第152話 クワイエットさん 5

次の日の土曜

殆どの冒険者は休みにもかかわらずギルドに大勢集まっていた

それはリゲルが行う剣術指南の日だからだ


リゲルには実績がある

今は脱退したがクワイエットと共に聖騎士に所属しており、精鋭と言われる1番隊でいたこと

そしてその実力もあってグリンピアでは目まぐるしい速さで冒険者ランクをBにまで上げたチーム『クリジェスタ』であることだ


対人戦、魔物戦共にエキスパートの指南を無償で受けれるとなれば受けない手はないのだ

クワイエットは明朝早くに警備兵に聴取で呼ばれ、急いでギルドに戻ってから地下の安易訓練場に向かった


小さな闘技場の様な作りの空間、円状のフィールドを分厚い壁が囲んであり、壁の上は3段の客席となっていた

客席は見物客、そしてフィールドには参加する冒険者が約50人も集まっている


彼らの先頭にリゲルは冒険者達に体を向け、指南は始めようとしていた


クワイエット

『間に合った』


シエラ

『お帰り』


クワイエット

『ただいま、結構多いね』


そこには魔法使い職シエラと双剣師ルーミアだけがいた

アネットやそしてクリスハートはこの剣術指南に参加するためにフィールドにいる

そこにはソードガーデンの剣士職、バーグ率いる夢旅団の剣士であるバーグとプラオの姿がある


リゲル

『アカツキとの戦いを見ていた奴はわかっていると思うがもう一度言う、無駄な力みは無駄に体力を削るだけだ!攻撃する一瞬に力を入れろ、筋肉っつぅのは力を入れた瞬間が一番強い。ほとんど力を入れてない状態から力を入れたほうが今までよりも剣撃の威力は上がる、今日はそれの知識だ!構えからは特に指摘しない…。ただし、下半身に力が入らない構えはアウトだから覚えておけ』


冒険者達は腕を組み、彼の話を聞く

その中でも比較的、日の浅い若手冒険者はメモをしながらあ彼の話を黙々と聞いている

クワイエットはそれを目の当たりにし、笑顔を浮かべた


クワイエット

『大丈夫そうだね』


ルーミア

『彼だしね』


リゲル

『俺は剣術しか自信は無い、そのうち双剣や暗器に手慣れたクワイエットも何かしらするかもしれないがあいつの役回りは実戦での同行での指南だ。来月から毎週土曜の指南は有償だが安くはする。クワイエットの森までの同行指南も比較的安く設定してあるから多少無理な魔物との交戦ではぜひあいつを連れていってほしい。話す順番は慣れてないのは許してほしいが…俺はカランビットとクナイしか暗器は使えないがクワイエットは殆ど使える。剣を手放した際に護身で持つのも手だが、軽すぎる暗器はやれることが少ないから重量を吟味して購入を考えろ』


