第125話 しつこい男に不幸あり

王国騎士会の調査も無事終わり、北の森への立ち入り禁止が解除された俺達は1週間かけてチーム強化に力を入れた


アカツキ・ライオット


☆アビリティースキル

スピード強化【Le5】MAX

気配感知  【Le3】

動体視力強化【Le4】

斬撃強化  【Le4】up↑

筋力強化  【Le2】


☆技スキル

龍・開闢  【Le3】

刀界    【Le2】

居合突   【Le4】

光速斬   【Le3】

地斬鉄   【Le2】


☆魔法スキル


称号

無色斬鉄


☆称号スキル

スキル発動速度【Le1】

斬撃強化【Le1】

特殊技『断罪』


・・・・・・・・・


リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

魔法強化【Le2】

打撃強化【Le5】up↑

気配感知【Le3】

動体視力強化【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le3】

攻撃魔法耐久力強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le3】

爆打  【Le2】

骨砕き 【Le1】


☆魔法スキル

風・突風   【Le3】

風・カッター 【Le3】

黒・チェーンデストラクション【Le2】

黒・シュツルム【Le3】

黒・ペイン  【Le1】

黒・アンコク 【Le1】

黒・グェンガー


称号

ハイ・クルーガー【黒】


☆称号スキル

魔法強化 【Le2】

自動魔法盾【Le2】

スキル発動速度強化【Le2】

魔力消費軽減【Le2】

特殊魔法『クラスター』



・・・・・・・・・・

ティアマト・ウロボリス


☆アビリティースキル

斬撃強化 【Le4】

気配感知 【Le2】

毒耐性  【Le4】

耐久力強化【Le3】

動体視力強化【Le3】

スピード強化【Le4】up↑


☆技スキル

連続斬り 【Le3】

真空斬  【Le2】

大地噴出断【Le1】

鬼無双  【Le2】


☆魔法スキル


☆称号

バトラー


称号スキル

体術強化【Le1】

耐久力強化【Le1】

特殊技『ギロチン』



・・・・・・・・

ティア・ヴァレンタイン


☆アビリティースキル

安眠    【Le2】

魔法強化  【Le2】

気配感知  【Le5】MAX

麻痺耐性  【Le1】

動体視力強化【Le2】

スピード強化【Le3】


☆技スキル


☆魔法スキル

火・ラビットファイアー【Le3】

雷・ショック【Le4】

木・スリープ【Le2】

風・キュア 【Le2】

風・ケア 

風・シールド【Le3】

白・ホーリーランペイジ【Le1】


称号

エクシア



☆称号スキル

デバフ強化 【Le3】

自然治癒  【Le2】

動体視力強化【Le3】

運     【Le4】

固定スキル 『天使』

特殊魔法  『デルタ・バルカン』


・・・・・・・・


リュウグウ・モチヅキ


☆アビリティースキル

突強化   【Le4】

スピード強化【Le4】up↑

気配感知  【Le3】

動体視力強化【Le4】

限界突破  【Le1】


☆技スキル

鬼突 【Le2】

三連突【Le3】up↑

シャベリン【Le1】

ドレインタッチ【Le1】

稲妻花槍突【Le1】

槍花閃【Le2】


☆魔法スキル


称号

星渡(ホシワタリ)・女花


☆称号スキル

隠密 【Le3】

運  【Le4】

安眠 【Le2】

状態異常耐性【Le2】

スキル発動速度【Le1】

特殊魔法『ラフレイル』


・・・・・・・・・・


・・・・・・



MAXという文字を初めて見た俺達は森の帰り道で興奮を覚える

天井まで上げると相当見違えるほどに動きやすくなるのだろうか色々な期待を胸に歩く俺達の足取りは軽い


エーデルハイドは昨夜、海抜の低い森で遭遇した将軍猪を打倒したという凄い結果も相まって調子が良い

今日はクリスハートさんのとこはお休みらしく、ギルド内にはいなかったがリゲルとクワイエットさんそしてクリスハートさんが森に歩いていくのを俺達は見かけている

しかし、出会えなかったのは残念だな


『ブルドンちゃん、美味しい?』


赤騎馬ブルドンは歩きながらティアに牧草団子を食べさせてもらい、こいつも機嫌が良い

背中にはギルハルドがスヤスヤと寝ており、起きる気配はない


『今日は収穫ですねアカツキさん』


『だと思うよ。リリディは魔法スキルを一切使わなかったのは何でだ?』


『魔法が封じられた時のための対応力強化!大賢者には過酷な状況にも耐えうる縛りが必要なのです』


意味が分からない

誰もが微妙な顔を浮かべながら胸を張って歩くリリディに顔を向ける

リュウグウが『だからエアウルフにケツを噛まれてティアに回復されたんだぞ』と突き刺さる言葉を投げた


数時間前、エアウルフ7頭を相手にリリディとリュウグウが奮闘してくれた

その時にリリディは尻を噛まれたんだ

半泣きで四つん這いになり、ティアに苦笑いされながらケアを使用してもらっていた光景は将来面白い話になるだろうと思う


『良い天気だな!寒いけどよ!』


『ティアマト君、今日は雪だって受付嬢のアンナさん言ってたね』


『本当かティアちゃん』


『そだよ、ねぇアカツキ君』


『確かに言ってい、ん?』


途中で俺は口を閉ざし、足を止めた

どうした?的な顔で皆が顔を向けたまま歩くのを止める

耳を凝らしてみると、金属音がぶつかる音がどこからかほどよく聞こえているんだ

剣と剣だろうなこの音


《見つけたな》


『よし、行ってみようか』


俺は皆を連れて、音のする方に向かうと川辺付近でクリスハートさんとリゲルそしてクワイエットが実践稽古みたいな事をしていたんだ


茂みに隠れて様子を伺ってみると、どんな状況下での稽古かわかったリュウグウが微笑みながら口を開く


『1人で2人相手か』


クリスハートさんの正面にクワイエットさん、後ろにリゲルだ

リゲルが『2人見えるように側面を使え』と言いながら緩やかに彼女に飛び込んでいく


『そんなこといわれてもっ!』


彼女は剣でリゲルの攻撃を受け止めると同時にクワイエットさんは一瞬で間合いを詰めた

僅か一瞬で彼は彼女の肩をポンと叩くと、『止まったら駄目だよ?』と優しい口調でアウト宣告をする


聖騎士の2人は数歩後ろに下がり、剣をしまう

肩を落とすクリスハートさんはその場に三角座りで座り込む

するとリゲルは彼女に話しかけた


『俺達は足音を極力は消すように訓練されているから辛いだろうがな、1人に視線を向ける場合は耳にも意識を集中しろクリ坊。じゃないと今度は肩を叩かれるんじゃなくて鉄がお前の体を貫通するぞ』


『足音消すってどんな訓練したのですか』


『秘密だ。まぁ獣や冒険者相手なら耳を凝らせばお前でも多少動ける…流石グリンピアで一番強い女だ、どっかの誰かさんとは違って理解が早い』


隠れている俺をあいつは見た

何がどっかの誰かさんだよ!お前いつ俺の稽古ついたんだ

あれ?そういや1回だけあったな、しかしあれは稽古じゃないからノーカンだ


『いるのバレバレだよ』


クワイエットさんがにこやかに言い放つと、俺達は立ち上がる

でもクリスハートさんは気づいてなかったようであり、驚いた顔を浮かべた


俺達は3人の元に歩いていくと、ティアが途中で川の向こうに指を指し『3体』と告げた

リゲルとクワイエットさんはその意味を素早く理解し、クリスハートさんに向かって『1人で対処してみな、危なかったら尻は拭いてやる』とリゲルが言う


でも何故か彼女はその言葉の意味を知らないようであり、顔を真っ赤にしながら『破廉恥な…』と自身のお尻を両手で触って隠している


『いや、意味違うと思いますクリスハートさん』


ティアマトが冷静にツッコむのも何かと面白く、リゲルが珍しく笑う

優しいクワイエットさんは彼女に説明すると、彼女は恥ずかしそうにして言い訳を述べる


『私は純情なんです』


『よく言うよ』


『何がですか』


リゲルが呆れ顔をしながらも川の向こうに顔を向け、現れる魔物を確認した

コロール3体だ


人型であり、身長は俺達と大差ないくらいか

手には鉄鞭が握られており、よだれをダラダラと垂らしながら浅い川を歩いて渡ってくる

俺達は後ろにさがり、彼女の邪魔にならないようにすると、クワイエットさんとリゲルも多少後ろに退く


クリスハートさんは剣を抜くと、地面に剣先を引きずらせながら敵に向かって静かに歩いていく

変わったスタイルだな、と口を開くと、リゲルは『俺が教えた』と我が物顔で答えた


『ドルル!』


コロールはクリスハートを見て舌なめずりしている

それには彼女も苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ、口を開く


『いつみても気持ち悪い魔物ですね。何を思ってるんでしょうか』


『美味しそうなんじゃないか?』


『それは破廉恥な意味で言ったんですか?それとも味的な意味で言ったんですか?』


『いい加減その破廉恥から離れろ。会話できん』


リゲルが苦笑いを浮かべてそう告げた瞬間。コロールが一斉に走り出す


『この程度!』


彼女はそう言いながらも先頭のコロールが武器を振り上げたと同時に一気に間合いを詰めると、横を通過して首を切り裂いた

後ろの残り2体が鉄鞭を振り落とすとクリスハートさんは間を抜けて背後を取った


あとは斬るだけ、しかしリゲルはそのタイミングで彼女に口を開く


『右側のコロールがお前のおっぱい狙ってるぞ!』


そんな筈ないだろと俺は強く思った

リュウグウとティアのひきつった笑みがなんとも言えない


『破廉恥な!』


彼女は顔を赤くすると、振り替える右側のコロールに向かってストレートパンチをお見舞いして転倒させた

体重の重いコロールを素手で転倒させるとは恐れ入ったよ

スキル無しであの鋭いパンチは武器だな


《凄いな》


テラも誉めている


『ドル!』


左側のコロールがクリスハートさんに飛びかかるが、彼女は恥じらいながら首に剣を突き刺して地面に沈め、起き上がるコロールの胸を深く切り裂いて倒した


『良いパンチだ。それを通常で使えればなぁ』


リゲルは口を開きながら彼女に近づいていく

落ち着いたクリスハートさんは、『貴方に対して破廉恥と言ったんです。魔物が胸を触るわけないじゃないですか』と当たり前の事を言い放つ


『まぁそうだろうな。今日は終わりだ』


そう告げ、彼は俺に顔を向けた

何か言いたげな様子、しかしクワイエットさんは『お腹空いたから帰ろ』とリゲルに話すと、クリスハートさんを俺達に任せて去ってしまう


『えぇ…』


流石の彼女も驚きを口にした

まぁ戻るだけだかは俺達は彼女と共に森を出る事にし、現れたら魔物を倒しながら進む


先頭はリュウグウとティア

コロールやハイゴブリンを容易く倒しているのを見ると、かなり強くなったとわかる


『アカツキさん達はクローディアさんからランクの話をされましたか?』


ふとクリスハートさんが話しかけてきた

俺は以前、クローディアさんから大事な話があると言われて応接室に招かれた時の事を思い出し、答える


『冒険者ランクBの話は来てます』


『そうでしょうね。グリンピア中央学園の一件を見れば妥当な判断ですよ』


『でもそれはリリディが単独で撃破した功績です』


