第155話 年末前のアンデット祭り
魔物表
SS ???
S 虹王蛙、死王ギュスターブ、赤龍ササヴィー、奪宝ゼペット
A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)
睡欲のモグラント(土駆龍)
????????
A 呪王ジャビラス、ドミレディ、ノヴァトラーク(炎龍)
B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ
女帝蜂、ミノタウロス
サーベルタイガー、イエティ、ジャクラール
エレメンタル(オール)
C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ
パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント
剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)
般若蠍、ベロヌェルカ
ロゴーレム、ニャン太九郎、魔妖精
チベタンウルフ、雷狼
エレメンタル(アイス・サンダー)
D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム
ラフレコドラ、ケサラン
ソード・マンティス、黒猪、グレイバット
鎧蛇、棘巻トカゲ
リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー
ブー太(梟)バイオレット
E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、
エレメンタル(レッド・グリーン・ダーク・アクア)
パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール
グリーンマンティス
ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)
F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト
風鳥、ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー
眠花蜘蛛、角鼠、カナブーン ゾンビナイト
赤猪、棘鴉、オオダンゴ、ギョロギョロ
ゾンビランサー、シロオニバス、イビルハープ
・・・・・・・・
北の森にランクBのアンデット種の魔物であるディラハンが現れた
ギルド職員の知らせで丁度居合わせた俺とティアがエーデルハイドの4人そしてクリジェスタの2人のサポート役として同行することとなる
エーデルハイド B
クリスハート 片手剣士
アネット 片手剣士
ルーミア 双剣士
シエラ 魔法使い
クリジェスタ B
リゲル 片手剣士
クワイエット 片手剣士
サポート
俺
ティア
俺達はチームの仲間がいないが、他のチームはBであるために討伐は出来る
出来ない筈がない
森に急ぎ、俺は入り口で守りを固めていた警備兵の中にシグレさんがいたため、軽く会話を交えてから討伐メンバーと共に森に入っていく
ディラハンは黒馬に乗った鎧を身にまとう魔物、中身は無くガランドウ状態だ
この魔物がいるだけでアンデット種の魔物が集まる傾向があり、冬の夜にアンデットは増すのも相まって面倒な森へと変貌を遂げる
森を数分歩いて進むだけでゾンビナイトやゾンビランサーそしてゴーストという黒い煙状の魔物がわらわらと姿を現す
《各個撃破だが数が多いな!》
アカツキ
『確かにな!』
ぱっと見で20体か
俺は素早く刀を振って周りのアンデットの首を斬り飛ばしながら飛び込んできたグールという短い両爪を持つ灰色の肉体を持ち、人型アンデットをすれ違いざまに首を刎ね飛ばす
その横ではティアが真剣な顔でゾンビナイトの剣を避け、回し蹴りを顔面に命中させて吹き飛ばすと直ぐにラビットファイアーで吹き飛ばした個体諸共5体同時に燃やす
リゲル
『全部構ってられねぇな!進みながら行く!最後尾頼むぞ』
アカツキ
『わかってる。ティア離れるなよ』
ティア
『オッケー!』
にしても数が多いな
先頭ではリゲルが淡々と立ちはだかるアンデット種の魔物を容易く斬り倒して道を作っていく
シエラ
『数凄い、こういう時魔法使い辛い』
アネット
『そうだねぇ!無暗に魔力消費出来ないから温存しながらその杖で頭叩くしかないね!』
クワイエット
『離れたらダメだよ?』
シエラ
『大丈夫!』
四方からアンデット、アンデット、アンデットだ
低ランクだとしても数の暴力は勘弁してほしいな
俺はティアと後ろから追ってくる奴らを倒しながら離れないように進む
とはいっても走っているわけじゃない、小走りだ
