第117話 花駆除大作戦4
※アカツキ視点
俺はティアマトと共に回復魔法師会の臨時施設に戻った
入口前で足を止め、街の人が列をなして検査をしてもらおうとしている光景を再び目にした。
先ほどよりも多い、そして担架で騎士に運ばれている者が2人連続で建物内に運ばれていく
その殆どが咳込んでいて苦痛を浮かべていた
『この街の飯は食えねぇってのに食ったのか?』
ティアマトは半分呆れた表情を浮かべてそう告げる
危機感がなく、軽はずみでこの街で作られた物を口にした可能性もあるが、それは予想だ
『そうかもな』
彼にそう答え、中に入ろうとすると入り口を監視する騎士が変わりに説明してくれたのだ
『直ぐに発症しないのだ。人に個人差があり、直ぐに症状が出る者がいれば時間がかかる者もいる。今運ばれている街の者は免疫がそれなりに強かったが、持ちこたえられなかったのだろう』
回復魔法師会の騎士だ
溜息を漏らし、列をなす街の人を見ている
なるほどな、遅れて症状が出た人が今運ばれているのか
『そういえば、今はこの街の人は外の街の物資で生活していると言ってましたね』
『その通りだ、だがそれも時期に終わる』
『終わる?』
どういう意味だ?
俺は彼に聞いてみると、『悪夢は去ったからな、中に入ればわかる』と自信満々に答えた
気になってしまい、ティアマトと顔を見合わせた後に中に入り、ティアがいる広めのホールに向かった
そこで騎士の言う答えがわかったのだ
『はい!』
『あ…ありがとう』
ティアが何かを飲ませている、それはきっとテラ・トーヴァが話していた治す方法だ
らっきょうをお茶に混ぜて飲むというなんとも芸の無い治療法
それを彼女がしていたのだ。今思うと俺達は調査で出ていたからそれを出来るのは彼女だけだ
とても不味い熱いお茶を患者に飲ませている
始めてきたときは安易ベットの横たわる感染者は苦しがっていたのに、今はその数は減って静かに寝ている者が多い
《頑張ってるじゃねぇか》
テラ・トーヴァがそう告げる
彼女の近くにいる魔法師会のレミエッタさんとアンジェラさんも熱いお茶を患者に飲ませてまわる
レミエッタ
『本当に凄い、寝ることが出来ないくらい苦しがっていた患者が…』
アンジェラ
『これって魔法師会あんま意味ない感じだけど…』
彼女らは驚きながらもティアがお茶を飲ませた患者に肺炎用の錠剤を飲ませてまわっている
『不味い…吐きそう』
ティア
『飲まないと治りませんからね!』
無理やり患者に飲ますティアもなかなかに、あれだな
俺とティアマトは邪魔せず、彼女たちの様子を眺めていると後ろからモーラさんが現れ、俺達に話しかけてきたのだ
『千年に一度の逸材、よもやここまでとは…』
『モーラさん、ここの調子はどうですか?』
『明日には全ての患者が落ち着くでしょう。医者会や総合研究会にも治療方法と発生原因の事は連絡魔石にて伝えました。半信半疑でしたがテスラ会長さんからもティアさんの言葉通り動けば大丈夫ですと言ってくれたので効率よく事態は静まる筈です。残り2つの臨時治療施設も今はらっきょうをすり潰して混ぜた熱いお茶を飲ませることは伝えてますのでここと同じ光景になっていると思いますよ』
『そりゃよかったぜぇ。んで湧き水施設だが真っ黒すぎて笑ったぜ?』
ティアマトがそう言って話すと、モーラさんは頭を抱えた
『水が原因というのは間違いなかったようですね。その事実を直ぐに確証として伝えます…』
モーラさんは他の疫病対策会の組織に連絡するため、2階に戻っていく
なんだか肩の荷が降りた気がする、彼女らを手伝う事も出来るが3人だけで大丈夫そうだ
《ティアちゃん!後ろの男が声でないほど弱ってるぜ?》
『えっ?テラちゃん』
そこでようやくティアが俺達に気づいた
声をかけようかと迷っていると、テラ・トーヴァがティアと話す
《そこの男だ、俺にも飲ませてくれって念じてる。弱り切って目でしか苦痛を訴えれないようだが早く飲ませないと半日で死ぬぞ》
『すいません!今飲ませます!』
ティアはテラ・トーヴァが指示した男にお茶を飲ませる
口は動くようだが声は出ない。まだお茶が飲めるぐらいの余力があったようであり、チビチビと熱いお茶を男は飲む始める
『ごめんなさい、テラちゃんが言うまで気づかなかった』
ティアは申し訳なさそうに言いながら飲ませるけど、それを患者に言ってもわかる筈がない
《ティアお嬢ちゃん、隅のベットに横たわる小僧がトイレいきたくでも衰弱した体で動けないから声をかけたいけども女性に言うのは恥ずかしいからどうしよって考えながらデカいの我慢してるぞ?ここでバイオテロが起きるまでに対処したほうがいい》
お前、心が読めるのか!?