『クローディアさんはリリディさんだけじゃなく、イディオットが強いと考えたんじゃないですかね』 


かもしれない

ランクBになりたい場合は報告するだけで無条件での昇格が出来る

答えの保留をしていたら疫病や魔物の大群騒動で忘れていたよ


『俺は構わないぜ?』


ティアマトが笑みを浮かべ、俺の背中を軽く叩く

俺は正直不安だったが、認められたなら資格があると考えてもよさそうだ


『帰ったらクローディアさんに返事言わないとね』


ティアが俺の手を掴むと、ブンブン振ってくる

慎重過ぎる考えだったと理解した俺は彼女に頷く

気が付けば先頭はリュウグウだった


『この程度!』


『ギャワンっ!』


『キャイン!』


エアウルフ4頭を何もさせること無く、彼女は両手で握る槍で素早く倒す

リリディは『格好良いじゃないですか』と彼女に口を開く


リュウグウは少し恥ずかしそうにしながらも魔石を回収し、それをリリディに渡しながら答えた


『当然だ』


《お前は強くなってるからそろそろBランク冒険者にはなっとけ?帰ったらクローディアに返事するんだぞ?》


ティアマト

『お前もそう思うか』


《思うぜ?》


リュウグウ

『ならば決まりだ』


クリスハート

『この街からBが出るのは何年振りなんでしょうね』


アカツキ

『確かにそれは気になりますね』


ティア

『一先ず帰ろっ、今日はみんなでご飯!』


そうだったな



俺達はブルドンをギルドの入口で待たせる事にした

リュウグウとリリディそしてギルハルドをその場に待機させ、俺はティアとティアマトそしてクリスハートさんと共にギルド内に入った


騒がしいロビー内がやけに大人しいことに気付いた俺達は顔を見合せ、首を傾げる

丸テーブルを囲んで酒を飲む冒険者も何が落ち着きがない

受付に向かうため、真っ直ぐ歩いていると2階吹き抜けからリゲルとクワイエットがニヤニヤしながらこちらを見てる


『なんだ?』  


《さぁな》


よくわからない

受付カウンターまで行き、受付嬢アンナさんに魔石の換金を頼む。

その時に『静かですね』と聞くと、彼女はこの雰囲気の理由を話してくれた


『近くの街から冒険者チームが来てるんです』


『ウェイザー?』


『タタラの街の冒険者チームでランクはBです』


『え?それなのに静かなのは…』


疑問を口にすると、ロビー内に大声が響き渡る


『飯まだかよ!俺の街なら秒で出すぜ?秒で!』


声の方向に顔を向けた

四人組の冒険者チームだが。顔はノワモテっぽい奴らばかり

なるほどなと理解し、俺は絡まれないようにするかとティアに話す


《威張り散らす冒険者って弱く見えるよな》


クリスハート

『ですがBです。イーグルアイというチーム名です』


アカツキ

『知ってるんですか?』


クリスハート

『はい、私も関わりたく無いですので用事を済ませたら帰ります』


それが一番だな

彼女の話だと遠征でタタラという街に行くとかなりの頻度で顔をあわせるらしく、しつこく話しかけてくるからあの街に行くのは今はやめているらしい

どんな話をされるかと聞くと、お茶でもどうだ的な感じだとさ


リュウグウ

『しつこい男は女は嫌いだからな』


ティア

『確かにね…』


《だな、まぁ実力はそこそこあるらしいし面倒な事になる前に退散しないか?》


アカツキ

『そうだな』


俺は一度、丸テーブルを囲んで椅子に座って酒を飲みながら飯を食べる例の冒険者達と横目で見た

周りが静かにしているからこそあそこの席が騒がしいと思える

クリスハートさんもあまりここにいたくないような顔をこちらに向けているし、そそくさ出ないとな


2階吹き抜けの手すりでは依然としてリゲルとクワイエットが問題の冒険者達を見てニヤニヤしているのだが、そうこうしていると俺達は逃げるタイミングを見逃していた


『おお!クリスハートじゃねぇか』


遠くから男の声、それは問題の冒険者達の中の1人から聞こえてくる

その瞬間にクリスハートさんの顔は彼らに見えないように面倒くさそうな表情へと変貌する

とことん嫌いらしく、その顔は珍しい


ティアは溜息を漏らす

すると、奥からイーグルアイの4人が席を立ち上がり、階段付近にいる俺達に歩み寄ってくる

絶対に面倒臭い事になると直ぐにわかった

酒を飲んでいる奴って結局はしつこさがあるからだ


《あぁ面倒だな、斬れば?》


『出来るわけないだろ』


テラ・トーヴァに反応したはずなのに、それに答えたのはイーグルアイだ


『何独り言いってんだお前、頭可笑しいんじゃねぇか?』


(クッソ…)


ティアはいつのまにか俺の後ろに隠れている

ティアマトは腕を組んで彼らを見ているようだが、肝心の彼らはそんなティアマトには見向きもせずにクリスハートさんに話しかけた


『丁度良い、一緒に飲もうぜクリスハート』


『お酒は嫌いですので無理です』


『んな堅い事言うなよ。その美人が勿体ないぜ?』


『お酒と顔は関係ありません』


彼女は顔すら合わせようとはしない

口調もどことなく面倒くさいと言わんばかりに聞こえる

でも軽く酔っぱらっているイーグルアイの4人はそれに気づかず、彼女に歩み寄った

1人の男が彼女の腕を強引に掴むんだ


クリスハートさんは振りほどこうとするが、男の力は強くて振りほどけない


『やめなさい!』


『いいじゃねぇか!酒と飯は奢るからよ!こんな低ランクギルドの街にお前がいるなんざ勿体ないぜ?俺はお前の事を結構買ってるんだぜ?』


『私はあなたが嫌いです』


『嫌よ嫌よもそそるじゃないか』


いい加減、俺もこの場を何とかしないとなと思いながらも刀に手を伸ばす

だが流石のBランク冒険者、酔っていてもちょっとした動きには敏感なようである

4人同時に武器を握る俺に視線を向け、しかめた顔を飛ばしてきた


『あぁん?低ランク君はやる気か?』


静かに動いた筈なのに、流石はBだ

その間、クリスハートさんは男から掴まれた腕を引き剥がそうと力を入れるが、ビクともしない


『トルーパ!迷惑です!ギルド職員を呼びますよ!』


『呼べ呼べ!こっちの街のギルドは兄貴がギルドマスターしてんだ!多少問題起こしたってこっちはそこまで問題ないぜ?冒険者ギルド運営委員会の役員だからなぁ。ここで問題起きてもお咎め無しさ』


《あぁこいつ小物だな》


テラ・トーヴァがそう呟くと、ティアマトが笑う

彼の笑みに釈然としない、者がそこにいた


トルーパ

『お前、いい体格してんじゃねぇか。』


ティアマト

『酒にやられる男は嫌われるぜ?』


トルーパー

『雑魚冒険者の癖に口だけは一人前だな』


彼はクリスハートさんを掴んでいた腕に力を入れた

すると彼女は痛そうな顔を浮かべ、姿勢を低くする

これは不味いと誰もが思った。グリンピアの冒険者達は焦りを見せながらこちらを見ているだけ

動く様子はない


ならば今は俺達しかいないようだなと思い、俺はティアマトに顔を向けて頷くと

彼は不気味な笑みを浮かべた

待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべたティアマトは首をゴキゴキと鳴らし始めたのだが

そこで横やりが入ったのだ


『邪魔だよ雑魚』


『!?』


いつの間にか、イーグルアイの近くにリゲルとクワイエットさんがいたのだ

先ほどの声はリゲル、突如として現れた彼にトルーパは驚いた

しかし、その隙にリゲルは素早く剣を抜き、クリスハートさんを掴むトルーパの腕を軽く斬った


『ぐあぁぁ!』


たまらず手を離すトルーパ

彼の仲間は驚きながらも素早く武器を抜き、リゲルに向けた

腕から血をポタポタと地面に落とすトルーパーは額に青筋を浮かべ、リゲルを睨みつけた

相当怒っているようである


『てめぇ!何様のつもりだ!』


『お前、何様のつもりだ?』


リゲルはクリスハートさんの前に移動し、剣をしまうと腕を組んで彼を蔑むような眼で見つめる

それが癇に障ったのか、トルーパが怒りを顔に浮かべて両腰に装着している片手剣を両手で抜いたのだ


俺はリゲルに敵意を向けるトルーパーに憐れみを覚えた

それはティアやティアマトも同じことを考えている筈さ

リゲルの事はそこまで好きじゃない。しかしこの場の適任は彼かもしれない


リゲル

『抜いたんなら最後まで使えよゴリ男、Bだろ?』


トルーパー

『てめぇグリンピアの雑魚冒険者の癖に生意気な野郎だなぁ!』


トルーパーはキレたのだろう

両手に握る片手剣を前に突きだし、リゲルに突っ込んだ

加減をしているようには思えない


Bランクとなると攻撃の速度も流石であり、かなり速い

でも相手が悪すぎる


『単純』


リゲルはそう囁き、スレスレで頭を下げて懐に潜り込むと、盛大にアッパーカットして仰け反らせてから股間を蹴り上げた

言葉にならない言葉を口から言いながらトルーパーは後ろに倒れると、彼の仲間たちが怒りを浮かべてリゲルに襲い掛かろうとする


『貴様!』


『やっちまえ!』


そんな声を出している時間はない

クワイエットさんは両手で腰からクナイのような小さな投げナイフを男たちの足に向けて投げた

それによって3人の足には小さなクナイが突き刺さり、苦痛を浮かべてその場にしゃがみ込む


トルーパー

『てめぇ!いい度胸してんじゃねぇか!お前の冒険者人生を終わりにしてやろうか!俺を怒らせるって事はギルドを敵に回すんだぞ!』


リゲル

『子犬だなお前、バックがないと動けないタイプだな?そんな男モテないぜ?ゴリ君』


挑発しながらリゲルは彼を見下ろす

トルーパーは鬼のような形相で起き上がると、敵意じゃなく殺意をリゲルに向けた

以前としてリゲルは落ち着いている


トルーパーは『女の前で格好つけようとしたのが運の尽きだ!』と言い、内股になりながらもリゲルに襲い掛かろうとすると、リゲルは懐からとあるものを見せた

それによって彼らイーグルアイの雰囲気は変わる


リゲルは何を見せたのか。

聖騎士会の赤いカードであり、外枠は金色となっている

ただの赤いのならばただの協会メンバーだが、外枠の金色は意味がある

精鋭、もしくは教団の中でも階級が高いという意味なのだ


リゲル

『聖騎士とやりあうか?雑魚…』


トルーパ

『はっ?…なんでお前がそんなカードを!?』


リゲル

『極秘調査中だよ、お前は俺の邪魔をするなら聖騎士の敵になるって事だよな?もしかしてギルド運営委員会と聖騎士会でドンパチする気か?お前の馬鹿馬鹿しい我儘で?お前のお兄さんはさぞ優秀なんだろうなぁ!こっちはロイヤルフラッシュ聖騎士長の指示で動いているのにお前が邪魔するとなると大問題だ…失敗したら王族にもお前のせいだと報告しなきゃならんなぁ』


イーグルアイの全員は血相を変えた

当然、酔いも覚めるだろう

リゲルの声は響き渡り、彼ら2人が聖騎士だったと知らなかったこの場の冒険者全てが驚愕を浮かべる


トルーパ

『てめぇから…よこやり入れたんだろうが…』


リゲル

『クリ坊は協力してもらってんだぜ?雑魚Bさんよ?それにな』


そこで俺達は予想外な彼の行動に口を開いて驚いてしまう

リゲルはクリスハートさんの腕を掴んで引き寄せる

『ふぁ?』と彼女が面白い声をだしていると、リゲルはクリスハートさんの腰に手を回して抱きしめたのである


思わぬ光景にティアの目が飛び出そう

クワイエットは…あれ!?こいつも目が飛び出そうだ


クリスハートさんは片手で抱き寄せられ、真っ赤になっているとリゲルは淡々とトルーパに言い放つ


リゲル

『俺の女だ。今後手を出したらその両腕斬り落とすぞ雑魚が…』


トルーパ

『ななななななんだと…』


リゲル

『お前らのギルドじゃ飯が秒で出るんだろ?なら秒でギルドから出ていけ。じゃないと今度はその股間に剣を突き刺すぞ』


ピュン!と彼らはギルド内を逃げるようにして出ていった

騒ぎが起こらず良かったと思いたいが、怒ってたな


リゲルは直ぐにクリスハートさんを離す

『悪いな、付き合わせた』と彼は言いながらクワイエットさんと共にその場から歩き去ろうとする

俺は『なんで彼女設定だ?』と彼に言い、彼は足を止めて振り返ると答えた


『今後またしつこいだろどうせ?彼女だって俺が言っとけば当分クリ坊に近づかねぇだろうがよ』


その言葉で我に返ったクリスハートさん

彼女はなるほどと納得を浮かべるが、何故か顔がまだ赤い


『腰に手を腰に手を腰に手を腰に手を』


『クリスハートさん?大丈夫?』


ティアが彼女に声をかけると、クリスハートさんは『ひゃいっ!?』と変わった声を出して驚く

そんなクリスハートさんの反応にリゲルは溜息を漏らし、さらに口を開く


『それによ、止めないとお前らの仲間が飛び出してたぞ』


彼は2階に顔を向けた

そこにはシエラさん、アネットさん、ルーミアさんがおり、武器を構えて2階から飛び出そうと身構えていたのだ

シエラさんに関しては赤い魔法陣を既に出現させており、魔法を放つ準備万全だ


クリスハート

『それならあなたが止めなくても…』


リゲル

『お前らが止めても意味ないだろ。面倒になるだけだぞ』


クリスハート

『そうですね…あの、その』


リゲル

『助けたんだから稽古で強くなれよ?じゃあな…』


彼は2階に向かって階段を登っていく

クワイエットさんはクスクスと笑いながら、『ああ見えて気にかけてるんだよ、彼は素直じゃないから』とクリスハートさんに言ってリゲルを追いかけていく


《まぁリゲルなら4人全員ボコボコにできるだろうな》


クリスハート

『そんなに強いのですか?』


《聖騎士だぞ?精鋭となりゃ対人戦なんて冒険者相手より格段に慣れてるさ…だから兄弟もまけた》


そこでようやく俺は理解した

俺は対人戦を知らない、しかしリゲルは聖騎士だ

俺達が強くても、それは魔物相手でしかない


ティアが俺の肩を軽く叩いてくる

その顔は良い物を発見したかのような女性の笑み

何を見たのかと思い、ティアが視線をチラチラと向けるクリスハートさんに顔を向けると

彼女は階段を登るリゲルを恥ずかしそうな顔を浮かべてみていたのだ


ティアマト

『美女と野獣か?』


アカツキ