『カカカ!』
クリスハート
『邪魔です!』
茂みから飛び込んできたリッパーという全身が包帯まみれのアンデット種
その爪はグールよりとても長く、ランクはDとそこそこ高い
しかしクリスハートさんはタイミングよく剣を振りぬき、両断した
彼女の剣を見ると新しい剣だ
前よりも細く、そして僅かに長い
リゲル
『そっちの方がいい動きしてるぞ。慣れとけ!』
クリスハート
『はい!』
クワイエット
『側面、アネットちゃん!』
アネット
『任せて!ルーミア!』
ルーミア
『わかってるさね!』
みんな忙しい
こっちも忙しい
絶え間なく魔物が出てくるって大変だが人数がいる分、体力の消費も少ない
僅かに途切れた時間を使って歩きながら呼吸を整えると前方からアンデット種でもランクが高い魔物が姿を現す
『グルルルル』
リゲル
『気色悪い犬め』
ランクCのコンペール
灰色の体をした大型犬アンデット種であり、所々腐敗が見受けられる
両前足の側面には人間のような腕があってそれを使って殴ってきたり掴みかかってくるのが厄介だ
同時にこいつは同じアンデット種の仲間を呼ぶのが辛い
《魔石拾ってる時間ねぇな兄弟》
アカツキ
『そうだな』
リゲル
『どうするよ?確かこいつシュツルムってメガネ馬鹿の持つ爆発魔法スキル持ちだろ?』
シエラさんの目が凄い輝く
何度も頷くその行動はきっと欲しいのだろう
ティア
『腕を全部切り落としてから倒せば確定ドロップだよ!』
ティアが後ろから追ってきていたグールの首にサバイバルナイフを突き刺してから蹴って抜くと、口を開く
彼女の声はリゲル達の耳に届き、クワイエットさんと共に口元に笑みを浮かべ始めている
リゲル
『俺右』
クワイエット
『なら左』
『グル!?』
ただならぬ予感を感じたコンペールはビクンと体を震わせたが、その隙に2人は一直線に駆け抜けた
リゲルとクワイエットはコンペールの目の前まで迫ると、奴の噛みつきを容易く避けてから先ほどの宣言通りに同時に腕を斬り飛ばしたんだ
あんなに簡単に出来る者なのかと驚きながらも周りのアンデットを斬っていると、リゲルは『トドメ!』と叫ぶ
飛び込むはクリスハートさんだ
彼女はバランスを崩したコンペールに向かって跳躍すると、頭部に剣を深々と突き刺してから手首をひねってえぐる
『ギャン!』
悲鳴を上げるコンペールだが、クリスハートさんは剣を抜くと直ぐに体を回転させて首を刎ね飛ばした
その場に倒れたコンペールの体から発光した魔石が顔を出すと、リゲルはそれを掴んでシエラに投げ渡す
リゲル
『行くぜ?離れんな』
彼は力強く言い放ち、皆に背を向けて先頭を歩きだす
シエラさんはこんな状況でも、ニヘラとした表情をしたまま魔石のスキルを吸収しながらみんなとついていく
シュツルムをゲットしたのだろうと考えれば、嬉しいのも無理もない
爆発魔法って貴重であり、黒魔法は相手の耐久力無視のスキルが多い
シュツルムは扱いが容易であり、殲滅力もそれなりに補償されている
クワイエット
『これはごり押しだねぇ、前から団体さんだぁ』
リゲル
『ツッ』
前方からゾンビナイトの群れが現れるとリゲルは舌打ちをした
だがシエラさんは口元に笑みを浮かべたまま腕を伸ばすと黒い魔法陣を展開して口を開く
『シュツルム』
黒弾が撃ち放たれ、先頭のゾンビナイトに当たると爆発が起きて周りのゾンビナイトは軽く吹き飛びながら転倒していく
レベル1でもそれほどの威力があるのはこのシュツルムのいいところだ
アネット
『今のうちぃ!』
クリスハート
『行きましょう!』
慌ただしい最中、ようやくアンデットの波が途切れたので俺達は足を止めてようやく休めた
リゲルとクワイエットさんは息切れすらしてないのがやっぱ凄い
他は肩で息をしていて結構疲れているから休めるのは助かる
リゲル
『流石に多いな、だが疲れてくると武器を持つ脇が甘くなるから意地でも抜くな、力が剣に伝わらなくなる』
アネット
『そうするわ』
クリスハート
『それにしてもディラハンはどこでしょうか』
《あと10分真っすぐ歩けば会える。1分後に正面からリッパー5体来るから気をつけな》
アカツキ
『そいつらが来たと同時に休憩終わりにしないか』
リゲル
『それが良いだろうな。デュラハンは本体もそうだが馬は気をつけろ?背後をとって馬鹿馬の強力な後ろ蹴りがくる』
クワイエット
『シエラちゃんの火魔法が弱点だから上手く隙を作って当ててもらわないとね』
シエラ
『頑張る』
ティア
『怪我した人いたら回復します!』
ルーミア
『回復いると本当助かるわぁ、その時はお願いするわねティアちゃん』
《ディラハンは火もそうだが剣は馬にダメージ与えて動きを抑えるのも手だ、あと連続斬りと真空斬それに強撃っつぅ技スキル持ちだから気をつけな》
3つも技スキル持ってんのかよ!
