第108話 賢者録 3


リリディ・ルーゼット


☆アビリティースキル

魔法強化【Le2】

打撃強化【Le4】

気配感知【Le3】

動体視力強化【Le3】

麻痺耐性【Le3】

スピード強化【Le3】

攻撃魔法耐久力強化【Le2】


☆技スキル

ドレインタッチ【Le3】

爆打  【Le2】

骨砕き 【Le1】



☆魔法スキル

風・突風   【Le3】

風・カッター 【Le3】

黒・チェーンデストラクション【Le2】

黒・シュツルム【Le3】

黒・ペイン  【Le1】

黒・アンコク 【Le1】

黒・グェンガー


称号

ハイ・クルーガー【黒】


☆称号スキル

魔法強化 【Le2】

自動魔法盾【Le2】

スキル発動速度強化【Le2】

魔力消費軽減【Le2】

特殊魔法『クラスター』


・・・・・・・・・


魔物表


A闘獣 金欲のアヴァロン(妖魔羊)、睡欲のモグラント(土駆龍)


A 呪王ジャビラス、ドミレディ


B デュラハン、将軍猪、閻魔蠍、鬼ヒヨケ、女帝蜂、ミノタウロス

  エルドラボ


C ブラック・クズリ、トロール、ファングマン、侍ゾンビ

  パペット・ハンマー、リザードマン、鉄鳥、マグマント

  剣蜂、キラービー(単体D/集団のみC)、般若蠍、ベロヌェルカ

  ロゴーレム、ニャン太九郎、魔妖精、チベタンウルフ


D キングゴブリン、グランドパンサー、ゴーレム、ラフレコドラ、ケサラン

  ソード・マンティス、黒猪、グレイバット、鎧蛇、棘巻トカゲ

  リッパー、ゲロックロ、ハンドリーパー、ブー太(梟)

  天鮫


E コロール、エアウルフ、ハイゴブリン、エレメンタル各種

  パペットナイト。ボロゴーレム、棘蜂、グール、グリーンマンティス

  ゲコ(ヤモリ)、闇蠍、格闘猿(エド国)


F ゴブリン、ディノスライム、格闘猿、ゾンビナイト、風鳥

  ゴースト、ウッドマン、ビリビリフラワー、眠花蜘蛛

角鼠、カナブーン ゾンビナイト、赤猪、棘鴉、オオダンゴ

ギョロギョロ、ゾンビランサー、シロオニバス


・・・・・・・


リリディは次の日、嵐の中に森に向かった

父親のクリスには馬鹿げているといつも言われていたが、今回彼は何故向かうかを話したのだ

黒魔法スキルを持つ魔物が荒れた日に現れるとリリディが告げると、父は『無理だけはするな』と理解を示してくれた


ギルハルドを連れ、森の入口まで行く道中に彼は面白い光景を見た


『ニャハハン』


リリディは強風で歩くのが困難だというのに、ギルハルドは風の影響をまるで受けていないのだ


(不思議過ぎる魔物ですね、ヒドゥンハルトですか…)


未知すぎる魔物に、リリディは驚く

雨も強く冷たいことが彼の体力と削り、体温を徐々に下げていく

それでも今がシュツルムのスキルレベル上げの最後のチャンス

嵐という天候は来年の夏まで起きることはないからだ


『羨ましいですよ、ギルハルド』


『ニャハーン』


軽い返事をするギルハルドに、リリディは笑う

こうして森の入口に向かうと近くの警備兵詰所の建物の窓から森に向かうリリディを見つけ、呆れた顔を浮かべていた


だが止めない

立ち入り禁止という指示が来ていないからだろう

台風となると発令させる時は多々ある

しかし、そうではない


『行きますよ』


ギルハルドに告げ、森の中に足を踏み入れる

横殴りの雨が彼の視界を塞ぎ、目も十分に開けることも出来ない

そんな状況で彼は黒魔法の為にやってきた


しかも彼だけじゃない


『待ってたぜ、未来の大賢者』


グリンピアの冒険者チーム、夢旅団の魔法使いのドラゴンだ

彼は魔法スキルだけじゃなく、近接戦闘もこなす器用さがある

眺めの短剣を腰に装着し、腕を組んだまま木の陰でリリディを待っていたのだ


『やる気十分ですねドラゴンさん』


『当たり前だぜ!もしゲット出来たら超贅沢な飯を奢るぜ』


ドラゴンは満面の笑みのまま、リリディの肩を軽く叩いた


『天鮫は動きが素早いです。その背びれを斬ることが第一段階…鋭利であり、それを駆使して突っ込んで斬り裂いて来ようとします』


『カウンターで背びれを切断し、そのあとにあっちはシュツルム撃って即座に逃げるって野郎だろ?』


『ええそうです。逃げる前に倒すのは困難ですが…そのために僕のチェーンデストラクションがありますので背びれの破壊は頼みましたよ!』


『任せな!俺についてこい』


ドラゴンは口元に笑みを浮かべ、先頭を歩く

できるだけ木の影を進み、森の開けた場所に向けて進む彼らに魔物は現れない

普通の魔物はこんな嵐で出歩くのは不可能、リリディとドラゴンが可笑しいだけなのだ


『ニャハ』


ドラゴンは風の影響を受けないギルハルドを見て驚きを浮かべる

しかし、彼は『本当に凄い猫だ』と苦笑いを浮かべて先頭を歩き続けた

するとリリディよりも先にドラゴンが不気味な笑みを浮かべ、口を開く


『気配が舞っているな』


『ビンゴですねドラゴンさん』


『ありがたい反応だ。さぁもうすぐ見晴らしが良い場所だぜ…』


リリディは真剣な顔を浮かべ、頷く

こうして開けた場所に辿り着くと、ドラゴンは嵐の中で驚愕を浮かべたまま空を眺めた


天鮫だ

ランクはD。他の鮫と違って小さな鱗が体を覆っており、釣り目の様な物が左右に4つついている。

背びれは刃の様に尖り、歯は鋭く、 全身が灰色の2メートルサイズの魔物だ

それが多数、雨が降りしきる空を優雅に泳いでいたのだ


『こいつが黒魔法持ちとはな…』


『そうですが…1匹こちらに気づきましたよ』


空を泳ぐ天鮫、うち1匹がリリディ達に狙いを定めて急降下してきた

ドラゴンは不気味な笑みを浮かべ、腰の短剣を抜いて首を曲げてゴキゴキと骨を鳴らす


『頼むぜリリディ君!』


『はい!ギルハルドは待機!』


『ニャン』


こうして天鮫は地面スレスレの低空飛行となると一気にドラゴンに襲い掛かった

噛みつきではない、体をずらし、鋭利な背びれで斬り裂こうとして来ていたのだ


『助かる、天鮫』


ドラゴンは囁くと、自身を斬り裂こうと体の角度を変えて突っ込んでくる天鮫に向かって深呼吸し、その手に握る短剣に魔力を流して発光させて口を開く


『兜割り』


頑丈な物質を斬るさいに使う技スキルだ

ドラゴンはグリンピアでの名の知れた魔法使い職でもあり、自衛能力が非常に高い

魔法が使えなくても彼は戦えるのだ


リリディは彼の言葉に深く感銘を受けている

魔法使いだとしてもそれが効かない敵がいれば荷物となる、そんな魔法使いは今どき古い



『ジュルル!!』


『俺の方が速いぜ!おらよ鮫野郎!』


ドラゴンは一気に天鮫の背びれを短剣で深く差し込んで斬り飛ばした

暴れながら近くに木に体をぶつけた天鮫は直ぐに反転し、ドラゴンに向かって目を赤くして怒りを見せる


『ドラゴンさん!』


『わかってる!』


途端に天鮫は黒い魔法陣を顔の前に発生させ、黒弾をドラゴンに向けて撃ち放った

リリディは彼なら避けれると信じ、空を見上げる天鮫に向かって口を開く


『チェーンデストラクション!』


天鮫は背びれを切断すれば逃げる、その前に倒さないといけない

リリディの両肩の上部に黒い魔法陣が2つずつ現れ、4つの鎖が空に舞い上がる天鮫の尻尾に巻き付いた


(4つ!?魔法強化スキルの恩恵ですか)


『おっと!』


ドラゴンは天鮫のシュツルムをヘットスライディングするようにして避ける

すると黒弾はドラゴンの背後に生えていた木に命中し、爆発によってへし折れていく

リリディは天鮫の尻尾に巻き付いた鎖を操り、天鮫を地面に叩きつけた


『ジュペっ!』


天鮫が悲鳴を上げ、更にリリディの鎖で木に叩きつけられるとその動きを止めた

鎖は消失し、リリディとドラゴンは地面で動かない天鮫のジリジリと歩み寄る


『逃げ足凄いな…普通の冒険者にゃ仕留めれないぞ?』


『そのためにチェーンデストラクションがあるのでしょう。順番的にこの魔法スキルが1番ですから、これがないと逃げる天鮫を捕まえれないんでしょうね』


『なるほどな・・あっ!』


『ニャハハン!』


天鮫の体から発光した魔石が出てきた

リリディとドラゴンは強くガッツポーズし、喜んでいる

しかし、その暇はない


『くっ!』


リリディは気配を感じて空を見上げる

次なる天鮫が突っ込んできていたのだ

ドラゴンは発光した魔石を掴み、リリディと共に天鮫の体当たりを避ける


『こちらは大丈夫です!早くスキルを!』


『お、おうよ!』


『ギルハルド!背びれを!』


『ニャン!』


ギルハルドは反転して再び体当たりしてくる天鮫の背びれに視線を向けると、自身の腹の体毛の中をゴソゴソとまさぐり、短刀を取り出した

強さの差は明らかだった


天鮫はDのランク、普通の戦えば強くはない

対するギルハルドはヒドゥンハルトという幻の猫種

魔物ランクBとは言われていても未知数なため、それは予想でしかない


確実に言えることは天鮫より圧倒的に強い事


『ニャン』


ギルハルドは突っ込んでくる天鮫の背びれを切断したのだ

それだけじゃない、怒った天鮫の黒弾を避け、逃げる前に真っ二つに両断したのだ


(あれ?僕の必要性…)


リリディはあっけにとられながらも地面に落ちてくる天鮫の体から顔を出す発光した魔石に近づき、掴んだ

シュツルムで間違いない、彼は寄ってくるギルハルドの頭を撫でてからスキルを吸収すると、深呼吸してから笑みを浮かべる


『あ』


空を見上げると、天鮫の群れはその場から離れていく光景

リリディは深追いは無用と悟り、ドラゴンに顔を向けたのだ

彼は空に向かって大きく腕を伸ばしていた


『興奮が止まらないぞリリディ、流れ込んでくるシュツルムの情報…これはマジ半端ないぞ』


『ドラゴンさん、先ずは帰りましょうか』


『ああそうだな!本当に返しきれない恩だぜこれ!1人じゃ入手が絶対無理だ…俺も先が見えてきたぜ!』


子供のように興奮しているドラゴンを見て、リリディは微笑みながら彼を連れて森を出ようと歩き出す

風が僅かに弱まり、そのせいで打ち付ける雨が楽になる

たった2匹の魔物を倒すだけなのに彼らは疲れていた

それほどまでに嵐は人間には脅威だ、体力を削る


『採用試験が楽しみだぜリリディ君』


『僕もですよ。どんな採点されるんですかね』


『俺は総合的に見るんじゃないかって思ってる』


『というと?』


『今どき魔法だけの魔法使いは辛い、ある程度の自衛も出来ないと駄目だが…それと同時に魔法スキルの有効な使い方は当然見られる』


『半端な戦い方はそっこう落ちるという事ですね』


『だろうな!今日は良い日だ』


相当ご満足のドラゴンの様子にリリディは微笑んだ

問題なく森を抜けると、入り口の近くの警備兵詰所の窓から警備兵が苦笑いを浮かべて街を指さしていた


(早く帰れ、か)


『帰ろうぜリリディ君』


『はい』


リリディはギルハルド、そしてドラゴンと共に誰も歩かない街中を進んでギルドに向かう

表通りは風の影響が強いと感じ、ドラゴンは裏通りから向かおうと提案をするとリリディはそれに乗った


予想通りにあまり風の影響はない、しかし雨は降っている

しかし、歩きやすい事に彼は楽さを感じていた


『少し休憩しよう、足がパンパンだ』


ドラゴンはそう告げ、物置の壁に腰を下ろす

リリディも彼の隣で座り、その膝の上にギルハルドが寝そべった


(少し邪魔ですね…)


しかし、どけるのも申し訳ないと感じた彼はそのままにする

冒険者ギルドまで30分の距離、しかし体に合わせた休憩は冒険者として確実にしなければいけない


『リリディ君は二つ名とかあっても可笑しくないな』


『恥ずかしいですよドラゴンさん』


『いやいや、お前は理解してないだろうけどもBランクの魔物をお前はそれなりに倒してるんだぞ?このグリンピアにそれが出来るのはエーデルハイドだけだ』


『ですが夢旅団も確か…』


リリディは過去にドラゴンのチームがBを倒した過去があることに気づく

彼らもCランクになっており、その後直ぐに死闘を繰り広げている

エルドラボという木で出来た大きな蜥蜴の魔物だ

動きは遅いが、背中から木の根を伸ばして獲物に巻き付き、絞め殺す


火属性が有効な魔物のため、ドラゴンさんは仲間にヘイトを集めてもらい、彼が必死にファイアーボールを魔力の底がつきるまで撃ち放ち、弱ったところで一斉に襲い掛かったとドラゴンから彼は先日聞いている


