第113話 強力な助っ人とリゲルの過去

次の日、イディオットで冒険者ギルドに足を運ぶと俺達は2階応接室で気を張りながら大きな長テーブルの椅子に座っていた

そこには俺の父さんもおり、クローディアさんもいる


聖騎士会の聖騎士長、ロイヤルフラッシュが来る予定になっている


《まぁ気楽に行こうぜ》


テラ・トーヴァがそう告げる

そうできたら良いんだがな


『暴れないかな』


隣にいるティアが心配そうに言うと、クローディアさんは『その時はぶっ叩く』と話しながら鉄鞭を肩に担ぐ


ロイヤルフラッシュと俺達の敵はほぼ同じ、世界騎士イグニスだ。

ゾンネやヴィンメイもいるのだが、上手く話し合って協力関係になれればこちらの不安も軽減できる


『そういえば貴方達に面白い話があるんだけど、馬鹿との話し合いが終わったらこのまま応接室にいなさいよ?』


クローディアさんがニコニコしながら俺達に話してくるけども、気になる


《そろそろ来るぜ》


テラ・トーヴァは人の気配も勿論感じる

どうやら来たみたいだ

ちょっと緊張しながらも深呼吸していると、入り口が開く

後ろを振り向くと俺は体が強張ったよ、ロイヤルフラッシュ聖騎士長が大斧を肩に担いで入ってきたからだ


だが彼のしでかした事にちょっと緊張がほぐれる

ロイヤルフラッシュ聖騎士長は担いだ大斧の刃の刃が部屋に入る際、ドアにあたって傷ついた


『あ』


『はい弁償』


クローディアさんが無表情のまま告げると、ロイヤルフラッシュ聖騎士長は溜息を漏らしながら奥に席に歩いていく

するとリゲルやクワイエットも彼の後に続き、部屋に入ると可愛い女性も入ってきたんだ

その女性は気弱そうであり、強く見えない

しかし、鉄鞭を手にしているからきっと強い…

そういえばロイヤルフラッシュ聖騎士はクローディアさんの妹を連れてくると言っていた


この人か!しかも五傑になっているってのは聞いてる

という事は、風花水月ミランダさんか



『あ、お姉ちゃん』


『さっさと座りなさい』


クローディアさんは無慈悲にしかめっ面で自身の妹にそう告げる

ミランダさんは目を泳がせながらロイヤルフラッシュ聖騎士長についていくと、4人で席に座る


『妹はこの話に関係ないわよロイヤル、ドアの外で待たせときなさい』


『…その方が良さそうだ』


せっかく入ってきたのに…

ミランダさんは切なそうな目をするとクローディアさんに向かってちょっとした反抗を見せた


『私だって五傑になったんです。ロイヤルさんからは極秘な話だと言われてますが他言する気はありません』


『五傑?ロイヤルでようやく資格があるのに貴方が資格?五傑に入れば強くなれるわけじゃないわよ』


『でも、責任感じてるし…これからお姉ちゃんみたいになれれば』


クローディアさんは溜息を漏らす

なんだか空気が重く、ロイヤルフラッシュ聖騎士長ですら身内の会話に入るのを躊躇っているのが見てわかる

静かな修羅場、その言葉が俺の頭に浮かぶと、クローディアさんは呆れた声で妹であるミランダさんに告げたのだ


『五傑になって強くなっても意味はないわ、入る前から強いから五傑なのよ』


『うぅ…』


『よさんかクローディア』


泣きそうになるミランダさんを見て俺の父さんが強めの口調で口を開いた


《まぁこの気弱な女もいれても構わねぇ…強い味方は多い方がいい》


テラ・トーヴァの言葉、俺達だけかと思った

しかしロイヤルフラッシュ聖騎士長とミランダさんが驚いている

『誰だ!』とロイヤルフラッシュ聖騎士長は席から立ち上がり、大斧を構えた

その様子を見てリゲルが腕を組んだまま、本題のスタートを口にする


『この星の戦神テラ・トーヴァですよロイヤルフラッシュさん。説明していたスキルです』


『本当に…スキルが生きているというのか』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は驚きながらも席に座る

そこでテラ・トーヴァが《神の言葉だ、協力しろ…話はアカツキがする》と珍しく俺の名を言う

全員の視線が俺に集まると、自然と心拍数が上がる

奥に座るロイヤルフラッシュ聖騎士長は獲物を狙う様な目で俺を見ているが、あれはきっと真剣な顔を浮かべているだけだ


でも怖い


『大丈夫だよ』


隣に座るティアが小声で俺に話しかけてくる

確かにそうだな、ここには信頼できる仲間がいるしな

口を開こうとした瞬間、先に動いたのはロイヤルフラッシュ聖騎士長だった


『先ずは謝罪しようアカツキ、俺の読みが見事に当たって高揚していた。冷静を失っていた』


『そうであってほしいです、こちらは喉から手が出るほど貴方と協力関係を築けたらと思っております』


『互いにそうであった方が良いな、話すがよい』


俺は今まで何があったかと話し、ロイヤルフラッシュ聖騎士長に提案をしたんだ

欲しいスキルがあれば協力を惜しまない、代わりにスキルを狙う襲撃者の対応を手伝ってほしいと

難しくなるかなと思ったけどさ、意外とすんなりな答えをロイヤルフラッシュ聖騎士長はしてくれたよ


『イグニスがお前の匂いに釣られるなら好都合、近くにいれば襲撃者など蹴散らしてくれる…。だがゾンネとは本当なのか?』


《本当だ》


『スキルの声か』


《そうさ黒豹マン、お前はのちほどリゲルに教えることがあるだろう?》


『…』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は険しい顔を浮かべたんだと思う

変わってないけど沈黙がそう感じる

リゲルはテラ・トーヴァの言葉に驚きながらロイヤルフラッシュ聖騎士長に顔を向ける



《俺は神だ、過去に起きたことは全て知っている…他の馬鹿みたいな聖騎士の奴らとは違い、リゲルとクワイエットは意外にも紳士的にお前の指示に忠実に動き、この場を設けるように動いた…見合う報酬がなければお前の近くにいた有能者は去っていくぞ?》


『わかった…。』


《まぁそれは後で話し合え。ゾンネとムゲンそしてヴィンメイにイグニスの4体がスキルを狙っているがムゲンは倒した。残りは3体…まだゾンネとヴィンメイは本調子じゃないからその前に倒したい。特にゾンネは不味い》


『どれほど強いのだ』


《イグニスと互角だが、剣の重さを吟味するとゾンネが一番強い…俺の知る人間族ではあいつを超える者は未だに生まれてない》


ロイヤルフラッシュ聖騎士長とミランダさんは驚愕を浮かべた

彼らは力を失った状態で魔物と化して蘇った

ゾンネは記憶を思い出していけば強くなり、ヴィンメイは敵を倒せば強くなっていく

そのことを俺が説明すると『とんでもない裏技だな』とロイヤルフラッシュ聖騎士長がため息交じりに答えた


2人には敵の詳細を教えると、ミランダさんが弱弱しく話し始めた


『あの…ドアの向こう』


ミランダさんが俺達の後ろのドアを指さす

するとロイヤルフラッシュ聖騎士長はクワッと怒りを顔に浮かべ、大声で叫んだ


『誰だ!姿を現さねば斬り倒して魔物の餌にするぞ!』


凄い脅しだ

声の気迫に俺はビクンと体を震わせてしまう

その大声にやられたのか、聞き耳を立てていたお方がドアを静かに開けたんだ

エーデルハイドの皆さんが死を覚悟したかのような珍しい顔を浮かべて姿を現す

ロイヤルフラッシュ聖騎士長は牙を剥きだしにしながら立ち上がると、クローディアさんが口を開く


『彼女らも知ってるわ』


『知る者が多いと戦争が起きるぞ』


『あんたが言わないの』


『ぐぬ・・・・』


『虐めないから椅子に座りなさい』


クリスハートさん達が体を小さくしながらそそくさと席に座る

一通りは話したし彼女らがどういう経緯で知ってしまったかを口にすると、ロイヤルフラッシュ聖騎士長は『致し方なしか』と納得を浮かべる


そこでリゲルが誰もが忘れかけていたことを話したんだ


『ロットスターさんに教えたの不味いですよロイヤルさん。』


『それはこちらの責任だ…判断を誤ったようだが、こちらで脅す』


それに対し、クローディアさんが『埋めれば?』と言う

誰もが苦笑い、だって彼女ちょっと本気っぽくいうんだもん


『あんな性格でも魔法騎士長だ。無駄に脅すよりはアカツキのスキルが奪われて行方が分からなくなったでなんとかする』


『そこは何とかしなさいよ?』


『わかっている。話を戻すが…アカツキの要件を俺は飲もう。こちらの要件だ』


ここからだ

彼が欲しいとなると、とんでもないスキルだろう

五傑の中で唯一クローディアさんが先ほど『刺客はある』といったくらいだ

俺だけじゃなく、仲間たちが息を飲んで何を口にするかを待っていると

想定していた想定外な頼みを言ってきたんだ


『1の月、10日からゼファー王子の指示で幻界の森にあるスキルの情報を得て来いと言われている。そこにいる魔物が持つスキル発動速度強化が欲しいのだ』


『正気?アカツキ君達を遠回しに死ねっていってるわよ』


とんでもない森だ!入ったら二度と戻ってこれないと言われる森だ

俺は仲間と顔を合わせ、驚きを浮かべた

何故王族の指示か?そしてエルデヴァルト国王はどうしたのかとロイヤルフラッシュ聖騎士長に俺は聞くと、彼は『現国王は寝たきりになり、命も長くはない…今はゼファー王子が代理として王座に座っている』と1つ目の答えを口にする


何故、幻界の森にスキルが?と問うと、彼は即座に答えた


『道化傀儡グリモワルド・グレゴールだけが唯一あの森の最深部まで到達し、帰還した。奴はそこにスキルの情報が描かれた石板があったと王族に教えてからマグナ国を去った』と言ったんだ


《あそこにはない。グリモワルドは時間稼ぎにそう言ったんだ…人間には到底攻略できない森にスキルの情報があると言えば何度も挑戦するだろうよ》


リュウグウ

『きっと五傑時代に王族がスキルに対する欲が強いと察し。そうしたのだろうな』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『実際、ガンテアとの戦争も雲行きが怪しくなったエルデヴァルト国王はその情報を信じ。幻界の森に力を注ぐようにしている。戦争よりも穏便だからな』


ティア

『グリモさん、流石!』


ジェスタードさん、将来を見越してそんな事してたのか

今それが役に立っているよ


ミランダ

『攻略したら不味いですね』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『する気はない。ない情報の為に俺の部下を殺すつもりはないからな』


クローディア

『あら?大人になった?』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『くっ!お前は変わらんな』


クローディアさんが茶化し、笑う

なんだかんだチクチクと言葉をかけていても完全に敵対同士ではないようだ


そして俺は彼に対し、『貴方の要求を飲む』と答えた

仲間は驚くことはない、そうするのが今の俺達には丁度いい

マイペースに強く地道に経験を積んでいる時間はない、1度は無茶をするべきかもしれないという話はしてある


まぁそれが幻界の森だとはな…


『…助かる』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長はそう告げると、『欲しい防具や装備はあれば言えば用意しよう…良い関係を俺は望む。リゲルとクワイエットは監視として残す』というと2人は引き攣った笑みを浮かべたまま、椅子にだらりともたれ掛かった


リゲル

『まぁいいですよ。立ったところ悪いですけど教えてくださいよ』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は動きを止め、リゲルを見つめた

どちらも真剣な目をし、俺達が口を挟めそうもない

数秒の静寂が続くと、リゲルは静かに口を開く


『俺の出身の村知ってますよね?』


『パゴラという西側にある小さな村、お前は本当にあの村で起きた事件を知りたいのか?』


『聖騎士が手懐けた魔物を武器に戦う魔物騎士の訓練をそこでしていたったのは聞きました。でもいざ真実をしようと聖騎士に入って事件の事を調べても記録にないんですよ。誰が死んだか知ってますか?』


『お前の母親のアウラだ』


『昇格はどうでもいいんで教えてくれないっすかね?あれは聖騎士が起こした事故を誰かが揉み消したってことですか?』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長はうつむいた

リゲルは少し機嫌が悪い、そうなるのは仕方ないだろうな

自分の母親が村に入った魔物に襲われ、目の前で死んだんだ

幼い頃のリゲルに助ける力はない。


その後に現れた警備兵によって、彼の母親を襲ったブラッククズリは殺された

真実を執拗に知りたいリゲルは『どうなんです?』というと


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は顔を持ち上げ、彼に知る全てを話す


『確かに俺の命令で魔物騎士隊を作り、その訓練をしていた…』


『!?』


リゲルは怒りをあらわにし、立ちあがるとクワイエットは彼の腕を掴んだ

『話すぞ』とロイヤルフラッシュ聖騎士長が言うと、リゲルは険しい顔のまま席に座る


『どうぞ』


『今、天井でヒドゥンハルドがゴロゴロしているが…あれのように完全に魔物たちは懐いていた』


リリディ

『魔物の名前を知ってましたか』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『幻界の森で1度だけ見た。厄介な猫だ…ランクBなど嘘っぱち過ぎる』


何故かリリディ、機嫌が良くなる

ロイヤルフラッシュ聖騎士長は構わずリゲルに顔を向けて話し続けた


『とある日、近くの現場にいた俺は可笑しな音を聞いたのだ…風が斬るような音、そのあとに魔石連絡にて魔物騎士隊の者から連絡が来た。全ての魔物が一斉に狂暴化してしまったと』


リゲル

『…それでどうなったんです』


『止む無しで魔物を殺すしかなかった。しかし1頭だけお前の村に逃げていってしまったのだ…その魔物のパートナーは必死で探したらしいが、見つめた時には村で殺されており、同時に女性が1人、頭を噛みつかれたときに首の骨を折られて死んだという報告がきた』


リゲルはロイヤルフラッシュ聖騎士長の話に驚きをあらわにする

変な音が聞こえてから?なんだか俺は引っかかるが…出てこない


リゲル

『なんで記録から消したんです』


『エルデヴァルト国王の指示だ。』


リゲルは舌打ちをし、テーブルを強く叩いた

ミランダがそれに驚く


リゲル

『魔物騎士隊って顔覆面なんすね』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『よく覚えているな・・・何故だ』


リゲル

『俺の村に数人来ましたんで覚えてます。そのうちの1人が死体袋に詰められる俺の母さんを見て何故か歩み寄って手を伸ばしてたのは不思議ですが』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は彼の言葉にうつむいた

ちょっと反応が可笑しいなと俺でも思ったが、今のリゲルにはそれすら気づかないだろう


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『俺は人間ではなく、黒豹人族…あの風を斬る音は聞き覚えある…』


リゲル

『なんですか』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長

『犬笛だ。ほとんどの魔物はそれを聞くと混乱してしまうが…熟練した者は犬笛だけで魔物を操ると聞いたことがある』


そこで全てが一致した

俺はそんな筈はと驚愕を浮かべながらテラ・トーヴァに聞いてみようとすると、先にティアが口を開く


『テラちゃん。ヴィンメイはいつ蘇ったの?』


《あの強さ…相当力を取り戻してやがるし今まで大胆に暴れずに密かに動いていたとなると…数十年前には確実に蘇っていた》


リゲル

『ば…ばかな』


クワイエット

『リゲル、駄目だよ…僕らにはまだ勝てない』


リュウグウ

『まさかリゲルの母親はヴィンメイが?』


クリスハート

『犬笛を使っての魔物をけしかけるのは実際私達はやられてます。かなり濃厚かと』


リゲル

『おいアカツキ、あの獅子見つけたら呼べ』


リゲルは苛立ちながら席を立つ

どうやら部屋を出るようだが…上官いるのに勝手にそうしていいのか?

クワイエットも慌てて立ち上がると、ロイヤルフラッシュ聖騎士長に会釈をしてからリゲルを追う


『お前は強い、リゲル』


ロイヤルフラッシュ聖騎士長がドアを開けるリゲルにそう言い放つ

するとリゲルは動きを止め、ロイヤルフラッシュ聖騎士長に顔を向けた


『なんすか?』


『初めから教えていればよかった。しかしお前とクワイエットの才能を信じた俺はそれを餌にしてしまった。昇り詰めたら知りたいことを教える、調べてやると・・・。復讐心で強くなるお前らの成長が早く、聖騎士の今後の兆しになると思ったからだ』


『別にそれに関しては今は感謝してます。おかげでここまで強くなれたんすから』


『すまなかった。できればまだ聖騎士にいてほしい…お前がいないと駄目な人間がいる』


『まぁまだいますよ。』


《おいリゲル。暇なときにアカツキの家に来い》


リゲルは僅かに驚くと。無表情のままクワイエットと共に部屋を出ていった


ロイヤルフラッシュ聖騎士長は切なそうにしながらうな垂れ、溜息を漏らす

間違った感情で訓練をさせてしまったからこその罪悪感なのだろうか

それは本人じゃないとわからない答えだ


するとロイヤルフラッシュ聖騎士長は静かに立ち上がり『時間を取らせた。これを持っておいてほしい』と告げ、懐から小石サイズの連絡魔石を俺に投げ渡してきた

紫色の綺麗な丸い石にしか見えないが魔石だ


クローディアさんは部屋をミランダさんと共に出ていく姿を、何を言わずに見届ける

俺達は1つの問題が強力な助っ人へと変わって喜びたいのに、この雰囲気じゃできそうにないな


ティアマト

『世間は狭いな…』


ティア

『そうだね。リゲルさんも苦労してるって事だよ』


アカツキ

『ティア、ケサランの件はいいのか?』


ティア

『今更そんなこと口が裂けても言えないよアカツキ君、だって私達、何度も助けてもらってる…彼の魔物嫌いの理由も知ってケサランちゃんの事言えば、わたしきっといい人生送れなさそう』


アカツキ

『すまないティア』


リリディ

『確かにリゲルさんとクワイエットさんには色々お世話になりましたからね。ティアさんのお気持ちは十分みんなわかってますよ。』


ミシェル

『復讐心か。そういえば彼…帰る家も身内もいないって言ってたし一人っ子だったんだろうね』


クリスハート

『そうでしょうね。村が残っていても…いるのが辛いかもしれません』


《あいつの話はあまりすんな。結構お前らが思うより残酷な真実がある》


アカツキ

『今のは全てじゃないのか?』


《まだある。それをリゲルが知った時…どうするかが問題だ、間違った正義を行使するか許すかはあいつ次第なんだ。お開きにしようぜ》











・・・・・・・・・・・・・



『俺の母さんに触れるな!聖騎士がいて何も出来なかったくせに!何も守れてないじゃないか!』


リゲルはクワイエットと共にギルドを出てから振り返り、建物を見つめながら思い出していた

死体袋に詰められる母親に触れようとした覆面の聖騎士に前に立ちはだかり、その手を叩いた時のセリフと光景を


『う…』


狼狽える男はあとずさり、その幼きリゲルを見つめていた


『お前らのせいで母さんは死んだんだ!なんで助けに来なかったんだ!』


『俺は…必死で走って…』


『母さんに近寄るな!もう村に来るな!』


『ゆ…許してくれ、リゲル』


男は伸ばした手を引っ込め、背を向けて去っていく

リゲルはそのことを思い出しながら、目を見開いた



クワイエット

『リゲル、どうしたの?』


リゲル

『あの聖騎士、去り際に俺の名を口にして謝っていた。何故知ってる?』




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