まぁBだし可笑しくはないか
アカツキ
『ティア、大丈夫か』
ティア
『大丈夫、そろそろだね』
彼女は顔を持ち上げると、進むべき方向に視線を向けた
リッパーが来るか
カカカ、と不気味な声が森の奥から聞こえてくると、クワイエットさんは、『行こっか』と笑顔で口を開く
ティア
『追ってきたゾンビさんも後ろから来たね』
アカツキ
『そうだな』
後ろからはゾンビナイトとゾンビ犬
数は少ないから問題はない
俺は追い付いてきた魔物だけをティアと共に倒して進む
先ほどよりも数は少なくて助かる
てか2体目のコンペールは流石に驚くが、リゲルとクワイエットが一気に両腕を斬り飛ばすとアネットさんとクリスハートさんが同時にコンペールの胴体に剣を突き刺してからルーミアさんが首を切り裂いて倒しきる
手間をかければそれだけ体力も無駄に削られるため、スムーズだ
発光した魔石をシエラさんがまた掴むと、スキルを吸収してから魔石を俺に投げ渡してきた
ティア
『それ!』
ゾンビナイトの首にサバイバルナイフを突き刺し、横に裂いてから回転してしゃみこむと飛び込んできたゾンビ犬の噛みつきを会費した
俺はそのゾンビ犬を刀で斬って倒すと、ティアと共に仲間と離れないように歩き出す
《そろそろだ!開けた場所にいるから歩いて息を整えな!》
クリスハート
『なんだか便利な神様』
ティア
『凄い感知範囲だよね』
リゲル
『すごくなきゃ神様だって信じねぇさ。』
後ろから追ってくる魔物もあらかた倒した
ゆっくりと歩き、深呼吸をしていると大きな気配が俺にも届く
開けた場所の中心には寂しくも不気味に黒馬の背に乗るデュラハン
それはこちらに顔を向けており、来ていることをわかっていたようにも思える
リゲル
『騎乗した状態の奴に剣士は不利だが受け止めるより受け流せ!剣が光ったら逃げとけ』
クリスハート
『わかりました!皆さんいきますよ!』
エーデルハイドが走り出すと、リゲルとクワイエットさんも彼女らに続く
俺とティアの仕事は追ってきたアンデットの対応が良いだろう
後ろからリッパーだ、しかも2体
《兄弟はティアお嬢ちゃんと壁役だ、通すな!まだくるぞ!》
アカツキ
『ティア!踏ん張るぞ!』
ティア
『了解からのラビットファイアー!』
赤い魔法陣から一斉に飛び出す細長い熱光線はリッパーや後方のゾンビナイトに命中すると激しく燃え始める
残るリッパーが襲いかかってきても刀で受け止め、ティアが側面から奴の頭部にサバイバルナイフを突き刺す
『おら!』
直ぐに蹴って転倒させてから鞘に刀を納めて『刀界』と叫ぶ
正面に衝撃波と共に無数の斬擊が飛ぶと、衝撃波で吹き飛ぶゾンビナイトやグール達の体を切り裂いていく
ゴーストもいたが、衝撃波で消し飛んだ
《あらまぁ!兄弟の好敵手が参るぞ》
アカツキ
『なんとなく理解するがその用語似合わないぞ』
《ツッコムなよ、さぁおでましだ》
奥から感じる魔物の気配は強い
何が来るかはだいたい予想していたが、やはり侍ゾンビ
殆どミイラに近い体からは予想できない素早い剣擊を放つ厄介なアンデット種の魔物。ランクはCだ。
『ティア!サポート頼む!』
『はい!』
運よく他のアンデットはまだいない
先ほどの刀界で倒れてくれたのは有難いな
『オォォォォ…』
腰に携えた刀にゆっくり手を伸ばす侍ゾンビ
俺は小さく息を整えながら刀を構えて彼を待った
長期戦は無用、短期戦にかける
『オッ!』
一直線に襲いかかってきたがまだ刀を抜く気配はない
抜刀と同時に来るだろう
