第131話 鬼退治編 3


別の気配とはいったい


《だが気配は感じねぇぞ!?》


クワイエット

『でもいるよ、神様なのに見えないのかい?』


《おまっ…あるのは小動物の小さな気配が至る所で身を隠しているぐらい…》


ティア

『凄い嫌な事聞いちゃったねリュウグウちゃん』


リュウグウ

『鬼ヒヨケよりももっと不味い奴か』


何故女性2人はわかった?何に気づいた

俺やリリディそしてティアマトはわからず煮え切らない感情が出てくる

そんな顔にティアは俺達に大事なことを告げたのだ


『テラちゃんも言ってたでしょ、ゾンネの気配は小動物のように気が小さいから気づくのが難しいって』


その言葉にテラ・トーヴァも《あっ!》とか言いやがるぞ

リゲルがティアを横目に『やっぱ男は馬鹿か』と囁いているのが俺の耳に聞こえる

忘れてたんだよ…


ルーミア

『みんな来るよぉ!』


森の奥から木々を吹き飛ばし、興奮した鬼ヒヨケが2体姿を現した


魔物ランクB

足が長め、黒光した頑丈な甲殻を持つ大きな魔物、鬼ヒヨケだ

巨大な鋏の様な鋏角を持つ活発な捕食者であり、人を好んで食べる事は俺も知っている、そしてでかい…

体は真っ黒だが各所に赤色でラインが伸びている

温暖な国ではヒヨケムシという日避虫種がいるが、その魔物だ

どちらも全長4メートルは軽くある、俺達と対峙して個体よりも大きい


『キィィィィィィ!』


『キィィィ!』


どっちもサイズは同じ、メスがいない


リゲル

『メガネっ!撃て!』


リゲルが叫ぶと、リリディは黒い魔法陣を出現させて同じく叫んだ


『伏せてください!シュツルム!』


黒い魔法陣から黒弾が撃ち放たれた

それは一直線に鬼ヒヨケに飛んでいくと、右側の個体に命中した

避けなかったことに驚きだが、当たったことに僅かな安堵を浮かべた


『キキィ!』


爆炎が2体を包み、命中した鬼ヒヨケは後方に転がって黒煙から姿を現す

しかし、すぐに立ち上がってきた

リリディの顔が引きつっているが魔物はまだ全然動けるみたいだ


『ファイアーボール』


シエラさんが立ち上がった鬼ヒヨケに向かって大きな炎弾を撃った

それは黒煙を突き抜け、うまい具合に鬼ヒヨケの目の前に現れた

奴の顔面に命中し、大きな悲鳴を上げている


リゲル

『そっち頼むぞ』


リゲルはクワイエットさんと共に一番元気な鬼ヒヨケに襲い掛かっていく


『キュイイイイイイ!』


怒った鬼ヒヨケは無数の目を赤く染め上げ、ゴキブリみたいなカサカサ音を響かせて一気に俺達の目の前に立ちはだかった

速い!しかし…


太い両前足を上げ、俺達を叩きつぶそうとするが、それを飛び退いて避けた

今の俺達ならば動きは見える、避けれる

それは倒すチャンスがあるという事でもあった


クリスハート

『強撃!』


彼女は側面から飛び込んで叫んだ

声に反応した鬼ヒヨケが素早く顔を向けて太い前足を払う

剣と腕が接触すると、双方ともに弾かれた


『くっ!』


クリスハートさんは体重さもあって吹き飛んでいく

ルーミアさんがその隙に鬼ヒヨケの特徴的でもある巨大な鋏の様な鋏角の口に向かって光速斬で真横を切り抜けた


ガンッと堅い音、そして肝心な口はかすり傷もつかない


『かったぃ…』


当然だ、あの部位は異常なくらい堅いんだ

だからこそリリディの黒魔法のためにあれを壊すのは至難だ


鬼と化した虫、口を破壊し、燃やして倒せ

