第138話 最終決戦 獣王ヴィンメイ 4
《起きろ兄弟》
俺はテラ・トーヴァによって起こされた
隣にはシャルロットが俺を抱き枕代わりに抱きついて眠りについてる
いつ侵入した?てか外はまだ暗い
枕元に置いていた時計に魔力を流すと僅かに光を放ち、時刻が見えやすくなる
『5時だぞ…』
まだ寝たいと思うと緊張感が無いと言われそうだ
だがギリギリまで寝て体を休めることも悪くはない
《まだそんな時間か》
『なんで起こした?』
《俺が起きたからさ》
『おやすみ』
《凄い肝っ玉だな》
気にせず寝て起きたときは7時
リビングに降りた時には父さんはすでにいない
仕事に向かったと母さんが話してくれた
シャルロットが凄い寝癖のまま、リビングにやってくる
まだ寝ぼけているらしく、ソファーで寝始めると母さんが無理やり起こす
朝食を暢気に食べ、今日のことを考えていると街に警報が鳴り響いた
『あら、また魔物かしら』
母さんはそう言いながらも食べる速度を変えない
外が少し騒がしい、警備兵の声だ
避難誘導している声だ
すると家の玄関のドアをノックする音が聞こえ、母さんが向かう
俺とシャルロットはそれを除き混み、見守っていると現れたのは警備兵だ
『あら、警備兵さん』
『お疲れ様です。北の森にAランクらしき魔物が現れた為、ここの地区の人はウェイザーの避難をお願いいたします』
『最近物騒ねぇ』
『確かにそうですね。直ぐに支度をお願いいたします。アカツキ君はギルドに向かうようにとゲイルさんなら言伝を頂いております』
母さんはマイペースだ。
ニコニコしながら俺達のもとにくると『シャルロット、旅行よ』と言って準備を始めた
《面白くなってきたな》
『面白くないがな』
テラ・トーヴァにそう告げ、俺は部屋に戻って準備をする
窓から外を眺めると、警備兵が街の人を誘導してウェイザーの街に向かわせていた
避難する者とは別に冒険者は険しい顔でギルドがある方向に歩いている姿が見えた
バーグさんもいる
俺は窓を明け、彼に声をかけると険しい顔を笑顔に変えたよ
『やぁアカツキ君、夢だと思いたいね』
Aランクらしき魔物の出現と彼も聞いた筈なのに、緊張している様子はない
いつも通りだと思える感じだ
『アカツキ君も来るだろう?先に向かうよ』
バーグさんはそう告げると、ギルドのある方向に歩いていく
俺は直ぐに準備し、下に降りると母さんがシャルロットとウキウキしながら荷物を詰め込んでいた
完全に旅行気分、俺は頭を抱える
《お前の母ちゃんが一番肝っ玉あるぞ》
『そうらしいな』
小声でテラ・トーヴァに答え、俺は母さんに近づく
『Aねぇ…』
『母さん危ないからね?Aだよ』
『初めてじゃないわよ、昔お父さんもクローディアちゃんとハイムヴェルトさんと一緒に倒してるのよ?』
『父さんが!?』
『あら?聞いてなかったみたいね、あの人は自分で昔の事を話そうとしないから』
母さんは衣類を綺麗にたたみ、大きなバッグに詰め込みながら懐かしそうに話す
『なんの魔物かは忘れたわ。』
『3人のチームだったの?』
『オズボーンさんもいるわよ?』
忘れていたよ
オズボーンさんは今は養鶏所を経営する社長でもあり、商人だ
昔は父さんと冒険者していたようなことを話していたな
どんな戦闘職だったのか気になるが、今は関係ないか
『アカ兄ィ、いってらっしゃい』
妹よ、衣類をぐちゃぐちゃにしてバッグにいれとるぞ
何故か心配になる、将来とか…
母さんが呆れた顔でシャルロットの詰め込んだ荷物を取り出し、たたんで入れなおしてる
俺は母さんに『いってきます』というと、『気張ったらだめよ』と言ってくる
いつも通りの母さんだ、目を見ればわかる
俺は小さく頷き、家を出ると少し笑ってしまう
『行こうぜぇ?』
『行きましょうアカツキさん』
『遅いぞ変態め』
『行こっか!』
《勢揃い、だな》
仲間だ
みんな良い顔をしている
ホッとした俺は仲間の元に近づくと、『行こう』と告げて共にギルドに歩き出す
すれ違う人々は警備兵に誘導されながらもウェイザーの街に向かって歩き、不安そうな顔を浮かべていた
『アカツキ氏』
その避難する人々の波にひと際目立つ鳥人族、ババトさんだ
郵便配達員、主に金銭書留などの大事な荷物を運ぶ優しい鳥人族の友達さ
彼は波から外れ、俺達の元に近づいてくる
アカツキ
『ババトさん、荷物ないんですか?』
ババト
『あるよ?』
彼は胸元をまさぐる、すると羽毛から出てきたのはクローディアさんの木彫りフィギュア
これにはリュウグウも引き攣った笑みを浮かべてしまう
リュウグウ
『フィギュアとは…』
ババト
『これがあれば大丈夫。父さんが大事な物だけ持って逃げろって言ったし』
ホルス
『大事なもんが木彫りとは父さんも困惑するぞ』
ババトさんの背後から別の鳥人族
凄い強そうだ、鷲種の鳥人族だからな
鳥種によって才能は変わる、ババトさんの父さんは戦闘職特化
でも戦闘をこなす職ではなく、彼もまた郵便配達員であった
今は引退し、息子のババトさんに自身のやっていた役目を継がせている
そこには母親のミリィさんもいた、雀種だ
ミリィ
『気を付けてねアカツキ君もティアマト君も』
アカツキ
『大丈夫です』
ティアマト
『うっす』
ティアマトも気に入られている
最後に彼女はみんなにニコッと笑みを浮かべ、ババトさんを連れて避難を始めた
こうして俺達はギルドに向かい、ロビーを眺めた
静かすぎる、大勢の冒険者がいるのにだ
チーム同士でも会話をしようとしていない
緊張している者もいればマイペースに身に着ける防具の状態をチェックしている者もいた
エーデルハイドがそんな冒険者の中にいた。しかしリゲルとクワイエットさんの姿は見当たらない
『たぁくよぉ!こんな日くらいおにぎり売っとけよ…』
2階から声、明らかにリゲルだ
どうやら2階テラスでトンプソン爺さんの屋台が閉まっていたのだろう
食べそびれた、か…
吹き抜けの2階からリゲルとクワイエットさんの姿だ
2人は残念そうな顔を浮かべながらも手すりに触れ、ロビーを見下ろしている
ティア
『こういう時は心強い!』
リリディ
『確かに、しかもギルハルドもいる』
『ニャハハン』
ギルハルドは床でゴロゴロしながら鳴く
こいつが一番能天気だ
獣王ヴィンメイに対抗するにはギルハルドの力は必要不可欠だ
多少、無理をしてもらうかもしれない
アカツキ
『前に行こう』
俺は皆を連れて前の方に進む
途中でゼルディムがいる事に気づき、目が合うが彼は直ぐに不貞腐れた顔を浮かべたまま顔を逸らす
今はそれでいい
受付の前まで行き、エーデルハイドの横につくと俺はクリスハートさんに声をかけようとした
しかし、その前にクローディアさんが受付の奥から姿を現す
ざわつく冒険者、彼女の顔は険しい
2階からロビーを見ていた聖騎士2人も彼女に視線を向け、何かを待つ
待っていたのは言葉だ
クローディア
『以前起きた魔物の軍を率いた事件、その親玉がこの街を壊しにくる』
そこで一度話を止め、辺りを見回す彼女は一息つくと静かなロビー内に自分の声だけを響かせる
『魔物ランクA以上は確実、打撃耐性が高すぎて私でも駄目だった…3メートル以上の屈強な肉体を持つ獅子の獣王ヴィンメイ。信じられないけど過去の傑物が蘇って敵を倒す快楽を得るためにこの街を選んだ。』
ゼルディム
『以前よりも魔物を引き連れている可能性は十分にあるでしょうね』
『なら言わなくてもわかるでしょうが。言うわ…魔物Bランクは多数いると思われます。こちらはそれに対抗できる冒険者はごく僅か…確実に死人が出る』
彼女から言い放たれる言葉に誰もが息を飲む
Bランクという魔物がいる可能性は高い、いや…いる
真剣な顔を浮かべ、話をする彼女の後ろから別の男性が歩み寄る
それはマキナさんだ
俺達を助けたこともある元魔法騎士会、その副魔法騎士長補佐だった人
ハイムヴェルトさんの付き人とも言えばいいだろうか
マキナ
『逃げて生きるか、戦って守るかを今選べ若造共。それによってお前らの人生は変わる』
無理強いはしない、彼は遠回しにそう告げた
でもここに来た冒険者は逃げる為に来たわけではない、それを口にする者がいた
ゼルディム
『何のために来たと思ってる?』
バーグ
『住み慣れた街、壊されたくないからな…』
シエラ
『沢山、敵、倒す』
ロトム
『岩で、街守る!』
ミーシャ
『危機は初めてじゃないさね。いつでも行けるわ』
ドラゴン
『黒魔法ぶっぱだぜ!』
やる気ある言葉の後、冒険者達は僅かに顔の力を抜いた
誰もが逃げる事を選ばずにここに来たのだ
今更選択肢があるといわれても迷惑だ、と言わんばかりに冒険者は拳を握り締め、笑みを浮かべる
クローディア
『魔物は今日のいつ街に迫るか不明、しかしヴィンメイは今日を指定しているわ!30分後には出発、森の手前で彼らを待ち構える』
バーグ
『守備はどのように?』
クローディア
『きっとヴィンメイは魔物を前に出して高みの見物。一先ず全員で魔物と交戦するけども魔法職は去魔物の一波目の突っ込みで魔法を1発放ち、その後に戦闘開始よ。各個撃破し、Bランク級が完全に消えたら一部を連れて森の中にいるであろう獣王ヴィンメイを倒しに行く、私達が森に入った後の指示はバーグ君に任せるわよ?』
バーグ
『了解』
マキナ
『わしは好きに戦うぞ』
クローディア
『構いません』
クローディアさんは出立前の時間を30分設ける
俺は仲間と共に2階に上がると、リゲル達のもとに向かう
クワイエットさんは欠伸をしてから俺達に手を振ってくれるけど、リゲルは険しい顔だ
アカツキ
『決着になるんですかね』
クワイエット
『そうなるよ。』
ティアマト
『ケッ!面倒な野郎だしここで倒しとけば楽になる』
リュウグウ
『その面倒な獅子が問題だがな』
リゲル
『だが今日で終わる』
リゲルはそう告げると、剣を抜いて肩に担ぐ
殺意が感じるが俺に向けられているわけではない
クワイエットさんが『まだだよリゲル』と苦笑いを浮かべると、リゲルは『もう始まってんだよ』と言って歩き出す
俺達の横を通り、階段を降りていく
クワイエット
『大丈夫かなぁ…』
ティア
『心配なんですか?』
クワイエット
『感情的になると弱いんだよ』
とんでもない事をさらっと言う彼に俺は驚く
クワイエットさんの口からそんな言葉が出てくるなんてな
リゲルは実力ならクワイエットさんを超えると聞いたことがある
あいつが1番隊副隊長になれなかった理由はそこにあるのか
『ニャハハーン』
リリディ
『なんとかなる、と言ってます』
リュウグウ
『その猫語やめろ』
リリディ
『嫌いですか?』
リュウグウ
『いや…違うけど』
ティア
『リュウグウちゃん教えてもらえば?』
いらない、と彼女は答える
リリディは苦笑いを浮かべてティアマトに顔を向けて助けを求めるが、肝心のティアマトは助けを求められても困る、といった様子
《ゾクゾクするなぁ兄弟、お前ら覚悟どうだ?》
ティア
『大丈夫!』
リリディ
『いけますよ』
クワイエット
『今更だね』
すると、1階から上がってきたエーデルハイドもテラ・トーヴァの声に答える
クリスハート
『私は一向に構いません』
ルーミア
『覚悟バッチシ!』
アネット
『空気弾、怖いねぇ』
シエラ
『頑張る』
《最初は魔物退治だ。周りと連携して倒せ…。きっと乱戦になる》
アカツキ
『ある程度の強敵を倒したら森の奥に進もう』
リュウグウ
『勿論だ』
アカツキ
『クワイエットさん、トンプソン爺さんの屋台は閉まってます?』
クワイエット
『さっき屋台を閉めてたよ…終わりだから駄目って言われたからごねたけども駄目だった』
ティア
『意外に時間に厳しいお爺さんだもんね』
クワイエット
『そうだねぇ。1階の軽食屋で簡単なご飯でも食べるよ』
アカツキ
『時間あります?』
クワイエット
『飯なくして戦できず!』
彼はニコニコ笑いながら1階に降りていく
トンプソン爺さんの屋台が閉まっているなら仕方がない
俺達もロビーに戻り、軽食屋で飲み物を注文する
ここの店員は変に覚悟が決まっているらしく、若い男性店員は『冒険者が出るまでいます!』と足を震わせて言い放ち、マスターは『冒険者が全員死なない限り避難しない』と豪語する
マスターは長生きしそうだ
隣の丸テーブル席にはエーデルハイド、彼女らはイチゴミルクを飲みながら仲間たちと何かを話している
《あっちの席は気まずいぞ》
テラ・トーヴァが言い放つ
多分だがリゲルとクワイエットさんの事だ
目を向けるとわかりやすい
クワイエットさんはこちらの視線に気づくと、舌を出して笑っている
リゲルは険しい顔のまま、グラスに入ったオレンジジュースを飲みながら何かを考えているようだ
クローディア
『獣族に関して色々調べたんだけど』
唐突に彼女がやってきて口を開く
気づかなかった俺は少し驚いたが、クローディアさんは気にせずにティアの背後から両肩を両手で掴んで続けて話す
クローディア
『獅子人族は光属性の魔法が弱点らしいわ』
ティア
『私の出番!』
嬉しそう
でも彼女は勝利の要になるとは思いもよらなかった
無理を強いることになると思うと、頑張れと言えない俺がいる
どう言っていいかわからず、悩んでいるとリリディが俺に様子に気づく
『危ない時はみんなで守ればいいんですよ、いつも助けてもらっているんですから』
『そうだな』
それの呼応するかのように、ティアマトとリュウグウも答えた
『ぶっぱなせやティアちゃん』
『私達がついている、隙があれば撃て』
ティア
『頑張るね』
俺も守らないとな
小さな声で『ヨシ』と告げると、彼女は俺に顔を向ける
ニコニコと笑顔を向けてくると、『頑張ろっ』と言い放つ
勿論だ。色々言いたいことがあるからな
すると、そこに近くの街の冒険者が到着した
数は少ない、しかし見ただけで場数を持った者だとわかる
ウェイザーの街で1番有名な冒険者、孤高の黒鳥と言われている烏種の鳥人族、クロウラウズ
真っ黒な羽毛で黒光りする綺麗な体
手には刃が赤く染まったロングソードを持つ
チームを持たない彼はウェイザーにただ一人だけのBランクの冒険者
他は名の知れたCランクの冒険者がほとんどだ
心強い増援にグリンピア冒険者の顔が明るくなる
クローディア
『あら?クロウラウズ、元気?』
知り合いですと言わんばかりの言葉
するとクロウラウズは彼女に顔を向けてから会釈をする
クロウラウズ
『名を覚えて頂けるとは光栄の極み、存分にこの力…奮って見せましょう』
クローディア
『頼むわよ?ところでビルラウズは相変わらずかしら』
クロウラウズ
『父は相変わらず勤務中に酒です。警備兵としての自覚がない』
クローディア
『ゲイルさんが聞いたら怒るわね』
クロウラウズ
『あの人には言うな、と言われてます』
父さんと知り合いか…
だがクロウラウズさんの父は警備兵となれば知ってても可笑しくない
クローディアさんは俺を顔を向けてからクロウラウズさんに向かって、『ゲイルさんの息子のアカツキ君よ?名前は疫病事件で知ったはず』と俺を紹介した
ふむ、と言って俺に近づくクロウラウズさん
凄い緊張する
何を言われるのだろうかと内心不安を抱く
クロウラウズ
『疫病の撲滅に貢献したグリンピアの冒険者チーム、イディトットは奇っ怪な集まりと聞く、中でも天使の声が聞こえると言うティア、黒魔法を使うリリディ、そしてゲイル殿の息子であるアカツキはこちらの街でも知らぬ者はおらん』
アカツキ
『は…初めまして』
クロウラウズ
『固いぞ?良き父が壁であろうが、そなたにとって大事な壁だ』
アカツキ
『父さんを知ってるんですか?』
クロウラウズ
『まぁな。元気にしておるか?』
アカツキ
『元気過ぎますよ』
クロウラウズさんは言葉ではなく、笑顔を返す
直ぐにキリッとした顔つきに戻ると、彼はクローディアさんと話す
『魔物の軍に獅子の化け物か。何が起きている』
『それは貴方にも言えないわね。今は目の前の脅威に備えてほしいかしら』
『詮索は不幸を呼びそうでありますな、今は聞く時ではないのならば忘れましょう』
『悪いわねクロウラウズ。巻き込むわけにはいかないのよ』
クロウラウズはその言葉を聞き、静かに頷く
腰の鞘に剣を納め、胸部の羽毛に両腕をしまうと彼は大きく翼を広げた
黒い羽根が僅かに舞い上がる姿は綺麗で目を奪われる
俺達だけじゃない、周りの冒険者もクロウラウズの姿に驚いていた
『この名を深く時代に浸透させればこの人生に見合う面白い事が起きそうだ』
彼はそこまで言うと、翼をしまう
冷静そうな雰囲気とは違い、彼は戦闘狂と言われている
戦いに人生を見出しているのだ
《1人でBランクって凄いな》
リュウグウ
『見ただけで強いとわかるぞ』
リリディ
『鳥人族は獣族の中では猫種に近い速度を誇ると言われています』
ティア
『リリディ君、良く知ってるね…』
リリディ
『あの…ババトさんに聞いただけです』
ティア
『あらま』
確かに俺もババトさんから聞いた
獣族の住む、獣人里には様々な種族の人型の獣が住まう
猫種は獣種最速を誇り、獅子人族は虎人族と並んでありえないほどの力を持つ
美人は狐人族、見た目は殆ど人間と同じであり、モフモフの尻尾があるだけだって聞くけども人間の住む大陸にはいない
クロウラウズは颯爽とギルドを出ていくが、どこに行くのだろうか
気にしていると時間が訪れる
俺は立ち上がると仲間も立ち、共にギルドを出る為に歩き出す
《時間だな…》
アカツキ
『そうだな』
冒険者の大行進が空になった街の中を歩く
途中、警備兵とすれ違うが父さんじゃない、シグレさんの姿もない
ゼルディム
『魔物の軍勢か』
バーグ
『俺達は本体を見たことはないが…』
クローディア
『見ないほうがいいわ、勝てる気分にさせてくれないからね』
ドラゴン
『バケモンか。獅子人族の王となりゃ今日が命日になりそうだ』
プラオ
『不吉な事言うなよドラゴン、まだ彼女と結婚して子供出来てから死にてぇよ』
クリスハート
『結婚してるんですねプラオさん』
プラオ
『まぁな!クリスハートちゃんもいい男見つけたようで何よりだぜ』
プラオさんの口から凄い言葉が出た
驚くクリスハートさんは『そんな人っ…』って言いながら
無意識に前を歩くリゲルに顔を向けた
これはツッコまないほうがいいなと思い、俺は知らない振りをしようとしたんだけどさ
空気を読まない奴がいた
リリディ
『最近デートしてますからねぇ』
彼の言うデートとは冗談交じりだ
リゲルとの実践稽古をそう表現したのだろう
だがしかし、それを知らぬ者にとっては驚愕の事実となる
なんだかんだクリスハートさんは知らず知らずに密かにみんなのアイドル
驚きながら恨めしそうな目でリゲルの後姿を見つめる
でもそれしか出来ない、精一杯だ
『俺達のクリスハートちゃんとデートだとぉ・・・?』
『悔しいが…勝てねぇ…』
『あいつ強いもんなぁ…』
無念の声が聞こえてくる
まるで呻き声だな
リゲル
『っ!?』
途端にリゲルは振り返り、剣を抜く
一同は驚き、足を止める
クワイエット
『なんか怒気を感じたね』
リゲル
『そうなんだが…気のせいか?』
背後から恨めしそうな目で見ていた冒険者は両手を全力で上げて降参ポーズ
その様子に聖騎士2人組は首を傾げた
クリスハートさんは顔を赤くしながら何故かリゲルに『わ…私はそう思ってません!』と言うから更にリゲルは困惑する
リゲル
『どう思うかはお前の勝手だ、俺には関係ねぇ』
彼はそう言いながら前を向き直して歩く出す
シエラ
『フラれた』
クリスハート
『なんでそうなるんですかっ』
シエラさんの頭を叩くクリスハートさん
そんな事もあって森の近くまで行くと、いつもと違う光景がそこには広がっていた
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