俺も駆け出し、奴の目の前で刀を振り上げる
侍ゾンビが右手に握る刀に力が入る瞬間を目にした俺は両手に力を入れて全力で振り下ろす
抜刀からの攻撃は早く、侍ゾンビよりも速く振ったつもりか互いの間合いの中心でぶつかり合い、金属音が響き渡る
『っ!?』
僅かに侍ゾンビが押し込まれ事によって左手も刀を掴むが、もう遅い
『おらぁぁぁ!』
一気に力を入れて奴の刀を弾き、仰け反らせる
体を回転させて侍ゾンビに体が向いたと同時に奴の体胸部を切り裂き、そして刀を引いてから突き出しながら前に出た
俺の突きは弾かれたが、当たらなくても良い
《かませ!》
俺はそのまま奴に体当たりして転倒させた
意外と体が柔らかいと思う感触だったが軽かったな
『オォォォォ!』
呻き声を上げながら横に転がって俺の突きを避けた侍ゾンビは素早く立ち上がるが
その時すでに俺は奴の首をとらえていた
刀を横に振り抜き、侍ゾンビの首が飛ぶ
力無くその場に倒れる姿を横目に、俺は側面から飛び込んできた別のアンデット種の魔物に顔を向ける
『カカカ!』
リッパーか
だが残念だ
『そい!』
俺の視界にはリッパーに向かってドロップキックするティアだ
顔面を蹴られたリッパーは大きく仰け反り、その隙に俺が胴体を深く切り裂いて倒す
《まぁまぁだな》
『まぁまぁか』
テラ・トーヴァの言葉に反応しながらもティアの手を掴んで起き上がらせる
こっちは落ち着いたようだが、まだ別の気配はある
ティア
『冷た』
アカツキ
『ドロップキックするからだろ?』
彼女は笑って誤魔化す
その蹴りは着地難しいし追い討ちを考えていなかったのかも知れない
俺がいるからかな、まぁそこは置いといてだ
ふと爆発音だ
俺とティアは肝心の戦闘に顔を向けると、デュラハンの鎧から煙が僅かにたちこめていた
《あっちゃ死闘だぜ?なんせエーデルハイドは初デュラハンだからな》
『俺達は未経験だ』
リゲルとクワイエットさんは加勢する気配はなく、デュラハンと戦うエーデルハイドを見守っているように思えた
黒馬に騎乗した黒騎士の鎧は所々に凹みがあり、それらはエーデルハイドがつけた傷跡だ
アネット
『本当にギリギリ見えるくらいだよ攻撃』
ルーミア
『シュツルム1発直撃したのにねぇ』
リゲル
『鎧の損傷で本体の動きが鈍ってく!剣士職はロリの魔法の活路を作れ』
シエラ
『年上!年上!』
クリスハート
『では参りますよ!アネットさん!ルーミアさん!』
彼女の言葉に二人が呼応し、同時に駆け出す
相手はアネット種のランクB、容易くない
デュラハンは手綱を引っ張り、黒馬が鳴きながら上体を持ち上げると強く両前足で地面を強く叩く
すると前方に衝撃波が放たれて三人は足を止めて踏ん張る
クリスハート
『これ面倒…』
クワイエット
『くるよ!』
バランスを崩さぬように踏ん張っている隙にデュラハンがアネットさんに駆け出す、その速度は凄まじくあっという間に彼女の目の前まで迫ると、すくうようにして剣を振った
『だぁっ!』
アネットさんは自信の剣を当てて受け流すが、攻撃の威力を逃がしきれずにバランスを崩してふらつく
デュラハンは剣を突き出そうと1度、剣を引くが
『クロスカッター!』
『強擊』
ルーミアさんとクリスハートさんがデュラハンの側面から飛び込む
『っ!?』
デュラハンはアネットさんへの追い討ちをやめた
ガードに専念する為だ
ルーミアさんの双剣がバツの字に振られると、その形の斬擊がデュラハンに飛ぶ
飛ぶ斬擊だが、デュラハンはそれを剣を振って破壊するがクリスハートさんの攻撃の対応は出来なかった
彼女の強擊という技スキルは範囲は狭いものの、パワーをある程度増した状態で剣を振るという技だ
それはデュラハンではなく、黒馬の側面を大きく切り裂く
『ヒィィィィン!』
傷口から黒い煙を出しながら悶え苦しむ黒馬は暴れ、デュラハンは唸り声を上げたまま追撃を仕掛けるアネットさんの剣を弾き、彼女を吹き飛ばす
『2発目!』
吹き飛ぶアネットさんが叫ぶ
この瞬間、既にルーミアさんとクリスハートさんは飛び退いていた
デュラハンは右に顔を向けるが、それは遅かった
奴の目の前にはシエラさんの放つファイアーボールが迫っていたのだ
直径30センチの火球は顔面に直撃し、デュラハンの頭部は燃える
『ヌォォォォォ!』
左手でフルフェイスの兜を触ったまま黒馬を落ち着かせると頭を乱暴に振って鎮火しようとするが、その間にクリスハートさんやアネットさん、そしてルーミアさんが飛び込んで奴の鎧に武器を当てて損傷を与えていく
ルーミア
『もう1発!』
彼女は反転して素早く突っ込んでから跳躍したが、デュラハンがBの意地を見せる
まだ頭部は燃えているというのに、奴はそのままルーミアさんに視線を向けると剣を振り下ろした
ルーミアさんはたまらず双剣でガードするが、その威力は凄まじく、強く地面に叩きつけられた
『くっ』
『ヌゥゥゥゥ!』
黒馬の踏みつけだ
あんなの直撃したら即死だ
彼女は歯を食い縛り、横に転がってその場をしのぐと素早く立ち上がり、デュラハンの剣を双剣でガードしきれず地面を転がって吹き飛んだ
クリスハート
『よくも』
アネット
『お返しさね』
デュラハン
『ヌゥ!?』
背後から跳躍して襲いかかる二人だ
アネットさんの剣がデュラハンのガードする剣にぶつけた瞬間にクリスハートさんは『兜割り!』と叫んでデュラハンの兜を大きく凹ませたんだ
既にどちらもボロボロだ
デュラハンはそれでもアネットさんを弾き飛ばしてからクリスハートさんの腕を掴むと素早く投げ飛ばす
投げ飛ばされたクリスハートさんの真横をすれ違う黒弾、それはベストなタイミングでシエラさんが放ったシュツルムだ
《いいタイミング!》
ティア
『よし!』
アカツキ
『よし』
シエラ
『当たって!』
似合わない荒げた声を口にし、シエラさんは拳を強く握りしめた
本当にタイミングが良いと言える光景が目に写る
デュラハンの頭部の火は鎮火したももも、黒弾が迫ってきているのに頭を抱えて動きを止めてしまったのだ
兜の損傷がよほど酷かったのだろう
奴は避ける動作を見せること無く直撃し、爆炎の中に消えていった
『油断するな!』
リゲルが叫ぶ
すると爆風の中から黒馬が吹き飛び、後方に転がっていく
かなり弱っていて立ち上がるのもままならないようだが、肝心のディラハンは爆炎の中から火達磨状態でシエラさんに向かって呻き声を上げながら駆け出した
騎乗でしか行動しないのかなと思っていたが、それは間違いだった
馬が無くても、あいつは戦える
クリスハートさん達は行かせまいとディラハンの前に立ちはだかるが、あっちも本気だ
アネットさんの剣の突きなど手で掴むと、そのまま後ろに放り投げる
その間にルーミアさんの剣がデュラハンの肩に突き刺さるが、奴は剣を乱暴に振って彼女を吹き飛ばしてからクリスハートさんの剣を弾き、足を掴んで地面に叩きつけた
『ヌォォォォォ!』
デュラハンがやっけになっている
シエラさんだけに意識を向けていると見てわかる
『くっ!』
迫るディラハンを見て体に力が入っている
あの距離から魔法を撃ってもデュラハンならまだ避けれる筈だ
見極めて撃たないと外れてしまい、その隙に攻撃される
だがしかし、彼女の傍らにはクワイエットさんが笑顔で立っており、彼女に囁く
『仲間を信じて撃てばいいんだよ。自分で今だってタイミングがきっとくる』
『そ…そんなタイミング』
彼女は不安な顔を浮かべながらも腕を伸ばし、黒い魔法陣を展開する
ボロボロな鎧と化したデュラハンもダメージ量は尋常じゃない筈であり、次のダメージが入ればどうなるかもわからない
『ヌォォォォォォォ!』
剣を掲げ、デュラハンはシエラさんに襲い掛かる
距離は10mをきったが、そこで絶好のチャンスが訪れた
ガキン!という音と共にデュラハンがガクンとバランスを崩して膝をついてしまったのだ
それにはシエラさんも驚く
《それでいい》
テラ・トーヴァが満足げに口を開く
デュラハンの足には剣が刺さっており、それはクリスハートさんの武器だ
肝心の彼女は倒れたまま腕を伸ばしているのを見ると、きっと彼女が投げたんだ
それはシエラさんの目にもわかるぐらいのチャンスだ
彼女は『シュツルム』と叫ぶと、黒い魔法陣から撃ち放たれた黒弾がデュラハンの胸部に命中して爆発した
僅かに距離が近かったためにシエラさんはバランスを崩すが、クワイエットさんがニコニコしながら彼女の背中を支えているのがなんとも言えないな
『やったかな』
ティアが囁きながら俺の手を凄い強く握ってる
めっちゃ力強い!凄い強い!こんな強かったんだ!?
クリスハート
『いかせるわけ…ないでしょ』
彼女はそう言いながらゆっくり立ち上がり、肩で息をする
ルーミアさんやアネットさんも彼女に続いて起き上がると、再び武器を構える
シエラ
『あ…』
爆炎の中から現れたの魔石ではない、デュラハンだ
まだ生きていることに俺は驚きを隠せない
気配もまだあるが少し様子がおかしいぞ?動かない…
3人が急ぎ足でシエラさんの前に辿り着くと、壁のように彼女を隠す
しかし、デュラハンは動く気配はない
剣をだらしと垂らしたまま、唸り声を上げている
アネット
『やっば…Bの中でも別格だわ』
クリスハート
『本当に強い…』
まだ彼女たちの戦意も失っていない
でもやはり始まりがあれば終わりは訪れるのが宿命だ
『…ミゴト』
デュラハンが喋った
俺は口を開けて驚くが、どうやらこの魔物はアンデットの中でも知性のある個体らしく
それも相まってランクBとの事だ、今テラ・トーヴァに聞いたよ
低い声、男だとわかるが…。口を開いたと同時に奴は前のめりに倒れ、鎧がバラバラに転がると黒い煙だけが空に舞い上がって消えていったんだ
黒馬も黒い煙になって消えていく
残る鎧もボロボロと灰になっていき、微弱な風によって飛んでいってしまい、残ったのは奴の魔石だけだ
勝ったのだ
それを実感した4人はその場に座り込むと、声を出さずに強くガッツポーズして喜び合ったのだ
普通に剣でぶつかり合えばかなり面倒な魔物であると聞いてはいるが、凄いなやっぱ
ルーミア
『凄い気迫のナイトさんだったぁ…』
シエラ
『凄い怖かったけど、やった!』
リゲル
『やるじゃねぇか!デュラハン相手によ』
クワイエット
『僕らもあれ相手は物理がいまいちだし嫌だよね』
リゲル
『まぁな、お前ら強いって事だ』
彼に似合わない褒め言葉だ
それにはエーデルハイドも少し驚くが、直ぐににやけた
ルーミア
『なぁんか嬉しいね』
クリスハート
『そ…そうですね』
ティア
『勝ったね!』
ティアさん、掴む力強い!!
