第156話 年末前の買い物

今日は年末前だ

昨夜は結構大変だったけどもそれとは違って今日は平和すぎる

母さんに買い出しを任されて街の商店街に来たけども、まだ朝早い時間だ


父さんは運悪く夕方から深夜まで警備だ

まぁ街の治安維持を目的とした協会だし仕方がないと思う

母さんは俺の買い物の材料待ちだが午後からシャルロットと共に作る予定だ

なんだかんだ俺の妹は料理は得意だ。母さんのおかげだけどな


なんで朝早いかって?

だって店は午前だけして営業をしないからである


午後にはほぼ全ての店が閉まり、みんな年末に向けて家で過ごすんだ

都会だと休みがない店があるとは聞いたが地方であるグリンピアはちゃんとみんな休む

しかも俺は1人で買い物に来たわけじゃない、途中でティアと会ったから仲良く人並みの飲まれながら商店街を歩いているのだ


仲良く手を繋いで歩く時間がもう少し欲しいと思いながらも俺は彼女と共に野菜を買いに露店を眺めた


『そういやシグレさんは?』


『深夜から警備だってさ。夕方には起きるよ』


『父さんは夕方から深夜までさ』


『あらまぁ、でもしょうがないよね』


《警備兵だからな…しゃあねぇだろ》


そんな話をしながら俺達は必要な材料を買い、人波をかき分けて肉を買いに行く

どちらも紙袋を手にし、残った手で手を繋いでいるのだが人波に負けてしまい一瞬離してしまう


人の間から手を伸ばして彼女の手を掴もうとしたが、掴んだのは彼女の女性としての象徴である御胸でした

でも余裕で掴める大きさだったのではぐれることはなく、近づいてきたティアに頭を手刀で叩かれてしまうがこれは年末最後のご褒美ともいえる


ある程度の買い物を終えた時には昼を丁度過ぎた

長居しても互いの用事もあるから帰るしかないな


紙袋の中には野菜や肉類そして魚介類が詰まっており、少し重い

でも不思議だ、ティアの紙袋の方が俺のより倍も大きい


『ティア…重くないか?』


『少し重いかな…』


普通ならここで男らしく『俺が持つよティア』からの年末最後の印象アップ作戦が行使できる

だがしかし!俺は恐れている

多分だけど…彼女は予想よりも力があるという事に最近気づき始めているからだ

情けない俺は気が利かない振りというより、気づかない振りをして泣く泣く誤魔化すことにした


商店街を抜けると人波は一気に無くなる

住宅街に向かって歩いている最中、ギルドでよく見る冒険者が私服ですれ違う

彼の足元ではエアウルフが歩いており、流れ星のマークの首輪もしていたからパートナーという証明でもある


リリディ以外にも魔物を従属させている冒険者は少なからずいる

ギルドにいると彼らはリリディに距離を置いてるんだけども彼が嫌いなわけじゃない

他の冒険者達が従えているパートナーがギルハルドにビクビクしているからだ


ギルハルドがギルド内で軽く鳴いただけでその場の魔物はご主人の後ろに隠れてしまうという光景を多々見たことがある

まぁギルハルドは凄い魔物だしな…リリディも良く従えたもんだ


《ギルドで見た顔の奴らが私服とは似合わねぇな…死ぬまで着替えない奴らかと思ってた》


『テラちゃんそれは絶対ない』


《かっはっは!そうだな。まぁ今日は全力で息抜きして来年頑張ろうぜ?兄弟もよ?》


『そうするよ。』





『おーい!』


バーグさんが両手に紙袋を抱きかかえながら走ってやってくる

凄い買い物だな。何を買ったんだろうか…

彼は俺達に辿り着くと、『年末最後のお買い物が終わった』と苦笑いを顔に浮かべていた

どうやら奥さんから重大な任務を受け渡されていたのだろう


この前、おつかいの材料間違って買ってきた罰として髪にハート形のヘアピンしていたが…