それが難しすぎるんだ


シエラ

『ファイアーボール』


ティア

『ラビットファイアー!』


ティアの5つの熱光線、それは魔法強化レベル2で凄い変化を遂げていた

赤い魔方陣の中から5つの光線が現れると、甲高い音を響かせて飛んでいったんだ

弾速が早く、シエラさんの魔法を追い越し、それは避けようとした鬼ヒヨケの後ろ足に1つ命中したんだ


貫通はしなかったが熱によってえぐられ、その部位だけ燃えていた


『キィィィィ!』


鬼ヒヨケは暴れ、直ぐに足を振って鎮火させる

ティアマトが側面から飛び込んで片手斧を振り下ろすと、鬼ヒヨケは振り向きざまに口を振って弾き返した


『くっそ!』


空中のティアマトを食らいつこうと鬼ヒヨケは口を大きく開く

その瞬間にリュウグウがティアマトの後方で槍を回転させ、突きながら技を放つ


『槍花閃!』


花弁が舞う光線が鬼ヒヨケの口に向かって飛んでいく


『キッ!』


口を閉じ、光線は弾かれた

ティアマトは着地と同時にその場から離れ、真空斬を放つと鬼ヒヨケはそれを避けた

しかし、その先には終わりがある


クリスハートさんやルーミアさんそしてアネットさんが飛び込んでいた

袋のネズミだ、無理だろう


クリスハート

『兜割り!』


ルーミア

『多段斬り!』


アネット

『連続斬り!』


多段持ちか!双剣の貴重な火力技スキルだ

レベルによって一瞬で斬る数も変わるけど、1でも5回は斬るとか聞いたことがある

四方を囲まれた鬼ヒヨケに回避は無理だと誰もが思っただろう


だがこいつには驚くべき技があった


『キッ』


一瞬で鬼ヒヨケの体全体が黒い煙と化し、彼女らは煙を斬ることとなる


『馬鹿なっ!?』


クリスハートさんが驚きながら数歩、後ろに下がる

その黒煙は目にも止まらぬ速さで俺の前で体を瞬時に構築し、鬼ヒヨケに戻った


《黒魔法だ!逃げろ兄弟!》


『光速斬!』


俺は大口を開けて噛みつこうとする鬼ヒヨケから技を使用して側面を通過して避けた

なんでだ!なんでこいつが黒魔法を使える!?

普通、今まで遭遇した魔物は使わなかっただろうがよ!


焦りを覚える、回避はあの魔法で容易くできるとなると相当不味いぞ


『キッ!』


くそっ!あいつ!俺に振り向いた

ランタンをまだ持っていることに気づいた俺は投げ捨て、両手を使う事にした

全力で刀を振り『断罪』と口にする


俺の持つ特殊技、その場で剣を振ると、それと同じ剣撃が対象の目の前に現れて斬り裂くんだ

当然狙うはお前の目の1つ、できれば2つ同時に斬れれば!


『キッ!?』


鬼ヒヨケは突然目の前に現れた斬撃から顔をそらす

そのせいで奴の顔の側面が斬り裂かれ、赤い血を流した


『ラビットファイアー!』


進化したティアの5発の熱光線が瞬時に鬼ヒヨケに全て命中し、当たった部位を赤く染めながら燃え始める


『キキィィィィ!』


リュウグウ

『暑いか偽益虫めが!槍花閃!』


暴れる鬼ヒヨケの胴体に槍の突きで発生させた光線を放ち、貫通はせずとも穴を開け、バランスを崩した

リリディはシュツルムを放つが、当たる寸前でまた鬼ヒヨケは黒い煙と化して彼の攻撃はすり抜けていく


彼の爆発魔法で木は爆発で粉々になり、火が出た

それによって灯りがかなり確保できたことは少しだけ嬉しいな


《兄弟!!》


『わかってる!』


黒い煙が俺の背後に回り込み、それは鬼ヒヨケに戻る

火、消えてるのかよ!


俺は噛みつきを避け、同時にクリスハートさんやアネットさんそしてティアマトが果敢に鬼ヒヨケに攻撃を仕掛ける


『シャァァァァ!』


ギルハルドはキュウソネコカミを発動させ

神速で鬼ヒヨケに襲いかかると、目を引き裂いて吹き飛んだ


鬼ヒヨケは甲高い悲鳴を上げ、口から緑色の毒液を撒き散らす

酸性のそれに触れると、焼けただれるから危険だ

誰もが距離をとる


『ラビットファイアー!』


『シュツルム!』


ティアとリリディの魔法だ

弾速はラビットファイアーが上だ

痛みに苦しんでいる鬼ヒヨケの顔面にティアの魔法が2発当たると、顔面が燃え、そしてリリディの黒弾が口に命中する


爆炎、爆風、そして鬼ヒヨケの悲鳴だ

タフ過ぎるぞこいつ


ゴロゴロと巨体が転がると、ティアマトは怒号を上げながら飛び上がり、『ギロチン』と叫んだ

彼が空中で片手斧を振り下ろすと、鬼ヒヨケの頭上から斬擊が落ちる


『ギッ!』


アカツキ

『!?』


ティア

『あっ!』


ギロチンが口の鋏角に命中すると、僅かに亀裂が入った

アネットさんが居合突で突きの斬擊を飛ばし、割れた部分に器用に当てると更に亀裂が入ったのだ


苦しそうな鳴き声を発する鬼ヒヨケは飛び込んでくるルーミアさんとティアマトをなぎ払い、吹き飛ばしてからクリスハートさんの放つ真空斬を避けて俺に走ってきた


リュウグウ

『なんでアカツキなんだ!』


ティア

『可笑しいね!』


アカツキ

『わからん!ティア援護頼む!』


ティア

『わかった!』


アカツキ

『高速斬!』


クリスハート

『高速斬!』


クリスハートさんと共に駆ける

口から飛び出す毒液を避け、同時に懐に潜り込む


《レベルは同じだな!よかったな兄弟!》


アカツキ

『だなっ!!』


クリスハート

『行きます!!』


二人で武器を振る、しかしまた黒い煙と化して避けられ背後に回り込まれた

俺は振り向かずに刀を鞘に強くおさめながら叫んだ


『刀界!』


背後に無数の斬擊と共に衝撃波が飛ぶ

範囲や距離を限定すれば威力は上がる!

狙いは口元だ


背中を見せていたからか、鬼ヒヨケは回避が遅れて俺の技を顔面で開けとる

金属音が響き、それは奴の口の固さを物語っているようだ


『キギキィ!』


パリッと割れた音、大きく亀裂が入っていたのだ

いける!そう思いながら暴れる鬼ヒヨケの前足のなぎ払いを飛んで避けると、全ての目が俺に向いた


とことん狙われている

何故だ?