ティアは部屋の隅のベットに横たわる中等部ぐらいの年齢の少年に近づくと『おトイレ行きたいんだよね!今騎士さん呼ぶからね!』と言う
当然、男の子は凄い驚いていたよ
その気持ちはわかる…まるで心を読まれたって感じるだろうしな
ティアは直ぐに、このホールで監視する騎士3人に向かって『大きいの出そうって言ってるからトイレまで連れていってあげてください』というと騎士達は『わかりました』と律儀に彼女の指示を聞き、1人が少年に肩を貸してお手洗いに連れていってしまう
『他に苦しい人はいませんか?』
ティアがホール内でそう言いながら辺りを見回す
しかしこの時、殆どの感染者にらっきょう入りの熱いお茶を飲ませており、これ以上被害が大きくなることは決してなかった
アンジェラ
『テスラ会長がゾッコンの理由わかるわぁ…1人現れただけで疫病がこんな容易く静まっていくなんて…』
レミエッタ
『てかさっき患者の心の声聞かなかった?危ない患者とかよくわかったわね…みんな同じにしか見えないのに…』
ティア
『あはは…』
ティアは笑って誤魔化していた
天使の声じゃなく、戦神の声とは言えないよな
《よくやった。あとは他の奴らが施設の制圧して戻るのを待つだけだな》
アカツキ
『リリディとリュウグウが大丈夫だろうか』
ティアマト
『2人と1匹だぜ?あれで心配なんて俺は出来ないぞ?』
そう言えばそうだな
ギルハルドいるし
《あいつらだけじゃねぇぜ?くふふふ》
テラ・トーヴァが笑いながら意味ありげに言ってくる
俺はどういうことだ?と彼に聞いてみたけども《入り口に行けばわかる》と行動を強いられた
ティアに『入り口を見てくる』と伝え、ティアマトと共にテラ・トーヴァのいう通りに入り口に向かうと、理解できたよ
『南区って近いなクワイエット』
『そだったね、しかも水没した地下で魔物退治とかちょっと意外だったし寒い』
リゲルとクワイエットが何故かいた
しかも下半身が濡れたまま、俺達は乾かしてきたからいいけど、こいつらはそのまま来たらしい
アカツキ
『お前らなんでいるんだ?』
リゲル
『は?暇だったからだ、悪いか?』
俺はどう答えていいかわからず、気難しそうな顔を浮かべた
クワイエットだけが普通に話してくれるとわかっている俺は彼に聞いてみると、どうやら暇すぎて話を聞きつけてついてきたらしいんだよ
途中で見失って探したらこの施設を見つけ、中に入るとティアを発見して俺達が何をしているか聞いたようだ
そこで南区行ってみようぜって流れになって行ってきたという事だ
『聖騎士も仕事がなきゃこのざまか』
ティアマトがそういうと、リゲルはあざ笑うように言い返す
『これが仕事だ』
リゲルはそういうと、クワイエットを連れてグリンピアに戻ると言って去っていく
あとは1つ施設を見るだけだ西区だな
アカツキ
『ティアは明日も残した方がいいだろうな、残る西区は4人で行くか』
ティアマト
『1匹もいるぞ?』
アカツキ
『わかってる…ん?』
遠くから見慣れた仲間が歩いてくる
リリディにリュウグウだ。ギルハルドはリュウグウに抱っこされているようだが、歩かないのかお前
でも可笑しい事にリリディが誰かを縛ったまま連れてきている
中年のいい服着たオッサンだ
俺とティアマトは顔を見合わせ、首を傾げる
するとここまで来たリュウグウがしかめっ面のまま、入り口付近を監視する回復魔法師会の騎士2人を呼び、単刀直入に説明したのだ
リュウグウ
『疫病の原因は湧水施設だ、連れてきたこいつは4つの各区の社長のピエって奴よ。毎週の貯水タンクのメンテナンス費用をケチる為に月に1回にしたところ、貯水タンク内とパイプ内に毒素を花種の魔物が繁殖したらしい』
騎士A
『なに?』
騎士の顔が険しくなり、拘束されているピエ社長に顔を向けた
しかし彼はビクビクしながら顔を逸らす、凄い怯えてるのがわかる