1日あの恰好を命じられとかどうとか聞いたけども変わった罰だ


ティア

『バーグさんもお買い物ですか』


『お買い物さ、嫁さんは掃除してくれているからね』


アカツキ

『何を買ったんですか』


『色々さ、ブラックタイガーって海老を買うのに苦労したよ…初めて聞くし』


アカツキ

『名前が格好いいのに海老って面白い生物のやつですね』


『だよね、驚いたよホント』


そんな会話をする俺達の頭上高くを鳥人族の鶏種、ババトさんが飛んでいく

あっちは彼の住む家の方角だし帰るのだろう

紙袋に紐をつけて首からぶら下げていたし彼も買い物だったんだな


『あ!米買ってない!』


買い忘れがあるバーグさんは笑顔を絶やさないまま方向展開し、再び中心街へと走っていってしまった

時間的に…間に合わないぞ!?多分

神に祈るか


『バーグさんウッカリだったね』


『そうだな、そういえばなんだが』


『どしたの?』


『…』


俺は覚悟を口にしようとしていた

だがしかし、今の俺ならいけるんじゃないかという淡い期待かもしれない

でも言うだけなら大丈夫、駄目だとしてもティアは笑って誤魔化してくれる、と思う


『明後日、泊まりに来ないか?』


俺は彼女の顔を見れずに空を見上げる

だが今の俺にはティアの顔が見れない、引いていたりしたらと思うとね

でもその心配は杞憂だった


彼女は俺の手を超強く握りしめる。痛い

激痛を感じつつも静かに顔を向けてみると、口をモゴモゴとさせながら小さく頷いてくれたんだ


時は満ちた、俺はそう心の中で叫ぶ


『頑張ります』


何を頑張るんだ?何を言っているティア?

こうして2人でぎこちなく歩きながらも彼女を家まで送り届けた後に家に帰ると、俺は再び面倒な指示を母さんからされたんだ

リビングにいた母さんに買ってきた材料を紙袋のまま渡すと『飲み物ないわ』とウッカリな事を口にする


リンゴジュースを買ってくる、ということだ


俺は『また商店街か』とぼやきながらも肩を落として家を出る

そういえばティアが明後日、泊まりに来ること言えばよかったな

まぁ帰ってからでいいかも


《兄弟の下半身がとうとう開闢するんだな!?》


『その表現どうなんだ!?』


《最初は飛ばしたら駄目だぞ!?ティアお嬢ちゃんのお股を開脚させてお前が開闢!》


『お前が落ち着け!』





んで、中心街

先ほどの様な人並みはない、買い物の時間が終わって店の殆どが閉まってしまったからだ

みんな年越しの準備をするからだが、どこでリンゴジュースを買えばいいんだ…

おつかいって難しいよ、バーグさん


《そういやよ、幻界の森でちっとばかし気になることがあるんだが》


『どうしたテラ』


《今のことろはこっちメンツは兄弟のイディオットにクローディアんでお前の親父さんか》


『リゲルとクワイエットさんもだ』


《エーデルハイドは無し、か》


残念だが行けないかもしれない

俺は彼女らも幻界の森に行くという話をギルドで聞いたことがある

だけどもリゲルが駄目だとエーデルハイドの意見を突っぱねたんだ


エーデルハイドはその言葉に不満を持ったのだろうが、言い返すことは出来なかった

リゲルの顔は凍てついたように変わり、誰もが口を閉ざしたのだ

うつむくクリスハートさんに視線を向けていた彼だが、とある言葉を口にして行くか行かないかを決めろと彼女たちに伝えた


リゲル

『幻界の森、侵入した1番隊と2番隊だが2番隊はほぼ全滅、1番隊は半壊…1㎞も満たない地点でだ。生き残る為に何が正しい判断か、当時のルドラ隊長とロイヤルフラッシュ聖騎士長は全滅の可能性があると思い、森を出ることを決意した時にとある指示を出した…そのおかげで出れたのかもしれん』


