第130話 鬼退治編 2
森の中、エーデルハイドの人たちは左右を見ながら目を細めている
既に気を集中しているようだ
以前として先頭を歩くリゲルとクワイエットさんは堂々と歩いている
緊急依頼時、森の様子は一変するのは鉄則
生き物の気配がまるでなく、鳴き声はない
シーンと静かで耳鳴りと足音だけが聞こえる
《…夫婦ヒヨケならメスはでけぇぞ?》
アカツキ
『だろうな』
《オスは素早い、メスはデカくてパワーがある》
リュウグウ
『なるほどな、それは先頭の2人は勿論・・・』
リリディ
『僕たちよりも熟知しているでしょうね』
聞かなくてもわかる
リゲルは奥に見える右側面の木の上を指さした
どうしたのだろうと全員で視線を向けると、グリーンマンティスというランクEの1メートル半サイズのカマキリが枝にしがみついていたんだ
リゲルとクワイエットさんは気にせず進んだ、理由はグリーンマンティスが寝ているからだろう
クリスハート
『無視しましょう、それにしても気づくのが速い…』
シエラ
『なんだかんだ、しっかり見てくれてる』
だろうな
そうは見えないんだけどね
《兄弟、ありえねぇ魔物がわんさかいる…気をつけな、何かが可笑しい》
アカツキ
『なんだと?』
ティア
『ありえない魔物?』
2人で首を傾げていると、リゲル達は足を止めて正面に向かって静かに剣を構えた
魔物かと思い、近づくと俺達もその気配を感知する
結構強いぞこれ…なんの魔物だ?
クリスハート
『左右にも』
エーデルハイドの女性陣は背中合わせで近づく魔物を待ち受ける
俺達も何の魔物なのかと思いながら待ち構えていると、それは現れた
『ゴロロロロ!』
『ゴロロ…』
ティアマト
『リザートマンとかマジかよ』
ランクCのリザードマン、人型のトカゲだ
革防具を身に着け、丸い盾に片手剣を手にしている
身長はティアマトと同じくらい、首が長いのが特徴的だな
ルーミア
『合計6体とか面白いねぇ』
リリディ
『正面にも3体いますよ』
ティア
『9体!?Cランクが?』
リュウグウ
『というか沼地の魔物が何故ここに』
《だからあり得ないんだ、こいつらだけじゃねぇから気をつけな!》
俺はランタンを左手に持った状態だと戦い難い
懐から光粉を振りまき、地面を照らして一帯の視界を確保する
これならランタンを地面に置いて戦っても問題ない
リザードマンは走ってくると、俺に向かって飛び込んできた
刀を両手で握っていればあいつの剣を弾けるとは思うが、無理は出来ないな
『ゴロォォォ!』
『!?』
飛び込んでくるリザードマンの剣が発光している、技スキルか
こいつは兜割りという技を持っているのは知ってる
後ろに飛び退いて避けると、リザードマンの振り下ろされる剣は斬撃を発生させながら地面を斬り裂く
『ゴロッ!』
しかも追撃が速い。もう俺に突っ込んできている
『お助け参上!』
ティアが俺の横を通過し、突っ込んでくるリザードマンにドロップキックを仕掛けた
『グル!』
盾を前に出して防ぐ前に、全体重を乗せた跳び蹴りを顔に受けたリザードマンは僅かにバランスを崩す
俺はすかさず光速斬でリザードマンの首を斬り裂いた。飛ばすことは出来なかったが
『ガ…ゴロロ』
凄い出血だ。あれじゃ戦えまい
ティアマトが交戦していたリザードマンが俺が相手したリザードマンに向かって吹き飛んでいき
2人仲良く地面を転がっていく、どうやら死んだようだ
『賢者バスター!』
『ギャプランッ!』
スコーンっとリリディのフルスイングした木製スタッフがリザードマンの顎に直撃し、仰け反る
直ぐにリュウグウが槍で胸部を貫き。最後にギルハルドが首を斬り裂いて倒す
反対側ではエーデルハイドが3体のリザードマンを倒し、魔石を拾っている
流石に速いな…
リゲル
『可笑しいな…リザードマンか』
彼もそう思うらしい
クワイエットさんの周りには2体のリザードマンが倒れおり、彼は辺りを険しい顔で見回していた
それはリゲルも同じだ
何かが可笑しいのは俺達も感じている。何故ここにいる
クリスハート