リュウグウ
『ただの花の魔物だろうと放置していたらしいが…毒素をまき散らすとわからずにそのままにしたって事よ。疫病が流行ってから薄々作業員とこの馬鹿社長は気づいたらしいが、隠そうとしていたぞ?』
騎士2人はそこまで聞くと、拘束されているピエ社長の左右に移動し、肩を叩く
ピエ社長の顔は真っ青であり、今にも死にそうな雰囲気だ
騎士B
『このまま警備会の臨時詰所までご同行いただきたい』
騎士A
『嘘を吐けば、死刑は確実だぞ?この国の国王は嘘は大嫌いなのはわかるだろう?』
ピエ社長
『…はい』
騎士は施設の中から騎士を2名呼ぶと、ピエ社長を連行してどこかに行ってしまった
リリディ達の所は大穴だったみたいだな
騎士がモーラさんに湧水の現況を伝えるため、1人が施設の中に入っていく
それにしてもメンテナンスというとその内容は色々大事な作業があるらしく
貯水タンクの中にたまった苔掃除やフィルター交換など諸々がある
リュウグウ
『しかもメンテナンスを月で1回だけにしても週一のままで記帳していたとか叩けば埃だらけの社長だった』
ティアマト
『それ時間たてば直ぐバレるくね?』
リュウグウ
『普通そうなんだが…補助金の横領とか色々漏らしてたぞあの社長』
アカツキ
『真っ黒過ぎて意味わかんないんだけど』
リュウグウ
『流石に私らの管轄外だ、そこは忘れよう…』
《まぁお疲れ、それにしてもリュウグウは変わったな…ステータス》
テラ・トーヴァがそう告げると、リュウグウはいきなり自慢げな顔を見せて胸を張る
もう少し胸が成長していれば…俺は見る場所に困っていただろうな
『聞きたいかお前ら、そうか聞きたいか…』
リュウグウが勝手に話を進める
困惑する俺とティアマトに向かってリリディは目だけで俺達に何かを訴えている
何度も小さく頷くその音のない彼の伝言はきっと『はい』と言えという事だ
彼女に頷くと、ステータスを見せてくれた
・・・・・・・・・・
リュウグウ・モチヅキ
☆アビリティースキル
突強化 【Le4】
スピード強化【Le3】
気配感知 【Le3】up↑
動体視力強化【Le4】
限界突破 【Le1】
☆技スキル
鬼突 【Le2】
三連突【Le2】
シャベリン【Le1】
ドレインタッチ【Le1】
稲妻花槍突【Le1】new
槍花閃【Le2】up↑
☆魔法スキル
称号
星渡(ホシワタリ)・女花
☆称号スキル
隠密 【Le3】
運 【Le4】
安眠 【Le2】
状態異常耐性【Le2】
スキル発動速度【Le1】
特殊魔法『ラフレイル』
・・・・・・・・・・
『どうだ熊五郎!私にも魔法がっ!』
『うわっ!似合わねぇ!』
『乙女に向かって!』
ティアマトは脇腹を殴られ、悶絶しながら地面でゴロゴロしている
それは言っちゃいけない、俺は喉まで上がってきた言葉を飲み込んだと同時に彼が口にしてしまったため、リュウグウに殴られた
『まぁ、良いだろう…許す』
気持ち悪いくらい機嫌が良い
それにはリリディもチラ見何回もして動揺していた
《お前らのすることはねぇ、あっちもな》
あっち?その意味は向こうから来る
ティアがニコニコしながら臨時施設から出てきたのだ
ティア
『一通り終わったよ!モーラさんが明日は大丈夫だから待機でお願いしますってさっきいってた』
アカツキ
『さっき騎士がモーラさんとこ行ったと思うけど』
ティア
『話は横で聞いてたよ、西区には騎士と警備兵と総合研究会の人が今日中に調査に向かうから私達が行かなくても大丈夫らしいの』
なるほど、それならば俺達の仕事はない
少しティアがふらついたので俺は素早く彼女の肩を掴んで支えた
結構バッタバッタと動いているところを見たしあの調子でずっと動いていたんだろうな
『少し疲れちゃった』
それでも彼女は笑う
『宿に戻ろう』
『ニャハーン』
こうして一度、皆で自室に戻る
リリディとリュウグウは水没した地下に入ってから乾かしていないから下半身が濡れたまんまだ
冬になったばかりだし乾くなんて無理だな
20時頃、俺は1回のロビー内にある休憩所のテーブルを使い、更に乗るポテトサラダと五目ご飯を食べていた
テスラ会長から頂いた食料だ
全員が宿の部屋にある浴衣を着ている
洗濯をフロントマンに任せたからな、ここの水は湧き水を使用しているから危ないのだが、煮沸消毒でテラ・トーヴァが大丈夫と言ったんだ
今はその課程を済ませた水を使ってもらっているから安心だ
『ニャフフ!』
ギルハルドは体毛から紙袋を取り出すと、中にある干し肉をモグモグと立って食べ始めた
猫なのかオッサンなのかわからないな…
『ティア、眠かったら先に寝ていいぞ』
俺は彼女が食べながらウトウトしていることに気づき、そう言ったんだ
ティア
『ちょっと疲れたから食べ終わったら先に寝るようにするね』
リュウグウ
『それがいいぞティア、明日は私が起こしに行ってやろう』
ティア
『リュウグウちゃん凄い機嫌良いね、やっぱり称号だよね』
リュウグウは胸を張って頷く
とても嬉しそうにする彼女に冗談を言うつもりはない
だが魔法の特殊スキルとは驚きだよ、どんな魔法なのだろうか
リリディ
『この五目ご飯、冷たくても美味しいですね』
ティアマト
『馬鹿にできねぇな』
《良く食う野郎だぜ、ったくよ》
アカツキ
『テラ、今回は助かったよ』
ティア
『ありがとテラちゃん、流石神様!』
俺は感謝し、ティアはおだてる
テラ・トーヴァはティアのおだてに反応したんだ
《俺が天使と間違えられてただろ後半…天使の名はテラちゃんかぁとか患者が言ってたぜ?》
『平気平気!』
《かぁ~。勘弁だぜ…》
クスッとみんなが笑う
でもテラ・トーヴァの助言がなければ手探りで始まることになっていた
何故教えてくれたのか聞くと《こんな野暮用に時間くってる暇はない》だとさ
外は風が強いらしく、窓がカタカタと揺れている
暗くはない、隣の回復魔法師会の臨時施設入り口の照明で宿の前も明るい
今隣の施設にいる回復魔法師会は魔法師長モーラさんに魔法師であるアンジェラさんとレミエッタさんの3人だ
夜は交代が来るらしく、別の回復魔法師会の女性が2人が夜も施設を休ませずに行くらしい
24時間とは驚きだ
フロントマン
『明日は朝からかなり寒いので寝るときは布団と一緒に毛布をかけてくださいね?箪笥の中です』
律儀にもフロントマンが受付から出てくると、俺達に歩み寄って笑顔でそう教えてくれた
アカツキ
『ありがとうございます。疫病もおさまりそうですね』
俺は女性の店員にそう告げると、何故か近くの椅子に座って話し始めた
『水だったんですね。疫病』
『そうですね、煮沸消毒しないと魔物の菌が死なないらしいです』
俺は食べ終わったからフロントマンの女性と話すことにしたのだが
そういえば他の作業員を見ていない
彼女にそのことを聞くと、ここは彼女が経営している宿であり、1人だけで経営しているのだというのだ
凄いな…
『まぁ慣れると楽です、冒険者用の宿ですから苦労は少ないです』
冒険者は最低限のサービスで満足する者が多い
その分、1人でもやりくりできるのだろう
部屋の数も他の宿よりも少なくしているのは1人でも仕事をこなせるようにするためかもしれない
彼女は欠伸をして一息つくと、窓から声が聞こえてきた
『水は絶対に煮沸消毒して使ってください!じゃないと菌は死にません!食料の制限は解除になりますが疫病の原因である湧水は絶対に煮沸消毒してから使用をお願いします!誤ってそのまま使用した場合はらっきょうをすり潰して混ぜた熱いお茶を飲んでから肺炎用の錠剤を服用してください!ご協力お願いします!自粛期間は無期限から1週間となりました』
声が通る大きな声だ、俺達は窓から顔を覗かせて外を見てみる