クリスハート

『どうしたのですか』


リゲル

『歩けぬ者は見捨てて撤退、遅れた者も見捨てろ…だ』


聖騎士は生きて森を出る為に、非情にも自ら歩けない部下を置き去りにし、撤退の道中で怪我をした者までも目もくれず走って脱出したのだという

怪我をして移動に支障を起こした場合、それに合わせて行動することは危険性が増すと彼らは知っている。


自分を守ることで精一杯の状況だったのだろう

それほどまでに危険な森

エーデルハイドは覚悟を決めていたはずだが、リゲルの言い放つ言葉に更に過酷さを知る


リゲル

『守ってやれねぇぞ。それでも行くならばくればいい…自分の身は自分で守れ』


俺はその事を思い出した。


『くるよ、あの人たち』


テラ・トーヴァにそう告げると、俺は中心街を練り歩いた

すると珍しい光景が見えてくる

クワイエットさんが1人でソワソワしくしながら向こうの道から歩いてきたのだ

何かを探しているみたいだが、何だろうか

駆け寄って聞いてみよう


『こんばんはクワイエットさん』


『アカツキ君だ。肉買いに来たんだ』


『閉まってます』


『肉買いに来たんだ』


『閉まってます』


『肉…』


『閉まってます』


彼は両膝をつき、うな垂れた

どうやら彼とリゲルも年越しは美味しい料理を食べて過ごす予定だったらしく

ギルドの2階テラスで焚火をしつつも肉を焼いて夜景を見ながら年を越すつもりだったらしい


《残念だなぁクワっち。午後には殆どが閉まるぜ?》


『先ずは立ちましょうクワイエットさん』


顔を真っ青にする彼を起こし、一緒に開いている店を探してあげる事にした

共に歩く時のクワイエットさんは凄いニコニコしており、いつもの彼だ

中心街は空いてないと思い、俺達は北地区を目指す


当然ながら俺のターゲットでもあるリンゴジュースもない、そもそも開いてない

どこかしらまだ営業している店は確実にあるが…どこだ

探せばある筈さ、歩きながら聞きたいことを聞いてみよう


『クワイエットさんは幻界の森では無傷だったんですか?』


『怪我してたよ。リゲルもさ』


『帰ってこれたんですね』


『そだね。でも本来ならリゲルは死んでた、彼は足をやられて動けなかったから』


クワイエットさんは当時のことを話す

彼は魔物の奇襲に反応が遅れた際にリゲルに助けてもらったが、肝心のリゲルは足に深手を負ってしまい、その場で仲間に見捨てられてしまった


クワイエットさんは戻ろうとしたが、それはロイヤルフラッシュ聖騎士長に『死ぬぞ!』と凄まれてしまい、体を罪悪感で満たしたまま彼を背に走った


それでもリゲルが生きていた理由はルドラが見捨てなかったからだ


ロイヤルフラッシュ

『ルドラ!諦めろ!』


ルドラ

『あれが貴方の奥さんだったら置き去りししたか!?リゲルは特別な男だ!誰が止めても俺は戻るぞ!解雇処分でもなんでもするがいい!』


あの時のルドラは本気であり、上官に対し粗末な態度をとらない人間が初めて声に鬼を宿して叫んだと言う



『今だからわかるよね、息子を置き去りに出来ないからさ』


『ルドラはその後どうしたんですか』


『リゲルを背負って生還、奇跡さ』


『怪我は?』


『してたね。その後ルドラさんは危険な状況での行動で仲間を危険に晒したと言うことで聖騎士会の会長から彼に解雇を言い渡したんだけどフルフレア公爵がそれを良しとしなかった。公爵の温情で1ヶ月の停職を命じられただけ』


