第166話 幻界編 6
クロコディルは戦いの最中、後方を振り返った
門森の奥にある幻界の森から何かを感じたのであろうか
今ならば隙だらけ、しかしクローディアさん達は攻撃をしようとはしない
アカツキ
『何が起きてる』
リゲル
『見ろよ、メガネ小僧のヒドゥンハルトも森を見てるぞ』
ギルハルドも向かうべき森の向こうをジッと見ているのだ
何を感じているのか俺にはわからない
するとクロコディルはこちらに振り向き、数秒してから森の中に静かに消えていったのだ
何故見逃した?気味が悪い
リゲル
『ランクAか』
ティア
『まぁなんとなくわかるけど…』
リリディ
『何なんですかこれ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『幻界の森で何かを感じたのだろうな』
大斧を降ろすロイヤルフラッシュ聖騎士長は溜息を漏らし、しかめっ面だ
状況は悪いとでも言いたげだ
カイ
『何が起きたのだ、何故逃げた』
クワイエット
『少しぐらい勘付かないの?もうバレてるんだよ。今から向かう場所の主に』
クワイエットは珍しくも真剣な顔を浮かべ、クローディアさん達の元に歩き出した
それに続いて俺達も歩き出すが、誰も口を開こうとはしない
全ての者の視線は奥に見える門森、きっとその奥にある幻界の森を意識している
ゲイル
『インビジブルが主ではないのは本当のようだな、あの魔物は完全隠密系のカメレオンだろう』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『そうだ。気をここまで飛ばすのも無理だ』
リリディ
『ギルハルド、何を感じたんです』
『ニャハンニャー』
リュウグウ
『今度はちゃんと翻訳しろ』
《念術が飛んできた。幻界の森からな》
それにはテラ・トーヴァの声が聞こえる者が驚き、俺に顔を向けた
どうやら解読不能な念術を飛ばした存在がクロコディルに命令を出したのだろうとテラは言う
アネット
『Aに指示?勘弁してよ…バレすぎてるって事じゃん』
クローディア
『これは非常に不味いわよロイヤルフラッシュ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『これは断念するしかあるまい…』
《無駄だ、最後まで俺が聞いた念術を聞け》
テラは話した
それはテラの知らない言語での会話、内容を知る事は出来なかったが
ここで帰ることはしにつながる危険が高い
ティア
『だってこの距離で指示出したんだよ?なら帰ろうとしたら逆に襲えって指示も出せるって事よね?』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『チッ!もう後戻りは出来ぬか…』
ゲイル
『行くしかあるまい…まさか主らしき者にこの距離で見つかるとはな』
アカツキ
『行こう父さん』
ゲイル
『それしかないな。幻界の森の主は俺達と握手してくれると思うか?』
ティアマト
『面白くなってきやがったぜ。何がいるんだ』
クリスハート
『行きましょう皆さん』
アカツキ
『行くしかないなら行きましょう。』
溜息を漏らすクローディアさんは先頭を歩き、皆を先導する
この道中もかなり不気味な光景があり、俺達はゾッとしたのだ
魔物がいるのに、遠くからこちらを眺めるだけだ
ランクBの将軍猪や、ミノタウロス
ランクCのグランドパンサーの群れが襲いもせずにジッと見つめてくるだけ
流石に聖騎士達もこのような事態に息を飲む
カイ
『あり得ぬ…』
ジキット
『以前にはこんな事…なかったのに』
リゲル
『まぁ落ち着けよ、てかアメリーは緊張し過ぎだ』
アメリー
『ですが…』
リゲル
『しゃぁねぇ』
彼は不安そうなアメリーに近づくと、後ろから両肩を揉み始める
リラックスさせようとしているのだろうが、アメリーは緊張を忘れて少し顔が赤い
なんだか別の緊張を覚えたようだな
リゲル
『ジキットとバッハの近くにいりゃ問題はねぇ、わかるか?』
バッハ
『呼び捨て聞こえたぞ?俺先輩』
リゲル
『あ・・すいません』
先輩か…
てかバッハという男はリゲルとクワイエットさんに認められている強さを持つ人だよな
性格も良さそうだ、呼び捨てされたのに笑って許しているように見える
アメリー
『あの…その』
リゲル
『どうした?怖いのか?』
アメリーの肩を揉み続けるリゲル
だがそれを一番気にしている人がいた、クリスハートさんだ
何やら言いたげな顔を浮かべているが、それは行動になって現れる
クリスハート
『破廉恥ですよリゲルさん、女性には気安く触っては駄目です』
突如としてクリスハートさんがリゲルの行動を止める
ティアが何故か面白そうに見ているけど、なんとなく意味は分かるな
リゲル
『あん?エッチな事してねぇだろ』
クリスハート
『そういう問題じゃありません』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『なるほどな、ルドラの気持ちがわかった』
リゲル
『まぁた何か隠しごとですかい?』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『ち…違うっ、なんとなく思っただけだ。それよりも警戒を怠るな』
ようやくリゲルはクワイエットさんの近くに戻る
クリスハートさんは溜息を漏らし、辺りを見回す
するとティアが俺の耳元で『どっちもどっちだね』とか言いだす
『どういうこと?ティア』
『アカツキ君って鈍感、乙女も嫌なんだよ』
『触られるのが?』
リュウグウ
『鈍感イズ変態め』
リュウグウに割り込まれた
何故だ、何故なんだ…
にしても魔物が俺達を襲わずに見ているだけでも精神が削れる思いだ
いきなり飛び出す魔物がいても可笑しくはないだろう
ティアマトは『倒すか?』とか言いだすけどもティアに駄目と直ぐに止められる
クローディア
『何の魔物か見当つく?』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『グリモワルドからは何も聞いておらん、検討すら』
クローディア
『幻界の森で主として君臨出来る存在よ?最悪Sの可能性もあるんじゃないのかしら』
ゲイル
『それなら行かぬ方が良いけどな、会いたくはない』
誰も会いたくはない筈だ
アカツキ
『門森まで1時間もかからなそうだな』
リリディ
『疲れてきました』
アカツキ
『戦ったからだよ』
リリディ
『まぁいけそうだったので』
《クロコディルにいけそうだったとか面白いな、まぁアンコクとシュツルムならば良いダメージになるだろうがな》
ティア
『グェンガーが便利だね』
ティアマト
『確かにな、クロコディルは破壊力はあるがスピードは今の俺達でも見えるぐらいだ、避けようと思えば行けたはずだが…』
リュウグウ
『スキルレベルがもう少し高ければな』
その通りだ、アビリティースキルは高いが技や魔法のスキルが少し足りない
あと少しレベルが上がっていればもしかしたら俺達でもいかたかもと思ってしまう
リゲル
『てか俺の技スキルで行けたかもな』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『龍斬は恐竜種にかなり有効だ。お前らならそこそこ挑めただろう』
ルドラから授かった技スキル
それは龍種や恐竜種にはかなり有効であるとロイヤルフラッシュ聖騎士長は話す
アカツキ
『てか目的の魔物はなんでしかっけ』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『アンノウンだ。うろ覚えだが確か…そうだった』
アカツキ
『うろ覚え…』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『違ったら即座に撤退だ。幻界の森に行った事実と共にそれが欲しいのだ』
アカツキ
『一番気を付ける魔物はなんですか?』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『リゲルから聞いているだろうがアンノウンだ。あの蝙蝠で我が部下は沢山死んだ』
気を付けよう
超音波を飛ばして聴覚を麻痺させ、死角から襲い掛かってくる巨大蝙蝠
背後を許せば一気に頭部を食いちぎられるという恐ろしい魔物である
クローディア
『オーガアントは火魔法スキル持ちで頼むわよ?ある程度燃やせば退いてくれる時もある』
シエラ
『退かなかったときは?』
クローディア
『逃げるしかないわ』
アネット
『怖い怖い』
バッハ
『いきなり耳が聞こえなくなって耳鳴りだけになったらアンノウンの出現と思えお前ら。あと地面を這ってくる魚の様な姿をしたガンディルは噛みつかれれば死ぬぞ?肉を食いちぎって一気に体内に入る、そうなれば諦めろ』
クリスハート
『こわ…』
バッハ
『全ての魔物が質が悪いのだ。幻覚を見せるチョウチョのイルズィオに対しては幻覚を見たと思ったら深呼吸して足を止めよ、仲間が助ける』
数センチしかない虫種イルズィオ
跳んでいると鱗粉をまき散らし、それを吸えば幻覚を見る
仲間全員が魔物に見えたり、天変地異が起きたかのように風景が変わるという
状態異常回復スキルで治すか、一定時間耐えれば治るとバッハさんは話す
ジキット
『俺はゾンビナイトに見えたバッハさんに担がれて助かりましたけどね。普通に考えればゾンビナイトがあんなところにいるはずないってわかるんですが…あの場だとそんな判断できませんでした。初めての森だったので』
ティアマト
『冷静は命を救うか…』
ジキット
『そういう事です。慌てふためく者から死んでいきます、何があっても落ち着く事です』
カイ
『ふん、焦るなどある筈がない』
リゲル
『それいってると次は我が身ですよ』
カイ
『黙れリゲル』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『やめよ2人共』
喧嘩しそうな雰囲気を察してロイヤルフラッシュさんが止める
本当に仲が悪いようだ、仲良くなるなんて考えられないほどにカイという1番隊隊長は横目でリゲルを睨んでいた
ティア
『そろそろだよ』
話していると、門森が目の前まで近づいてきた
時間を忘れていたのかな、全員が門森の前に立ち止まる
リゲル
『この森に魔物はいない、だからここを抜けて直ぐ休憩ですか』
ロイヤルフラッシュ聖騎士長
『そうだ。一応は警戒して進むが…、10分程度で抜けれる』
とても高い木々だ、50メートルはありそうな木ばかりだ
ここで一部の者たちの顔が真剣になる、それは幻界の森に行ったことがある者たちだ
話しかけたくても、そんな雰囲気ではなさそうだな
アカツキ
『テラ、お前ならこの距離でも幻界の森の中を感じれるだろう』
《無理だ、あの森だけは俺の感知が阻害されて何も感じねぇんだよ》
リュウグウ
『お前、神様だろ』
《何かが感知させまいとしている気がする、こんな事ありえねぇ》
アカツキ
『それって…』
《生物的な理由だ。お前ら全員帰って戻れる保証はねぇ‥‥何がいるか見当はついているなら言わなくてもわかるだろうが、本当に行くのか?スキルだけのために》
クローディア
『引き返した方がもっと危険でしょう?』
リゲル
『あっちは気づいているからな、まぁ行くしかねぇぞ』
アカツキ
『そうなるよな』
ティア
『頑張ろアカツキ君』
アカツキ
『そうだな』
スキルを手に入れる為、それが今じゃとんでもない事になっている
何が俺達を招き入れようとしているのか、考えるのにも勇気がいる
俺はイディオットの仲間、そしてクローディアさんと共に先頭を歩いていると、門森を抜けた
そこで見た光景に俺は足を止め、動けないでいた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます