第140話 最終決戦 獣王ヴィンメイ 6
森を抜けようとした際、シグレさんとバッタリ会う
彼の後ろにはエーデルハイドも同行しており、様子を見に来たのだと言う
すでに魔物の生態が可笑しく、高ランクばかりだと告げると、シグレさんは腕を組んだ
クリスハート
『アカツキさん達は戻って食事してください、支給品が届きましたので』
昼は過ぎている
どうやら飯が食えるらしい
ティアマトの機嫌が良くなり、我先にと走っていってしまった。
シグレ
『てかリリディ君、猫増えた?』
リリディ
『これには色々ありまして、戦力です』
シグレ
『なるほど、とりあえずみんな戻ろうか』
誘導されながらも入口に戻る
大きな扉を閉め、防壁の上から警備兵が森を見ているから大丈夫だろう
しかもギルハルドとにゃん太九郎軍団もいる
防壁裏ではマキナさんがカレーを大鍋で作ってた
まだ完成していないし、少し待つか
安易テントがいくつも設営され、冒険者や警備兵は中で暖かいコーヒーやココアなどを飲んで体を休めているようだ
数人の冒険者はカレーを作る焚き火の周りに集まって暖をとる
バーグ
『アカツキ君、大丈夫かい?』
火の近くで暖まっていたバーグさんだ
他の仲間はテント内で仮眠してると話し、彼は寝付けずカレーが出来るのを見ながら暖まっていたとか
ティア
『カレーだぁ』
彼女は大鍋を覗く
マキナさんは『10分待てば米もできる』と告げた
近くでは同じく大鍋を使って米を炊くギルド職員
確かに腹は減ってるから助かる
リリディ
『僕は防壁上に行ってきますね』
アカツキ
『リュウグウも見てくれ、目が良いだろ?』
リュウグウ
『暇だし請け負ってやろう』
リリディとリュウグウは防壁に歩いていく
ティアマトとティアは火の近くで暖まっているから俺もそうしよう
気づけば聖騎士二人がいないが、テントかな
《おお、森の中にウジャウジャと魔物がいるぜ》
クローディア
『数は?』
俺達は驚く
いつの間に背後にいたんだろうか
テラの声は彼女にも聞こえていたのだ
どうやらテラ・トーヴァが認定した人物が近くにいると聞こえるように話したのだろう
たまに遠くの対象にも話しかける事もあるらしいが、便利なスキルだ
《なんだか可笑しいな。あの戦いからある程度の魔物を集める時間があったのに予想より少ないぞ》
クローディア
『出来れば魔物が何なのか詳しく聞かせて頂戴』
《DとCがウジャウジャだ、100はくだらねぇ…。Bはサーベルタイガーが2頭、ミノタウロス4体に将軍猪が2頭、これでいいか?》
とんでもないじゃないか!
Bランクが計8体とは恐ろしすぎる
直ぐにクローディアさんは懐から小石サイズの魔石を取り出す
それは拡声魔石であり、声を周りに聞こえるほどに大きくする効果がある
彼女は険しい顔を浮かべたまま、事実を告げた
Bの魔物が8体という事実が聞こえた冒険者がテントから顔を出す
誰もが険しい顔を浮かべるが、防壁の上で森を眺めていたシグレさんは依然として笑顔だ
リゲルとクワイエットも先ほどの声を聞いてこちらに近づいてくる
エーデルハイドもテントから顔を出してこちらに向かってきた
リゲル
『面白くなってきたな…。まぁ足を引っ張んなよ』
彼は俺を見て言ってくる
ここで言い返しても何かと面倒だ、苦笑いで誤魔化そう
ティアは『アカツキ君強いもん!』と対抗してしまうが、嬉しい反面ちょっと焦りを覚えた
だがリゲルは言い返す事もせず、溜息を漏らして俺達に背を向ける
クリスハート
『リゲルさん、これから共に戦う仲間なんですから』
リゲル
『仲間?そう思ってねぇよ』
まぁ彼らしいといえばそうかもな
ティアマトは横で『根暗思想だな』と彼に聞こえないように囁く
飽く迄、リゲルは俺の監視
聖騎士会との協力を証明するために予期せぬ事態には手助けをするというだけだ
仲間という感覚は彼にはない
クリスハートさんは呆れた顔を浮かべ、遠くに歩いていくリゲルの背を見る
リュウグウとリリディが防壁から戻り、リゲルとすれ違いながら俺達の元に歩いてくるとクワイエットが苦笑いを浮かべた
クワイエット
『ごめんねみんな、あぁ見えてリゲルも今が一番楽しいと思ってるんだよ』
その場にいるクワイエットさんがフォローしている
まぁリゲルは素直じゃないのはわかるが、言葉遣いがちょっとな…うん
シエラ
『リゲル君、なんだか可哀そう』
クリスハート
『え?』
シエラ
『多分だけど、人との接し方、下手くそ』
アネット
『まぁ言葉の選び方が下手な感じするよねぇ。』
クリスハート
『確かに素直じゃないところはありますが。私には怯えているようにも見えます』
リュウグウ
『どういう事でしょうか、クリスハートさん』
クリスハート
『母の仇を取った後の事を聞くと彼はうつむいてしまったり、よく暗い顔を見せます。悩んでいる感じがします』
ティア
『悩んでる?』
クリスハート
『飽く迄それは予想ですが。』
クワイエット
『可哀そうって感情は間違いないよ』
そこでクワイエットさんが切なそうな顔を浮かべ、口を開く
誰もが彼に似合わぬ顔を見つけると、クワイエットさんが話す
クワイエット
『リゲルは家族を奪った敵を倒す為に生きている、そういう感じなんだ。その目的が果たされれば彼は普通に人生を歩めると思ってるんだけど。その肝心な普通を知らないんだよ。』
リュウグウ
『恨みを晴らす為だけに行き過ぎてその後の人生を考えてなかったか』
クワイエット
『実は不器用な性格なんだ。性格みてわかるだろ?』
ティア
『うん!』
クワイエット
『生きる目的があれば彼は輝く、だから強いけどもさ…もし彼が目的を達成すれば聖騎士にいる理由もなくなり、生きる目的も無くなっちゃう…。それが怖いってのとアカツキ君が羨ましいのさ』
アカツキ
『俺が?』
クワイエット
『君にだけ当たりが強い意味を教えるよ。羨ましいんだよ、君が父さんといるのがさ。本当は母さんの仇もあるけども、父さんにも会いたいって思ってるんだ』
《嫉妬か》
クワイエット
『そうだよ、だからごめんねアカツキ君』
アカツキ
『いえ、俺はそんな…』
クワイエット
『そういえばさ、聖騎士はみんな懐に紙切れを入れてるんだ。自分のしたい事や夢を書いているんだけど、遺言書でもあるそれにリゲルはなんて書いてると思う?』
俺達はかなり気になった
聞いてみたいという感情が俺達を動かし、クワイエットさんの元に近づく
当たりを見回し、リゲルがいないことを確認してから耳を傾けた
クワイエットさんがそれを告げる瞬間、事態は一変した
《開戦近いぞ!》
『ミノタウロスだぁぁぁぁぁぁ!』
テラ・トーヴァが叫ぶと共に防壁の上にいた警備兵が叫ぶ
大きな咆哮が防壁の外から聞こえると、シグレさんが動く
『あっ!シグレ!』
扉が閉まっている
シグレさんは防壁を駆け上がると『行ってきます』と笑顔で飛び降りる
俺は自然と体が動いてしまい、防壁に向かって素早く走った
1人だけじゃない、後ろから仲間がついてきている
『一度開けてくれ!』
俺は叫び、警備兵は扉を開門する
僅かに開いた扉の先に飛び出し、森からミノタウロスが鉄鞭を両手に静かに歩いてくるのが見えた
ティア
『お兄ちゃん!』
シグレ
『このミノタウロス、ちょっと違うよ』
《なんだかこいつ可笑しいぞ!普通のミノタウロスより雰囲気が違う!》