『!?』


余所見、鬼ヒヨケはその隙にティアのラビットファイアーを亀裂の入った鋏角に受けてしまい、赤く染まると爆発するかのように激しく砕けた


『ピギィィィィ!』


ティアマト

『片方いった!』


リュウグウ 

『任せろ!鬼突』


彼女は暴れる鬼ヒヨケに飛び込み、もう片方の鋏角に向かって魔力のこもった槍をついた 

それは深く食い込み、リュウグウが『ふんっ!』と力んで槍を曲げると破片が飛び散る


『がっ!?』


リリディ

『リュウグウさん!』 


彼女は前足に叩かれて吹き飛んでいく

入れ違いでシエラさんのファイアーボールが鬼ヒヨケに飛ぶと、奴はまた黒煙と姿を変えて俺の目の前だ


またかよ

でも来るのはわかってたさ


『当たれ!』


リリディの声が後ろから聞こえたから横に跳んだ

黒弾が鬼ヒヨケの顔側面に直撃さ。悲鳴を上げてる


『兜割り!』


クリスハートさんがナイスな技を残る鋏角に叩き込み、なんと破壊した


『キュイィィィィ!』


あの鬼ヒヨケが泣き叫んでる

俺は興奮しそうになるが、落ち着かないと駄目だ


アカツキ

『クリスハートさん!お金は差し上げます!だからあいつのスキルをもらいます!』


クリスハート

『落ちるかわからないのですよ!?』


リリディ

『落ちなくてもお金は差し上げます!』


リリディが真剣な顔を浮かべ、俺よりも叫んだ

リュウグウは『大金が…』と残念そうにしているが気持ちはわかる


でも今はやらなきゃ

今度こいつにいつ会えるかわからない

だからこそ、倒す


『光速斬!』


一気に駆け抜け、鬼ヒヨケの前足の攻撃を避けながら目を斬った

間髪入れずにルーミアさんがキリモミ回転しながら鬼ヒヨケの側面を切り刻み、体に傷をつけていく


『賢者バスター!』


バコン!と彼のフルスイングされたスタッフは頭部を叩き、ふらつかせる


ティア

『ラビットファイアー』


意識が軽く飛んでいた鬼ヒヨケの体に全てが命中し、激しく燃えだす

シエラさんも負けじとファイアーボールを放ち、鬼ヒヨケに命中すると暴れ始めた


『キキキィィィ!』


効いている、シエラさんの魔法だけしゃなく

ティアの魔法もだ


『シュツルム』


リリディが飛び退きながら黒弾を撃ち、鬼ヒヨケは爆発に飲まれていく

ティアマト、アネットさん、クリスハートさんが黒煙の中に真空斬を放ち、攻め続けた


リュウグウ

『!?』


黒い煙が黒煙の中からこちらに伸び、それは俺達の前に鬼ヒヨケと変わって現れる

体中から血を流し、目を赤くしたその魔物は両前足を上げて叩きつけようとしている


アカツキ

『さがれ!』


叫び、全員で避けた

鬼ヒヨケはランクB。両前足で地面を叩いて衝撃波を発生させつつ近くにいるものを吹き飛ばす


『うわっ!』


『わっ!』


アネットさんとティアが大きく吹き飛ぶが、体を回転させて受け身をとる

ギルハルドが神速で駆け抜けて鬼ヒヨケの柔らかい関節部分を爪で裂いて転がっていく


そこでとうとう鬼ヒヨケは横ばいに倒れたのだ

あの鬼ヒヨケが倒れた事に俺は驚きを顔に浮かべ、口から飛ばしてくる毒液を避けながら断罪という技スキルで奴の足に斬擊を発生させ、斬り飛ばした


シエラ

『もう少し…』


クリスハート

『流石はB、しかし奇妙な技を使いますね』


ティア

『もう少し!』


《兄弟!頑張れ!》


口が破壊されたのに、鬼ヒヨケはまだ戦う気があるようだ

足でなんども強く地面を踏みしめて怒りを表している

ふと、奴が森の奥に目を向けた


リゲルとクワイエットが瀕死にまでした鬼ヒヨケもだ

あっちは二人なのによくやるよ


リゲル

『なんだ?』


クワイエット

『その視線怖いからやめようよ鬼ヒヨケちゃん…何を見てるの』


リゲルは険しい顔を浮かべながらクワイエットさんと後ろに下がった

2体の鬼ヒヨケだけじゃない。

ギルハルドも森に顔を向けていたのだ


『ギルハルド?』


リリディが声をかける

しかし、ギルハルドは異常なくらいに毛を逆立てていた


『おらぁ!』


その隙にティアマトが飛びかかり、鬼ヒヨケの頭部に片方斧を食い込ませた


『ギピィィィィ』


『うわっ!』


抜けず、鬼ヒヨケの頭に乗ったまま武器を両手で握りしめ、飛ばされないようにしていた

だが真下に顔を振った時にティアマトは手を離してしまい、地面に叩きつけられる


『ぐはっ!』


リュウグウ

『鬼突!』


真横から彼女の槍が鬼ヒヨケの足を貫き、千切れた