『リザードマン…ですか』
『ニャー』
リリディ
『あげますよギルハルド』
ルーミア
『あっ!発光魔石ぃ勿体ない…』
1体のリザードマンの魔石が光っていたんだ
リリディはそれをギルハルドに与えていた、毒耐性スキルだったらしいから俺達はいらない。兜割りなら欲しかったけど
ギルハルドが倒すとドロップ率が飛躍的に上がる、それを吸収してギルハルドは強くなっていくんだけど。結構な数を吸収したなこいつも
《おいおいまただよ…お前らもいんのか》
リゲル
『今度はなんだ?』
クリスハート
『何を話しているんですか?』
テラ・トーヴァの声はエーデルハイドには聞こえない
リゲルは苦笑いしながら『クワイエットの独り言に反応しただけだ』と誤魔化す
肝心のクワイエットさんは空気を読んで頷いてくれている
リュウグウ
『今度はなんだ』
彼女は槍を構えながらしかめっ面を浮かべた
進めばわかる、テラ・トーヴァはそう答えた
仕方なくゆっくり前に進み、魔物の気配を感じて足を止めるとこれまた驚きな魔物が正面から走ってきたんだ
『ロロロォ!』
ウーパールーパーが巨大化したかのような姿だが、目つきが悪い
1メートルと長い尻尾も合わせれば全長は3mある、ランクCのベロヌェルカだ
舌は2メートルも伸びるから面倒な敵だ。
リリディ
『2体!好機!1体頂きます!アカツキさん!』
彼は真剣な顔を浮かべながら俺を呼び、突っ込んでいく
リゲルとクワイエットさんは戦う気がなく、俺達に道を譲る
あと1体は…
クリスハート
『私達で1体倒しますか』
アネット
『一瞬で倒すよぉ!』
彼女らに任せよう、ティア達は周りを警戒している
俺はリリディと1体のベロヌェルカに突っ込むと、奴は容易く舌を伸ばしてきた
『アカツキさん!』
『わかってる!』
俺を狙う舌、だがリュウグウが飛び込むと舌を突き刺し地面に食い込ませて抑え込んだのだ
『流石だリュウグウ!』
本当に頼もしい
俺はその隙に舌を斬り飛ばした
するとベロヌェルカは血が出てくる口をおさえて前屈みになり、その隙にギルハルドが尻尾目がけて突っ込み、伸ばした爪で斬り裂きながら通過したがまだ切れていない
『ロロロォォォォ!』
『ぐふっ!』
暴れるようにして片腕をでたらめに振り回すベロヌェルカ
俺はそれに刀が当たって転倒しそうになるが、耐えた
『おらぁぁぁぁ!』
ティアマトがベロヌェルカの不規則に振る尻尾を強引に受け止め、リリディがカッターという風魔法で発生させた円状の刃2つを飛ばし、尻尾を斬り飛ばす
ベロヌェルカは悶え苦しむと、俺は脇腹を斬り裂きリリディが頭部に木製スタッフを振り下ろすが…
『ロ!?』
『ぬっ!』
ベロヌェルカはリリディの攻撃をギリギリ避けた、リリディを手で叩いて吹き飛ばし。俺に襲い掛かる
なんでだ?エーデルハイドさん達が交戦しているベロヌェルカもやたらと俺を意識しているぞ
今斬り倒されたけど…
《なんだか兄弟モテモテだな。》
『くっ!』
光速斬でベロヌェルカの右太腿を斬り、膝をつかせると、リリディが今度こそ頭部に木製スタッフを叩きこんで倒した
発光した魔石が出てくると、彼は俺に親指を立ててから魔石のスキルを吸収するために掴む
黒魔法スキルのペインだ
それがレベル2になるか。頼もしい
ランタンを手にして歩き始めると、また可笑しなことが起こり始める
リゲル
『奥からまた気配だぜ?10体?…いやこりゃ…』
彼は引き攣った笑みを浮かべていた
クワイエットさんは首を傾げ、不満そうな顔をしている
ティアもそうさ。俺の近くに来ると苦笑いしていたんだよ
リゲル
『幻界の森のお試しか?よしてくれよ…』
クワイエット
『20体はいそうだねこれ』
クリスハート
『多いですね』
リゲル
『チキッたかクリ坊?』
クリスハート
『そ…そんなことありませんっ!』
彼女は正面に剣を構える
俺達もリゲル達の近くまで行き、じりじりと前に進むと咆哮が聞こえてくる
狼だ
ということは魔物は何かなんとなく予想できた
『ガルゥゥゥゥ!』
シエラ
『エアウルフ、大家族』
Eランクのエアウルフ
それに紛れて珍しいのもいる
『グルルル!』
Cランクのチベタンウルフ、エアウルフよりも二回り大きい
獅子のような毛並みの狼種の魔物だ、毛深いな…
普段こんなところにいない魔物のオンパレードに誰もが困惑していた
気づけば周りを囲まれ、俺達は襲われる側になっているようだ
アカツキ
『鬼ヒヨケよりも驚くことが多いな』
ティアマト
『襲われに来たかこいつらよぉ』
クリスハート
『各個撃破です!』
彼女が口を開くとチベタンウルフが吠えた
あれは司令塔か、あいつが吠えたらエアウルフが一斉に襲いかかってきたからな
オイルランタン片手は少し面倒だが仕方無いか
飛び込んできたエアウルフを刀で切り裂き、側面からくる奴は避けてから別のエアウルフを斬る
戦いながら俺は考えた
クワイエットが睨み合っているチベタンウルフ
チラチラと俺を見ている
《余所見すんな兄弟》
『ガァァァ!』
『わっと!』
噛みつこうとしたエアウルフが真横にいた
ギリギリ避けると、そいつはリリディにかっ飛ばされて遠くに飛んでいく
『キャイーン!』
痛いだろうな、スタッフのフルスイングが顔面直撃だったし
にしてもだ…数が多いぞ
『あり得ない数だねっ!』
ティアはエアウルフの噛みつきを避けながらサバイバルナイフで斬り、口を開いた
こんな数は始めてた。
最高で7体ほどしか覚えがないぞ
リュウグウ
『ふん!』
飛び込んできた敵をひたすら槍で貫くリュウグウは目だけを動かし、しかめっ面で『また増えたぞ!』と叫ぶ
『グルルル』
は?グランドパンサー4体?嘘だろ…?
筋肉質な大型犬、毛が少なくて色は黒だ
しかしランクはDだから問題はない
ルーミア
『絶対可笑しい!』
彼女は素早く周りのエアウルフを倒し、グランドパンサー1体の首を斬り飛ばした
俺も飛び込んでくるエアウルフと斬り裂き、近くで戦っていたティアに飛び込んでいったグランドパンサーに向かって刀を突きだし、居合突で真空の突きを飛ばして貫いた
1分もたたずに全ての敵を倒しきる
俺達は息を切らし、ティアマト以外がその場に座り込んだ
遠くから狼の遠吠えが聞こえる、あれも来るというのか?
不気味な森の様子に誰もが険しい顔を浮かべ、見回す
クワイエット
『チベタンウルフかぁ、初めてだったけどわかんなかったな』
彼は地面に横ばいに倒れているチベタンウルフの頭から自身の剣を抜き、見下ろす
『一撃で倒せばそうだろ』とリゲルが鼻で笑った後に彼に答えると、クワイエットさんは苦笑いしながら『そうだった』と言う
クリスハート
『流石に少し休まないと』
ティアマト
『楽しかったな…』
アカツキ
『休んでると進む前に敵が来そうだ。ゆっくりでもいいから歩こう』
ティア
『私も賛成』
リゲル
『お?まともな意見を初めて聞いたぞ?』
聞こえてたのか?結構距離があったんだけどな
リゲルとクワイエットさんはこちらに歩み寄り、俺の顔をなめまわすように見てくる
俺は立ち上がると、1人また1人と起き上がり、森の奥に顔を向けた
自分で言ったことだから説明するのもあれだが
敵の出現が速い
立ち止まっていると現れるならば進むしかない
《まただぜ?》
その言葉にリゲルは舌打ちをし、『さっさと行くぞ』と皆を急かす
リュウグウが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、仕方なくティアと共に進む
リゲルも携帯松明、通称トーチ松明という金属棒の先端から僅かに顔を出す縄に火をつけ、手に持つ
あの棒の中には特殊な液が入っているタイプだろうな。買えば確か高い
ルーミアさんも携帯していたらしく、鞘にはめていたトーチ松明を手にすると火をつけた
ルーミア
『次は何かな』
クリスハート
『できれば大家族は避けたいですね』
アネット
『多かったねぇ。』
アカツキ
『ティアマト、後ろ頼む…2体だ』
ティアマト
『おうよ、側面頼むわ』
ティア
『任せて!』
リュウグウ
『言われずとも』
リリディ
『僕は休憩』
イディオット総出で彼に顔を向けた、誰もが目を細めている
彼は体力が無い。そんなリリディは咳払いをすると、顔を逸らしながら答えた
『代わりにギルハルドがいます』
『ニャー』
まぁ、ありなのか…
リュウグウが溜息を漏らしてあと、『ドレインタッチ使え』と囁く
しかし、リリディは笑顔で『忘れてました』と爽やかに答える
《数は少ないな、まぁそれでも休む時間を削られてるのはキツイな》
アカツキ
『そうだな…』
周りから魔物の気配、それは赤猪8頭
ただ突っ込んできて体当たりをしてくる猪さんだ
急に曲がれないから避けるのは容易い
無駄に走り回らず、ギリギリで軽く避けながら側面を深く斬ると、赤猪は地面に激突し、滑っていく
次を倒そうとしても、ティアマトは不気味な笑みを浮かべながら片手斧を振り回し、赤猪を斬り飛ばす
リュウグウとティアは出番が無さそうだと感じ、休むために武器をおろして森を警戒していた
俺も僅かでも休まないと次に十分動けない
リリディ
『体力くださいドレインタッチ!』
『ブギンッ!』
スタッフをフルスイングし、赤猪の体力を奪いつつ吹き飛ばした
放物線を描いで飛んでいく先には先頭のリゲルとクワイエットさん
クワイエットさんはこちらを見ていなかったが、振り返ると同時に剣で赤猪を両断した
それにはクリスハートさんもびっくりさ
『後ろにも目があるのですか…死んで気配が消えた魔物ですよ』
その通りだ。わかる筈がない
クワイエット
『倒し終えたね。進むよ』
待つことはせず、彼らは歩き出す
歩きながら息を整えろ、という事だろうな
エーデルハイドの人たちは多少疲れているようだが、シエラさんが『出発』と言うと彼女らは歩き出す、そして俺達も
川辺まで行くと、そこでリゲルが小休憩だと告げて近くの岩に腰を下ろす
ようやく普通に休める、そう思った者は一息つきながら地面に座り込んだ
アカツキ
『ティアマト、ランタン渡す』
ティアマト
『あぁん?まだ俺はいけるぜ?』
アカツキ
『温存だ』
ティアマト
『ケッ、仕方ねぇ』
よかった、持ってくれるようだな
リリディは大胆にも大の字の寝そべって休んでいる
ギルハルドが彼の顔をなめて邪魔しているのが面白い
アネットさんがしきりとリゲルとクワイエットさんを見ているのに気づき、俺は視線を彼らに向けると目を閉じて腕を組んだ状態でいたのだ
寝ている筈はないとは思うが、聖騎士の休憩があれらのかもな
シエラ
『寝てる?』
クリスハート
『わからない。でも彼らは一体…』
ティア
『幻界の森の生還者だって言ってた』
彼女が教えると、エーデルハイドが一斉に驚愕を顔に浮かべ、聖騎士2人の顔を向けた
ルーミア
『嘘でしょ?出てきた者はいないって…』
ティア
『今まで沢山のマグナ国の強者が入って戻らないってのは有名だけど、聖騎士も何度もあの森の調査で向かったと言ってました。何度の調査でも戻らなかったけども1番隊の彼らは生還してきたらしいです』
クリスハート
『そんな…』
リリディ
『幻界の森ですか。常識が通じない別の世界とは聞いてますけども魔物が恐ろしく強いとは彼らも言ってますね』
リュウグウ
『しかもそこにしか生息しない特殊な魔物しかいないらしいわね』
シエラ
『あそこの奥までいけた人、いまだいないって聞く』
するとリリディはそこで何かを思いつめたように考え始めた
リュウグウが『トイレか?』と茶化すと、リリディは苦笑いしながら違う事を口にした
『お爺さんが面白い森があるという話をしたことがあります』
アカツキ
『面白い森?』
『ええそうです。不思議な魔物しかいない夢のような森…お爺さんの友人が奥まで行ったと言っていましたが』
ティア
『それを幻界の森だと予想してる?』
『面白い、という言葉の意味はきっと僕たちが普段使う意味とはきっと違うんだろうなと徐々に思い始めています』
リュウグウ
『となるとなんだ?お前のお爺さんの友人は誰になる?』
《道化傀儡グリモワルド・グレゴールだ》
目を閉じていたリゲルやクワイエットでさえカッと目を見開いてこちらに顔を向けていた
