第136話 最終決戦 獣王ヴィンメイ 2
別の森ではティアマトに開闢の力を使ったよ
・・・・・・・・
アカツキ・ライオット
☆アビリティースキル
スピード強化【Le5】MAX
気配感知 【Le3】
動体視力強化【Le4】
斬撃強化 【Le4】
☆技スキル
龍・開闢 【Le3】
刀界 【Le2】
居合突 【Le4】
光速斬 【Le3】
地斬鉄 【Le2】
☆魔法スキル
称号
無色斬鉄
☆称号スキル
スキル発動速度【Le1】
斬撃強化【Le1】
特殊技『断罪』
・・・・・・・・・
リリディ・ルーゼット
☆アビリティースキル
魔法強化【Le2】
打撃強化【Le5】
気配感知【Le3】
動体視力強化【Le3】
麻痺耐性【Le3】
スピード強化【Le3】
攻撃魔法耐久力強化【Le2】
☆技スキル
ドレインタッチ【Le3】
爆打 【Le2】
骨砕き 【Le1】
☆魔法スキル
風・突風 【Le3】
風・カッター 【Le3】
黒・チェーンデストラクション【Le2】
黒・シュツルム【Le3】
黒・ペイン 【Le1】
黒・アンコク 【Le1】
黒・グェンガー
称号
ハイ・クルーガー【黒】
☆称号スキル
魔法強化 【Le2】
自動魔法盾【Le2】
スキル発動速度強化【Le2】
魔力消費軽減【Le2】
特殊魔法『クラスター』
・・・・・・・・・・
ティアマト・ウロボリス
☆アビリティースキル
斬撃強化 【Le5】MAX
気配感知 【Le2】
毒耐性 【Le4】
耐久力強化【Le3】
動体視力強化【Le3】
スピード強化【Le4】
筋力強化 【Le2】
☆技スキル
連続斬り 【Le3】
真空斬 【Le2】
大地噴出断【Le1】
鬼無双 【Le2】
☆魔法スキル
パワーアップ
☆称号
バトラー
称号スキル
体術強化【Le1】
耐久力強化【Le1】
特殊技『ギロチン』
・・・・・・・・
ティア・ヴァレンタイン
☆アビリティースキル
安眠 【Le2】
魔法強化 【Le2】
気配感知 【Le5】MAX
麻痺耐性 【Le1】
動体視力強化【Le2】
スピード強化【Le3】
☆技スキル
☆魔法スキル
火・ラビットファイアー【Le3】
雷・ショック【Le4】
木・スリープ【Le2】
風・キュア 【Le2】
風・ケア
風・シールド【Le3】
白・ホーリーランペイジ【Le1】
称号
エクシア
☆称号スキル
デバフ強化 【Le3】
自然治癒 【Le2】
動体視力強化【Le3】
運 【Le4】
固定スキル 『天使』
特殊魔法 『デルタ・バルカン』
・・・・・・・・
リュウグウ・モチヅキ
☆アビリティースキル
突強化 【Le4】
スピード強化【Le4】
気配感知 【Le3】
動体視力強化【Le4】
限界突破 【Le1】
☆技スキル
鬼突 【Le2】
三連突【Le3】
シャベリン【Le1】
ドレインタッチ【Le1】
稲妻花槍突【Le1】
槍花閃【Le2】
☆魔法スキル
称号
星渡(ホシワタリ)・女花
☆称号スキル
隠密 【Le3】
運 【Le4】
安眠 【Le2】
状態異常耐性【Le2】
スキル発動速度【Le1】
特殊魔法『ラフレイル』
……
俺達のスキルはかなり高い
あとはこれを活かしてどう動くか、それが大事だ
赤騎馬ブルドンは背中に荷物を背負い、ティアと並んで歩いている
馬がいると荷物がかさばらなくて楽だ
森を出ようと来た道を引き返し、開けた場所にて珍しい魔物と同遇する
『グルルル』
モッフモフな毛並み、魔物Cランクのチベタンウルフという犬種だ
子熊並みに大きい体は筋肉質であり、自身より弱い犬種の魔物を呼ぶことも可能
エアウルフやグランドパンサーといった魔物を呼ぶから吠えられると面倒だ
リュウグウ
『私に任せろ』
1頭のチベタンウルフの前に立ちはだかるはリュウグウ
彼女は俺達をさがらせ『仲間を呼んだらそいつら頼むわね』と背中越しに口を開く
身を低くし、槍を構えた彼女の顔は真剣であり、チベタンウルフは彼女を見て牙を向けた
『ガァァァァ』
よだれダラダラだ
口から垂らしながらも一直線にリュウグウに襲い掛かるが。スピードはグランドパンサーと同等
彼女が見えない筈がない
『三連突!』
避ける為に宙を舞い、体を回転させながらも真下を通過するチベタンウルフの背中に技を繰り出す
素早い槍の突きは全て命中し、『ギャン!』と鳴きながら雪に足を取られたチベタンウルフは転倒しながらも地面を滑る
着地の体制を宙で整えたリュウグウは槍投げのように槍を持ち、宙で『シャベリン』と口を開いて槍を投げた
魔力を帯びた彼女の槍は軌道上に魔力痕を残しながらチベタンウルフの頭部に深々と突き刺さり、一瞬で絶命させる
『ふっ!』
決まった!リュウグウはそう思ったのだろう
着地と同時に不敵な笑みを浮かべ、背伸びをする彼女にティアは駆け寄って両手を掴むとブンブンふって労い始めた
『流石リュウグウちゃん!』
『振り過ぎだティア』
その間、リリディは倒れたチベタンウルフに手を伸ばして緑色の魔法陣を発生させている
動いたらカッターを飛ばす気なのだろう。
気配が殆どないが、動き出して襲ってくる場合もあるからな
リリディ
『大丈夫そうですがね』
『ミャハハン』
ティアマト
『おら、魔石出たぞ』
光っとる
あれれ、スキル付きとは運が良い
仲間と共に期待を胸に魔石に近づき、手を伸ばす
動体視力強化だったがこれはレベル2のティアを3にできる
ティアはニコニコしながら魔石の光を吸収している間、周りを見渡して隠密スキル持ちの魔物の奇襲に備える
でも現れたのは魔物ではなかった
『見てたよー!すっごいねぇリュウグウちゃん』
アネットさんが陽気にな声で茂みから飛び出してきた
驚いたよ、しかもあとから他のエーデルハイドが姿を見せる
先ほどの戦いを見ていたらしく、見学していたらしい
シエラ
『綺麗、倒し方』
リュウグウ
『そ…そう?』
ちょっと照れるリュウグウ
気づけば1人だけ、輪に入らない女性がいる
クリスハートさんだ
彼女は顔を下げ、カランビットナイフという特殊な形状をした小さな短剣をフィンガーリングを使って回したり掴んだりと黙々と練習しているのだ
リゲルから貰った護身用の武器であり、素早く攻撃できる近接用の便利な武器だ
鎌や鉤爪のように屈曲した刃体をもち、ハンドルエンドに指を通す輪、別名フィンガーリングだ
様々なサイズのものがあるが、これはブレードが小型のカランビット
両刃になっており、基本的には逆手に持ち、人差し指をリングに通して握る。
順手に持つ場合もあり、その時は小指を輪に通すのだ
扱いが難しい武器だとティアが耳元で教えてくれたが
どうやらシグレさんは凄い上手いらしいぞ?ティアも使うだけなら少し習ったとか面白い発言をするけど
暗具ならティアも結構使えるのかもな
リリディ
『クリスハートさん、どうです?』
クリスハート
『練習中ですね。結構慣れると上手く回せることは可能ですが…』
ルーミア
『クリスハートちゃん器用だしね。さっきはそのカランビットナイフでハイゴブリンの喉掻っ捌いたし扱いも慣れてきてるんじゃない?』
クリスハート
『まだ使ってから数日ですからリゲルさんが納得いくまではまだでしょうね』
器用だと思う、フィンガーリングに人差し指を入れ、縦に回したり横に回したりと切り替えながら握って構えたりと見せてれる
けっこうさまになっている気がするんだよなぁ…
握りながら殴ることも可能であり、近接戦闘に織り込んで使用も楽にできる事からクリスハートさんは美味く扱えるようにこうやって暇なときは黙々と練習しているとアネットさんが説明してくれた
ティア
『成長速度速いですね…』
クリスハート
『ありがとうティアちゃん。明日まで出来る事はしたいので』
ティアマト
『ゾクゾクしてきたぜ。明日には決着だろうな』
《分が悪すぎる状況だが、やるしかねぇ…。》
アカツキ
『どんな魔物を引き連れてくるのかが心配だ。Aランクの魔物は呼べるならば最悪だが…』
《それは大丈夫だ。生前でもそのレベルは呼べなかったからBが最高さ…サーベルタイガーを数頭配下に置いているのは確かだが》
リュウグウ
『冬だと虫種の魔物はいないからな。季節にちなんだ魔物だろう』
シエラ
『ミノタウロスやサーベルタイガー、確実にいる』
アネット
『だろうねぇ。低ランクは他の協力してくれる冒険者に任せるとして…Bはあたしらだね』
ティア
『そうでしょうね。』
《Bなんて探すだけでも一苦労だ。この期間で考えると予想は多くて5体…3体以下なら安心だ》
リリディ
『それでも辛いですがね』
《少ないだけマシさ…。》
もう少し先になってから獣王ヴィンメイが来ると思っていた
しかし、何故こんなにも早く来るのかがわからない
それが活路になるかもしれないな
リュウグウ
『魔物か…』
彼女は帰り道であろう先に目を向けた
気配ではなく、魔物の鳴き声が聞こえたからだ
ニー!だったさ
パペットのなにかだろう
俺達は身構えると同時にそれは現れる
パペットナイト4体と結構多めだな
アネットさんは俺に顔を向け、『貰うよ?』と声をかけてくる
アカツキ
『構いませんよ』
シエラ
『出番!戦う』
するとクリスハートさん、アネットさん、ルーミアさん、シエラさんが元気よくパペットナイトに向かって走っていく
人形のような姿をした魔物、目はボタンであり、口は波縫い刺繍
剣を握り、彼女らに襲い掛かる
『ニー!』
クリスハートさんはパペットナイトの突きを剣で弾き、素早く胸部に剣を突き刺す
しかしこの魔物は痛覚はなく、ある程度体を斬り裂かないと倒れない
『ニー!』
剣で貫かれてもなんのその、パペットは弾かれた剣を振り下ろす
クリスハートさんがこの魔物の特徴を知らないはずもなく、彼女は剣を貫いたまま体を引き裂き、避けた
体を回転させながら左手で腰に装着したカランビットナイフを手に取ると、一瞬でパペットナイトの首を押し込んで斬り、引いて斬った
『ニギャッ…』
皮一枚で繋がるパペットの口から声が漏れる
カランビットナイフのフィンガーリングに人差し指を入れ、器用に回しながら姿勢を低くした彼女はバランスを大きく崩して後方に仰け反るパペットナイトに距離を詰め、剣を持つ腕を剣で斬り飛ばしてからカランビットナイフで首を完全に斬り飛ばす
ドサリと軽い音を立てて倒れるパペットナイトからは完全に気配が消え、魔石が顔を出す
『うん!』
どうやらクリスハートさんは満足いう動きができたようであり、笑顔だ
他の人もパペットナイトを倒し終え、魔石を回収してクリスハートさんの元に歩み寄る
シエラ
『これなら怒られない?』
アネット
『凄い成長だねぇ。リゲル君も少しは褒めてくれるんじゃない?』
クリスハート
『褒められるためじゃありません』
彼女はそう返す
しかし、見ていて綺麗な動きだった
ティアマトも軽く口笛を吹いて驚きをあらわにしている
もうすぐ夕方、冬は日が沈むのは早い
その前にギルドに帰らないと面倒だ
明日の事もあるしな
《今日はもう帰ろうぜ》
ティア
『そだね。ギルドに向かおっか』
クリスハート
『お供します』
こうしてエーデルハイドと共に街に帰るため、森を歩く
途中で夢旅団という、バーグさん率いる冒険者チームとばったり出会ったので3チームでも帰りになる
そこで信用できる人たちだと思える夢旅団に、テラ・トーヴァの許可をもらって彼らに話したんだ
獣王ヴィンメイが明日に来るという事、今は混乱を避けるために内密にしているという事をだ
バーグ
『またあれか…昨夜のでかい轟音はそいつか』
ドラゴン
『グリンピアも魔物の人気スポットになったかぁ。』
プラオ
『来るならやるしかないな・・・』
フルデさんはプラオさんの隣でウンウンと頷くのみ
今日はまだ口外禁止だというと、4人は真剣な顔で頷いてくれた
バーグ
『本体は見たことないが…俺達は目の前に現れた魔物を倒すよ。ある程度少なくなれば君たちは化け物退治に行くんだろう?アカツキ君』
アカツキ
『そうです』
バーグ
『任せときな。こっちはこっちで街を守るからさ』
ドラゴン
『本体はBチームの連中で頼むわ。こっちは臨時収入に勤しむからよ』
シエラ
『凄い、軽い』
ドラゴン
『街が無くなるか存亡かなんてわかってるさ。だが変に身構えるよりいつも通りの覚悟で俺達は挑むぜ?冒険者やってんだ。生涯の稼ぎはそうするって決めてんだしよ』
大丈夫そうだ
俺達の心配は杞憂となるのは明白だな
ギルドに戻り、魔石の換金をするために仲間をロビー内の丸テーブル席に待機させて受付に向かう
アンナさんがニコニコしながらこちらを見ているけど、どんな時もこの女性は笑顔だな
アンナさん
『おかえりなさいませ、換金にしますか?私にしますか?』
アカツキ
『換金です』
アンナさん
『だと思って冗談っぽく言いました、ティアさんとは順調ですか』
いきなりニヤニヤしながらとんでもない事を口にする
俺は多少狼狽えるが、横目でチラッと椅子に座るティアを見てからアンナさんに視線を移し『多分』と答えた
その答えに不満あってか、アンナさんは『そっちはランク低いんですねぇ・・・』と苦笑いを浮かべて煽ってくる
アンナさんだけに言われると思いきや、会話を聞いていた者が背後から混ざってくる
トンプソン爺さん
『なんじゃアカツキ?まだティアちゃんを裸にしておらんのか?』
俺はいきなりすぎる人物の登場と唐突な言葉にむせてしまい、大きく咳込む
トンプソン爺さんは背中を叩いてくれるが。その歳で凄い表現を口にするんだな…
アンナさん
『おや?トンプソンさん、珍しくロビーにいますね』
トンプソン爺さん
『今日は早めに屋台を閉めたんじゃよ。ちなみに明日は休みじゃからおにぎりは軽食屋で買ってねアンナちゃん』
アンナ
『それは残念です』
彼女はトンプソン爺さんのおにぎり屋台を気に入っているらしい
換金してくれている間、トンプソン爺さんと話をしたが明日は1日予定もなく、街をふらついてみるって言ってる
俺はこの人がギルドから出ていく姿を見たことはないが、見てみたいな…
というか明日は緊急警報が発令されるからトンプソン爺さんのせっかくの休暇が台無しになる
アカツキ
『北の森ってAランクの魔物っているんですかトンプソンさん』
トンプソン爺さん
『わしに聞くとは珍しいのう』
アカツキ
『マニア、でしたよね?冒険者の』
トンプソン爺さん
『まぁな、北の森は海抜の低い地区も含めると、そこを縄張りにしている闘獣と言われる金欲のアヴァロンしかおらんて』
アカツキ
『他にはいないのですね』
トンプソン爺さん
『いたら壮絶な縄張り争いが起き取るわ。』
アカツキ
『でしたら幻界の森はどうです』
俺は自然に聞いたつもりだった
深い意味はない、ただ知っているかなぁという軽い感じである
そこで思わぬ反応をトンプソン爺さんは見せた
トンプソン爺さん
『あの深い森にAは沢山いたが今は主の1体だけじゃ』
それには俺とアンナさんが驚く
何故、知っているんだと
トンプソン爺さんは溜息を漏らす、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる
あまり見せない顔だ。
彼は頭を掻きながらも肩を落として俺達に話したんだ
トンプソン爺さん
『昔は怖いもの知らずの冒険者を放浪しながらしていたんじゃ…だからそういう情報は知っとるだけじゃ。』
アカツキ
『やはり冒険者でしたか』
アンナ
『トンプソンさん筋肉質ですからねぇ…』
トンプソン爺さん
『逃げるって能力ならばSランク冒険者にも負けんぞいっ!まぁ幻界の森に腕試しに行ったら速攻でビビッてしまってなぁ…泣きながら森の中を走り回って偶然遭遇してな。運よく逃げ延びたのじゃ』
俺は魔物を聞こうとした
しかし、彼は『それは自分の目で確かめなさい』と急に真剣な顔を浮かべ、俺の肩を軽く叩くと2階に上がっていってしまう
『今日の換金は金貨1枚に銀貨3枚です』
アンナさんが笑顔で渡してくれた
でも何故だろう、何か引っかかる
何かが可笑しい気がしてならないが、それが何なのか俺にはわからない
仲間の席に向かおうと振り返り、椅子に座ってからティアに換金した資金を渡す
資金のやりくりは彼女に任せている、男3人でやっている時は結構無駄遣いしちゃうからな
《なにやら上の方では騒がしいぜ?》
その声は俺にしか聞こえていないらしく、仲間は普段通り会話をしている
俺は少し上にいってみる、と言って2階に上がったけども変わった様子はない
首を傾げ、辺りを見回してもいるのはリゲルとクワイエットさんが手すりにもたれ掛かり、下を見下ろしているだけ
リゲル
『面白い事おきてるぞ?』
アカツキ
『面白い事?』
あいつが俺にそんな話をしてくるとは珍しい
何のことか聞こうとすると、応接室から聞き覚えのある声が聞こえてくる
『口外禁止と言った筈でしょうが!』
それはクローディアさんの声だ
荒げた声と共にドアが強引に開き、中からギルド職員のロキさんが吹き飛んできた
驚き、固まる俺は立ち上がるロキさんに目を向ける
すると応接室の中から凄い形相のクローディアさんが姿を現し、俺がいるのに気づくと僅かに目を見開く
アカツキ
『どうしたんですか…』
クローディア
『私のせいでもあるけど、一部の職員には明日の緊急警報の為に事前に知らせたの…口外禁止でね』
直ぐに動けるように一部の職員には話していたらしい
いきなり言われても直ぐに動くまで時間を要するからだ
何故ロキさんが今、申し訳なさそうな顔を浮かべたまま彼女に怒鳴られているか
彼はグリンピアの街が危険な状態になる事を家族に知らせ、一足先に街を出るように話してしまったからだ
それをロキさんは罪悪感からなのか、クローディアさんに自ら白状してこのありさまだ
クローディア
『気持ちはわかるけど。貴方の家族は親切心で他の人に教えたらどうなると思ってるの?』
ロキ
『変に混乱し、ギルドが疑われます』
クローディア
『わかっていて教えたならばそれなりの覚悟があるのよね?』
彼女は彼に近づくと、胸ぐらを掴んで持ち上げる
凄い…片手で大人を持ち上げるなんてな
ロキ
『すいません…』
クローディア
『街に混乱している様子はないわ、きっと貴方は他には言うなと言ったのでしょうね』
ロキ
『申し訳ございません。しかし希望が薄いとなると…せめて自分の家族だけでもと』
クローディア
『もしグリンピア防衛戦が成功したとしても、大事な情報漏洩をした事ってどういう意味かかってる?最悪の場合、解雇処分よ?』
ロキさんは彼女の言葉に対し、顔色を変えることはなかった
ギルド職員としてクビになる可能性が高い、クローディアさんはそう告げた
ロキ
『私はどうなっても構いません、しかし家族だけでも無事ならば』
クローディアさん彼の言葉を聞き、舌打ちをすると降ろした
『私は現場で動く。明日は予定通り貴方がグリンピア内で残る冒険者に指示を出し、警備兵と連携して街の人の避難や警備をしなさい』
ロキさんは無言で頷く
《自身はどうなってもいいが、大事なもんは守りたい…か》
アカツキ
『どうした。テラ』
《あいつに似てる…だからお前らはこうして生きていられるのかもな》
テラは俺の中で念術でそう告げる
目があれば、きっとうつむくロキさんを見て言い放ってるのだろうと何故か無意識にわかった
誰に似てるんだ?と独り言のように言うと彼は答えたんだ
《ゾンネだ。お前らが思うほど暴君じゃない…あいつは国と家族、そして未来を愛していた優しい国王だった。だからこそあいつは悪魔の心となって他国を恐怖に陥れた。不安な未来に笑えぬ世をあいつは生まれてくる未来の子らに笑って生きて貰うために人間の心を捨てた》
信じられない、今はな…
その声は俺だけにしか聞こえないわけではないようだ
リゲル
『戦う王、優しい王か…あいつが生前の力を取り戻すと厄介そうだぜ?噂で聞いた話があるんだが聞くか?』
アカツキ
『なんだ?』
リゲル
『あいつはエルベルト山にいる龍を1人で倒したことがあるらしいぜ?今いる龍はその子のササヴィーってロイヤルフラッシュ聖騎士が王族から会食の席でエルデヴァルト王に聞いたと話している』
一番聞きたくもない情報をリゲルが言い放つ
ササヴィー、それはゼペットが死ぬ間際に言っていた名だ
馬鹿な俺でもわかる答えが出る。ゼペットはササヴィーという龍にやられたんだ
どういう理由で戦ったかはわからない
明らかにゼペットよりもそいつは強く、そして
ササヴィーよりも強いであろう母龍をゾンネは倒したことがあるという事だ
龍種は1頭だけで国を崩壊しかねない最強種だと、どこの国でも語られている
獣王ヴィンメイを倒したとしても、次なる不安が大きくなる
クワイエット
『名は確か、ジャバウォック…伝説の異龍だったね。絵本でしか僕も聞いたことないけどさ』
名前を聞いただけで自然と鳥肌が立つ、それは俺だけではないようだ
うつむき、1階に降りるロキさんの背中を見てから自身の両手を見てみると震えていた
何故だ?名前を聞いただけでここまで震えるのか?
《1人で倒したさ。ゾンネはな》
リゲル
『化け物めが…本当に人間かよ』
アカツキ
『ゾンネが力を取り戻せばどうなる?』
《優しい言葉でも言うと思ったか兄弟?それは出来ない…ゾンネが全ての記憶を取り戻して力を手にすればお前の人生は終わるんだよ…。神の足を掴むほどの力を奴は持っていた》
のんびりしていたれないな
強くなるために時間が欲しい、しかし時間をかけると逆効果とはな
リゲル
『まぁ今はヴィンメイだ。二手三手考えるよりも目先の事を考えるしかない。腕の1本失う覚悟で斬りかからないと犬死するぞ?わかってんのかお前』
アカツキ
『腕じゃ足りない、削るのは命だ』
リゲル
『お?』
俺は彼に答えると、仲間の元に戻る為に彼らに背を向けて階段を降りていった
圧倒的な力量さ、差し出すのは体の一部?足りない
窮鼠猫を噛むという言葉を思い出した俺はどうすれば十二分の力を出せるのか考えた
下に降り、俺に気づいたティアやリリディ達に顔を見れば答えは直ぐに出る
自分の為に全力以上なんて今の俺には出ない
でも仲間を守る為にならば惜しんで突っ込んでやる
そんな覚悟だけは誰よりもあった
イディオットは直ぐにギルドを出て各自解散となる
俺は最後にティアと一緒になり、共に歩く
すれ違う人々はいつも通りの日常を過ごし、せわしなくする者もいれば建物の前で楽し気に会話を楽しむ者もいた
街を巻き込んだことに罪悪感は少なからずある
そう思うと、少し気が沈む
『ヒヒン』
赤騎馬ブルドンが俺の頭を軽く小突いてくる
まるで気落ちしているのがバレているようだ
ティア
『ブルドンちゃんが落ち込むなだって』
アカツキ
『馬にまで心配されるか…』
《動物はわかるさ、人間より勘が鋭い》
俺はブルドンの首をさすり、『大丈夫だ』と告げる
ティアはいつも笑顔だけども、何故だろうか
心配じゃないのか?と彼女に聞いてくると、彼女らしからぬ言葉が飛ぶ
『何とかなるよきっと。』
『現実的ではないな、ティアらしくもない』
『そうかな?私はイディオットだし難しく考えない方が歩きやすいって思うよ』
首を傾げてしまう
すると彼女は笑みを浮かべながら俺の手を取る
冬なのに彼女の手はとても暖かい、安心できる暖かさだ
手を繋いで歩く日々が続けば、と俺は強く願う
叶える為に、明日を決めないといけない
同時に俺は進まないといけない別の問題もある
『生き残ったらだけどさ…その…なんだ』
俺は口を開くと、彼女は顔をこちらに向ける
テラ・トーヴァは空気を読んでるのか寝ているのかわからないが今を伸ばせば次はいつ来るかわからない
でも悔いは残したくはない
あの時に言っとけば、なんて嫌だ
ならば生き残って言えばいい?違うな
確実なる感情が少しでも知りたいからだ
『終わったらデートしよう!』
俺は早口で言った
口を堅く閉ざし、前だけを見ていると意外とすんなりと答えが飛んでくる
『はい』
落ち着いた声だ
逆にとんでもない事を言ったのではないのだろうかと思ってしまう
『死ぬ気はない、背中は任せた』
『大丈夫だよ。任せて』
何かが俺の心で綺麗にはまった気がした
彼女を送り、すっきりした気持ちのまま家に帰ると丁度夜食が出来上がったらしく、リビングのテーブルには豪華な食事が並べられていた
というか…豪華すぎる
妹のシャルロットの口からよだれ、母さんが『待て』と犬のように止めている
父さん
『今日は贅沢しないとな』
父さんの計らいか
母さんとシャルロットは明日に何が起きるのかまだ知らない
どうやら俺がBランク冒険者になった祝いと称してこのような料理になったのだ
伊勢海老とかどこで仕入れた?
肉なにこれ?凄い美味しそうなステーキだぞ!
シャルロット
『アカ兄ィ、凄い』
母さん
『さぁ食べるわよ。今日はアカツキの昇進祝いね』
父さん
『座れ息子』
着替える時間も無しか
まぁいい、このテーブルの並べられる料理を早く食べたい衝動が勝っているからな
いただきますをすると、シャルロットが目にも止まらぬ速さで口に料理を運んで食べている
美味しいらしく、目が凄い光ってるけど…追い付いて食べてくれ妹よ
母さんは妹を見て横で笑っていた
《当たり前の日常、救いたいか?ならば戦え》
俺と父さんだけがその言葉が聞こえる
箸を止めた父さんは真剣な目で俺を見るが、直ぐにいつも通りの父に戻る
父さん
『明日は父さん、警備兵を集めて今後の方針を決める…グリンピアの全警備兵を集めるんだ』
アカツキ
『大きい仕事だね…それなら明日は何が起きても直ぐに対応できそうだ』
父さん
『起きればな…』
遠回しにそれは俺に伝えている
警備兵は直ぐに動かせる、と
目の前の敵だけを倒すだけでいい、父にそう言われている気がした
母さん
『アカツキはいつになったら彼女を連れてくるのかしら…あら間違った、彼女って肩書になった誰かを』
凄いわざとらしいぞ!
真剣に考えていたのにそんな予想外な言葉が親から飛ぶ
だけども、返す言葉がある
『ティアとデートの約束をしたんだ』
ガタン!と家族総出て驚愕を浮かべた
何故だ…父さんが、泣いている
シャルロットが自身の頬を摘み、泣いている
母さんが眩暈を起こしている
お前ら何なんだ…
父さん
『お前は本当に息子か?』
アカツキ
『なんだか悲しいぞ父さん?』
母さん
『そうしましょう、アカツキがとうとう大人になる為に異性を押し倒すのね…』
アカツキ
『待って母さん、それ飛躍し過ぎ』
シャルロット
『アカ兄ィ、ベットはきしむ』
アカツキ
『待て待て!デートだぞ?!』
こうして俺は美味しい料理を堪能したあとに風呂に入り、着替えてから部屋に戻る
気疲れした気分だよ
暗い部屋のベットにダイブし、窓を眺める
雪は降っていない、明日の日中には街全体に僅かに積もった雪は解けるだろうな
不思議と明日という日を考えても緊張する様子は俺にはない
能天気なのか馬鹿なのかわからん
不安よりも使命感が強いのかもしれない
街や仲間を守りたいという単純至高が不安に勝っている気がする
《戦う野郎は難しく考えるな、脳筋思考と普通は紙一重だ…獣王ヴィンメイは絶対に油断を見せる。あいつは人間を弱者と完全に思っている》
アカツキ
『人間を馬鹿にしているからな』
《あいつの油断が最高の隙になる。絶対に見逃すな》
俺は頷き、普通に寝てしまう
起きれば今日が終わり、明日が訪れる
違う日が来るという当たり前に起きる事実がこんなに意識する日が来るとはな
俺の大変な人生の前半が終わった気がする
決着をつけよう…獣王ヴィンメイ
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