第122話 間違った自分
アカツキ・ライオット
☆アビリティースキル
スピード強化【Le4】
気配感知 【Le3】
動体視力強化【Le4】
斬撃強化 【Le3】
☆技スキル
龍・開闢 【Le3】
刀界 【Le2】
居合突 【Le4】
光速斬 【Le3】
地斬鉄 【Le2】
☆魔法スキル
称号
無色斬鉄
☆称号スキル
スキル発動速度【Le1】
斬撃強化【Le1】
特殊技『断罪』
・・・・・・・・・
リリディ・ルーゼット
☆アビリティースキル
魔法強化【Le2】
打撃強化【Le4】
気配感知【Le3】
動体視力強化【Le3】
麻痺耐性【Le3】
スピード強化【Le3】
攻撃魔法耐久力強化【Le2】
☆技スキル
ドレインタッチ【Le3】
爆打 【Le2】
骨砕き 【Le1】
☆魔法スキル
風・突風 【Le3】
風・カッター 【Le3】
黒・チェーンデストラクション【Le2】
黒・シュツルム【Le3】
黒・ペイン 【Le1】
黒・アンコク 【Le1】
黒・グェンガー
称号
ハイ・クルーガー【黒】
☆称号スキル
魔法強化 【Le2】
自動魔法盾【Le2】
スキル発動速度強化【Le2】
魔力消費軽減【Le2】
特殊魔法『クラスター』
・・・・・・・・・・
ティアマト・ウロボリス
☆アビリティースキル
斬撃強化 【Le4】
気配感知 【Le2】
毒耐性 【Le4】
耐久力強化【Le3】
動体視力強化【Le3】
スピード強化【Le2】
筋力強化【Le2】
☆技スキル
連続斬り 【Le3】
真空斬 【Le2】
大地噴出断【Le1】
鬼無双 【Le2】
☆魔法スキル
☆称号
バトラー
称号スキル
体術強化【Le1】
耐久力強化【Le1】
特殊技『ギロチン』
・・・・・・・・
ティア・ヴァレンタイン
☆アビリティースキル
安眠 【Le2】
魔法強化 【Le2】
気配感知 【Le4】
麻痺耐性 【Le1】
動体視力強化【Le2】
スピード強化【Le3】
☆技スキル
☆魔法スキル
火・ラビットファイアー【Le3】
雷・ショック【Le4】
木・スリープ【Le2】
風・キュア 【Le2】
風・ケア
風・シールド【Le3】
白・ホーリーランペイジ【Le1】
称号
エクシア
☆称号スキル
デバフ強化 【Le3】
自然治癒 【Le2】
動体視力強化【Le3】
運 【Le4】
固定スキル 『天使』
特殊魔法 『デルタ・バルカン』
・・・・・・・・
リュウグウ・モチヅキ
☆アビリティースキル
突強化 【Le4】
スピード強化【Le3】
気配感知 【Le3】
動体視力強化【Le4】
限界突破 【Le1】
☆技スキル
鬼突 【Le2】
三連突【Le2】
シャベリン【Le1】
ドレインタッチ【Le1】
稲妻花槍突【Le1】
槍花閃【Le2】
☆魔法スキル
称号
星渡(ホシワタリ)・女花
☆称号スキル
隠密 【Le3】
運 【Le4】
安眠 【Le2】
状態異常耐性【Le2】
スキル発動速度【Le1】
特殊魔法『ラフレイル』
・・・・・・・・・・
魔物表
A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)
A 呪王ジャビラス、ドミレディ
B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス
C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ
パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント
剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ
ロゴーレム、ニャン太九郎、魔妖精、チベタンウルフ
D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン
ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ
リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー、ブー太(梟)
バイオレット
E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種
パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス
ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)
F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥
ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛
角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ
ギョロギョロ、ゾンビランサー、シロオニバス、イビルハープ
・・・・・・・・・
グリンピアに戻ってから2日目、俺は頬を膨らまして機嫌を損ねているティアの相手をしていた
場所は冒険者ギルドのロビー内、そこに冒険者はいつも以上に少ない
それもそうだ、俺の街であるグリンピアに魔物の群れ、そして獣王ヴィンメイが俺達を狙ってやってきたいたからだ
魔物の群れの対応、それに冒険者は酷く疲労を感じて2日間も休む者が多数いた
父さんから色々話を聞き、戻って直ぐにクローディアさんの様子を見にギルド内の治療室に行き、彼女の怪我の具合を見に行ったんだ
大丈夫そうだったけど、あの人でもそこまでやられるとなると本当に俺達は強くなるために動かなければならない
『ティア…ごめんて』
『置いてった!置いてった!』
ウェイザーの街で置いてけぼりにされたのが嫌だったらしい
まぁ怒っている、わけでもないか…少し膨れている感じだ
俺は杏仁豆腐を奢ると告げると、彼女は『店員さん!杏仁豆腐2つ!』と叫んで近くの男性店員に素早く注文したのだ
リリディとティアマトは依頼板とにらめっこ中、リュウグウは小腹が空いたと言って2階テラスにあるトンプソン爺さんのおにぎり屋台で何か買いに行った
《まぁティアお嬢ちゃん、許してやれや…あんときはあれが最善だったんだぜ?》
『まぁそうだよね。私はキュアとかバンバン使いながら苦いお茶飲ませたり色々してて凄い疲れてたし』
《魔力が殆ど底をついている状態に無理をすると危険なのはわかるな?》
『そりゃね』
彼女は椅子で腕を組み、自慢げに答えた
どうやら俺は計られたようだな…
別に気にはしてないからいいけどね
『んでギルハルドは?』
『アカツキ君、あそこ』
上を指さすティア
2階吹き抜けの高い天井でギルハルドが逆さまで寛いでいる、ゴロゴロしてると言えばいいか
お前重力ってあるのか?謎な猫だな
『ニャハハーン』
冒険者A
『また天井で休んでる』
ギルド職員
『ヒドゥンハルトか…』
受付嬢アンナ
『幻なんだけどなぁ…おいでっ』
アンナさんが両手を広げると、気づいたギルハルドが『ミャンミャー』と鳴いてから落下し、半回転して綺麗に着地をする。
受付の上に飛んで登ると、アンナさんの前でゴロゴロし始める
彼女は可愛いと言いながら頭を撫で始めた
《それにしても死亡者でなかったのは奇跡だな》
『ヴィンメイが撤退したのは幸運か』
『多分アカツキ君いないからじゃない?脳筋王も長い間騒いでるのは不味いってわかるだろうし』
『名前どうにかならないかティア?』
『そう?でもティアマト君に似てる気がする』
丁度帰ってきたティアマトとリリディ
今の会話は聞こえてたみたいだ
『勘弁だぜティアちゃん』
苦笑いを浮かべながら席に座る2人は辺りを見回し、休憩する冒険者達を見てから俺達に顔を向けた
今日は受付で森に向かう者がいない、というか今は禁止になっているのである
3日間は近くの街に駐在していた王国騎士会の者と調査員がグリンピアの森の調査を今している最中なんだ
入口に行くと警備兵ではなく、王国騎士会の武装集団がわんさかいて俺達を通せんぼする
父さんはこの街の警備兵のトップだから組織と連携し、何が起きたか事情を説明している筈だ
『クローディアさんをあの状態にするとは』
リリディが囁くように口を開いた
俺達と出会った時よりも更に奴は強くなっているのだろう
それに合わせてこっちだって強くならないと駄目だ
『アカツキ君、リゲルさんとクワイエットさんは?』
『なんで俺だ?』
『だって…仲いいし』
ティアの言葉に、ティアマトが顔を隠してクフフと笑ってる
彼女の言う、仲が良いとはどういう意味なんだ
すると軽食屋の店員が杏仁豆腐を2人分持ってきてティアの前に2つ置く
どうやら1人で2つ食べるらしいけども好都合だ
『ウェイザーで頑張ったご褒美だ』
『やた!』
俺はそう告げると彼女は喜んで杏仁豆腐をスプーンを使い、食べ始めた
《そういやよ。エーデルハイドの女軍団どうした?》
『ああ…そういえば』
飲食店のカウンターに近いところの丸テーブルを囲むようにして椅子に座っているのが見えた
気さくに仲間と会話をしているようにも思えるが、クリスハートさんだけ妙にぎこちない
『騒動の時に何かあったのかな』
ティアが口を開くと、それに反応する者が2階から現れた
『悔しいんだろうよ、なにせヴィンメイ相手に逃げるしかなかったからな』
『リゲル』
リゲルがおにぎり片手に俺達の近くのテーブルの椅子に座ってモグモグ食べ始める
遅れてやってきたのはリュウグウだ。
なにやら顔が険しいけども彼女もおにぎりを持っている
彼女はそのまま椅子に座ると、溜息を漏らして口を開いた
『私もエーデルハイドの様子の可笑しさを気にしてな、こいつに1つ奢ってくれたら教えてやるよって言ったから仕方なく、だ』
『へへ、昼飯だぜ』
リゲルは大きめのおにぎりを美味しそうに食べる
そのまま彼に何が起きたのか聞こうとしたのだが、その前に奥で座っていたクリスハートさんがリゲルに気づくと、少し思いつめたような顔をしながらも椅子を立ち上がる
シエラさんが彼女を引き留めようと腕を伸ばすが、クリスハートさんはシエラさんに何かを話し、こちらに顔を向けると歩いてやってきた
何を話していたのだろう、シエラさんは納得いかない様子の顔である
ティアマト
『何したんだお前ぇ?』
リゲル
『現実問題を言っただけ』
リュウグウ
『お前だから言えるのだろうが…言い方がなかったのか?』
リュウグウはテラスで聞いていたのだろう
しかし、リゲルは『言い方なんてキツイ方がいい、間違えれば後味が悪い』と彼女に答える
ひと悶着があったのは理解したが、何をしたんだ…
『すいません』
いつも綺麗なクリスハートさんが、今では思いつめたようなな似合わない顔を浮かべている
リゲルはおにぎりを食べ終わり、飲み込んでから『なんだ?』と面倒くさそうな顔をクリスハートさんに向けた
《俺は過去を見てるからな、理解したぜ?》
クリスハート
『とんでもない神様ですね』
《まぁな、でも撤退は判断としては正しいと思うがな?》
彼女はテラ・トーヴァに言われ、顔をうつむかせる
本当に何があったんだ?気になるぞ
リゲル
『どういう冒険者になるかはお前の勝手だ、だが外の声でそうなろうと思って重荷になってるならば気にしなきゃいいじゃん』
クリスハート
『それはどういう意味ですか?』
リゲル
『俺からしてみたらよ、お前らグリンピアの冒険者の顔でもなんでもねぇ。ただの女軍団だ。運よく周りより少し強いだけの…だ』
ティア
『リゲルさん…』
《ティアお嬢ちゃん、今は任せときな》
ちょっと口を挟めない感じだ
周りの冒険者もなにやらチラチラとこっちで起きている変な雰囲気を気にしている
ティアマトは呑気に近くの軽食店の店員に『オレンジジュース』と注文して自分は関係ないと言わんばかりに2人を気にしていない
クリスハートさんは口を強く閉じ、なんか耐えてる
リゲル
『まぁ周りから顔だなんだの言われて嬉しい気持ちになるのはわかるがそれとお前の今後に関係あるかと言えば深くは関係はない、あの獅子の化け物相手にそんな感情で来るならば邪魔だ』
『ですが…』
『人が好過ぎないかお前?いいとこ育ちって俺が言った意味わかるか?一度忘れろ、あんな化け物相手にあんな顔で挑むのが馬鹿だぞ?人の期待に応えたい気持ちが意固地を生んで死ぬ、無理ならば逃げればいい。生きてる奴は完璧じゃねぇ』
彼は真剣な顔を浮かべ、椅子に深く腰掛けながら告げると、クリスハートさんは拳に力を入れてやはり何か耐えている
俺は顔は見ないようにしているけど…大丈夫なのだろうか
『なんで戦力外だと言われて素直に退けない?格好悪いと思ってるのか?グリンピアの顔が逃げるのはいささか滑稽とでも?』
『わ…私はそんな…ただみんなの為に頑張りたいと思って』
『迷惑だ。目の前で死なれちゃ後味悪い』
クリスハートさん、目が潤む
なんとなく察したけども、逃げれるときに逃げれずって感じだろうか
そこは俺はいなかったからわからないけどもさ…
リゲルも結構、言葉キッツイよな
そう思いながらも俺はクリスハートの後ろから焦った様子で近づく、シエラさんたちを見て修羅場でも来るんじゃないかと思った
でも彼女らはクリスハートさんの後ろでリゲルの様子を見ているだけだった
『意地張って死んだら弱いままで人生終わり、逃げて強くなる時間さえ無い…良いとこ育ちの貴族さんに聞きたいがお前はBランクになって解放されたいのと街の為に動きたいのどっちが優先だ?』
『その…私』
《あぁ可哀そうだな…》
テラ・トーヴァの声、どこまで届いてるのかな、俺だけか?
『お前はまずどっちも考える暇ねぇだろ。お前に対する街の評価なんてお前の糞の役にも立たないね。気にして動くならばその感情論でいつか死ぬ。あの化け物相手に逃げて誰かが馬鹿にすると思ったか?街の顔に傷がつくと思ったのか?お前らが認める力を持つ女がボコボコにやられてんのによ?生きてりゃいつか自分より強い奴はわんさか出てくる。退けないときと退く時をわきまえろ。今回は相手が悪すぎだ…。勝手に巻き込まれた身であったとしても今後絶対に必要になる力を手に入れる為に強くなりたきゃ強くなる時間を自分で作れ。強い奴は最初は弱い。お前は弱いくせに強く見せようと強がるメスガキだ』
リゲルの言葉でクリスハートさん、少し泣きそう
その姿にシエラは口を開けて固まっているのが目に映る
『へぶっ!!!』
リゲル、クリスハートさんに目にも止まらぬ速さで殴られて椅子ごと転倒
ティアが目を全開に見開いて驚愕を浮かべているのを俺は目を取られていると、クリスハートさんはビュン!と凄い音を出してギルドから出ていった
俺達はいつのまにか立ち上がっている、いつ立った?
というか他の冒険者も立っているぞ?
冒険者A
『わけわからねぇ現場を見たが…クローディアさんがあんな姿じゃ誰が挑んでも無駄な野郎が森の奥にいたって事だよな』
冒険者B
『聞いた聞いた…。巨大な獅子がいたんだってよ』
冒険者C
『まぁ逃げるが勝ち、だな…街の人間は避難してたし』
《まぁそういうこったな…あの状況はシグレとゲイルの邪魔でしかなかったしな》
アカツキ
『お前見てたのか?』
《俺は見てたぜ?まぁクローディアがやられた後のあの表情のまま戦っても無理があるぜ。無理に戦おうとすりゃそりゃ怒る奴は怒る》
少し理解
修羅場みたいな騒動がおさまり、シエラさんが泡食ってクリスハートさんを今追いかけていく
するとルーミアさんとアネットさんは苦笑いを浮かべ、近くの椅子に座ると口を開いたんだ
アネット
『たまに意固地になるからねぇクリスハート』
ルーミア
『グリンピアの顔として!とか言ったりしたことも多々あったし…期待に応えようとしてたのよ』
リゲル
『くそっ!いってぇ!殴るときだけ早いの何でだ女!』
アネット
『さぁね?でも言葉キッツいねぇあんた』
リゲル
『死ぬか生きるかに優しい言葉なんざ意味ないだろ。遊びじゃねぇんだよ』
アネット
『確かにね、でも女の子泣かせるとは度胸あるわ』
リゲル
『戦いに性別なんて関係ないね、死んだら終わり…後悔すらする時間もない』
反省する気のないリゲルの根性はある意味凄い
しかし、彼が強いのは確かだ
クワイエットと2人でランクBの魔物を倒すくらいだからな
彼は『面倒臭い女だ』と言いながらも立ち上がり、入り口に歩いていくと外に出ていった
ティアマト
『おや?』
リリディ
『なんだかんだ後処理はするんですね』
アカツキ
『何がだ?』
リュウグウ
『お前…』
ティア
『アカツキ君、鈍感』
アカツキ
『え?』
《兄弟、マジか!?》
アカツキ
『なにがっ!?』
答えを誰も言ってくれなかった
俺達イディオットは仕方なく、別の森に足を運ぶこととなる
北の森は閉鎖中だから討伐は出来ない
開闢を使わないと強くなる土台も作れないからな
スキルがあるから強くなるわけじゃない、どう使うか体に叩きこんで戦いで使えるようにしないと駄目だ
その日の開闢はティアマトのスピード強化を2から3にするために使った
森から帰る道中、赤騎馬ブルドンの背中でスヤスヤと呑気に寝るギルハルドを横に、俺は先頭を歩いていると面白い事をティアから聞いたんだ
『私、ウェイザー行き難いなぁ』
『どうしたティア?』
《患者に天使の声を聞いて疫病を直しに来た使者だって言われて変なファンが増え始めてたぞ》
俺は無表情のまま、口だけ笑みを浮かべて見せた
ティアは微妙な顔をしているがな
リュウグウ
『テラ・トーヴァの声を聞いて動いていたティアを患者や近くの回復魔法師会のメンバーは天使の声を聞いて動いていると錯覚したのだろう』
アカツキ
『テラに指示されて何度か動いたもんな、心読むみたいに』
ティア
『びっくりだよ…そういえばみんな今日テスラ会長に呼ばれてるよ!夜食一緒にどうでしょう?だって』
そういえばそうだ
色々騒動があって依頼の終了を告げていない
夜食に呼ばれているらしく、ティアはそれを今思い出したのだという
こっちも依頼でウェイザーに来ていたことを忘れそうになっていたよ
勿論行くしかない
あと3時間後か…余裕だ
『ん?』
リリディが茂みを気にしていた
しかし魔物の気配はない、ティアも首を傾げているが、彼女が感じないならリリディはどうしたのだろうか
『メガネ、どうした?』
『いや、声が』
リリディは茂みの向こうに歩いていく
俺はティアと顔を見合わせ、どうしたんだろうなと思いながらも仲間と共に彼のあとを追う
声がした、と言っていた意味はちょっとした平原にて答えがでたよ
『足で地面蹴って剣振れよ』
リゲルがクリスハートさんと剣の稽古しとる!
茂みに隠れその様子を伺うことにしたよ
ブルドンは賢いから後ろの方で草食って暇潰ししてるけと今は休んでいてほしい
『くっ!』
クリスハートさんはリゲルの剣を弾くと、懐に潜り込もうと一気に間合いを積める
流石に早い、しかし相手はあの口の悪いリゲルだ
『よっと』
間合いを積めてきたクリスハートさんに彼も一気に近づいた
近すぎて彼女は剣を触れない
身を退きながら剣を振ろうと後ろにさがるが、リゲルはさせまいと彼女の懐を掴み、放物線を描くようにして掴んだまま投げ、最後に地面に叩きつけた
『ぐっ!』
直ぐに起き上がろうとしたときにはリゲルの剣先が彼女の顔の前
悔しそうな顔を浮かべるクリスハートさんはゆっくり立ち上がると、溜め息を漏らしてから剣を下ろすリゲルに口を開いた
『なんで…』
『なんで?逆に聞くがなんであんな間合いで武器を使いたがる?頭突きがスマートに攻撃早いだろ、剣の太刀筋は認めるが戦いじゃ剣が武器じゃねぇぞ?体が武器そのものだ』
『頭突き、ですか』
『蹴るも殴るも投げるのも攻撃だ。剣に頼り過ぎ、頭突きが嫌なら片腕に固めの手甲を装備してそれを武器に殴ったりガードに使えば良い、足は確かにパワーはあるが振り出しは遅い』
『わかりました』
稽古だな
ティアはウンウンと目を輝かせて見ているけど、面白いか?