警備兵が3人宿の前を通過するように歩き、先頭の男がオイルランタンを片手に叫んでいたのだ
これで増えることはないだろうな
きっと他の地区でも同じく警備兵がさっきの者のように街を歩きながら教えているのだろう
ティアは眠いのだろうが、ホッと胸を撫でおろしていた
『よかった』
『頑張ったなティア』
『みんなが、だよ』
彼女はそういった
今回はテラ・トーヴァもよく教えてくれたと思うよ
それにしても自粛の帰還が無期限とか恐ろしすぎるぞ
原因究明と治療方法が確立するまではそれで抑えるつもりだったのかもな
『明日の朝食は作ります。ある程度あなた方が止まるという事で回復魔法師会から補助金を頂いているので』
経営者の女性はそう告げると、『では明日まで服屋防具を乾燥させないといけませんので』と言って笑顔でフロントの後ろのドアに去っていく
《にしても凄い戒厳令だよな、無期限の自粛とか言いつつも街の人間を絶対に外に出さない意思を感じるぜ》
リュウグウ
『強引だが有効だ』
リリディ
『戒厳令が発令される前に外にでていた菌保持者はどうしたんですかね』
リュウグウ
『残念だが苦しんでいるだろうな。若ければ大丈夫だろうが…老いたものならば亡くなっている者もいる筈ね』
ティアマト
『まぁしかしだ、状況は良くなっていくからまずはオッケーだな』
ティア
『早く対応できた方だと思うよ。まさか湧水施設を経営する社長自身の汚職だったなんてね…』
リュウグウ
『部下を脅して隠蔽を手伝わせていたらしいからな。犯人はあいつだけだ…相当重い罰を受けるだろうが、いい気味よ』
彼女はそう告げると、椅子から立ち上がり『変態に襲われる前にティアも寝ないと駄目だぞ』と言いながらティアを連れていこうとする
そこで俺はティアと目が合う
《お?兄弟が変態だってティアお嬢ちゃんも認知しとるぞ兄弟》
『その情報はいらないぞテラ、俺は挫けない』
リュウグウ
『お前感染でもしてるのか?何を言っている?』
ティアマトが腹を抱えて笑っている
俺は途端に恥ずかしい気持ちとなったよ
『おやすみ、みんな』
ティアはリュウグウに連れられて2階に上がっていく
残るは俺達野郎3人と…
『ニャハハーン』
天井で重力を感じさせないくらいに寝ているギルハルドだ
あっちが地面なんじゃないかと勘違いするくらい普通にゴロゴロしているのが謎だ
ティアマト
『ヒドゥンハルトか』
アカツキ
『見れば見るほど新発見が多い。』
リリディ
『そうですよね、というか当分はヴィンメイも姿を現さないでしょうねぇ』
アカツキ
『猫にコテンパンにやられてからな、速度には勝てないって事さ』
ティアマト
『となるとゾンネか…』
《ヴィンメイは警戒心が高い野郎だ、きっとギルハルドを警戒しまくって様子を見るがゾンネとイグニスは別だ…あいつらが来る前にお前ら強くならないとな…今日は開闢使いそびれたし》
アカツキ
『すまんな』
《いや、花は好きじゃねぇ…》
花を食べる気はないってか
『ミャンミャー』
ギルハルドは鳴きながらな天井から床に着地すると、リリディの靴を前足でフミフミし始めた
なんだこいつ、可愛いなと思いながらも見てると『眠いと言ってますので僕も先に寝ます』と言ってリリディは椅子から立ち上がる
『猫語マスターしたかぁ?』
『今さら何を言うんです?熊の言葉も理解する僕達ですよ?』
『湧水いっき飲みさせたろかぁ?』
ティアマトがリリディの頬をつねると、リリディもティアマトの頬をつねる
俺は軽く止めてやめさせると、リリディは欠伸をしてから2階に上がっていく
『たくよぉ、今回は汚職原因の疫病だったかアカツキ』
ティアマトは椅子に座り直し、溜め息混じりに口を開いた
簡潔にするならばそれが一番わかりやすい
それにしても繁殖力が凄い花魔物だったなぁ
ランクが低くて助かったよ