俺達は不思議と驚きはしない、何故だろう…あの人ならばやれると思う
ティア
『奥まで…』
アカツキ
『とんでもないな…』
リゲル
『確かにとんでもねぇな』
リゲルが歩いてやってくる、彼だけだが…聞こえていたか
何かを口にしようとしていたが、直ぐにテラ・トーヴァがそれを遮った
《休憩は終わりだ。面倒なのが1体くるぞっ!》
『ウモォォォォォォォォォ!』
咆哮と共に微弱な地響きだ
ありえない、この声は…
全員が素早く立ち上がり、リュウグウは舌打ちをしてから囁く
『ミノタウロスか』
まだ遠い、しかし遠くで木々をなぎ倒して近づいてくる音が聞こえてきた
確実にこちらに向かってきていることは明白だ
クワイエットさんは背伸びをし、俺達とは違って笑みを浮かべながらも近づく音に体を向ける
アカツキ
『しつこいイメージが強いな』
ティアマト
『だな、あんなんじゃモテねぇだろうよ』
リュウグウ
『死んでもデートなんてしたくないな、束縛が強そうだ』
ティア
『いいから戦うよ!』
クリスハート
『皆さんで行きましょう』
《1体だけじゃねぇぞ!》
はっ?と俺は口を開いた
すると気配感知に無数の気配を捉えた
強い気配は1体だが、それ以下の魔物の気が6体ほど感じる
川の向こうから大きく跳躍し、こちら岸に大きな音を立てて着地したのは3メートルサイズのミノタウロス
頭の側頭部からは湾曲した大きな角、黄色いモヒカンと少しお洒落な髪型
体は全体的に灰色であり、両腕と両足は黄色い毛で覆われており、両肩部には白い円状の模様がある
筋骨隆々とした細マッチョ、尻尾は1m半ほどだ
両腕に握るは大斧だ
ランクBの魔物だ
リゲルとクワイエットさんはミノタウロスを前にし、剣を肩に担いで歩き出した
《ミノはあいつらに任せとけ!お前らは他だ!》
『グラララァ!』
右方向からリザードマンか!しかも5体と増えたな…
下流付近にいたのかこいつら
アカツキ
『みんな!リザードマンを倒せ!』
俺は叫び、光速斬で駆け出した
先頭が盾を前に出し、ガードの構えだがそれなら俺は体当たりするかな
『グロッ!』
バランスを崩したリザードマンが驚いているうちに肩に刀を突き刺すが、直ぐに態勢立て直したリザードマンが片方の手で握る剣で突いてくる
俺は両手に握る刀でそれを全力で振って弾き返すが力が強くて仰け反ってしまう
それと同時に飛んできた斬撃によって奴の首が吹き飛んだ
『もっと行くぞコラァ!』
ティアマトの真空斬だ
リュウグウ
『前見ろ!』
『わかってる!』
そう答えながら前に立ちはだかってきた別のリザードマンが剣を振り下ろしてくる
片手で受け止めるがヤバい。唸り声をあげながら奴は剣を押し込んでくる、力強い!
『ショック!』
ティアの雷弾がリザードマンの頭部に命中し、ピリッと感電して動きを止めた
俺は素早く奴の剣を弾いてから剣を持つ腕を斬り飛ばす
『グロォォ!』
悲鳴を上げたリザードマンは数歩後ろに下がり、自身の腕を見つめた
そして俺を酷く睨みつけてきたんだけども、こっち見てていいのかな?
ティア
『そいっ!』
ティア、君はなんでドロップキックなんだ?
顔面を思いっきり蹴られたリザードマンは仰け反り、バランスを崩しているとティアが落下しながら奴に腕を伸ばし、黄色い魔法陣を出現させて再びショックを唱えた
雷弾がバランスを立て直すリザードマンの顔面に直撃し、再び僅かな麻痺を起こす
その隙にリュウグウが懐に潜り込み、奴の首を素早く2回貫く
俺達の周りはこれで大丈夫そうだ
『はい、お手て』
『あ、あぁ』
ティアが手を伸ばしてきたから俺は彼女の手を掴んで起き上がらせた
クリスハート
『終わりです!』
『グギャ!』
彼女はリザードマンの剣ごと斬り裂く
リザードマンの数も少なくなってきている、それにしても…だ
『ウモォォォォォ!』
リゲル
『インベクト!』
ミノタウロスの振られた大斧に飛び込むリゲルはそう叫び、自身の剣をぶつけて弾き返した
何故あの馬鹿力にそんなことが出来る!?