アカツキ
『特殊個体か!』
《違う!状態異常になってる!目が全体的に白く、無表情だ!あれは操られている感じに近い》
リュウグウ
『誰に操られていると言われれば1人しかおるまい』
リリディ
『ギルハルド!他の魔物が来たらニャン太九郎と掃討しなさい!』
『ミャッハン!』
ギルハルドはその場で跳躍し、防壁の上に着地して森に向かって視線を向けた
そして俺達の前に近づくこのミノタウロス、確かに心があるように見えない
シグレさんは俺達の前で短い鉄鞭を2つ手に持ち、構える
操られているならばきっと意味があって来たに違いない
その答えはミノタウロスからわかったのだ
『アカツキを差し出せば街は襲わぬと誓うぞ?小僧共』
アカツキ
『その声は!ヴィンメイ!』
ティア
『凄い能力』
リリディ
『どうやら魔物を完全に自身の肉体のように使えるようですね』
ミノタウロス
『わかるか?だがそんなこと話すよりも貴様らには強者によって差し出される選択を選ぶしかない!』
ティアマト
『俺達馬鹿だから俺達の選択をするぜ!?』
ミノタウロス
『ほう!下等種らしい面白い提案でもあるのか?』
シグレ
『まぁこれはアカツキ君に答えを譲ろうか』
シグレさんが横目で俺を見る
みんなはあいつの言いなりになる事を拒んだ
助かる希望が少なからずあるのに、一途にも本来の目的を遂行する覚悟を見せている
ならば俺もそれを口にするしかない
《言ってやれ兄弟!》
無表情のミノタウロスの視線が俺に向けられると、俺は答えた
『お前を倒して街を守る』
途端に無表情を決め込んでいたミノタウロスが鉄鞭を前に出し、俺に向けると口を開いた
『なら街もろともここで死ね』
そしてミノタウロスが大きく咆哮を上げ、それは起きた
テラが《森からうじゃうじゃくるぞ!クローディアも冒険者引き連れて来い!》
きっとクローディアさんに話す為の言葉、俺にもその声が聞こえる
仲間と共に飛び出し、ミノタウロスの鉄鞭の乱暴な振り回しを避けながら近づく
攻撃を仕掛けようと誰もがした瞬間、ミノタウロスは両手で鉄鞭を回転させて俺達を弾き飛ばす
『カッター!』
『真空斬』
リリディとティアマトが吹き飛びながらも攻撃
それはミノタウロスの鉄鞭のひと振りで消し飛び、その後に俺が放つ居合突を武器を盾にして防いだ
シグレ
『ミノタウロスか』
『ぬっ!?』
シグレさんはミノタウロスの側面から飛び込むと、短い鉄鞭を使ってミノタウロスの鉄鞭にぶつけた
多少、ミノタウロスがバランスを崩すのが見える
『貴様!』
シグレ
『借り物の体でなんとかなると思ってるの?』
『下等種めが!』
腕を振り、シグレさんを弾き飛ばそうとする
しかし彼は飛び退き、左手に持つ短い鉄鞭を投げてミノタウロスの顔面にぶつけた
鈍い声を出し、前屈みになると同時に俺はリュウグウと共に飛び込む
『合わせろ変態!』
『変態でいいよ!』
リュウグウは不規則に振り回すミノタウロスの鉄鞭を掻い潜り、左腕に向かって狙いを定め『鬼突』と叫ぶ
頑丈な肉体だとしても、貫通性能が高いリュウグウの技なら問題はない
『ぬ!』
槍は見事にミノタウロスの左腕を貫通し、血を流す
バランスを崩した僅かな隙を使って脇腹を斬って背後に回ると、俺は尻尾に叩かれて吹き飛んだ
《尻尾忘れんな?》
わかったよ、今度は忘れない
かれこれ尻尾にやられたの2度目だな
『おらぁぁぁぁ!』
ティアマトが正面から片手斧を振り下ろすと、ミノタウロスは彼の攻撃を武器で弾いて吹き飛ばしてからリリディのカッターを身を反って避け、シグレさんの鉄鞭を頭の角で受け止めた
『さがれ!』
頭を振り、シグレさんを吹き飛ばすが彼は空中で回転し、地面に着地
左腕から流れる血を嘗めながら俺達に顔を向けるミノタウロスは強く地面を踏みつけて怒りをあらわにする
『来たか』
ティア
『魔物!凄い数!』
リリディ
『ギルハルド!』
『ミャーーーン!』
森から姿を見せる多くの魔物、ギルハルドは従えたにゃん太九郎と共に防壁から飛び出してきた
同時に防壁の扉が開き、冒険者達が一斉に雪崩れ込む
クローディア
『街を守りなさい!』
バーグ
『行くぞお前ら!飯は終わってからだ!』
ゼルディム
『魔物ごとき!』
クリスハート
『皆さん!行きますよ』
クロウラウズ
『宴だ!血の盃を頂こう!』
ミノタウロス
『最後まで足掻く人間どもめ!地獄を味わうがいい!』
無表情で怒りを言葉にするミノタウロス、その声は獣王ヴィンメイ
押し寄せる冒険者を見てそう告げた彼は魔物を差し向ける
俺は仲間と共にこのミノタウロスを倒す為に襲い掛かった
本体じゃなくてもBランク
これは俺達が相手するしかない
『ガルァァァァ!』
『ブゥギィィィィィ!』
ドラゴン
『将軍猪っ!』
ゼルディム
『サーベルタイガーとkよしてくれよったく!』
森の中から遅れて姿を現すBランクの魔物に冒険者達は驚愕を浮かべる
『やるしかねぇ!』
『くそ!帰ったらいいもん食わねぇとな!』
冒険者もやっけに声を上げる
だが彼らは仲間が大勢おり、その中には頼りになる者もいる
将軍猪の前にクローディアさんが真正面に迫ると、鉄鞭を全力で振って突進を止めて仰け反らす
『猪鍋には丁度良いわね!あんた達周りの敵を掃討しなさい!』
彼女の気迫、そして強さを目の当たりにした冒険者は自然と士気が上がる
ドラゴン
『魔法使い職!放て!』
一斉に魔法使い職の者が手の先から魔法陣を発生させ、様々な魔法を飛ばす
低ランクはそれだけで吹き飛び、燃えたりしてもだえ苦しむがまだ数が減らない
『余所見かアカツキ!』
ミノタウロスが薙ぎ払うかのように鉄鞭を振る
俺は跳躍し、避ける
だが奴の攻撃は終わらず、そのまま回転して再び鉄鞭が襲い掛かる
ミノタウロス
『潰れろ!』
アカツキ
『断罪!』
宙で刀を振る
するとその場の斬撃がミノタウロスの胸部を斬り裂く
無表情だが、斬られた胸部を見ているから驚いているのだろう
この特殊技の断罪はその場の斬撃を敵の前に出現させることが可能という凄いスキルだ
縦に刀を振れば相手は縦に斬られ、といった感じ
回避方法は簡単だ、ガードしたり避けるだけだ
ティアマト
『ギロチン!』
ティアマトはミノタウロスの側面から飛び込み、片手斧を振り下ろす
ミノタウロスの頭上から斬撃が堕ち、それを見切ったミノタウロスはティアマトの武器を鉄鞭で弾きながらも頭部の角で落ちてくる斬撃を防ぐ
『邪魔だ!』
ティアマト
『ぐっ!』
ミノタウロスは直ぐにティアマトを蹴って吹き飛ばし、顔面を狙うリュウグウの槍の突きを避けてから背後から襲い掛かるティアのラビットファイアーを鉄鞭を回転させて掻き消す
シグレ
『ここだよ』
『やかましい!』
足元まで迫るシグレを蹴り飛ばそうとするが、その足は彼の両手に握る鉄鞭によって防がれた
しかし、ミノタウロスの強力な脚力によって地面を滑るようにしてシグレさんは吹き飛ぶ
リリディ
『チェーンデストラクション!』
彼の両肩上付近に2つの黒い魔法陣が現れ、その中から太い鎖がミノタウロスに伸びる
それは奴の両腕に絡まり、動きを封じる
抵抗を見せるミノタウロス、リリディは必死で魔力を流し込んで鎖を斬られない様に堪えた
アカツキ
『断罪!』
『ヌゥゥゥ!』
背後から俺の特殊技
奴は振り返る事も出来ず、背中を斬られて血を流す
直ぐに鎖を引き千切り、正面から迫るリュウグウに鉄鞭を振り下ろすが、彼女は素早くその場から飛び退く
だが鉄鞭で地面を叩くと風圧で彼女は軽く吹き飛ぶ
体を回転させて着地をしているから大丈夫そうだな
ティア
『ティアマト君、回復!』
ティアマト
『駄目だティアちゃん!魔力とっとけ!』
吹き飛ばされていたティアマトはティアの提案を投げ、俺と共にミノタウロスに駆け出す
ティアマト
『行くぞこらぁ!』
アカツキ
『無茶し過ぎるなよ!』
《適度に無茶はしろ!こいつは操られているから苦痛で隙は見せねぇ!》
ミノタウロス
『小癪な下等種め!』
奴はその場で跳躍し、俺達に襲い掛かる
ティアマトと共に左右に飛び、振り下ろされた鉄鞭を避ける
ミノタウロスだとしてもその力は強力、地面を叩くだけで衝撃波が飛び、地面に残る雪を舞い散らせる
辺り一面が舞い上がる雪で視界が悪くなるが魔物の気配がわかる
俺の真横だ
『おまたせしたな!』
ミノタウロスが目を光らせながら鉄鞭を押し込んでくる
それを体を回転させながら跳躍し、避けるとそのままミノタウロスの腕を斬りながら背後で着地するが振り返ると同時に尻尾が来るだろうと予想し、刀を前にすると予想通り尻尾が襲い掛かる
『ぬっ!』
尻尾でも凄い力だ
俺は刀を弾かれてバランスを崩すとミノタウロスはティアマトに右肩を斬られながらも『どけ!』と声を荒げて頭部の角をぶつけて吹き飛ばしてから俺に飛び込んでくる
するとミノタウロスの背後からリリディのシュツルムが命中し、爆発が起きる
それでも黒魔法耐性が高いミノタウロスは攻撃を堪え、そのまま俺に鉄鞭を薙ぎ払うかのように振った
姿勢を低くし、スレスレで避けながら足元に潜り込むと足の甲に刀を突き刺す
苦痛を感じないミノタウロスはその足で俺を蹴り飛ばしてきたが、痛みでの隙を見せないという事を考えながらの戦闘は難しい
『がはっ』
一瞬で肺の空気が全て抜けた感覚に襲われ、俺は宙を舞う
かなり痛い、呼吸が出来ない
だが俺はシグレさんに首根っこを掴まれてその場から抜け出せた
そうじゃないと鉄鞭で叩かれていたからな
『くそ!邪魔しおってからに!』
アカツキ
『ごほっ!』
シグレ
『戦い難いよね、でも今慣れて』
アカツキ
『ぐ…はい』
舞い上がっていた雪が無くなっていき、周りが見えるようになるとミノタウロスは途端に背後を振り向く
だがそれはあまりにも遅かった
『貴様!』
リゲル
『ムカツク声だぜ!』
クワイエット
『だね』
同時に2人はミノタウロスの顔面を斬り裂くと、奴は片手で顔を隠しながら数歩後ろに下がる
ここでようやく助っ人の登場だな…
聖騎士会のリゲルとクワイエット、彼らは頼りになる協力者だ
『忌々しい!』
ティア
『なんだかんだ愚痴いってるけど体中ダメージ大きいからもう少しだよ!』
リュウグウ
『操られているからミノタウロス自身の肉体の限界は感じないらしいなこの馬鹿王!』
『馬鹿にするなぁぁぁぁ!』
怒りをあらわにするミノタウロスは鉄鞭を強く握りしめ、俺達に襲い掛かる
断罪を駆使しても、奴は既に見切ったようであり武器でガードしながら突っ込んできた
まぁ見られている状態ではもう無理だな、わかってたけどさ
アカツキ
『足を狙え!』
俺は振られた鉄鞭を跳躍して避けながら叫ぶ
その声に呼応するかのように、仲間たちが一斉にミノタウロスに迫ると、ティアマトが奴の蹴りを腕でガードし、一瞬止めた
ティアマト
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
リリディ
『流石熊!』
リュウグウ