折れそうだけども我慢だ、手を繋いでいる?という至福が勝っている
だが帰るまでが冒険だ、とテラ・トーヴァが口を開くと一同は顔を上げてから辺りの森を見回す
ティアが俺の手をようやく俺の手を離し、険しい顔になる
どうやら魔物のようだが、アンデットだ
低ランクのアンデットばかりだが今の状態のエーデルハイドだと辛いだろうな
リゲルはエーデルハイドが立ち上がると同時にクリスハートさんの肩を軽く叩き、口を開く
『帰りを考えない本気、だが相手が相手でその判断は今は正解だ』
『帰りは僕らとアカツキ君達がいるからゆっくり帰ろう、デュラハン死んだしアンデットの数も少なくなるはずだよ』
俺達の出番が多くなるなら喜んでしよう
隣にいるティアも同じようであり、彼女は笑顔だった
帰り道、俺は先頭で襲い掛かるアンデット種の魔物と戦うけども数は少ない
ティア
『本当にいいんですか?』
アネット
『便利な魔法だけども、今はこのまま帰りたいな』
ティアのケアをみんなが断った
それは彼女らにとって意味のある行動なのかもしれない
俺は女性なのにその姿に気高さを感じる
美人なだけじゃない、流石だなぁと見惚れてしまいそうだ
リゲル
『よく意地見せたなお前』
クリスハート
『走っても間に合わないと思ったので』
リゲル
『それでいい』
《よく倒したな。Bでも強い部類だぜ?》
シエラ
『嬉しい』
彼女が一番嬉しいだろうな
この中にいる人の中で一番歳があるらしいが、何歳だろうか聞くのが怖い
クワイエット
『後ろからは気配ないね、というかもうほとんど魔物がいる感じしないなぁ』
リゲル
『だな。ルシエラ胸張れ』
クリスハート
『疲れてしまって力が』
リゲル
『今は良いが魔物がウジャウジャいるときに疲れた姿してると真っ先に狙われるからな?そのうち疲れてでもいつも通り歩ける体力だけは残せるようにしとけ』
クリスハート
『わかりました』
そうなのか…初めて知ったぞ
テラ・トーヴァもリゲルの回答に対して同意を示しているから本当らしい
弱っている者を狙うのは確かに説得力があるな
歩きながら魔物を倒しつつ、俺はティアと魔石を回収だ
途中で拾えなかったのもちゃんと拾って帰る、稼ぎになるからな
そうして進んでいると、たまにクリスハートさんがふらつくのでリゲルがたまに支えているけども、アネットさんは疲れた顔に笑みを浮かべたまま、俺の耳元でとんでもない事を口にする
『クリスハートちゃん、異性に触れられるの拒むのにさ…彼はそんな素振りないよね』
『なに…』
『きひひひひ』
その笑い声怖いよ
ルーミア
『なんだか満足な気分で年末を過ごせるわぁ』
シエラ
『明日お買い物!贅沢する!』
クワイエット
『リゲル…年末ってなんだろう』
リゲル
『多分大事な戦いがあるんだよ。』
クリスハート
『本当に正気ですか!?』
今ようやく、彼女の姿勢が綺麗になった
その時のティアと言ったら、2人を可哀そうな目で見ていたのを俺は忘れないだろう
本当に強くなることだけにパラメーターを振った男達だな…
日常の祝い事とかに疎いのはわかるが、てんでわからないとは
ギルドに帰るまでの道中、クリスハートさんは必死に2人に年末というイベントを教えながらギルドまで帰還した
俺達は魔石の換金だけだったけども数が多かったからそこそこ稼げたし
場違いになる前に俺はティアと家まで送ると、実家に真っすぐ帰ったのだ
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