ガクンとバランスを崩した隙にクリスハートさんやルーミアさんが顔や足を攻撃して転倒させると、ティアが叫ぶ


『ラビットファイアー!』


5つの熱光線が甲高い音を響かせながら鬼ヒヨケの体に全て命中すると、奴の体は激しく燃えた

追加でシエラさんがファイアーボールを放ち、暴れる鬼ヒヨケを地面に転がす


かなり激しく燃えている

次第に鬼ヒヨケの体が動かなくなると裏返り、足をピクピクとさせながらとうとう動かなくなった


『ギルハルド、解きなさい』


『ミャ』


リリディはギルハルドにキュウソネコカミの解除させる

2回も使った、残り2回の神速からの攻撃は残しておくと考えたのだろう


リュウグウ

『この人数でこの様か』


ティアマト

『煙化するなんて初めてみたぜ』


クリスハート

『不思議な魔物ですね』  


まさか黒魔法を使うとはな


《お?!》


テラが口を開いた

燃え盛る鬼ヒヨケの体から発光する魔石が見えたのだ

しかし、燃え盛る火によって近付けない


リリディはチェーンデストラクションで鎖を出現させ、魔石に巻き付けて炎の中から取り出した

彼が魔石を掴むと、『あつ!』と手を引く


熱いに決まってる

リュウグウは『馬鹿か』と呆れた声

熱を冷ます時間などないと考えていると、ティアは水筒の水を魔石にかけて冷やした


『はい終わりっ、リリディ君のだね』


『すいません、助かります』


リリディはホッと胸を撫で下ろしながらも魔石を掴むと、目を見開いた


クリスハート

『どうしたのです?』


シエラ

『お通じ?』


リリディ

『いえ、違いますが…。ではいただきます』


彼の手に魔石の光が吸収されていく

リゲルは自分たちが倒した鬼ヒヨケの魔石を手に、クワイエットと共に近寄ってきた

倒したと思うと疲れが押し寄せた。


肩が重い、いや…体か


『シャァァァァ!』


クワイエット

『怖いね、まだ威嚇してるよニャン太九郎』


アカツキ

『鬼ヒヨケと同時に顔を向けたな。人間には感じない何かがいるのか』


ティアマト

『もし俺達の予想する野郎ならよ、エーデルハイドさん達も巻き込ませるぜきっと』


彼の言葉によってクリスハートさんは首を傾げた

だが口を開いたのはアネットさんだ


『どゆことぉ?熊ちゃん』


『ちゃんかよ…』


ティアマトが囁いた

リュウグウが溜め息を漏らし、辺りを見回してから何かを口にしようとすると、彼女は驚きながらとある方向に顔を向けた


『メガネ!!』


全員が顔を向けた

リゲルとクワイエットは気づいていたらしく、物珍しそうにしゃがみこんでリリディをみている

彼の体が僅かに光っていた。


それは更なる称号の獲得を意味している


アカツキ

『このタイミングとは』


クリスハート

『あのステータスがさらに上がるんですね』


驚きだよ

彼の発光が消えると、俺達全員が彼に歩み寄る

でもリリディの顔は笑顔から一変し、絶望を顔に浮かべたのだ


《兄弟!避けろ!!!》


リゲル

『飛び退け!!』


荒げた声が響き渡る

全員がその場から全力で飛び退くと、それは起きた


何か巨大な物が落下し、広範囲に地面に亀裂が走り、隆起したのだ

まるで世界の終わりを彷彿とさせる地面の変化に俺達の思考は停止しかけた

轟音と衝撃波、俺達は衝撃波によって吹き飛ばされた


何が落下した?人型だった

毛深く巨大な獣、落下?いやちがう

その手に持つ鉄鞭の先端の鉄球で地面を叩きつけたんだ


いつどこから飛び込んできた?


『ぐはっ!』


誰もが無惨にも地面を転がり、顔を持ち上げた

隆起した地面は戻らず。足場が非常に不安定な地形と化している


《マジかよ…お前は!?》


『テラ!あの獣はなんだ!』


俺はふらつきながらも立ち上がり、刀を構えた

月の明かりだけじゃあまり見えないが、巨大だ

言葉にならない、こんな生き物がいるのか!


ティア

『あれ…なに』


クリスハート

『ば…化け物』


リゲル

『本命のお出ましかよ』


人型の獅子、3メートル以上もある

細マッチョなミノタウロスと比べると、こいつはこれ以上筋骨隆々とした肉体だ

たてがみが逆立ち、額にも縦の目がついている

茶色の毛並み、体中古傷だらけだ


口からは鋭すぎる牙、腕や足の爪も鋭い

そいつは呆然と立ち尽くす俺を見ながら鉄球のついた鉄鞭を肩に担ぎ


口を開いた




『我が名は獅子人族の獅子王ヴィンメイ!見つけたぞスキル小僧!今死ね!』





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