『よかったですね』


リゲルはルドラにとって世界で一番特別だろう

自分の息子なのだからな


特別、か……


少し奥まで歩くと、大通りの一部でまだ露店が開いていたのでクワイエットさんとともに駆け込む

双方ともに目的の品は買えたし、あとは帰るだけ


『肉っ肉』


『肉しか買ってないですよね?ピーマンとか肉料理に合う野菜…』


『大丈夫大丈夫!』


心配だ

料理は作れるのかと帰りながら彼に聞いてみる

すると…


『焼くだけなら大丈夫!肉焼き機はギルドの備品で借りれるから』


『回す奴ですね、あれは安易なんで楽ですよ』


『だよね!一応バーベキュー用の網もあるけどよくわかんないから使わない』


あるんかい

だが肉焼き機だけなら肉だけになるのは仕方ないか


《2人だけでやんのか?》


『そだよ。リゲルと2人』


《焼いたことあるか?》


『ないけど多分大丈夫』


その笑顔が何故か心配過ぎる

まぁ2人なら何とかなるだろうと思い、俺はギルドの近くまで来るとクワイエットさんと別れてから家に向かう

リビングでは起きたばかりの父さんが寝ぐせのままソファーでのんびりしており、母さんとシャルロットは夜食の準備をしていた


『アカツキか、リンゴジュースはあったか』


『あったよ』


『さっそく飲む』


2本買っていたので余裕はある

台所から持ってきたグラスにジュースを注ぎ、父さんに渡すとグビグビ飲む始めた

少しだけ残してテーブルに行く父さんは生き返ったかのような顔をする


『それにしてもいい匂いだ。今年は一緒に食べれんとは残念だ』


『まぁ仕方ないよ。警備兵だもん』


『うむ。まぁイルドゥンの暴動の話が無ければ俺が出る事もなかろうに』


『警備を増やすために父さん出勤する羽目になったんだ』


『まぁな。多人数とクワイエット君だったらしいが彼は本当に強いんだな』


『あの人はねぇ…』


『慈善団体イーグルアイはやはり貴族の暇つぶし企業だ。容疑者を全て刑務会のウェイザー支店へ連れていくことを決定したと聞いたぞ・一応雛形レベルの謝罪文書付きでグリンピアの警備会に冒険者ギルド運営委員会に送り、穏便に済ませる為に和解金を直ちに用意するという何様だというような文面は笑ったが』


『でも貴族絡みが面倒だから突っぱねる事もしないんだろ?』


『面倒になるのがオチだ。こっちは怪我人はいないから今回だけはこれでこっちが我慢するしかないだろう』


30人くらいでクワイエットさんに押し掛けたと聞いているけど、凄いなあの人

半分以上の人間をボコボコにしていたらしい


あと死なない程度に斬りまくるってあの人は難しいって以前に聞いたことある

リゲルが剣の技術が凄いから容易くやってのける、とクワイエットさんは彼を評価していたのも覚えてるぞ

殺したら不味いだろうって考えてくれてたのかもね


《イルドゥンってあの30人がいなくなりゃもう殆どいねぇだろ?兄弟の親父さんよ》


『こちらで聴取の為に機能いったが、見た感じだとそこまでワルじゃない奴らしか残ってない。10人そこらさ…大丈夫だろうよ』


癖のある奴らはウェイザーの街に監獄か、まぁ出てくるま3年は確実にかかると父さんは言っていた


『シャルロット、母さん頼むぞ』


『うい』


台所から妹が変な返事をしながら顔を出す

俺は父さんを見送ろうとした時に思い出した


『あ、明日ティアが泊まりにきてく『なんだとぉぉぉぉぉ!?』』


耳が!耳がぁぁぁ!うるさすぎる

台所からシャルロットと母さんが慌てながらこちらに駆け寄ってくるが

どこまで驚くことないだろう


『母さん!息子が明日ティアが泊まりに来ると可笑しなことを!』


『まさかそんな!?嘘は駄目よアカツキ』


《かっはっはっは!》


嘘じゃない、と告げると母さんと父さんは俺よりも興奮し始めるのが面倒くさい


『シャルロット、アカツキの部屋に行ったら駄目だぞ!?1つになってるかもしれん!』


『父さんっ!その表現はなんなんだ!』



その後、母さんは台所からサンドイッチを持ってくると、父さんに食べさせて仕事に向かわせた

俺は料理は出来ないからあとは待つだけだ

台所からの匂いに食欲が沸く、そういえば今日はあまり食べていないからな


『よかったじゃないアカツキ、ティアちゃん来るって事は恋人同士なのねぇ』


『いや、わからんぞ?』


『アカ兄ィ鈍感』


『シャルロットのいう通りよアカツキ?好きでもない男に部屋で一緒に寝るなんて女はしないのよ。増してや同じベットよ』


まぁそうだよね。

流石にここまで来たら自信持つか


『多分だけど、ティアちゃん勝負パンツね』


母さんが自信満々で言い放っている

俺はソファーの上でリンゴジュースをグラスに入れて少し飲んで考えた

普通に一緒にくっつきながらぐっすりと寝たいというハードルを超えたいだけなんだ


ティアは多分だけど、俺みたいに弱腰思想じゃないだろう

きっとパックンチョされることを想定しているのかもしれん

それは不味い、お互いの予想がすれ違っている時には想定外な事態が起こりかねない


『俺は普通に…その。そこまで考えてなくて』


『それ聞いたらどっちが男かわからないわね…ティアちゃんの方がよっぽど覚悟決めてんじゃない?そうよねシャルロット』


『うん!今度からアカ兄ィじゃなく、アカ姉貴』


『俺は男だ』


『きっとティアちゃんは落ち込むわよ?頑張って男になりなさい』



なるしかないのか!


んで夜食までウトウトと眠りそうになりながらもソファーで寝転んでいると夜食が出来たからと言われて父さん抜きでの贅沢な料理を3人で食べたんだ、単純に美味い

そこで俺は色々話したんだけど、クワイエットさんが肉だけしか買ってないという話をしたら苦笑いした母さんが『食べ終わったら野菜持っていきなさい、片付けは良いから』というので


俺は紙袋に鉄串やらシイタケやらピーマンとその他、そして俺の母さんお手製のバナナジュースが入った瓶を持っていくことになった

外を歩く人はいないな。いや警備兵が前から歩いてくる


あれは…副警備兵長エーミールさんだ

思い出してほしい、初めて鬼ヒヨケと戦った時にいた警備兵だ

父さんの1つしたの後輩でもある


彼の後ろには警備兵2人がおり、彼らも共に鬼ヒヨケに挑んだ人だ


『やぁアカツキ君じゃないか』


『ご無沙汰しておりますエーミールさん。仕事ですか』


『住宅街を一回りしたら終わりさ、ゲンコツ長と交代だが寝坊はせずに起きてくれたかい?』


『先ほど家を出たんで大丈夫です。』


『それは安心だ。アカツキ君も夜は気を付けて歩くんだよ』


『わかりました』


こうしてギルドまで向かうと、2階のテラスが明るい事に気づく

まぁ先ずは中に入るか


クローディアさんは実家がある北区に帰っている筈だ。受付の奥を見るとギルド職員は1人しかいない

しかも椅子の座ったまま眠そうな顔をしている


『おや?アカツキ君』


『リゲル達におすそ分けを渡しに来ました』


『なるほどね、僕は寝るよ』


ギルド職員が職務怠慢の宣言

しかし聞かなかったことにしよう


それにしても薄暗いな

早く届けて帰るか

2階に上がり、テラスにいくと確かにリゲルとクワイエットさんがいる

肉焼き機に肉を巻いた状態でクワイエットさんが笑顔で回していくのが視界に写る


しかし、クリスハートさんもいる


リゲル

『あ?乞食に来たか』


クリスハート

『そんなこと言わないでくださいよ、どうみてもお裾分けです』


米がある!?

話を聞くと彼女のお裾分けらしい

んで俺は野菜関連と飲み物さ


リゲル

『…悔しいが気が聞くじゃねぇか、助かる』


アカツキ

『寒くないのか』


俺はリゲルに材料を渡しながら聞いてみると『意外と寒くないぞ?』と答える

確かに火の近くに寄ってみるとは暖かいし、なんだか楽しそうだ


《おなごがなんでいる?リゲルの坊やにナンパされたか?》


『違います。どうせ炊けないだろうと思って用意したんです』


『いいなぁリゲルは、心配してくれるなんて』


『それなんか違います』


『まぁ助かったよ。お前は家に帰らなくていいのか?』


リゲルが彼女に聞いた質問は危ないような気がしたが

どうやら大丈夫そうだ、この時期にここにいるって事は理由があって帰れないのかと思ったんだ


クリスハート

『私は大丈夫です。』


リゲル

『それならいいが』


アカツキ

『バーベキューにしては最低限が揃いましたねクワイエットさん』


クワイエット

『助かったよアカツキ君、肉だけは駄目だったね…』


リゲル

『当たり前だろっ』


クリスハート

『野菜や飲み物も買ってください』


クワイエット

『あるからセーフ!』


リゲルとクリスハートさんは溜め息を漏らす

見た感じだと上手くやっているような気がする

そういえばエーデルハイドではクリスハートさんだけは実家じゃなくて宿での寝泊まりだったな


リゲル

『帰りは送るから食ってけよ』


クリスハート

『ですが…』


クワイエット

『大丈夫大丈夫!クリスハートちゃんもまだ食べてないでしょ?』


タイミングよく彼女のお腹がなる

食べましたとは言えなくなったクリスハートさんは少し顔を赤くしながらその場に居座る事を決意した


《来年は大変だ、今日はやりたいことしとけ》


アカツキ

『来年も大変だな』


リゲル

『別に慣れてるさ。色々あったがよ』


クワイエット

『色々あったねぇ』


アカツキ

『ありすぎた。』


リゲル

『まぁ来年もあるだろうよ、差し入れの礼だ…今回は食っていってもいいぞ』


いいんかい

だが夜食は済ませたし、でも断るにもいかない

多少なりとも腹に入るからつまむ程度には大丈夫だろう


クワイエットさんが肉焼き機を回して肉を焼き

俺はバーベキュー用の台に炭を入れてから火をつけて網を張ってから野菜を入れる

勿論ウインナーも持ってきてる


焼きながらも似合わないメンツでのリンゴジュース乾杯さ

たまにはいいかもな


それにしてもクリスハートさんは片手間で焼けた肉を一口サイズに切り分けて皿に乗せてるんだけど流石貴族のお嬢様だ、素早い


アカツキ

『聖騎士ってモテないんです?』


クワイエット

『どうだろうね、でもルドラさんがやたらしつこく僕らに合コンってやつをやらせてたよね』


リゲル

『月に1回は何故か強制参加だとか言って俺達を連れていったな』


クリスハート

『合コンしてたんですか!?』


アカツキ

『凄い驚きますね』


クリスハート

『あ、ちょっと意外で』


《この様子じゃ全部失敗だな》


リゲル

『違ぇよ。気品すぎる女しか呼ばないんだよ親父はよ…』


アカツキ

『気品?』


クワイエット

『どこの令嬢なんだよって感じの女性ばかりだったなぁ…流石に会話が難しくて』


どうやらリゲルの父親であるルドラことライガーは環境が良い場所で育った女性を連れて来たいたらしい

逆にそれが仇となった感じか


クリスハート

『でもリゲルさんも今思えばと感じる事はあるんじゃないですか』


リゲル

『まぁな。不器用なりに考えてくれたんだろうよ』


彼は鼻で笑うと、少し口元に笑みを浮かべながら空を見上げる

なんだかんだあの出来事から悲観していられないとわかって今の様な顔をすることができるのだろう

少し嬉しそうな顔にも見える。なんだかんだ知らずして共にいてくれたという事実がそうさせたのかもな


クワイエット

『リゲルのタイプはなんなの?』


リゲル

『知らねぇな…』


そんな会話を肉を食べながら聞く

意外にこの肉は美味しいな!米がすすむけども小腹レベルでしか食べれないから勿体ないな

そこでふとリゲルが思い出したかのようにクリスハートさんに顔を向ける

彼女もそれに気づき、首を傾げるが…


『お前、そろそろサラシはやめたほういいぞ?逆に圧迫感で動き難いぞ?女聖騎士騎士に聞いた言葉をそのまま使ったが』


『破廉恥な…ですが防具を探すのが大変なんですよ』


『んなのオーダーメイドすりゃいいじゃねぇか。あの可愛い女の子がいる鍛冶屋いきゃ出来るぞ?』


『あそこですね。確かに大きく動くとちょっと気になりますが』


『欠点は消しておけ、他人事のように聞きながらピーマンを美味しそうに食べてるアカツキの女も気にしないで戦ってるぞ』


なんだよ、ピーマン美味いだろ?