『熊やったな!』
ティアマト
『いいからいけぇ!』
リリディとリュウグウが足元まで迫ると、リリディは木製スタッフをフルスイングしてミノタウロスのバランスを崩す
そのあと直ぐにリュウグウが太腿に槍を突き刺し、ミノタウロスを背中から地面に転倒させることに成功した
『くそっ!』
上体を起こして素早く立ち上がるミノタウロスの目の前にはティアマトだ
彼は全力で片手斧を振り下ろして頭部に食い込ませた
血が噴き出すミノタウロスは狼狽えずに彼を手で掴むと、地面に叩きつけた
ティアマト、すまん
だが意識を俺から逸らしてくれたのは無駄にしない
ある程度の回復が出来た俺は光速斬で駆け出し、ミノタウロスの脇腹を斬り裂く
痛みを感じないミノタウロスは舌打ちをしながらも足元に転がる石を掴み、俺に投げつける
《痛みを感じないって面倒だが》
俺は飛んでくる小石を刀で弾き、テラ・トーヴァに答えた
『確かに面倒だが、問題じゃない』
相手は獣王ヴィンメイだがヴィンメイじゃない
ミノタウロスである
立ち上がったミノタウロスに跳躍して飛び込んだシグレさんは鉄鞭の猛威を空中で避けるという荒業を見せながらも顔面を蹴って仰け反らせ、その隙にリゲルとクワイエットがミノタウロスの足元に一気に駆け出し、太腿を斬り裂く
俺は光速斬で斜めに跳躍して突っ込むと、振り向くミノタウロスの首を斬り裂いた
鮮血が飛び散り、流石のミノタウロスも首元をおさえて膝をついた
もう少し、そう思った瞬間に別の方面で問題が起きる
『もう!何でこうなるの…』
魔物によって仲間と分断されたクリスハートさんがブラッククズリ4頭に囲まれて焦りを見せていたのだ
とても不味い状況だ。誰かが助けに行かないと駄目だと思い、俺はフットワークが意外と軽いリュウグウに声をかけようとした途端、直ぐに動く者がいた
リゲル
『立ち位置ぐらい考えて動けクリ坊!』
彼が彼女の元に一気に駆け出し、背後からブラッククズリ1頭を斬り裂いた
そのまま滑る込むようにクリスハートさんの前に辿り着いたリゲルは新たに現れたブラッククズリに面倒そうな顔を浮かべる
6頭か…これは2人だけだと不味いのではないか?と俺は考えるが
そうこうしてられない
『馬鹿が!』
アカツキ
『!?』
こっちはミノタウロスの相手で精一杯
間一髪避けれたが、明らかに動きが鈍くなってるなこいつ
ティアマト
『余所見すんなアカツキ!あいつに任せとけ!』
アカツキ
『そうするしかないか』
シエラさんたちは必死に目の前の魔物を倒し、クリスハートさんの元に行こうとするが彼女らの前に立ちはだかる別のミノタウロスによって苦戦を強いられている
あれじゃ辿り着けない、しかもリゲル達の前にまた…
『グルルルル』
クリスハート
『チベタンウルフ…』
リゲル
『3頭とか勘弁だぜ。』
数が増えた…くそ!こっちはこっちで忙しい
俺達が相手しているミノタウロスは倒すのも時間の問題
だがしかし、あっちはそうじゃない
完全に仲間と分断されて2人は孤立無援状態なのだ
クワイエットさんは『リゲルは強いから大丈夫だよ、アカツキ君優しいね』となんだか茶化してくる
アカツキ
『すいません、ではこいつを倒して救援に行きますか』
クワイエット
『そうそう!それでいいんだよ。不安な感情は力が出せないから信じて戦うのが一番!不味い状況でもなんとななるさ』
ティアマト
『一気に畳みかけようぜ!』
リリディ
『そうしましょう!』
アカツキ
『行くぞお前ら!俺達馬鹿は!』
『『『剣より強い!』』』
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