『まぁ俺達はまだ1頭だ、それを入れるとなるとこの街じゃ3チーム…その中でも俺はお前を買ってる』


『そんな、過大評価ですよ』


『そう思ってるのはお前だけさ。人と競うことに興味が無いからこそお前は真っすぐ突き進んでる。試験でわかるさ…』


(買いすぎですよ…)


リリディは困惑した

そこまで彼が言い切るとなると、考えさせられる

自分はいったいどこにいる魔法使いなのかと


『シャハハー!』


ギルハルドが、道の向こうに警戒を向けた

ドラゴンとリリディは何故威嚇しているのか不思議に感じながらも立ち上がると、奥から人影が2つ現れたのだ

黒いトレンチコートに身を包み、顔を黒い包帯で巻いた人物


『後ろにもいるってなると、歓迎ムードじゃないな…』


ドラゴンさんは背後を見てそう告げる

後ろにもいるのだ

リリディは険しい顔を浮かべたまま、正面から近寄る不気味な服装の男の目を見た

顔で見えるのは目だけだ


(なんだか、敵意がありますね)


なんとなくそれを感じ取った


前後合わせて4人、リリディはギルハルドがいきなり飛び込まないように指示すると、男が口を開いた


『黒魔法は災い、不幸を呼ぶ』


リリディ

『?』


正面の男2人が腕を伸ばした

ドラゴンとリリディは身構えたが、後ろの2人は動く様子はない

何者だ、ドラゴンはそう言っても彼らは答えない


(身に覚えがない…しかし…)


とんでもない予想を彼はする

しかしそこまでする必要性があるのかと言われると、リリディはそう思わなかった


『おい、何故動かん』


ふと、正面の男が口を開く

威圧的な口調であると悟ったリリディは軽く後ろに顔を向ける

すると背後を塞ぐ男が口を開いたのだ


『俺達の出る幕はない』


(この声!)


リリディは驚愕を浮かべた

昨日、彼に話しかけた男の声にそっくりだったのだ

それによってリリディの馬鹿げた予想は確信へと変わる


『なんだこいつら…』


『ドラゴンさん、それは後程です…正面にいる者は強いですが。ここは甘えますか』


『はっ?それってどういう…』


ドラゴンが疑問を口にする

表通りですら嵐で誰も歩いておらず、裏通りなんて今日一日誰も歩く者はいないだろう

いたとしても、今この場にはいない


『正面、天誅』


リリディはそう告げた


『ニャン』


ギルハルドが一瞬にしてその場から消え、男は狼狽えた


『馬鹿な!どこに消え…』


最後まで言うことなく、その男の体は何かに引き裂かれて吹き飛ばされた

隣にいた男は驚きながらも黄色の魔法陣を発生させてからスキルを使おうとしたが、そんな時間はなかった


『ぎゃぁぁぁぁぁぁ!』


彼の伸ばした腕が切断され、宙を舞う

激しく苦痛を浮かべる男はリリディとドラゴンの後ろにいる男に向け、荒げた声で言い放つ


『何をしている!貴様ら!仕留めろ!』


しかし、後ろの2人は動こうとしなかった

リリディはそれを知っていて正面の敵のみの攻撃をギルハルドに命令したのだ

奥まで吹き飛ばされた男は傷口をおさえ、弱弱しく立ち上がるが

それと同時に男は顔を引き裂かれ、水溜まりの地面に顔を沈めて倒れていった


動きはしない

やらないと死ぬことを覚悟したリリディはそれを覚悟した


『ホルスさん!?』


腕を吹き飛ばされ、両膝をついている男は動かなくなった男に向けてそう告げたのだ

リリディはその名に覚えが大いにあった

魔法騎士1番隊のメンバー、しかも副魔法騎士長の名であった


となると答えはリリディでもわかる

これは、魔法騎士会の者の襲撃であり、ロットスターが仕向けたのだ

魔法騎士にはいまだに2つの派閥があることを、リリディは知っている


ハイムヴェルトを慕う者、そしてロットスターの取り巻きの2つ


『くっ!』


腕を失くした男は残る腕を前に伸ばすが、彼の横をドラゴンが素早く駆け抜けてその腕も斬り飛ばした

叫び声が雨によって消され、それすらも五月蠅いと感じたギルハルドは男の首を引き裂いて地面に沈める


『すいません、ドラゴンさん』


『いや、仕方がない事だが…なんなんだこいつら』


彼は驚きながらもリリディと共に背後で立っている黒いコートを着用し、顔を黒い包帯を巻いて隠す男2人に顔を向ける

ドラゴンは身構えたが、リリディは『大丈夫ですから解いてください』と言う


すると後ろの男2人は互いに顔を見合わせ、そのままリリディに顔を向けると口を開く


『奴はお前に恐れてる、相当トラウマがあるようだ』


『あなた方はいったい…』


リリディは話しかけると、男2人は背を向けた


『任務は失敗、リリディ君よ…幸運を祈る』


『待ってください!』


『本当にあの方の意思を継いでいるのならば、私たちは君を待つ…終わらせるのは君だけだ』


ドラゴンは首を傾げながらリリディに顔を向ける

男2人はそのままその場から去っていくと、ギルハルドは殺した男から出てきた発光した魔石に前足をつけて光を吸収し始めた


『これは逃げるか…』


ドラゴンさんは苦笑いを浮かべ、リリディとギルハルドを連れて冒険者ギルドに向かった

受付の奥で書類相手に四苦八苦しているクローディアに何が起きたのかドラゴンと共に説明すると、彼女は険しい顔つきのまま警備兵に連絡をした


数分後に来たのはアカツキの父であるゲイル、そしてその部下である5名の警備兵

現場検証の為にドラゴンとリリディそしてギルハルドは雨の中、先ほどの裏通りに向かった

しかし、その時には2人の男の遺体はなく、あるのは血だけだった


ゲイル

『魔法騎士会だったのは本当か、リリディ』


リリディ

『確かに2名は息絶えました…』


警備兵

『血の跡があるのですが、どうやら誰かが持ち去ったみたいです』


ドラゴン

『何が起きてんだ…わけわからないな』


ゲイル

『ドラゴン君、これは内密だ』


ドラゴン

『ゲイルさん…魔法騎士会ですよ?マジなら超やばい事件ですよ。国を守る機関が襲ってくるって狂ってますって』


ゲイル

『公にするには不味い、あっちはそれが出来ないと知っているのだろう…』


ゲイルはドラゴンにその理由を言わなかった

しかし、リリディはなんとなくわかっていた

このことを追求すれば、ロットスターはスキルの所在を漏らす

アカツキの父であるゲイルはそれにいち早く気づき、悪知恵が働く悪しき機関の長に怒りを浮かべた


ゲイル

『いつか地獄に落ちるだろうな…』


リリディ

『そうなるでしょうね』


現場の検証は中止し、彼らはギルドに戻った

クローディアさんはゲイルから遺体が消えたことを聞くと、壁を殴って陥没させてしまう

相当ご立腹な様子にドラゴンとリリディはビクンッと体を震わせて驚いた


クローディア

『全部ロイヤルフラッシュの馬鹿のせいよ、あいつには色々してもらわないと不味いわ』


ドラゴン

『あの…何が?』


ゲイルはドラゴンに『何も聞かずに帰りなさい』そう告げると彼はわけもわからずのままギルドを去っていく

ゲイルも部下を帰らせ、誰もいないロビーにクローディアさんとゲイルそしてリリディとギルハルドが適当な椅子に腰をおろして溜息を漏らす


最悪な展開、それはクローディアは起きないことを祈っていた


(勝手にロットスターが動くのだけは勘弁だったけど、馬鹿が動くと手が付けられないわ)


一番心配していたことが起き、彼女は焦りを見せた















『やっぱ遺体回収しといて正解でしたね』


黒いコートの男はリリディ達を襲撃した近くの建物の2階から現場検証で訪れる警備兵とリリディ達に顔を向けていた

一度は去ったものの、彼らはあえて時間を作るという意味で遺体を回収するために急いで戻ったのだ


そのまま魔法騎士のとんでもない行為だと知らしめるためにそうすればよかったのだが

リリディがまだ未完と悟り、そうしたのである


遺体袋2つを横目に、男は窓から覗くのを止めると、仲間に向かって話し始めた


『見たかったな…黒魔法』


『まぁ、そうですけど…あの猫凄すぎですよ…なんですか?』


『わからん、だが見れる機会はある…行く価値はある』


『そうっすね、なんでそんなにあの男に固執するんです?』


男は包帯を取り、古傷を仲間に見せると思いつめた顔を浮かべて答えた


『あの方に俺は救われたからだ、いなければお前に会う事も二度となかったのだ、息子よ』

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