不慣れなリゲルの説明にクワイエットやシエラ、そしてルーミアが微笑む


その後、リゲルは剣の持ち方や振った時の下半身の使い方を冒険者達に安易に説明し、剣術指南を進めた


2時間という時間も直ぐに経過すると、若手冒険者がとあることを口にした

それが引き金となり、誰もが一度は見てみたいという衝動に駆られることとなる


『リゲルさんとクワイエットさんの演武みてみたいなぁ、なんて』



バーグ

『完成したらどういった戦いが出来るかのイメージとしては見てみたいなリゲル君』


プラオ

『リゲルとアカツキとの戦いは凄かったが、クワイエットとの戦いも興味あるなぁ』


誰もがその興味の波に飲みこまれた

今日予定していた指南も終わり、時間は10分余った

それをリゲルはやるしかないのだおるなと諦めながらもクワイエットに顔を向ける


クワイエット

『…勝ったらシエラちゃん今日ご飯行こ!』


シエラ

『唐突、でも今日私、お金ない!』


クワイエット

『奢るさ。シエラちゃんは実家にお金入れるもんね』


彼は返事を聞くことなく、客席から飛び降りた

フィールドにいた冒険者はクワイエットが降りてきたことが了承の証だと察し、素早く客席に移動し始める


直ぐにフィールドには彼ら2人だけとなり、中央で口元に笑みを浮かべて無言のまま見つめ合う


ギルド職員は致し方なしと感じながらも止めずに彼らのやりたいことをさせようと、溜息を漏らす


冒険者は無駄に張り詰めた空気の中、静かに見つめ合うリゲルとクワイエットに視線を向けていると、彼らはようやく口を開いた


リゲル

『悪いが言葉攻めはもう聞かねぇぞ?2重の意味で』


クワイエット

『それは困ったな、でも勝たないとシエラちゃんとご飯いけないしなぁ』


リゲル

『悪いが今日は諦めな』


感情を揺らせばリゲルはヤッケになる、クワイエットはそれを知っていたがその作戦も今では使えない

だがしかし、1つだけ卑怯な手があることを彼は見つけた

クワイエットは笑みを浮かべると、リゲルはただならぬ嫌な予感を感じ始める


開始の合図は無い、どちらかが動けばそれが開始

2人は腰の鞘に剣を納めたまま、手首を回してウォーミングアップをするが、クワイエットがそのタイミングで仕掛けた


『リゲルも負けたくないよね、あの子見てるもん』


『!?』


目を見開くリゲルに活路を見つけたクワイエットはその瞬間に駆け出した

僅かに反応が遅れたリゲルは舌打ちをし、抜刀しながら剣を振り下ろすクワイエットの剣を両手に握り締めた剣で受け止める


甲高い金属音、それは剣同士がぶつかったにしては大きい

金属が破裂したようなそんな音だ

だが彼らの剣に異変は無く、クワイエットは剣を押し込む


リゲル

『ぐっ!』


クワイエット

『力は僕なの知ってるよね!』


踏ん張るリゲルはしかめっ面で押し込まれまいと耐える

しかし無駄な力の見せつけ合いと知るや、彼は口をモゴモゴ動かしながら驚くべき行動を取った

流石に予想外な光景にクワイエットは(やばっ!)と感じてしまう


リゲルの口から顔を出したのは暗器であるスティンガー

ペンのサイズのそれは1発限りの鉛弾を飛ばすアイテムであり、リゲルはそれを口の中に隠していた

歯でボタンを押すと、穴から弾は発射される


クワイエットは顔を逸らして避けた際に押し込む力が抜けてしまい、リゲルに弾かれた

直ぐにクワイエットはリゲルの剣の突きを避けると、直ぐに突きからそのまま払いに移行する攻撃を剣で受け止めてから弾くと、回転して胴体を狙う


リゲル

『ちっ!』


リゲルは中段を剣でガードし、口から吐き出すようにしてスティンガーをクワイエットの顔面に命中させるが、彼は目を閉じることなくそれを頬で受け止めながらリゲルの剣を押し込んでバランスを崩し、腹部を蹴る

寸前でリゲルは腕でガードするが、地面を滑るようにして吹き飛ぶ

その勢いおさまらぬうちにクワイエットは駆け出し、何度も剣を突く


目にも止まらぬ猛攻に冒険者は唖然とし、開いた口が塞がらない

2人の剣はぶつかり合うも、リゲルが僅かに押されるが直ぐに態勢を立て直し、クワイエットの振り下ろす剣を顔の近くまで近づいて攻撃をしのぐとそのままクワイエットの顔面に頭突きをして怯ませる


クワイエット

『ぐっ!』


鼻から血が流れるが、それでも目を瞑ることはない

その一瞬が命取りだからだ


クワイエット

『負けたくないんだね』


リゲル

『何がっ!』


リゲルは吐き捨て、僅かに後退りしたクワイエットに腕を伸ばして胸ぐらを掴もうとする

だがクワイエットは宙返りしながらその腕を弾き、1回転して着地する寸前で腰の後ろの隠していた手裏剣2つを左手で掴むと、同時に投げた


回転しながらリゲルに襲い掛かる手裏剣は無数の刃がついており、クワイエットの投げた力を考えれば防具など容易く貫通する威力を誇る


リゲル

『ちっ!』


彼は素早く2つの手裏剣を剣で弾き飛ばすと、続けて投げられたクナイ3発を剣の側面で受け流す

それらは壁に突き刺さるが、刃の半分がめり込んでいるのをみれば本気で投げたに違いない

どちらも加減無しの真剣勝負、冒険者はそれを無意識に感じ、呼吸すら忘れそうなほどに静かに結末が訪れるのを待つ


互いの刃が光速で交わる中、クワイエットは何度もリゲルの心を揺り動かす言葉を口にする


『君はもっと楽しい人生にしたくないのかい!』


『何がだ!』


『気になる女性は作らないとね!』


『いねぇ!』


『嘘っ!』


クワイエットはリゲルの剣の握りが緩まったと感じ、瞬時に剣を振り上げて彼の剣を強く弾く

その手から剣が離れることはないがリゲルの剣を持つ手は真上に上がってしまい、その間にクワイエットが懐に潜り込む


(くそっ!)


クリスハート

『リゲルさん!』


リゲルは歯を食いしばり、靴を微妙に動かすとつま先から小さな刃が姿を現す

隠し武器、暗器であるがつま先に小さな剣が隠れた珍しい靴だ


素早くカカトを地面に叩き、つま先から剣が発射されるとクワイエットの太腿を斬り裂いてから客席の壁に突き刺さる


クワイエット

『なっ!』


リゲル

『おら!』


リゲルはバランスを崩し、前のめりになったクワイエットの顔面に肘打ちをぶつけ、自身の剣を離すとクワイエットが剣を握る右手を掴み、残る腕で彼の首を絞めたまま持ち上げた


リゲル

『おらぁぁぁぁ!』


クワイエット

『ぶぶぶぶ!?』


体が持ち上がると、クワイエットはそのままリゲルと共に地面に叩きつけられる

どちらも背中から叩きつけられたがリゲルのダメージが浅く、彼は素早くクワイエットが剣を握る腕を使って十字固めで動きを止めた


(これはちょっと!不味い)


ギリギリと自身の腕に悲鳴が聞こえ始めたクワイエットは寝技じゃ彼に絶対勝てないのは聖騎士時代で知っていた

力では自分だが、技術は彼だからだ

小道具を忍ばせるのを忘れていたことがこのような結果を招くが、そもそも戦うと思っていなかったことを言い訳には出来ないクワイエットは心の中で苦渋を嘗める思いを浮かべる


(平和ボケし過ぎてっ、暗器あんま持ってない!)


クワイエットは藻掻きながら徐々に締め上げるリゲルに活路は無いのかと冷静に考えたが

どう足掻いてもなかった


クワイエット

『ギブギブ!』


リゲル

『おっしゃぁぁぁぁ!』


歓声が上がり、リゲルはクワイエットを解放すると盛大にガッツポーズをして周りに我が物顔を見せる


(流石に真剣勝負だとちょっと相手が悪いか、前より意思が強くなってるし卑怯な手はもう無理だね)


クワイエットは乾いた笑いを浮かべながら大の字で天井を見上げる

盛り上がりの中、リゲルは口元に笑みを浮かべてクワイエットを起こすと、『今日は終わりだ、来年から有償だから命を買いたい奴はいつでも土曜日に来い』と周りに叫んでからクワイエットと共にギルド内の治療室に向かった