アカツキ
『ティアマト、お前ならどうしてた?』
ティアマト
『結果論は卑怯臭い言葉になるが…、リゲルの顔面掴んでアイアンクローで握りつぶす』
リリディ
『こわ…』
リュウグウ
『まぁお前らしさあるな』
ティア
『見てると楽しいね。クリスハートさんに剣以外の攻撃を教えてるよ?』
アカツキ
『俺達の知らないところでクリスハートさんは色々悩みとかあったってことかな』
ティア
『あの人だって人間だもん、生きている人には悩みくらいあるよ』
リュウグウ
『まぁ、あの男がそれを見抜いて教えてるんだろうな』
《そういうことだ。周りの声に自然に答えようとする感情が結構あったんじゃないか?》
会話中、クリスハートさんはリゲルの剣を弾き返した
彼が驚いた顔を浮かべていると、クリスハートさんはチャンスだと思い、突っ込もうとした
しかし途中で足を止めたのだ
後ろに退くリゲルの左手がなにやら腰付近を触っているのがわかる
よく見ると彼の腰には果物ナイフくらいのサイズの小刀が装着されており、1つを手に持つとそれをクリスハートさんに向けて投げた
投げナイフか…そんな芸当も出来るのかお前
驚きながら彼女は退きながらリゲルの投擲を剣で弾き、それが俺達が隠れる茂みに飛んできたよ
俺は素早く刀を抜刀し、立ち上がりながら弾き返すとそれは宙を舞い、稽古をしている2人の前に落ちていく
『あ…』
立ってしまった…
リゲルとクリスハートさんはこちらに顔を向けると、彼女は驚いた顔を浮かべる
『アカツキさんじゃないですか…』
『全員いるぞ?気配を感じなくてもなんとなく感じるようになれ』
『それ無理です…』
『感覚で覚えろ』
とんでもない事を言ってるリゲルに彼女は気難しそうな様子を見せた
全員で2人に近づき、なんで稽古しているのかとティアマトが聞くとリゲルから安易な答えが飛んでくる
迷子の子猫探し、だとさ
『なんですかその答え…』
『言ったままだ。なぁ一先ずお前は戦いの意味を知れ』
彼女の不満そうな顔に向かってリゲルは剣を納めながら腕を組み、淡々と話し始める
『戦いなんざ勉強と違う、本番は死と隣り合わせだ。やってきたことが戦いで行かせる場面は少ない…、何故なら見たこともない状況を何度も見るからだ。対人戦、魔物戦なら相手は何をしてくるかわからねぇ。剣だけしか使わない奴なんざ攻略は安易…。確かにお前は太刀筋は良いが引き出しがそこのボンクラチームより少ないのが欠点だな』
アカツキ
『誰がボンクラだよ』
『他にいるか?目にまだ土でもついてるんじゃないか?』
前に戦った時の事をこいつ…
まぁいいか
クリスハート
『体術は、ちょっと…』
リゲル
『苦手か?』
クリスハート
『したことがあまり…』
意外だ
体術をしたことがあまりないのか
剣術だけで戦ってきたとなるとかなり凄い
しかしリゲルはそれを良しとしなかった
『格闘のセンスはあるだろ?やればいい』
『でも、人を殴ったこ…』
俺達は驚愕を浮かべた
そしてクリスハートさんの顔も時間が止まったかのように、自身の胸を掴んでいるリゲルの手を見ていた
『さっきのストレートパンチもう一回出してみろ、ほら』
リゲルは目にも止まらぬ速さで殴られて吹き飛んでいった
あまりにも早く、残像を残す光景に俺はあっけにとられる
胸を触られたクリスハートさんは顔を真っ赤にしながらプルプル震え、裏声の入った声で口を開く
『女性の体に気安く触れるなナななんんて!責任とってください!』
『ぶっほ…いってぇ!マジで見えねぇパンチたまげるわこりゃ』
リゲルは殴られた頬をさすりながら立ち上がると彼女に近づく
『家で面白い育てられ方した感じか。夫以外に体を許すな的かお前』
『あああ当たり前じゃないですか!』
『そうかいそうかい、話が逸れたが今の一撃を忘れるなよクリ坊』
『へ?』
『才能あるぞお前。今のは他の聖騎士なら一撃だ…俺とクワイエットは平気だがな、あぁいってぇ・・・』
彼は立ち上がり、彼女の肩を軽く叩くと『終わり、帰る』といって俺達の前から去っていく
取り残されたクリスハートさんはまだ顔が赤い
自分の胸を両手で隠しながら素早く俺達に顔を向けるけども、そんな顔されても困る
でも女性の一面って感じで新鮮だ
ちょっとムラムラしてしまう俺も可笑しいかもしれん
というか…リゲルは真顔でよく彼女の胸を掴んだな
その度胸を分けてほしい
《さっきのパンチ凄かったな》
クリスハート
『へ?』
ティアマト
『確かにあれは凄い威力だったな、パァンって音したぞ』
リュウグウ
『クリスハートさんは自分のパンチを知らないんですか?』
クリスハートさんは少し落ち着きを取り戻すと、首を横に振る
さっきの一撃、本当に凄いよ
そのことを褒めると、彼女は自分の手をマジマジと見つめ始めた
気づいていなかったらしい、彼女自身の才能
リリディ
『あの人、命がけでそれを教えようとしたんですね…まぁ良い思いはしたようですが』
彼が余計な事を言うからまたクリスハートさんが顔を真っ赤にしながら両手で胸を隠している
そうしなくても隠れているのに…
『どこ見てんの』
ティアの低い声が俺に突き刺さる
俺はどこを見ていた?目を凝らしてみると、クリスハートさんの胸付近を見ていた
《兄弟、ティアお嬢ちゃんだけならまだしも浮気か》
『ちがっ…違うんだこれは男の習性で…』
『この変態が』
リュウグウの凍てついた目も俺に突き刺さる
今日は何て日だよ…
俺達はクリスハートさんと共にギルドに帰ると、魔石の換金を済ませてから直ぐに外に出て赤騎馬ブルドンの元に集まる
ギルド内は暇な冒険者で溢れており、やかましいから出てきたんだ
今後の方針を軽く話そうってなったんだ
幻界の森に行くのは決定だ、ロイヤルフラッシュ聖騎士長もちゃんとした精鋭を連れてくる筈
あそこは大人数で行けば行くほど危ないと言っていたし少数を選抜するかもしれない
こっちは…誰が来るかと言われると俺の父さんだった
昨夜、幻界の森に関して話したら連れていかないと二度と家にいれないとか強情を言われている
あと1人、信頼できる者を連れてくると言っていたけど…誰だろうか
ティア
『なんだかクリスハートさん、機嫌良かったね』
リュウグウ
『多分だが、新しい持ち味の発見が出来たからか』
アカツキ
『だと思う、リゲルが避けれないって結構わかりやすい程に凄いってわかる』
ティアマト
『あいつ便利だな』
『ニャハハン?』
ティア
『ギルハルド君おいで!』
彼女が両手を広げると、ギルハルドは『ミャンミャー』と鳴きながら彼女の胸の中に飛び込む
今なら言える、俺は猫になりたいと
どんな感触だ?暖かいか?とか心の中でギルハルドに語り掛けても返事はこない
普通の猫と同じサイズのギルハルドは忍者黒巾を被るただの猫
ティアでも軽く持つことが出来る軽い体重、完全隠密
そのスピードはニャン太九郎の時の特殊スキル、キュウソネコカミ時の速度を常備叩きだす
ボテ腹付近をゴソゴソまさぐると、色々な武器を取り出すのが可笑しい
質量保存の法則を無視した収納スキル持ち
2足歩行でも4足歩行でも歩き、壁や天井も歩くとんでもない猫だ
人はこの猫の存在をあまり知らず、姿を見た者は限りなく少ないためにどのくらい強いのかそんな生態なのかわかってはいない
ランクB、人はきっとそうだと思い、ヒドゥンハルトはそのランクに位置付けされてはいるが
本当にそうなのだろうか
リリディ
『僕が腹をまさぐってもただの腹です』
彼はティアが抱いているギルハルドの腹を触る
色々な武器を収納している筈なのに、普通に腹を掻くことしかできない
『ミャハハハーン』
ティア
『くすぐったいって言ってるよ』
《すげぇな》
ティアマト
『どうやらギルハルド本人じゃねぇと腹の中は触れないんだな』
アカツキ
『手を伸ばすとひっかかれるぞティアマト』
ティアマト
『しねぇさ』
『ヒヒン!』
ブルドンは口元でティアの頭を甘噛みしている
どうやらかまってちゃんのようであり、彼女はギルハルドを降ろすとブルドンの首を優しくなでる
するとブルドンは心地よさそうに大人しくなっていく
アカツキ
『てか夜食の時間までまだあるから一旦解散して現地で集合しよう』
テスラ会長との会食だ
俺達は遅れないようにするため、一度家に帰ることにした
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