『あれ野獣か?』


ティアマト

『うぅむ…野獣に見えねぇな』


クリスハート

『ご迷惑をかけました』


そのタイミングで2階にいたエーデルハイドの3人がクリスハートさんに駆け寄り彼女を労った

俺達3人は外に出てリリディとリュウグウの元に向かい、彼らにギルド内での騒動を説明したんだよ

リュウグウは『あれか?』と告げて顔を奥に向けた


そこにはイーグルアイの4人がまだいたんだ

逃げてなかったことに俺はある意味感心してしまう

怒り散らす様子に近くを歩く人々は驚いているけども、そんなイーグルアイさん4人は足を引きずりながらも俺達に気づく

鼻息が荒いが相当興奮しているようだな

今度はこっちかと肩を落として残念に思う


トルーパー

『てめぇ!さっき聖騎士と一緒にいた野郎だな!』


アカツキ

『人違いです』


トルーパー

『んなわけあるかっ!お前も俺にたてつこうとしただろうが!許せねぇ!』


どうやら腹の虫がおさまらないことを俺達で解消しようとしている

リリディとティアマトはやる気十分、リュウグウもだ

でもティアは争いはあまり好きではないから彼女は『今日は帰った方が…』と優しめに言ったんだ


しかし、その言葉は聞き届けられなかった


トルーパー

『ならお嬢ちゃんが変わりに俺達と遊んでくれるのかい?可愛いじゃねぇか』


とっかえひっかえ過ぎないか?

ティアは『嫌ですっ!』と言いながら俺の背中に隠れた

勿論、俺は彼女の事になると喜んで刀を抜ける


素早く武器を抜くと、トルーパーは舌打ちをしながらも両手で剣を抜き、『女を置いてけば怪我しないで済むぞ!雑魚が!』と叫ぶ


声が大きすぎて周りがこちらを見ているのが恥ずかしい

というか、こいつ…


《情けねぇ野郎だなこいつ!自分より格下には強くでるとか!》


リュウグウ

『足くらい槍で刺していいだろう?』


アカツキ

『いや…どうやらその必要はない』


トルーパの背後からおぞましいオーラが見えたのだ

嫌な予感しかない、俺は息を飲みこみ、怒り狂うトルーパーの背後から聞こえる声で誰なのかを知る




『へぇ、僕の妹をどうする気だい?』


イーグルアイの4人が振り返る

いたのはシグレさん、ティアの兄である

勤務中であり、警備兵の格好のシグレさんと共に父さんの友達の警備兵が2人そこにはいた


ティア

『お兄ちゃん!そいつ私とリュウグウちゃんによからぬ事をしようとっ!』


彼女は姑息な手を使った!

トルーパー達は両手の短めの鉄鞭を握り締めて立っているシグレさんに向けて首を傾げる

その瞬間、ティアの兄の顔が鬼以上の鬼の形相へと変わり、目の前にいたトルーパーを鉄鞭で殴り飛ばした


『あぁぁぁぁぁぁぁ!』


綺麗に放物線を描き、吹き飛ぶトルーパに仲間の3人は顔を真っ青にしたままシグレさんに顔を向ける

逃げようと思ったのだろうが、彼から逃げる事はまず無理だろう


シグレ

『先ずはこいつら3回殺そう』


警備兵

『おいっ!シグレを止めろ!』


警備兵は慌ただしく、暴れるシグレさんを止めることに全力を注ぐ光景に俺達は圧巻され、動けない

トルーパ達はシグレさんの底知れぬ恐怖で悲鳴を上げ、半泣きで逃げ去っていく


今日は忙しかったな…

あ!クローディアさんに会わないと駄目だったな

一度ギルドに戻るか




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