第118話 魔物大行進編 1
魔物表
A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)
A 呪王ジャビラス、ドミレディ
B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス
C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ
パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント
剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ
ロゴーレム、ニャン太九郎、魔妖精、チベタンウルフ
D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン
ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ
リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー、ブー太(梟)
バイオレット
E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種
パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス
ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)
F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥
ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛
角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ
ギョロギョロ、ゾンビランサー、シロオニバス、イビルハープ
・・・・・・・
アカツキ達がウェイザーの街で疫病の対応をしている最中、冒険者ギルドに調査員の緊急入電が連絡魔石にて知らされていた
魔物がグリンピアの街に向かっているというなんとも信じられ難い報告だ
そもそも魔物は群れて狩りを行う事はあるものの、別種と仲良く行動を共にすることはほぼない
しかし、クローディアはアカツキ達の話を聞いていたため、ギルド職員が疑わしく思う連絡を彼女だけは険しい顔を浮かべて信じた
街の北にある広大な森の中から向かってくる魔物に対し、彼女は動いたのだ
『今すぐグリンピア全ての冒険者を集めなさい、そして街の人には東の街に逃げるよう、警備兵に避難指示をさせて!』
ギルド職員総動員で一斉に冒険者ギルドが動き出した
こうして1時間後、ギルド内の1回ロビーな吹き抜けの2階にも冒険者が埋め尽くすほどだった
集まった冒険者達が受付前で深刻な顔を浮かべるクローディアさんに顔を向け、静かにしている
誰もがこの異常事態を可笑しく思い、冗談を言う者はいなかった
それもそうだ、クローディアは自慢の鉄鞭を肩に担いているという事はそれだけ重大だと言えるのだ
『魔物が押し寄せている』
クローディアさんがそう口にすると、冒険者達は顔をしかめる
そこにはゼルディム率いるソードガーデンや街一番の冒険者と言われるエーデルハイド、そしてバーグが所属する夢旅団なども勿論真剣な顔を浮かべて彼女の話を聞いていた
疫病から復活したバーグはグリンピアに帰って早々と休む暇もなくこの場に駆り出されてしまうのも酷な話だ
『魔物は別に問題ないわ、でもそれを発生させた元凶はとんでもなく強いと聞いているわ』
ドラゴン
『どういうことですかいクローディアさん』
『私から言うよりも実際に遭遇したエーデルハイドがそれを知っている』
全ての冒険者の視線がエーデルハイド、その中でもクリスハートに集まった
彼女は腰の剣のグリップを握り締めながらもクローディアの前に歩き、振り向いてからその場の者に聞こえるように話し始めた
『信じられないかもしれませんが実際に私達が遭遇した化け物です。強さはランクAは確実、獣人里の国の元獣王であるヴィンメイです』
バーグ
『過去の戦人じゃないか。蘇ったとか面白い冗談過ぎて信じ難いんだが…』
『そう思うのは仕方ないですバーグさん。しかし本当に蘇ったんです…』
ゼルディム
『まぁ一先ず聞きましょう』
誰もが冗談だろうという雰囲気でクリスハートの説明を聞いていた
数百年前にいた過去の偉人が蘇るなんて誰も信じるなど難しい事である
クリスハートは一息つくと、口を開く
『大きな鉄球がついた棒を振り回すだけで風圧が起き、大地を叩けば地形を変えるほどの剛腕。吠えるだけで風が起きて全てを吹き飛ばし、拳を握って魔法を放てば視界に映る全てを吹き飛ばします』
クローディア
『アカツキ君達率いるイディオットとエーデルハイドは奴の右手首の切断が精一杯だったのよ。そこで奴は逃走したってわけ。それが戻ってきたのよ』
冒険者
『狙いは何すか』
クローディア
『復讐ね・・・。魔物の大群は奴の犬笛で操られた集まりよ…、冒険者でその魔物を街に近付けさせないようにしなさい!本体は私とエーデルハイドそして助っ人と共に撃退するわ!』
ゼルディム
『そちらに加勢しても?』
彼はそう告げると、クローディアは無慈悲にも凍てついた顔を浮かべ、全員に対して答えるように周りを見渡しながら答えた
クローディア
『無理よ。アカツキ君達やエーデルハイドのみんなが生きているのも奇跡なんだからね』
冒険者はザワつきだすと、クローディアは『10分後出発!直ちに支度しなさい!』と言ってからバーグ率いる夢旅団に魔物討伐の指揮を頼んだ
バーグ
『俺達ですか…クローディアさん』
クローディア
『頼むわ、私は化け物退治しないといけないのよ』
プラオ
『まぁ魔物退治は冒険者の仕事だしな。』
クリスハート
『頼みますバーグさん』
バーグ
『仕方ない。奥さんに帰りにサンマ買ってこい言われてるの忘れそうだ』
バーグの精一杯の冗談、ではない
本当に言われたと彼は苦笑いを浮かべて口を開くと、クローディアさんも苦笑いを浮かべる
シエラ
『他の冒険者、指示お願いしますバーグさん』
アネット
『頼みますよん!』
バーグ
『了解だ。』
彼は任されると、ギルド内の冒険者に指示をするために彼自身が信頼するチームの頭を集め始める
(頼んだわよバーグ)
クローディアはそう思いながらも受付の前でエーデルハイドと共に現状をどう打開するか真剣に話し始めた
クローディア
『アカツキ君のお父さんのゲイルさんは家族の安全を確認してから来るわ。シグレ君もよ』
クリスハート
『でも今回…どう思いますかクローディアさん』
クローディア
『リリディ君のパートナーのヒドゥンハルトがいないのが痛いわね』
もし今回の事態にヴィンメイがいたとなればそれは深刻だった
あれを撃退したのはヒドゥンハルトこと、ギルハルドの手柄が大きかったのだ
力のごり押しで全てを消し飛ばす化け物でさえ、それを行使させないほどの速度を叩きだす攻撃になす術がなく逃走したからである
(ハイムヴェルトさんがいれば…)
クローディアは悔やみながらも溜息を漏らし、『私が道をこじ開けるから遅れずついてきなさい』とエーデルハイドの強く告げた
10分は直ぐに経過し、全ての冒険者を引き連れてクローディアはギルドを出た
会話を交わす者は殆どおらず、警備兵の誘導されて東の街に避難する人々に顔を向けている
その光景を見るだけで異常すぎる事態を更に実感し。会話をする気にもさせないのだ
バーグ
『この世の終わりみたいな感じだね』
フルデ
『でも本当に獣王が蘇ったのかな』
ドラゴン
『人の知る世界は狭い。あり得ない事も起きるから人は進化するんだ』
バーグ
『にわかに信じられないが。実際いけばわかるだろうな』
ドラゴン
『俺は魔物のお母さん相手にする気はないぜバーグ?見たら後悔する事実も時にはある』
そんな会話を聞きながら先頭を歩くクローディアは鉄弁を肩に担ぎ、エーデルハイドにとあることを聞き始めた
リゲルとクワイエットはどこにいる、と
彼らは暇を持て余してしまうからとアカツキ達を追ってウェイザーに向かいましたとクリスハートが伝えると、クローディアは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた
(とことん今回は運が悪いわね)
溜息が漏れる彼女は近くをすれ違う警備兵を呼び止め、横を歩いて答えなさいと真剣な顔で彼に言った
警備兵は困惑した様子でクローディアさんの横を歩きながら耳を傾け、彼女の言葉を耳にする
『避難はいつ終わるのかしら?』
『1時間以内で完了させよとゲンコツ長から言われております』
『遅いわね』
『仕方がありませんよ。ウェイザーの街は疫病で封鎖中、あそこならば今頃非難は終わってますが東街は遠いんですから』
(こんな時にウェイザーも変な疫病なんて起こして…)
とことん運が悪い、クローディアは舌打ちをした
警備兵は機嫌がすこぶる悪い彼女に少し顔を強張らせながらも咳ばらいをし、続けて話す
『各地区の人間が避難したかの確認を除けば10分以内、今頃ゲンコツ長も家族の安全を確認して向かっているかと思います』
『わかったわ。冒険者で森に入るから警備兵30名ほど森の入口を固めなさい…』
『ですがゲンコツ長は…街の配備に数をかけろと・・』
『入り口を固めなさい』
警備兵は彼女が折れないと思い、渋々頭を縦に振った
彼を解放してから後ろに目を向ける
冒険者の顔を伺うためだ
だが深刻そうではあるが、やる気がないわけではない
それなら大丈夫だとホッとしながらも彼女は冒険者を引き連れて森の入口に辿り着いた
大きな扉の前には警備兵が10名監視で残っており、クローディアの顔を見るとハッとした様子を見せてから言葉を交わすこともなく大きな扉を開けたのだ
引分タイプに開く扉が動き、暗闇の染まる森が見えてくると警備兵の1人がクローディアに近づき、声をかける
『時期にゲンコツ長も来ます。それまではご辛抱ください』
ゲンコツ長とはアカツキの父であるゲイルのあだ名だ
拳一つで街の治安を守り、魔物を倒すことからゲンコツ長と部下からも言われている
クローディアさんは警備兵に頷き、『魔物の距離は?』と問う
『5㎞地点までもうすぐ到着するかと思います』
『調査員からの連絡は?』
『途絶えてます、手遅れですが最後の連絡は300の数の魔物がこちらに向かっているとの通信が30分ほど前に』
(逃げれなかったのね)
クローディアは頭を抱えながらも『私達が森に入ったら扉を締めなさい』と警備兵に指示し、そして振り返ると多くの冒険者達に最後の選択肢を与える
『私達がここを出れば扉は閉まるわ、魔物を入れないためよ…逃げれなくなるけどもそれでも魔物を倒す意気込みがある者はついてきなさい!自信がない者は警備兵と共にここを守ることも可能よ?1年以内に冒険者になって慣れてない者は出来るだけこの場で警備兵との連携を推奨するわ!だけども手練れは来なさい!防げなかったら街は終わりよ!あんたたちの飲み食いの場が明日の朝には消える事態を阻止し、街を守ることに今回は貢献しなさい』
冒険者達は笑いもせず、僅かに頷く
だが少数の者はそんな雰囲気にも負けずにいつも通りな冒険者もいた
ミーシャ
『私は遠くからペチペチ撃つから美味しそうな冒険者は前で頑張ってね?』
グリンピア中央学園の実技講師採用試験に参加している女性魔法使いのミーシャであった
彼女だけじゃなく、他にもそれに参加していたものはここにはいた
ロトム
『やる事変わらん、魔物倒す、岩で!』
ロズウェル
『まぁ数がちっと多いだけだろう?魔石の取り合いだな!』
ゼルディム
『こっちだって数はいるんだ。今更怖気てどうなる…』
やる気ある声にクローディアは安堵を浮かべ、その場でここに残る冒険者チーム5組を残して扉を通過していった
『ご武運を!』
防壁の上から警備兵が叫び、頭を下げていた
それと同時に後方の扉が徐々に閉じていき、完全に閉まると冒険者は口を開き始める
『親玉は俺達じゃないだろ?いつもの魔物退治なのは確かにそうだな』
『魔物の親分は流石に顔を拝みたくはないな。』
『まぁこっちもこの数だぜ?約30チームもいるんだ』
バーグ
『魔法使い職は松明やオイルランタンで灯りを確保!なるべく周りを照らして皆の視界を確保してほしい!ギルド内でも伝えたが、森に入ったら10チームで横隊を3列編成で作れ!1体も魔物を後ろに通すな!』
彼の指示で冒険者は徐々に列を変え、横に広がっていく
松明やオイルランタンの灯りで視界を確保しつつもクローディアはエーデルハイドと共に森の中に1歩踏みしめると足を止め、後ろの冒険者達も同時に動きを止めた
クローディア
(本当に静かな森ね…)
クリスハート
(凄い静か…)
バーグ
(夜は何度か来たことあるが、何かが可笑しい)
生き物がいる気配がない
いつもと違う顔を見せる森に冒険者の殆どが不気味さを覚えた
足音だけが響き、白い吐息わ吐きながら静かに歩いて進んでいく
満月が浮かぶ夜の空、無風の森の中で魔物の気配が一向に感じない事に一同は驚く
クローディア
『獣王ヴィンメイはどんな化け物かしら』
隣を歩くクリスハートに彼女は小声で問いかけた
『大きな獅子の顔をした獣人です。口から圧縮した空気を弾のように飛ばしてきたりもします。』
『あれもアカツキ君狙いね?』
『そうです。技スキルはわかりますんが魔法スキルはノヴァツァエラと言うあり得ない威力の破壊魔法を使います。』
ノヴァツァエラ、それはアカツキ達を容易く吹き飛ばし、危機に陥れた凶悪な魔法スキルであった
強烈な衝撃波で全てを一瞬で吹き飛ばすそれは物陰に隠れても意味はあまりない
塹壕のような場所でもなければ回避は難しく
逃げる選択をしても間に合わない
『知らない魔法スキルね』
『それが全てを吹き飛ばす魔法です。あとは単純な腕力での強力な攻撃ですが、まだ隠し持つスキルがある可能性はあります』
『右手首はギルハルドが切り飛ばしたのよね?』
『はい。』
クローディアはそこまで話すと、辺りを見回してから足を止めさせ、バーグにここで敵を待つと指示を出した
松明の灯りが辺り一面を十分に照らし、冒険者の一部が邪魔な茂みを斬って見晴らしを良くしようと急ぐ
1分も経過せずにある程度奥まで見えるほどにまで茂みを刃物で斬り、バーグの指示で横隊を組んで冒険者が並ぶ
魔法使いの者は手に松明を持ったまま別の手でいつでも魔法を放てるように森の奥に目を細めて見つめ、近接職の者は姿勢を低くして魔物を待つ
『ぶつかったら青の発煙弾を!』
クローディアはその役を担う冒険者のそう告げると、彼は数回小さく頷き、手に地面に叩いて爆発させて空に打ち上げるタイプの発煙弾を握り締める
バーグ
『300か』
ドラゴン
『こっちは総動員だぜ?』
アネット
『でも魔物が波みたいにくるのは初めてだねぇ』
クリスハート
『これは確実にあいつの仕業ですね。』
クローディア
『話でしか聞いたことないけど、魔物の気配はあってもその親玉の気配はないわね』
クリスハートは驚いた
まだ冒険者の誰もが魔物の気配など感じていないのに彼女だけは感じているというのだからだ
(広すぎる…)
彼女はそう思いながら、魔物の気配の数を聞くと、クローディアは『500』と口にした
調査員の最後の300とは比べ物にならないくらいの数に冒険者は驚愕を浮かべる
シエラ
『クローディアさん、距離は』
クローディア
『1㎞先、C以下が基本的に多いわ』
ゼルディム
『Cの数はわかりますかクローディアさん』
クローディア
『そこまではわからないわ、でも多くはない』
彼女はそう告げると、皆に3分後にはぶつかるから覚悟を決めなさいと言い、前に立ったまま森を睨みつけた
その横にクリスハート率いるエーデルハイドが近寄る
クリスハートの額には汗が流れ、呼吸を整えながらいつか感じるであろう魔物の気配を待つ
くしゃみをする冒険者がいれば、薄着で体をブルブルと震わせる者もいる
しかし、その寒さも時期に暑くなるだろう
(できればあれはいてほしくはないですね)
クリスハートはそう思いながらも仲間と顔を見合わせ、会話を交える
アネット
『あの獅子の化け物は流石に辛すぎるわ』
シエラ
『戦力、足りない』
クリスハート
『でもやるしかないです。こちらにはクローディアさんがい…』
そこで彼女はおぞましい数の魔物の気配を感じ、驚愕を浮かべて森に剣を構える
徐々に他の冒険者達も気配に気づき、驚きを顔に浮かべて覚悟を決めていく
『すっげぇ数だぞ…この世の終わりか!?』
『なんっちゅう気配の数だ、稼ぐだけ稼いだら2列目と交代だ』
バーグ
『ここを墜とされたら街が危ない、みんな何としてでも死守してくれ!』
『バーグ!入口も固めてるんだよな?』
バーグ
『あそこには警備兵もいる!いくらか魔物を通したとしても追うな!陣形を崩されたらそれこそ危険だ』
クローディア
『もう少しで顔が拝めるわよ!』
バーグ
『魔法使い!構え!』
松明の灯りと共に魔法使い達が伸ばす手の先から魔法陣が現れる
息を飲み、待ち構えるグリンピアを守る者の耳に徐々に迫る者の音が聞こえ始めてきた
地面に落ちた枝木を踏む音、呻き声や唸り声、特徴的なゴブリンの声も森の奥から聞こえてくる
ドラゴン
『魔法使いは魔物の先頭軍団に1発お見舞いしたら今後は奥に向けて撃て!使い過ぎるなよ!』
ロズウェル
『さぁ来やがれ!』
ミーシャ
『面白い1日になるわねぇ。』
ゼルディム
『離れ過ぎずに味方の近くで戦え』
それぞれがそう口にした数秒後、クローディアは凍てついた眼を森に向け『始まるわよ』と告げた
『ガァァァァァァァ!』
『ブギィィィ!』
ランクEのエアウルフにランクFの赤猪がワラワラと森の中から飛び出して冒険者に突っ込んでいく
2種の魔物だけじゃなく、そのあとすぐに姿を見せたのはC以下の魔物であるハイゴブリンやコロールそして格闘猿やグランドパンサーだ
冒険者の1人は発煙弾を地面叩きつけ、小さな爆発を起こすとそれは空に打ち上げられてから再び爆発すると、青い光を放ちながらゆっくりと落ちていく
『撃て!』
ドラゴンが驚きながらも叫ぶと、様々な魔法スキルが先頭で身構える冒険者の頭上を通過し、走ってくる魔物に命中していく
しかし数があまりにも多く、気休めでしかない
バーグ
『1陣!いくぞぉぉぉぉ!』
バーグが叫ぶと、冒険者達は大声を上げながら襲い掛かる魔物に駆け出す
『運動させてくれるなんてね』
クローディアは飛び込んでくるグランドパンサーを蹴って吹き飛ばすと、近くにいたゴブリンを鉄鞭で吹き飛ばして別の魔物に当てた
『クローディアさん!』
クリスハートは出過ぎな程に前に行く彼女に声をかけるが、止まる気配はない
それよりもクローディアが歩く邪魔をする魔物が宙を舞って吹き飛ばされている
(元五傑…)
クリスハートはそれを再認識させられた
自分達が心配するなどおこがましいのかもしれないと彼女は考えた
『ゴルルァ!』
『!?』
クリスハートは錆びた剣を振り下ろしてくるキングゴブリンの攻撃を弾き返してから体を回転させ、両断すると近くにいたゴブリンや格闘猿、赤猪やエアウルフを斬り倒していく
『ファイアーボール!』
シエラはエアウルフに火球を飛ばし、命中させて燃やす
まだ低ランクが多く、並みの冒険者でも対応が利く状況であったため、バーグも周りを見ながら戦うことができていた
(そろそろか)
彼はそう感じ、足元から飛び込んで噛みつこうとしてくるエアウルフを斬ってから『交代!交代!』と叫んで控えていた冒険者を前に出した
『ギャギャ!』
『ゴブリンごときが!』
冒険者は愚痴を口にしながらも魔物を倒す
だが森からなだれ込む魔物の勢いは止まらず、本当に先があるのかと誰もが思い始めた
『吹き飛びなさい』
クローディアが囁くようにして言い放ち、鉄鞭をその場で振る
すると正面から襲いかかる魔物が一斉に何かに衝突したかのように吹き飛んでいったのだ
冒険者は何をしたのかは理解できなくても、クローディアさんだしと納得するのだろうが、今はその暇はない
『うわぁ!』
冒険者の1人がグランドパンサーに飛びつかれたが噛みつかれる寸前で剣を咥えさせ、転倒する
倒れながらも押し込まれまいと必死に抵抗しているところをゼルディムは気づき、横から剣を貫いて倒す
『助かるわ!』
『直ぐに他が来る!立て!』
シエラ
『横!』
ゼルディムはその声にいち早く反応し、振り向きざまに剣を振る
『グフッ!』
コロールが忍び寄っており、ゼルディムはその首を斬り裂いて倒す
(数が減らない)
そう思いながら彼は近くまで迫るゴブリンや赤猪、そしてグレイバットという大きな蝙蝠を倒していく
すると彼だけじゃなく、他の冒険者も冒険者を飛び越えて街に向かう魔物を目で捉えた
乱戦でそこまで手が回らず、舌打ちをしながら冒険者の1人が叫ぶ
『突破されたぞ!』
『大丈夫だ!入口にもある程度いる!』
クリスハート
『今はその場に集中しましょう!数は少なくなってますがまだいます!』
その数をもの凄い速度で蹴散らしているのが、クローディアであった
無表情のまま、鉄鞭を振ると近くの魔物は吹き飛んでいく
魔物の群れに交じるCランクのブラック・クズリが森の奥から数頭、姿を現すとクローディアはデコピンをするような仕草で指を弾き、圧縮した空気を飛ばしてブラッククズリの頭部を撃ち抜いて倒す
クローディア
『2頭、そっちいったわよ』
冒険者
『ブラッククズリだぞ!倒せる奴来てくれ!』
クリスハート
『バーグさん!』
バーグ
『わかった!ドラゴンプラオフルデ行くぞ!』
ゼルディム
『俺達もいくぞ!お前らついてこい!』
彼女に言われたバーグは仲間と共にその場から移動し、ブラッククズリの対応に向かおうとした瞬間にそれは起きた
森の奥深くから聞いたこともない大きな咆哮が鳴り響き、地面を振らし風を起こす
冒険者達は動きを止め、森に視線を送る
そんな暇などない筈、しかし魔物も森に顔を向け、動きを止めたのだ
シエラ
『これ、あいつ!』
アネット
『やっぱりいる!』
ゼルディム
『なんなんだ!今の鳴き声は!』
クリスハート
『クローディアさん!』
彼女は叫ぶと、クローディアは凍てついた顔を浮かべ、近くの魔物を蹴散らしてから小さく呟いた
『エーデルハイド、行くわよ』
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