かなりの数の相手だったこともあり、ティアマトは結構な満足を覚えてくれている
『まぁそういう事だ。てか一つ思ったことがある』
『なんだぁ?』
俺は気になることがあった
冒険者活動も残り1週間は禁止されている。それは街の危険を招くこともある
アカツキ
『森に冒険者がいかないと浅場まで魔物が縄張り拡大で忍び寄る』
リリディ
『今は森への立ち入りも禁止ですからね。明日はそれの解除もしてもらわないと駄目でしょう』
アカツキ
『スキルを手に入れる為にも一度行かないとな』
俺達は強くならないといけない
今日は開闢を使わずに魔物と戦ってしまったが、それが悔やまれる
あまりの数に必死だったからな
ギルハルドは床でゴロゴロしていると、ふと宿の入口に顔を向けた
その様子を見ていると、宿の中に回復魔法師長モーラさんが入ってきたのだ
彼女と共に騎士が2人、俺達は立ち上がり、彼女に近づいていくと何やら辺りを見回している
『ティアさんは寝てしまいましたか…』
『さきほど部屋に戻ったので休んでいるかと思います』
『そうですか…』
モーラさんの顔色は険しい
疫病の蔓延を阻止しているというのにだ
別の何かでも起きたのだろうかと俺はモーラさんにどうしたのか聞いてみると、俺達は驚愕の事実を聞くこととなる
『さきほどグリンピアで我々回復魔法師会の指示を出すテスラ会長から連絡がありました。グリンピアに魔物の群れが押し寄せている、と』
俺は一瞬、頭が真っ白になる
何故このタイミングでそんな異常事態が起きるのだと
焦りを浮かべていると、《今行っても間に合わねぇぞ兄弟!》とテラ・トーヴァが口を開く
だが自分たちの街が襲われるとなると一大事であり、突っ立っているなど到底できない
リリディ
『どんな状況ですかモーラさん』
モーラ
『まだ街に魔物は到達していません。緊急事態速報を街は発令し、動ける全ての冒険者を総動員させて森に向かわせるように今ギルドに集結させていると聞きました。』
ティアマト
『くそが!どうみたってあいつじゃねぇかよ!』
彼の言葉にモーラさんは首を傾げる
しかし、知らなくて当然だ
魔物を一気に動かせる奴なんて俺達は1体しか知らない
こっちにはあいつの天敵であるギルハルドがいる
最悪なタイミングだ。俺達の読みが外れていることを俺は強く願ったよ
《ギルハルドがこっちにいるのは仕方ねぇがよ!グリンピアにも猛者はいるだろ。信じろ…》
リリディ
『さて…居ても立っても居られないんですけどねぇ』
《まぁこっちでやることはやった。この女に帰るって言ってから部屋に戻った2人起こしてダッシュで向かってもグリンピアにつく頃には終わってる。ティアお嬢ちゃんは相当な疲労だ!行くならリュウグウを付き添いにしてお前らで行け》
アカツキ
『モーラさん!ティアとリュウグウを置いていきますので彼女達をお願いします』
モーラ
『護衛を宿に配備させます。今回の件は誠に感謝しておりますがお礼は追って連絡します。行きなさい』
俺達3人と1匹は直ぐに宿の経営者に話し、半渇きでもいいからと防具と服を受け取って着替えると、モーラさんから馬3頭を借りて宿を飛び出した
真っ暗な街の中を馬に乗って走りながら、俺達は口を開く
アカツキ
『きっと獣王ヴィンメイだ』
リリディ
『初見じゃあれは辛いですよ』
ティアマト
『だがエーデルハイドがいるからどんな野郎かは話してる筈だ!』
『ニャハーン』
ギルハルドはリリディの後ろで馬に乗ってのんびりと気楽な声を上げる
こいつがいれば問題なかったというのに…何故グリンピアにそんな事が起きるんだ
《ヴィンメイじゃなきゃいいが、あいつならかなりの被害者出るぜ?覚悟しな!》
俺達は強く頷き、馬を走らせた
グリンピアに向けて
花駆除大作戦 終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます