第145話 予期せぬ偶然

やぁ俺はアカツキ

今日は最高の日なんだ。だって今日はティアとデートなんだなぁ

色々ゴタついて12の月の25日だけども。俺達は休みだし約束したデートには丁度良いと思って今日にしたんだ


したんだけど…


今俺達は昼食でギルド近くの飲食店に来ている

珍しく冒険者は誰もいない、家族客だけさ

ティアはニコニコしながら注文した牡蠣フライ定食を待っている

ちなみに俺は唐揚げ定食だ


俺の顔はしかめっ面

そして隣の席にいる男もしかめっ面だ


リゲル

『帰れよ』


アカツキ

『我慢しろ』


クリスハート

『偶然もあるんですね』


偶然にもリゲルとクリスハートさんのコンビにバッタリここで会ってしまった

どうやらクリスハートさんの飯を奢る件は今日のようらしい

女性陣は楽しそうに話しているが、俺とリゲルはそうでもない


《まぁダブルデートで面白くね?》


アカツキ

『何だがよ』


リゲル

『こっちはデートじゃねぇよ』


ティア

『でもリゲルさん、クリスハートさんの事になるとなんとなくな感じで頑張るでしょ』


リゲル

『お前の牡蠣フライ食べたろか?あ?』


それにはクリスハートさんが笑っている

まぁリゲルの言葉は冗談だとして、だ


俺は店員が運んできたココアを飲んでゆったりしていると、ティアが嬉しそうに話しかけてくる


『なんだか二人でいるの久しぶりだね』


『そそそそうだな!』


少し緊張する

今日こそは決めたいと覚悟を決めているからだ

でも昨日はティアも色々大変だったし疲れてないだろかと不安でもある

 

怪我した冒険者がギルドに入るや直ぐに彼女はケアを施して治したんだ

かなり魔力を使ったと聞いたけど、安眠スキルで回復したのだろうか


《それにしてもティアお嬢ちゃんも強くなったよな兄弟》


『強いでしょ…ヴィンメイをたたっ切ったんだぞ』


ホーリーランペイジ恐るべし

だがその特殊技を使うと大きく魔力を消耗するから継続戦闘は困難を極める

デメリットがあると思いきや、それ相応の威力が保証された彼女の技さ


身体能力を魔力で極限まで向上させ、背中に天使のような羽を出現させて飛翔効果付与、そして手にしている武器、サバイバルナイフを魔力を使って白いロングソードに変化させ敵を斬る


斬って倒した敵の魔力を吸収するから集団で現れた魔物には有効的だ


『アカツキ君も必死に頑張ったね』


頑張った、嬉しい

ニコニコしているとリゲルが横目で見てる

俺は気付かない振りをしながらも咳払いし、ティアと話し続ける


『それにしても、エルデヴァルト王か』


『亡くなったね』


《当たり前だ、イグニスとゾンネのコンビを止めれる奴なんざいねぇさ》


『クローディアさんの話しだとイグニスはゾンネを討つ計画みたいに聞いたが』


『謎だよね…』


答えは出ない

今はゼファー王子が今後王権を手にするだろう


俺はちょっと確認したいことがあり、恥じらいながらも彼女に聞いてみた


『その、今日はうちにくるん…だよね』


ティアはハッとした様子を見せると、顔を赤くしながらうつむき、頷く

心の中でも三回『よし!』と叫ぶ


リゲル

『見ちゃいらんねぇなルシエラ』


クリスハート

『そうですか?羨ましいと思いますが』


リゲル

『男がチキンだ』


アカツキ

『お前だってチキンだろ?』


リゲル

『よし、表でるか?』


《今日は大人しく休暇しとけ男二人》


仕方なく静まる俺とリゲル

確かに休暇だ、プライベートを楽しもう

こっちもあっちも料理が運ばれてから食べ始めると面白い光景を目にする事ができた


クリスハートさんはカレイの煮付け定食だが、リゲルはステーキ定食

だがリゲルはフォークとナイフを前に困惑していたのだ

明らかに使い方を知らない素振り、俺とかわらん


リゲル

『なんだこれ?ルシエラなんだこれ?』


クリスハート

『仕方ないですね』


彼女は苦笑いしながら箸を置いて立ち上がると、リゲルの後ろに回って両手を掴んでナイフとフォークを掴ませて食べ方を教えている


ティアが興奮しながら体を揺らすが

わからんこともない

変にリゲルを刺激したらクリスハートさんにも悪いと思い、その光景にツッコミをしない事にしよう


彼らよりも先に食べ終えて店を出ると、外は真っ白い

昨夜は寝ている間にかなり雪が降ったんだ

ティアと手を繋ぐのもぞれなりに慣れた俺は店の前で手を繋ぐと、彼女は優しく微笑む

どういう感情がティアの頭に渦巻いているかはわからないが、馬鹿の俺でもこの顔はマイナスではないのだけはわかっている


それよりもテラ・トーヴァが空気を呼んで黙っていてくれているのがデカい!