あれはなんの技スキルだ…
大きな巨体から繰り出された大斧の攻撃を弾き返した事に誰もが驚く
弾かれても片方の大斧を目の前で着地をしようとしているリゲルに振り落とす
どう考えても防げない
だがリゲルはミノタウロスをほくそ笑んでいた
『人型は楽だ』
すると彼の後ろからクワイエットさんが現れ、彼も『インベクト』と言い放ち、振り下ろす大斧を弾き返した
完全にバランスを崩したミノタウロスに向けてリゲルが着地と同時に素早く剣を振り、真空斬で斬撃を飛ばした
それはミノタウロスの首に直撃し、血を流すが深くはない
『グモモ…』
ふらついたミノタウロスの足元にクワイエットさんが滑り込むように足首を深く斬って背後に回ると、リゲルは膝をついたミノタウロスに駆け出し、両手で強く剣を握り、叫んだ
『一刀!!!』
彼がミノタウロスの目の前で剣を振り上げると、大きな斬撃は現れてミノタウロスを斬り裂いた
奴の体からは血は吹き出し、悲鳴を上げている
だがまだ死んでいない
暴れながら両手の大斧を振り回すミノタウロス、リゲルは舌打ちをしながらも剣で体の正面を守ると振られた大斧が剣に当たって吹き飛んだ
『クワイエット!』
リゲルは吹き飛びながら言い放つ
するとその声に答えるかのようにミノタウロスの不規則な攻撃を避け、顔の前に辿り着くと顔面を貫いた
ミノタウロスの動きは止まり、ゴトンと地面に倒れていく
《インベクト、敵の攻撃を弾き返す貴重な技スキルだ》
凄いな…
リザードマンも倒した
でも誰もがあの2人に釘付けになっている
流れるようにあのミノタウロスを倒したのか…
リゲルは起き上がり、体についた土をほろいながらミノタウロスの魔石を拾うクワイエットさんに近寄った
『助かったぜ』
『多分出番来るだろうなって、飛び込んだの見るとそう思ったよ』
こいつらは強い
俺達よりも明らかに、だ
ティア
『凄い…けど』
彼女は囁くように言いながらも川の上流付近に顔を向けた
誰もがリゲル達の戦いの関して口を開く余裕は、ない
リゲル
『ああそうかいそうかい』
彼もまた、川の上流である奥に顔を向けながら剣を構えた
《鬼退治の始まりだ!状況がまったく可笑しい…分け前とか馬鹿な事考えてねぇで協力しねぇと死ぬぞ!お前ら!》
ずっしりと感じる2つの気配
森の奥から突風が俺達を通過すると、松明の火が消える
灯りは俺のオイルランタンのみ、ティアマトはそれを片手に松明が消えて険しい顔をするルーミアさんとクワイエットを見て、愚痴っぽく吐き捨てる
『灯りぐらい許せや馬鹿鬼が』
リュウグウ
『くっ!くるぞ!アカツキ!光粉を』
アカツキ
『わかってる!』
俺は最後の光粉を辺りに振りまき、視界を確保する
全員が武器を構えて来たる敵に備えると、クリスハートさんが口を開いた
クリスハート
『皆さん!気を付けて』
シエラ
『私、頑張る』
ティア
『アカツキ君、がんばろ!』
アカツキ
『そうだな。…リリディ!』
リリディ
『わかってますよ、開幕任せてください!』
リゲル
『いいかお前ら、1体は貰うが残る1体はお前らで速攻倒せ!時間なんてかけるな!まだ何かいる!!』
リゲルは真剣な顔浮かべたまま、四方に視線を向けて叫んだ
他に魔物?気配などない
《気配はあの2体だけだぞ?》テラ・トーヴァはそう告げると
クワイエットさんは目を細めたまま迫る2つの気配に体を向けて言い放つ
『殺気を鬼ヒヨケよりも一番飛ばす何かがいるんだよね。』
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