クワイエットはギルド内治療室のベットルームにて太腿に包帯を巻かれた状態で横になっている

その傍らにある椅子にリゲルは座りながらも腕を組んだまま彼に口を開く


『久しぶりに俺の勝ちだが小道具装備しなさすぎだぜ?』


『あはは、迂闊だったよ…鼻も痛い』


『そりゃな、鉄の棒を突っ込まれて整形されるの凄い痛いよな!最初の麻酔棒なんて意味ないってくらい痛いからなぁ』


『だよね!凄い痛いから鼻は勘弁だよ…』


そんな話を楽しそうに2人はした

クワイエットは鼻も折れており、そちらのほうが彼にとって苦痛であった

鼻血は止まったが、それでもズキズキした鈍痛が鼻を襲っている


リゲル

『この街も悪くねぇ、居場所にしてもいい』


クワイエット

『それが良いよ、ここの人みんな暖かいから中毒になりそう』


居心地がいい、彼らはそう感じていた

2人の笑みが生まれると、部屋にエーデルハイドの4人が心配そうな顔を浮かべて姿を現す


アネット

『凄かったねぇぇぇ!速くて目で追うの大変だったよぉ!』


ルーミア

『あれ剣がぶつかる音じゃないよね、本当にそれ剣?』


リゲル

『ちゃんとした剣の振りかたすりゃああなるさ』


クリスハート

『ひやひやしましたよ』


リゲル

『俺強いだろ?』


クリスハート

『な…何を胸を張って…』


クワイエットはリゲルの顔を見て笑う

直ぐに彼はシエラに顔を向けると『また今度だね』と残念そうに口を開く

だがしかし、アネットはクワイエットの顔を見てからシエラの脇を肘で突く


シエラ

『奢りなら、仕方ない、行く』


クワイエット

『やったー!』


子供のように万歳するクワイエットにリゲルは苦笑いを浮かべた

彼の太腿の怪我は深くはなく、比較的に傷は浅い

鼻の骨折も時間がたてば痛みが静まることから数時間で痛みは僅かとなる


夕刻になると、クワイエットは治療室から解放された

太腿の怪我は塞がってはいないが運動をしなければ問題ないと言われたクワイエットは今日一日は運動を禁止された


そんな彼は初めて異性との時間を過ごすこととなる

シエラと共に歩くクワイエットは子供のようにウキウキしていた


凍てつく街中、クワイエットはふさふさの耳当てをし、もこもこの上着と似合わない服を着ている

シエラはそんな彼を苦笑いを浮かべて眺めた


シエラ

『服、センス、皆無』


クワイエット

『性能重視だよシエラちゃん』


シエラ

『私、年上っ!』


クワイエット

『そだったね!でもシエラちゃん今日は本当に良かったの?ご飯の支度とかなんとかないの?』


シエラ

『お母さんしてる、大丈夫、私はあまり歩けないお母さんの代わりに稼ぐだけだから』


シエラの母親は足が弱く、家からあまり出ることが出来ない

買い出しなどはシエラがするが、今日はその必要はない

父親は浮気したまま蒸発したことはアネットから聞いていたクワイエット、その件に関しては口にしては駄目だろうと流石の彼でも理解していた


妹に弟がおり、3人兄弟であるシエラが稼ぎ頭となっている

彼女は稼ぎの殆どを家に入れているのだ


クワイエット

『食べたいのあるなら何でもいいよ!』


シエラ

『肉!』


クワイエットはニコりと笑うと、以前ルドラに連れていってもらったあの焼肉専門店に足を運んだのだ

それには流石のシエラも驚く、こんな場所で食べたことが無いからだ

店の中に入ると、クワイエットは落ち着かないシエラを連れて店員の案内するテーブル席に向かう

炭火焼、テーブルの中心の穴にはそれがあり、煙が円状の中にある側面の穴に吸い込まれる仕組みだ


店員は『またのご来店、ありがとうございます』とクワイエットに言うと店の奥に消えていく

先ほどの店員の言葉を聞いたシエラは彼が来たことがあるとわかり、そのことを聞いた


リゲルと共にルドラの奢りで来たことを詳しく話しながらメニューを眺めているとシエラは少し思いつめたような顔を浮かべる


『…みんな家庭の事情はあるんだよシエラちゃん、僕は親なんてわからない…気づいたら浮浪児だったからさ。こんなこと言うのも悪いかもだけど、僕はみんなが羨ましいな』


『わかる、でも私は今の生活に満足してる、不自由ないし家にお金入れるのも嫌じゃない』


『いいなぁ。エーデルハイドもBランクだし報酬金に上乗せもあるから稼ぎもいいでしょ』


『全然違う、凄いけどこの先が難しい』


『うん難しいよ。Bの魔物の安定って骨が折れるよ』


『クワイエット君でも思う?』


『そりゃね、Bランクを単体で倒すだけでも生涯で達成できる兆しは殆どない…どう考えるとリリディ君は相当覚悟決めてるよね』


『…私もあれくらい動ければ…』


シエラはもっと上を目指そうと考えた

しかし彼女は元々魔法使い職最強と言われるマスターウィザードを目指しており

そのためにはまだステータスが足りない

そしてもっと最悪な事に、リリディの出現によってマスターウィザードが最強ではないとグリンピアを中心に冒険者は知り始めた


黒魔法スキルの存在はこの街から光の速さで街から街を情報が移動し、それはマグナ国全土に及ぶほど

未知な称号の出現により、シエラは焦りを覚えていたのだ

リリディの称号の双璧はティアのエクシアの上位称号、となればそれ以外は以下の称号となる



色々シエラは考えながらもメニューを決めると店員を呼び、クワイエットと共に注文をしてから再び話し始める


クワイエット

『黒魔法のギールクルーガーは聞いたけど、ティアちゃんの最終称号はわからない…』


シエラ

『エクシアは途中称号らしいし、でも羨ましい』


《ファイアウィザードならバハムートがあるぞ?》


唐突にテラ・トーヴァが現れて2人は驚く

2人は忘れていたのだ

この街にさえいればテラ・トーヴァは許可した対象に念術で話しかける事が可能であることを

声もテラ・トーヴァの耳に聞こえる、街にいればだ


シエラは驚きながら初めて聞く称号に食らいつく

そんな様子を感じたテラ・トーヴァは気持ちよくシエラの伝える


《龍の息吹を借りた称号、ラビットファイアー、ファイアーボール、ブレスショット、フレア、龍炎だ》


シエラ

『ちょっと…それ…』


知らない魔法スキルが1つあった

龍炎という聞いたこともない魔法だ

フレアは知っているが、今の彼女では到底倒せない魔物が持つ炎魔法スキル

2つを保有していない彼女は龍炎のスキルを持つ魔物が何なのかテラ・トーヴァに聞いた


《魔物Aランクのノヴァトラーク、闘獣に匹敵する力を持つ龍…あれを倒した事のある人間はただ1人だ、ゾンネのみだ》


その言葉を聞き、シエラは道は遥か遠くだと感じる

しかしテラ・トーヴァは続けて彼女に告げる言葉があった


リリディとティアの求める最終スキルはもっと過酷、お前はぬるま湯で強くなれると思っているのか?と鋭い言葉を突き付けた

楽な道じゃない、それを再認識すると彼女はペチペチと自身の頬を叩く


シエラ

『強くならないと』


クワイエット

『自衛は教えるよ、焦らずに行こうか』


シエラ

『うん!』



タイミング良く運ばれてくる最強級の肉を前に2人は目を輝かせた

更に乗る輝く肉を食べ物なのかと勘違いしたくなるほど美しく、見る者を幸せにする

店員が炭火焼の準備をすると『ごゆっくりどうぞ!』と声をかけて奥に歩いていく


クワイエット

『さぁ食べよう!今後に向けてスタートだね』


シエラ

『うん!でもお金大丈夫!?』


クワイエット

『お代わりしないなら大丈夫!』


シエラ

『ならする!』


クワイエット

『えぇ!?』


それはシエラの冗談だった

至福の満腹感を腹に感じながら2人は店を後にすると、クワイエットはシエラを家の近くまで送る

彼はあまり踏み入れないように遠くから彼女と別れ、背を向けた

するとシエラは『ごち!またいつでも』とクワイエットにとって好機とも思える言葉を送る


クワイエットは機嫌良く、その場を去ると真っすぐギルドに戻る

まだ家が不安定なクワイエットはクローディアの恩情により、無期限で2回の安易宿泊施設の使用を許可されているが、いつまでもいるつもりはなかった


いつかは出ないと駄目なのはわかっており、資金を溜めないといけない

ギルドの1階ロビーには何故かクリスハートとアネットが剣を片手にリゲルの指南を受けていたのだ

冒険者はほとんどおらず、リゲルは女性2人の素振りを見て色々と何かを押してているようだ


リゲル

『お?帰ったか』


アネット

『お帰り、良い顔だけどどこにいってたの?』


クワイエット

『ルドラさんが連れていった肉!』


リゲル

『お前!あそこいったのか!?カルビ!』


クリスハート

『え!?カルビ行ったんですか!?』


アネット

『ちょっとクワイエットさん!?今日は何やらいつにもましてイケメンだよ!』


リゲル

『おま!あからさまなご機嫌取りしてんじゃねぇ』


クワイエットはそんな彼らの会話を聞いて、大きく笑う

やっぱりここが一番だと思いながら





クワイエットさん 終

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