くなり、建物内が暖かく感じた
さっきの聖騎士の気持ちがなんとなく理解できるよ
廊下を歩き、天井に点々と設置されている発光する魔石の光を頼りに歩いていると、見張りをしていたエーデルハイドさん達が突き当りの廊下で腰を下ろして小声で仲間で話している姿を見かける
俺は軽く声をかけ、眠くなるまで共にいようかと腰を下ろすとシエラさんは『外、極寒でしょ?』と聞いてくる
彼女らも体験したようだ
アカツキ
『確実に野宿してたら死んでますよこれ』
アネット
『ヤバいよね、寒すぎて凍りそうだったし』
アカツキ
『明日はどう動くんでしょう』
クリスハート
『ロイヤルフラッシュ聖騎士長が先ほど聖騎士内で会議を始めたので、それが終わり次第ですね』
近くにひと際大きな室内があり、石で出来た円卓がある部屋があるのだ
聖騎士達はそこを拠点にしつつも明日の行動をどうするか議論しているらしい
クリスハート
『それにしても…』
彼女は壁にはめ込まれた記録用の魔石に視線を向けた
ジェスタードさんが残した生き残る為のメッセージがこめられた魔石だが…
クリスハートさんは何故かその魔石を首を傾げて見ていたのだ
アネット
『さっき魔力を込めても反応しなかったんだよね』
《どういうことだ?》
シエラ
『無言、いびき聞こえた』
アカツキ
『え?いびき?』
クリスハート
『メッセージが流れないんです、誰かのいびきが聞こえただけで…』
《それって…》
俺はもしやと思い、立ち上がる
ありえない考えをしているとは思うが確かめる価値はあると思う
それに気づいたのか、クリスハートさんも立ち上がる
俺は魔石に魔力を流し、発光したのを確認すると魔石に向かって口を開こうとした
だがそこでありえない声が聞こえ、俺の考えが正しい事に気づいた
『ねぇカウラ、一緒に寝ましょ?』
『一緒に寝ると襲ってくるデショウ?』
『勿論じゃない、子作り練習よ』
誰もがその声にどう反応していいかわからなかった
明らかにエド国王ムサシさんの声、そしてジェスタードさんの声だったのだ
アカツキ
『タイミング悪かったですねこれ』
俺はそう口にすると、連絡魔石に気づいたジェスタードさんの慌てる声が聞こえてきた
『…誰デショウ?幻界の森の迷い人よ』
『アカツキです』
『そういえばいつかは行くとか言ってましたネェ?夜は楽しいでしょう?その神殿はその階層だけで行動すれば問題なく寝れます。廊下の奥の階段は降りないほうがイイデスよ?』
普通に連絡できるじゃん…
なんでここに魔石残したんだよ
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