昨夜は重要な話以外は喋らないで!って頼み込んだから準備は万全


『どこか行きたい場所あるかティア』


俺はそう彼女に笑顔で話す

ちょっとこの感じって周りからしてみれば…あれに見えるよね、カップル


『もうすぐお兄ちゃんの誕生日だからプレゼント買いたいな』


シグレさんの誕生日か、なるほど

ここでおさらいだがシグレさんは俺達も通ったグリンピア総合学園では喧嘩番長していて不良だった

冒険者からも恐れられており、彼が警備兵になってからは犯罪件数もガンと減ったのだ


何か悪さしたり人様に迷惑をかけると彼が笑顔で成敗に来るからだ

なんで彼が警備兵に入ったかというと、ゲイルさんの推薦でもあるがシグレさんも警備兵には興味があったからこそ二つ返事でその職についたのだ


以前、シグレさんに警備兵としてどうなのか聞いたことがある

その時の回答は悪魔そのものだったのを俺は覚えている

魔物は果敢に攻めてくる、諦めずに死ぬまで顔色一つ変えずに


しかし人間は違う、無駄な見栄を強さだと過信した者をボコボコにした後の絶望した顔はなんともたまらない、彼はそう言ったのだ

その言葉は特に酒を飲んで興奮した者に対して言い放った言葉だと俺は理解する


シラフでシグレさんを前に変な事は出来ないしな


『なんのプレゼントを買う予定なんだ?』


『ついてきて!』


ティアがウキウキ気分で俺の手を引き、連れて来た場所













アカツキ

『ひぇ…』


グリンピアの街は俺も詳しいと思っていたが、そうでもないと実感させられた

中心街のちょっとした裏通り、そこを通れば更に奥に向かう下り階段があるんだ

そこを進めば日中でも日が当たらない狭い通路、初めて通ったよ…

左右に怪しげな店が沢山あり、店の前では強そうな男が腕を組んで立っているのがこれまた怖い


だがティアを見た瞬間、凄い笑顔でニコニコしながら挨拶してるのがこれまた彼女が何者なのか俺でもわからなくなる

通路の一番奥にある店、そこは特殊暗具店だ、暗器ともいうらしい

ドアの先には薄暗い店内、ショーケースの中に見たこともない特殊な武器が沢山ある


クナイや手裏剣、煙玉そしてリゲルも持っていた投げナイフやカランビットナイフ

仕込み杖とか初めて持たぞ!?杖の中に刃物が入っているやつ、まぁ杖に見える刀だ

角指という指輪の武器もある、棘の突いた指輪だがあれで殴られれば絶対痛い!


可笑しな爪の形状の武器を見ていると、ティアは『それバグナク!』とか詳しい

金属の棒の先に鋭く尖った爪が4本ついており、その棒を握ると爪だけが出ているように見て、獣の爪のように見えるのだ


そのまま対象を引き裂いて攻撃するらしい

てかティアさん?詳し過ぎません?


店内には誰もおらず、隅の小さなカウンターに目の熊が目立つヒョロヒョロの男性がこちらを見ているぐらいか

何故だろう…あの男、凄い怖い


『ティアちゃん珍しいねぇ、ケッケッケ…』


『ハンゾウさんお久しぶりです。お兄ちゃんの誕生日プレゼント探しに来ました!』


『シグレ君かぁ!買うなら10%オフにするよ?』


『やったー!』


ティアさん?ティアさん?!

危ない店が詳しいというのはちょっと意外だな…

数分彼女は悩み、スティンガーという凄い特殊な暗器を買う事にしたのだ

全長10センチにも満たない鉄パイプで作られた棒状であり、ペンに見える

しかし1発限り、ボタンを押すと中に仕込んだ火薬が弾けて鉄の玉を飛ばすことが出来る


使い捨ての投擲武器ということだ

それをティアは3つ買ったよ、1つ銀貨3枚と意外に高い


『毎度…また彼氏と来な』


『えへへ』


俺は素早くティアと共に店を出る

こんな店、あるんだ…凄い

だがしかし1人で来るには勇気がいる


裏通りから脱出した俺は深呼吸し、外の空気は美味いと実感することができた

ティアマトとか好きそうだし今度教えよう


『ありがとね』


『大丈夫だ、荷物持つよ』


俺はティアの持つ紙袋を手にして一緒に歩く

片方の手は勿論ティアと繋いでいる、俺は冷静を装いながらも共に歩いているとティアがふと話し始める


『そういえば聞いた?クワイエットさんってシエラさんがお気に入りなんだって』


『あの人が?』


『何度もアプローチされるってシエラさん言ってた!』


そういえばクワイエットさんもシエラさんが好み的な感じなのを聞いたことがあるぞ?

話をするティアはなんだか楽しそうだ


『てかリゲルさんどうだと思う?』


『どうって言われても…』


『絶対クリスハートさんに気があると思うんだけどなぁ』


『でもリゲルだぞ?』


『よくわからない人だよねぇ、素直じゃなさそうだし』


そこまで話していると俺達に向かって言い放たれたであろう言葉が聞こえてきた


『誰が素直じゃないって?』


ギョッとしながらティアと振り向く

するとそこにはリゲルが目を細めて俺達を見ており、そんな彼の隣にはクリスハートさんが苦笑いしながらたたずんでいた


ティアと共に泳いだ目をしてしまいながらも惚けてみせるが、先ほどの会話を聞かれていたようだ


リゲル

『はぁ…言葉は何度もしつこく言うと価値が下がるぞ』


ティア

『え?』


何に対してなのか俺にはわからない

しかしティアは気づいたらしく、なるほど!みたいに納得を浮かべる


クリスハート

『変な話をしないでくださいっ』


肝心の彼女は焦った様子

これだと反応に困るのも無理もない

どうしようかと策を考えていると、そこに見慣れた知り合いが道の向こうから俺達に気づいて声をかけてきた


ババト

『アカツキ氏にティア氏』


アカツキ

『ババトさん?とホルスさん』


ホルス

『やぁ勇敢な戦士』


気さくに笑いながら現れた鳥人族の2人

ホルスさんはババトさんの父であり、鷲種の鳥人族だ

戦闘型の鳥種で生まれたのに郵便配達員だったのが今でも信じられないよ


リゲルは何故かホルスさんを見て首を傾げながら凝視しているけども、その間にホルスさんは俺達に近づくと口を開く


ホルス

『ようやくアカツキ君はティアちゃんと念願のデートだな?』


アカツキ

『そそっそそそんなこと』


ホルス

『ふむ、まだ慣れていないようだな』


ティア

『あはは』


ババト

『アカツキ氏、ガンバなり』


ババトさん、頑張るよ


リゲル

『あんた…』


ホルス

『ん?』


リゲルがホルスさんに声をかける

そこで俺はとあることを知ることになるんだ

ホルスさんはリゲルを見ると何やら凝視し、アッと何かを思い出したかのような反応を見せる

するとそこで真実を口にしたのだ


ホルス

『お前!?パゴラにいた小僧っ子じゃないのか!』


リゲル

『あんた…仕送りをせっせと家に持ってきた鳥人族だな』


ああ、繋がったよ

ホルスさんは今は郵便配達員は引退してババトさんに託しているが

現役のころがコスタリカで妻のミリィさんと共に住んでおり、大事な郵送品を長距離で任されていたというのは聞いたことがある

現金書留も勿論の事、ホルスさんはババトさんが生まれてからグリンピアに来た


まさかホルスさんがリゲルの家に仕送りを配達していたとはな

それにはリゲルも驚きながらも彼に歩み寄り、少し興奮気味に聞き始めたんだ


リゲル

『教えてくれ!誰の仕送りなんだ』


ホルス

『それは教えれない、依頼主の希望だ』


リゲル

『ルドラか?ライガーか?』


これにはホルスさんもビックリだ

リゲルは父が死んだ事を告げると、ホルスさんは『ある意味時効だな』と言って彼に話し始めたんだ


ホルス

『お前の父であるライガーはコスタリカの聖騎士会にいた、そこからパゴラにいる家族に仕送りを送っていたんだが。常連になってから色々仲良くなってな…聞いたぞ、あいつの事』