アカツキ

『サラシだったんですね』


クリスハート

『まぁ…そんな感じです』


恥じらいながら口を開く彼女はいつも以上に美人、流石はグリンピア冒険者のマドンナだ

アイドルっていう人もいるけどね


リゲル

『あの森に行きたきゃちょっとした小さな雑念も消化しとけ、そこまで巨乳じゃないだろ?、Eはあると思ぶほらっ!』


あぁまた殴られて地面転がったよ

クリスハートさんは顔を真っ赤にしながら何故か胸を隠しているが、服を着ているから大丈夫だよ

恥じらいから来た仕草だとは思うけど


クリスハート

『破廉恥だとモテませんよ!?』


リゲル

『別にモテたいなんて思ってねぇよっ!』


クワイエット

『楽しそうだねぇ。でもリゲルもエーデルハイドも幻界の森の話は考えてくれてるんだ』


リゲル

『まぁな、正月っつぅ行事が落ち着いたらルシエラ達にはどんな森か教えてからどうするか決めさせる気だったが、本当にやべぇ森だぞ?』


クリスハート

『覚悟はしてます。遊びで冒険者を目指してるわけじゃないので』


リゲル

『ほぉ?嫁ぎ問題解消して気が緩んだと思ったが』


クリスハート

『もともと夢でしたので、今この環境にいて私ももっと先を見てみたいと貪欲になっているのはありますけどね』


リゲル

『その貪欲を間違えなきゃいい。』


彼はそう答えると、クリスハートが切り分けた肉を貰って食べ始める

一度会話は止んだものの、俺は気になることがあったからリゲルに聞いてみた


アカツキ

『そういやリゲルの両手の指無しグローブ、前まで装備してなかったが買ったのか』


その質問は何故か彼を喜ばせてしまう


リゲル

『お前にしてはよく気づいたな!ルシエラが買ってくれたんだがこれまたなんのって剣を握りやすくて便利なんだぜ?てか何で俺の誕生日知ってんのか疑問だったが…クワイエット?』


クワイエット

『そりゃばれるよねぇ』


どうやらリゲルの誕生部は12月中にあったのか

その話をしていると、クリスハートさんは嬉しそうにしながら静かに肉を切り分けている

彼女に触れるのはやめておこう、情に浸っている感じが凄いするからな


リゲル

『サンキューな』


クリスハート

『あ…はい』


いきなり話しかけられたクリスハートさんビックリ

俺はリゲルに『ピーマンも食え、1つも食ってないぞ』というと彼は『大嫌い』と率直に答えた

シンプル過ぎる回答に俺は言葉を失くしてしまうが、勝ったと心の中で勝ち誇った

俺には好き嫌いはない、未だに何でも食べれるからな!と無駄に威張りたくなるが相手が悪い


しかし、俺よりも果敢な者がいた

ピーマンが大嫌いと告白したリゲルにクリスハートさんの鋭い視線が彼に突き刺さる


『食べないと強くなれませんよ?』


『おまっ!?母さんみたいなことを言いやがって、どこで覚えたっ!』


『口を開けてください』


彼女のこだわりがあるのだろうか?

クリスハートさんは食べやすく切ったピーマンを箸で掴むとリゲルの口元に運ぶ


『食わないぞ!』


『開けなさい口』


彼女の口調が強い、何故だ!

リゲルは逃げようと背を向けた瞬間に肩を掴まれて引き戻された

するとクリスハートさんはとんでもない閉め技でリゲルを締め上げるが速過ぎて見てなかったなぁ

両足でリゲルの頭に巻きつけてるけども、力を入れれば締め上げる事も可能

クワイエットさんも意外過ぎる彼女の行動に目を丸くしている


『好き嫌いは駄目です』


『お・・おおお前、とことん母さんそっくりだ!』


『さぁリゲルさん、口を開けましょう』


僅かに彼女の足に力が入ると、リゲルは『ムギュッ!』と声を出す

観念したのか、彼は口を開けてしまう

俺からしてみればご褒美にしか見えないぞリゲル、なぜ嫌がる?


美人の太腿の感触を顔全体で感じながらの、アーンだぞ?

ピーマンを食べたリゲルは頑張って噛んでから飲み込むと、クリスハートさんは彼を解放した


リゲル

『お前、ピーマンの恨みは忘れんからな』


涙目のリゲルは見ていて楽しいが、目を合わせたら不味い

被害がこちらに来る


クリスハート

『どうせ破廉恥な事を…』


リゲル

『お前の嫌いな食べ物を調べてやる』


なんてレベルの低い復讐なんだ…リゲル

彼女はない、と豪語するが

この時に誰も彼の情報収集能力のレベルの高さを知らしめるために動くだろう


でもこの光景を見ていて俺は少しホッとしているよ


クワイエット

『やっぱ楽しいなぁここ、家建てるときはグリンピアにしよう』


なんか決まった


俺は満腹になるまで食べると、3人の邪魔にならないようにそそくさと家に帰った

どうやら遅くまでリゲル達と飲み食いしたらしく、リビングは既に暗かったからそのまま2階に上がってベットにダイブして寝る事にしたよ


明日はちょっとティアマトのお願いを聞くためにお出かけになるが

夜は待ちに待ったティアとのお泊り!今から興奮しそうだ

しかし、俺はベットに入って直ぐに寝ることが出来た












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