リゲル

『教えろ…なんで父さんは母さんと一緒に入れなかったんだ』


ホルス

『単純さ。彼は酒癖が悪かったからこそ妻に手を出してしまったからだ』


リゲルは驚きながらも彼の話を聞いた

ルドラは偽名、ライガー・ホルンは元々各地方を転々と歩く冒険者だった

そんな彼はパゴラの村でリゲルの母であるアウラさんに出会い、恋をした

数年かけて恋が実り、結婚後に子を授かったのだが彼の酒癖はその時までは酷くはなかったのだ

しかし、リゲルが3歳の時にそれは起きた


とある日にパゴラ村でライガーはギルドで酒に酔った冒険者と喧嘩になって怪我をさせたことにより、冒険者資格を剥奪されてしまったのだという

その内容はホルスさんでもわからないらしいが、その日の夜にやけ酒をしてしまった際に妻を叩いて怪我を負わせてしまったことにライガーは気に病んでしまい、酒を辞めるまで妻と会う事を辞めたのだという


事実上では離婚だ

それでも彼は自身の強さをコスタリカに行き、聖騎士会の入団試験で見せつけて見事に入団に成功し、仕送りをしながらも徐々に酒の量を減らしていき、酒癖の悪さも治ってきたのだ

完全に酒を飲まなくなると、彼は聖騎士会での実践投入を検討している魔物隊の隊長を任されるほどにまで成長し。その実践訓練はパゴラの村に近い森で行われることになった


仕送りと共にアウラさんに手紙を送っていた彼はその事を告げており、復縁の件も彼女の二つ返事で了承してもらい。ルドガーは大きくなった息子リゲルと愛する女性であるアウラさんに会えることを待ち望んだのだと言う


パゴラ村の近くで行われる実践訓練が終われば村に行き、ライガーは家族を連れてコスタリカで暮らそうと考えていたのだ

だがその計画も最悪な形で訪れたのだ


ライガーのパートナーであるブラッククズリが突然狂暴になり、彼を引き裂いて逃げ出したのだ

逃げた方向はパゴラの村、血を流しながらもライガーはブラッククズリを追った

しかし魔物は速く、直ぐに見失ったが彼は村に急いだ


その時に彼の人生が半分終わりを告げたのだ

愛する妻が死んでいる。我が子であろうリゲルが袋に入れられるアウラに抱き着いて泣いているというおぞましい光景がそこにはあった


ライガーは袋に入れられる妻を見て、全てが自分のせいだと悟った

自然とその体は愛する妻に近づいてくるが、そこで彼に追い打ちの言葉が幼いリゲルから言い放たれたのだ


『俺の母さんに触れるな!聖騎士がいて何も出来なかったくせに!何も守れてないじゃないか!』


『俺は…必死で走って…』


『母さんに近寄るな!もう村に来るな!』


『ゆ…許してくれ、リゲル』


ライガーは何度も死にたいと願った

酒さえ飲まなければ、そこからこの地獄が決まっていたのだと彼は思ったのだ

せめて息子だけでもと思っても、彼にはその勇気がでなかった

自身が母を殺した元凶であり、どう接すればいいかわからなかったのである



彼はそれに苛まれながらも自身の名前を捨て、ルドラに名前を変えて仕送りを続ける日々が続くと、とある日にそれは起きたのだ

届け先からの仕送り停止の希望、その後に聖騎士会に現れたリゲルとクワイエット

大きくなった息子を見て彼は自身の身分を息子に伝える勇気が出なくても、自身の手で息子を強くさせ、それを僅かな償いにしようと考えたんだ


ルドラという名でライガーはリゲルとクワイエットを推薦し、聖騎士会に入団させる

元々この2人は腕っぷしは荒々しいが磨けば本物だと見抜いたルドラは彼ら2人の教育係として名乗りをあげ。1番隊までに育て上げたのだ


ホルスさんは現金書留が無くてもルドラの元に顔を何度も出し、そのことを聞いたりしていたのだと彼は説明した


ホルス

『お前らの家族事情に俺は口をする権利はない。だがあいつはアウラを好いていた…だからこそ欠点を克服しようと努力した』


リゲル

『今更とやかく言わねぇよ、実際母さんを殺したのは別だ…』


ホルス

『ふむ』


リゲル

『だからいっつも酒だけは飲むなってくっそ五月蠅かったのかよ…』


ホルス

『思い当たる節はあるようだな。あいつの最後はどうだった』


リゲル

『死んだよ、俺を守って』


ホルス

『…ちゃんと呼んでやったか?』


リゲル

『呼んだら笑いながら死んでったよ』


ホルス

『なら彼は報われたのだろう。どんな状況であっても自分の息子は命を賭けても守るのが父親だ。ちゃんと感じたか?』


リゲルは口元に笑みを浮かべ、『だろうよ。こっちは知らずにあっちは父親みたいに勝手に振舞いやがって…』と言って俺達に背を向けて歩き出した


そんな彼をクリスハートさんが追う


ホルス

『その剣、大事に使えよ!お前の母がライガーに送った立派な剣だ!』


リゲルは驚きながら振り向くと、腰に装備している剣を握ってからホルスさんに頷き、再び歩き出す

まだ思いつめているのかなと心配していたけども、そうでもないんだな


ティア

『世間は狭くて色々繋がってるんだね、アカツキ君』


アカツキ

『そうだな。あいつがあんなに強いのはルドラのおかげだろう』


ホルス

『あいつは強いぞ?まぁしかし解決したようで良かった。まさかグリンピアの冒険者チームのクリジェスタがあいつだったとはな』


アカツキ

『あいつ無駄に強くて…』


ホルス

『誰の子だと思ってる?』


彼は笑いながら俺にそう答えた


こうしてティアと共に俺は家に向かった

誰の家か?俺の家俺の家俺の家俺の家俺の家

夜食は俺の家でどうだろうかと彼女に前の日に聞いてみたら直ぐに頷いてくれたよ

でもなんだか凄いぎこちない反応だったのが…これがわからない


夕方頃に家に辿り着き、玄関に入るとシャルロットが廊下を走ってやってくる

俺に抱き着くと思いきや、ティアだった

何故か悔しいのは何故だろう…


ティア

『シャルロットちゃん元気だね』


シャルロット

『毎日元気、アカ兄ィと添い寝してるから』


アカツキ

『寝ている間に勝手にベットに入って来てる人間が何を…』


ティアはわかっているから笑っていた

そのまま妹を連れてリビングに向かおうと廊下を歩いている時にいい匂いがする

もう夜食の準備をしているらしいな


妹は素早く母さんの手伝いに行く

俺達はリビングのソファーで寛いでおり、ティアを見ると凄い笑顔を見せながら起き上がる


ゲイル

『やぁティアちゃん、その紙袋はなんだい?』


ティア

『お兄ちゃんの誕生日プレゼントです』


ゲイル

『なるほどな。飯は少しかかるからアカツキの部屋で寛いでなさい』


ティア

『お邪魔します』


律儀に深いお辞儀をするティアに父さんにウンウンと頷く

そこで母さんも顔を出すと『いらっしゃい!美味しいの作るから待っててね』といつも以上の笑顔で対応する


一先ず俺達は部屋で時間を潰そうと廊下に出ようとしたらそれは起きる

シャルロットの声が廊下を歩く俺達にも聞こえてきたのだ


『お母さん!これは不味いかも!』


『えぇ!?料理そんなに不味かった?』


『違うの!アカ兄ィのベットきしむから勝負の時間だと音でバレ『シャルロットォォォォォォ!』』


俺は光速斬よりも早く駆け出したかもしれない

妹の口を塞ぎ、『俺に下心はないぞ?』と言うと、何故か父さんが不思議そうに言い放つ


『人生最大の嘘をつくな』


俺は悲しくも否定できずにその場を去る

廊下では凄い顔が真っ赤のティアが待っていたが、『気にしないで!俺は普通に一緒にいたいだけだから!』となんとかこの場を切り抜けようとする

これは嘘じゃない、本心だ

しかし下心はないとは言ってない


根本的な答えではないにしろ、これで良い筈だ

ティアは『気にしてよっ?』とぎこちない笑顔を見せる

不味い、これだと不味い


部屋に行ってから机の上の照明魔石に灯りをつけると、ティアは俺のベットにダイブする

俺は椅子に座って溜息を漏らし、何かから解放されたと実感しながらも体を労る


すると何故かティアはベットを軽く数回押し始める

ギシギシいうし、その後に俺を見て顔を赤くするのやめてくれない?


アカツキ

『頼むティア、それは困る…』


そこで変な緊張の糸がほぐれたのか、彼女は笑ってくれた

弄り慣れてないせいなのか、その弄り方は自分を犠牲にしているんだぞ?


溜息を漏らしてから窓を見てみると、いつの間にか吹雪だ

外が見えないし雪の粒も大きい

これりゃ明日もかなり積もるだろうなと話し、ティアと窓を眺める


『これ帰れるかティア』


『ん~大丈夫じゃない?』


『まぁ帰りは俺も送るからいいけど』


『無理しなくても帰れるよ?』


『大丈夫大丈夫!』


そんな会話をしながらも俺は攻略法を考えている

今俺は椅子、ティアはベットの腰掛けている

さてどうやって近づく!!!


無音の中で隣に行くのは自殺行為、ならば話しながら隣に行くのは自然か?いやティアは気づく

きっと彼女も俺と話しながら防御を固めている筈、いや固めているのか?

そもそもティアは俺の事をどこまで許容しているかわからない

だがしかしだ、2人でエド国に逃げた時の事を思い返せば今なら十分いけるのでは?と安直に考える俺がいる


俺は結合なんて考えてない!勇気は半歩でも許される!

ならばするべきことは頬に感じたキスではない!

人には口がある、唇がなぜ温度を感じるか俺は昨夜寝ながら考えた

熱を感じるためだ、熱いのは過剰であり、唇がそれを求めていないからである

適度な温度、それはきっと



多分俺はグリンピアで一番気持ち悪いかもしれない

この思想は墓場まで持って行こう…うん


さて、先ずはどうやってティアに近づき

その後にどうやってイベントに持ち込むかが難儀だ


するとティアが上着を脱ぐために立ち上がる

窓の横には上着掛けがあるからそこにかけるために彼女が立ち上がったが

そこで問題が起きる

俺の部屋の床は絨毯なんだけども、多少ほつれている部分があって彼女はそれを足で引っ張ってしまい、驚いてバランスを崩したのだ


両手をバタバタさせて体制を立て直そうとするが変に絨毯の糸が足に絡まり、背中から倒れそうになっている

彼女を支える為に俺は素早く立ち上がって駆け出すが、俺も絨毯のほつれに引っかかって前のめりに倒れそうになり、ティアに覆いかぶさってしまったんだ


2人仲良く倒れちゃったけども、何かが可笑しい

ティアを潰さない様に倒れる寸前で両手で床を抑えたんだけども

転倒した拍子に俺達は唇同士がくっついており、ティアはびっくりしていた


まて、これは可笑しい、予想外だ

凄い嬉しいけども俺の作戦を全て省略して本来も目的に到達したことによって思考が停止しそうだ


でもティアは嫌がる様子もなく、何故か目を閉じる

凄い嬉しいけども、どうすればいいのだろうか

長い時間ずっとこのままでいるのも不味いと思い、俺は断腸の思いで彼女の唇から離れた


アカツキ

『ごめん、違うんだティア!違くはないけど違うんだ』


自分自身で可笑しなことを言っているのはわかる

だがティアは俺が混乱しているとわかっており、顔を赤くしながら上体を起こす


ティア

『変な感じになった…ね』


アカツキ

『嫌じゃなかったのか?』


ティア

『全然私は嫌じゃないよ』


至福、ああ父さん

僕は半分男になったんだ、明日から胸を張って生きてるよ


この勢いでもう一度、そう思っていたのだがそれは無理そうだ

何やら視線を感じたのでドアに顔を向けてみる

するとそこには僅かにドアを開け、目を最大まで開いて凝視する父さんがいたんだ


ゲイル

『…』


アカツキ

『…』


あ、閉めた


ティアは爆発しそうな顔のままベットに潜り込むけどもどうやら飯の時間のようだ

夜食では気まずい雰囲気に妹と母さんは首を傾げていたのを俺は忘れない

父さんはやけに俺に優しくなっているのがもうあれだよ


『明日は食べたいものを買ってきてやるぞ?アカツキ』


『…』


《かっはっはっは!》


ここでテラ・トーヴァがとうとう笑いを堪え切れずに笑いだす

それにはティアも恥ずかしそうにしていた

夜食後、俺はティアを家まで送ると玄関にはシグレさんが待っており、ティアを家に入れてから不気味な笑みを浮かべて聞かれたんだよ


『聞きたいなぁ?報酬無しなら軽蔑だなぁ・・・』


『…』


素直に話したら、笑顔で俺の両肩を叩きながら『次は肉体だね』とか言った











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